【ソッカー(男子)】早慶定期戦特集第11弾! 冨田賢監督インタビュー

ソッカー

7月7日(土)、等々力陸上競技場にて“第69回サッカー早慶定期戦~早慶クラシコ~”が開催される。早慶のプライドがぶつかり合う特別な一戦。ケイスポでは、7年ぶりの定期戦勝利を目指すソッカー部の選手・スタッフたちに意気込みをうかがった。

 

 第11弾は、冨田賢監督のインタビューをお届けする。過去に選手、コーチとして早慶定期戦を何度も経験している冨田監督。今年は監督として迎える初めての定期戦となる。恐らく最も早慶戦というものを知り尽くしているであろう若き指揮官に、就任からの半年間のこと、そして早慶戦に対する意気込みと思いをうかがった。

 

 (取材日:6月20日)

 

今苦しんだら絶対後期につながる

――まず今季ここまでを振り返っていただけますか?

そうですね、シーズンが始まる前にトレーニングマッチでやろうとしていたことがそれなりにできていた中で、立正との開幕戦。まあ予想とは反した入り方になってしまって非常に苦しいシーズンだったと思うんだけど、その悪い状況の中でも一人ひとりがバラバラにならずに、まあ僕としてはもちろん昇格っていうのが大前提であるわけだけれども、こういう状況っていうのはあり得ると思っていたから、そこから少しずつだけど、自分たちのボールは持ててるんだけどシュート数も倍くらい打っている中でなかなか勝ち切れないっていうか、簡単な失点があったり歯車が組み合わない中でそういう本当に際のところというか、本質的なところをもう一回見つめ直して、ここ4節(第7節から第10節)は1勝3分で、まあもちろん勝ち切らなきゃいけないゲームだったけど守備のところはまずまず安定してきたかなって。その4試合で2失点か。だからそういう意味では、開幕は7失点したわけだから、そこから比べるとまずまず安定感が出てきたから、まあ本当に今苦しいけど絶対に後期につながると思っているしそれ以降につながっていると思うから、今はそういう感じですね。だから最後の日体戦(第11節・日体大戦)に勝って早慶戦に繋げてというかたちで行きたいなという感じです。

 

――開幕の2試合はスタートダッシュに失敗したという印象の強いものになってしまいましたが

そうだね。まあだからやっぱり甘くないということと、それこそ綺麗にっていうよりはロングボールでFWにどんどん当ててくるっていう相手に対する僕らの準備ができていなかったというのと、そういった部分ではやっぱり弱さが出たというか、だからそういった部分をうまく突かれちゃったなと。東海戦(第2節・東海大戦)も徹底してうちのディフェンスラインの背後にどんどん入れてくるっていう形だったので、逆に言うとサッカーをしてくれるチーム、青学とかそういうチームとは良い勝負ができるっていう感じかな。あとは3バックとかね、立正とか3バックってあんまりやったことがないフォーメーションで、そういう相手に対してどうやってやるのかっていうところは、そう意味では拓大は3バックだったけどまあそういう中でも、もちろん内容としてももっとやっていかないといけないんだけど、立正に比べれば3バックの相手に対してうまくやれたのかなと思います。

 

――前期の中盤では勝ち切れない試合が多く続きました

本当にその通りだよね。だからそこのところはもう一回練習のところからやらないといけないっていうのと、僕らの伝え方もやっぱり考えないといけないっていうのもあるし、もう一回その日体と早稲田に向けて、じゃあ本当に勝っているときにどういうサッカーをやるのかっていう共有がまだ少し徹底されていないなっていう感じがあるから、日体戦と早稲田戦に向けてもう一回そこの勝ってる時間帯にはどうするのかっていう、そこがあいまいになって前の選手は行きたいってなって後ろの選手は守り切りたいってなっているので、そこをもう一回しっかり共有していきたいです。まあ僕ら社会人スタッフっていうのはもうずっと戦ってきているからそこの戦い方っていうのははっきり分かってるんだけど、選手はどうしても行きたいっていうのがあるから、そこでやっぱりうまく本当の意味で一つにならないといけないなって思うので、そこをもう一回トレーニングだったり、まあ話し合うことだよね、コミュニケーションを取りながらやっていくことでこの間の拓大戦(第10節・拓殖大戦)もちょっともったいない感じで、勝ってて残り8分でっていう。そういう試合もあるよね、取りこぼしてるゲームって結構あるから、もったいないゲームって、そういうところをこの2週間しっかり準備していきたいです。

 

困難な時ほど、苦しい時ほどこのチームに貢献できる選手になってもらいたい

――今現在、冨田監督が思い描くサッカーをチームにどれくらい落とし込めていると思いますか?

うーん…やっぱり理想と現実があるからね。そこは考えていかないといけないんだけど、そういう意味ではまあまだまだできていないことのほうが多いかな、やっぱり。うん、それはまだまだって感じかな。

 

――どのような部分がまだ足りないと思いますか?

1つは、自分たちで主体的にボールを動かしていこうというのは、そこの部分に関しては手応えはまずまずあるかな、7割8割…選手たちもやってくれているなっていう。ただサッカーの本質的なところで、球際だったり運動量だったり切り替えだったり、そこの、あとはワールドカップなんかを見ていても思うんだけど、理屈じゃないところってあるよね、サッカーって。最後本当にゴール前で守らなきゃいけないってところの厳しさはうちらには特に前半戦は無かった。本当にこれは守らなきゃいけないっていう危機感とかそういう責任感とか、そういうのがあったかっていうとそこは足りてなかった。だからシーズン途中からもうある意味ここはある程度できるようになってるけどここ(球際)の部分、際の部分ゴール前の部分、そこはもう徹底して球際だったりセカンドだったり、そこは今ちょっとずつ出てきてそれでああやって失点も減ってきたし、そういう戦いができるようになってきたかなと思うけど、でもやっぱりそこの部分はまだまだ足りないなって思います。それは僕も求めていかないといけないし、選手たちにも自分から習慣にしてもらいたいね。あとは今日もトレーニングの中で言ったんだけど、やっぱり良い状態の時はうちはすごく良いプレーができるんだけど、後半特に運動量が落ちてきたりだとか、そうなった時にやっぱりパフォーマンスがぐっと落ちちゃうんだよね。だから今日も敢えて負荷がかかるように6対6で全面でやったりとか、そうするとそれまでポゼッションの練習をしているときはものすごく良いプレーが出てるんだけど、そういう少し負荷がかかって行かなきゃいけないとか自分が運動量を持って動き出さなきゃいけないってなるとミスが増えちゃったり正確な技術が発揮できなかったり、だからそこは本当に課題だなって。やっぱり前半凄い良い形で入ってても後半別のチームになっちゃうときもあるし練習を見ていてもそういう感じなので、そこはもう本当に、これは就任前にも言ってたと思うんだけど、困難な時ほど、苦しい時ほどこのチームに貢献できる選手になってもらいたいけど、そういった意味ではまだまだやっぱり本当にチームが苦しい時に「俺が2人3人分走ってボールを奪う」とか「味方のミスをカバーする」とか、そういう気概を持ってる選手っていうのはまだまだ少ないね。まあ、ます(増田皓夫=商4・桐蔭学園)なんかは、あいつは凄い。ちょっとずつ出てきたかなって僕は思ってるんだけど、もっともっとほかの、学年関係なくこのチームのためにやるんだっていう、まあ俺も苦しいし選手たちも苦しい思いをしていると思うんだけど、絶対こういう時こそやっぱりやらないといけないし、今苦しんだら絶対後期につながるし僕はそう思っているから、そういう意味では本当に日体と早慶戦っていうのは、特に早慶戦、まあ早稲田がああいう感じになって、リーグ前のトレーニングマッチでは僕らの方が良いサッカーをしていたんだけど蓋を開けてみたらこういう感じになっていて、だから僕もものすごく悔しいし、そういう意味では良い機会だからね。ここで早稲田を相手に良いプレーをして良いゲームをしてアミノバイタルや後期に繋げていきたいなっていう感じですね。

 

――ここ4試合(第7~10節)の出来を見てポジティブに捉えられるところもありますか?

まあ、たぶんいろんな見方があるからね。この前のゲーム(第10節・拓殖大戦)も勝ち切りたかったし勝たないといけないゲームだったから。だけどある意味その開幕の2試合をやってチームとしてぐっとなった中で、もちろんこれからもっと上げていかないといけないけど、やっぱり守備のところが少し安定してきたっていうことで手応えはちょっとずつ出てきてる。

 

――昨年まで須田芳正前監督が10年間率いてきたチームを引き継ぐというところで難しさなどはありましたか?

まあ、もちろん僕も初めてだから大変な部分はあると思ってるけど、でもそういう準備を自分もしてきたし、あと須田さんも、福井さん(福井民雄前総監督)も含めてそういうふうに持ってくれていた部分もあると思うから、そういう意味では準備の段階では問題ないというか、あとは自分の、まあコーチと監督って全く違うからそういう意味では「あ、監督の仕事ってこういう部分もあるんだ」っていう発見とか、コーチの時から「いつか監督になったらこういうことをしたい」っていろいろ思ってたけど、やっぱり実際にやってみるのとそれっていうのは全然違うっていうのは実感してるから、そういう意味では自分は慶應という伝統あるチームを任されたわけだからそのためにいま自分ができる決断を日々、毎日毎日しています。あとは、僕も口だけじゃなくてまだ動ける部分、まあ選手を辞めてもう5年くらい経ってるからあまり動けなくなってるけど、伝えたい思いとかそういうのはあるから、今日も選手たちと一緒にプレーしたりとか、できれば選手たちと一緒に戦って共にこの苦しい状況を打破して、ある意味流れがもしかしたら去年からこうなってるのかもしれないけど、そういう時って絶対あると思うんだよね、どんな組織でも。で今10年間こういう感じで行って、今苦しむ時期に来てるのかなって。だけど僕だったり浅海コーチ(浅海友峰コーチ)だったり髙橋一真コーチだったりあと八木総監督(八木啓太総監督)だったり、あとはOB会の人含めて本当に応援してくれてるから、それを最後結果に結びつけるのは現場の仕事だし最後は僕は選手たちだと思っているから、彼らに、サッカーって気持ちいいことだけじゃないし自分たちがやりたいことだけじゃないし、だからそういうことから、今のこの状況から学んで人間的な強さを持ってそういう状況を上向きにさせる力を一人一人が持たなければいけないなって思ってます。

 

慶應としてのプライドを背負って

――ここからは早慶定期戦についてお聞きします。冨田監督は選手としても、そしてコーチとしても定期戦を経験していてかなり長い付き合いだと思いますが、これまでの定期戦を振り返ってどう思いますか?

そうだね。振り返ってみると現役の時は僕がそもそも慶應でプレーしたいなって思ったのは早慶戦を見たからなので、小学校の時に。で、僕はFC東京のユースでやっていたけどいつか大学の黄色いユニフォームを着て慶應に貢献したいっていう気持ちでずっとやってたから、やっぱり特別な思いはあるんだよね。で、ある意味では、そういうのが染みついてるものなのか、早慶戦の前になると自然と、別に何かっていうわけじゃないんだけど、こう、高ぶるっていうか、そういうのが出てくる。それでやっぱり選手たちのみんなには、僕もそうだけど、僕が見て憧れて慶應のユニフォームを着たいって思ったように子どもたちがあのゲームを見て本当に慶應に入りたいとか、そう思ってもらえるようなそういうサッカーをしたいなってすごく思ってる。あと選手で思ったことでいうと、やっぱり独特なんだよね、早慶戦って。普通の試合じゃない。1つは、物理的なところでいうと、応援で何にも聞こえないから、プレー中は。これはそうだ、選手たちにも言わなければいけないなって思ってたことなんだけど、本当に指示とか聞こえないんだよ。で、俺はDFだったから指示を出していて、これはいつも選手にも行ってるんだけど指示は技術だからって、でもこれが全くできないっていう。もう応援合戦がすごいから、本当に何も聞こえない。だからそれくらいの密度というか分かりあってないと、もう言葉では解決できなくなっちゃう。それはプレーの中では僕が一番感じたことかな。「あ、何も聞こえないぞ」と。だから本当に味方が普段からよく知っていないとできないし、特徴とか「あいつだったらこう行くだろう」とか、そういうのが分かっていないとプレーできないし、っていうところかな。

 

――監督の指示も聞こえなくなってきますか?

全然聞こえない。だから僕の仕事は、試合に出るまでにやっぱりある程度選手たちが迷いなくプレーできるような環境を作っていくところだね。

 

――今回は監督として迎える初めての早慶定期戦となります

そうだね。もう6連敗してるからね。あとはやっぱり本当に、俺も負けず嫌いだからこの状況は悔しいよね。この状況を何とか早慶戦で、やっぱり状況を変えたい。早慶戦を一つにきっかけにしたい。もちろん勝ち点は懸かってないんだけど、なんとなくそれ以上に僕の中では大事な試合でターニングポイントにしたい、後期に向けて。あとはやっぱりもう意地と意地のぶつかり合いだから、これはもう絶対に負けたくないっていう、もう本当にその気持ちだけだね。だからそれをチームとしてどう戦っていくか。好調の早稲田はいま首位を独走しているからね。だからそういう意味では本当にリスペクトを持って、今の立ち位置的には下にいるわけだからそれはもうどうにもできないけど、それは謙虚に受け止めてその中でも一泡吹かせたいっていうか、何とか意地を見せたいってところです。

 

――早稲田に対する印象はいかがですか?

早稲田に対する印象は、まあ強烈にみんながハードワークをする。その中で楽しんでやってるなって印象があるから、まあ何とかそういう調子の良い相手に、自分たちも日々ハードワークしてるしそれをやっぱりグラウンドっていうか、ああいう最高の舞台でできるわけだから、思いっきりチャレンジしてぶつかっていきたいです。

 

――現状では力の差がある中でどういった戦い方を目指していきますか?

それはちょっと言えないかな(笑)。そこはちょっとね、準備をしっかりしたいと思います。

 

――慶大が早大に勝っている、もしくは勝る可能性があるところはどこだと思いますか?

今の現状だとちょっとあれだよね。だけどこのチームに貢献したいだとかそういうひたむきな思いでは勝ることができるのかな。あとは、このチームのためにこういうプレーをするっていう一人ひとりの気持ちの部分っていうのは、逆にそういうところでは勝んなきゃいけないなって思う。今は勝ってるか分からないけど、そういう部分で勝っていかないと勝機はないよね。そういうところをやっていく必要があると思う。

 

――今回の定期戦でキーマンになると思う選手がいたら教えて下さい

キーマンは、本当に全員なんだけど、俺の中では今の感じだと増田になるかもしれない。今のあいつは、やっぱり何か感じるよね。こう、「俺が何とかしなきゃいけない」っていうか、一番そういう気持ちを持ってるのは彼かなって。それはみんなたぶん思ってると思うんだけど、それが実際にプレーで表現できている選手っていうと、僕は増田なのかなって思います。だからあいつがああいう大舞台で躍動するんじゃないかなって。この間の拓大戦の1点目も完全にあいつのところだし、あいつがああいう個で剥がしてっていうところだったし、とにかく体も動いてる感じするしメンタルも充実している感じもするし、やっぱり今一番僕がチームに求めている「何か自分が変えてやろう」っていう思いを持っているのは増田なのかなっていう。それがピッチ上で表現できているから。

 

――来場される観客の皆さんに「ここを見て欲しい」というところがあれば教えて下さい

やっぱりまずは慶應らしくひたむきにプレーするってところが、それは約束したいなと。で、その中で見ている人たちが楽しんでもらえるような、見に来てよかったって言ってもらえるような、そういうゲームをしたいなって。まあ早稲田相手にどれだけできるか分からないけど、でもそこにチャレンジしてそこに向けて100%の準備をして、それは約束するから、ある意味来てくれる人は本当に応援が力になるから、いまは自分たちでは言いたくないけど強い相手に向かっていくことになるわけだから、そこは一緒に戦ってくれたらうれしいなっていう感じですね。たぶん選手たちも苦しい時間帯も多いと思うし、そういう中でも絶対に諦めないでプレーするっていうのは約束するから、お客さんの人たちも一緒になって戦ってくれたらうれしいなっていうふうに思います。

 

――では最後に、早慶定期戦に向けて意気込みを教えて下さい

選手で4年コーチで6年かな、それで今年監督として1年で11年。まあ色々な思いとか自分が経験してきたこととか、その状況の中で最善の準備をしてゲームが始まったら最善の判断をして、僕自身も戦うし選手たちも。僕は幸せだなと思う、ああいう舞台でプレーできるのはプレーヤーとして。あんな観客の前で、Jリーグだって1万5千人入らない試合だってあるわけで、それだけ慶應のユニフォームを着てるからっていう特権でもあると思うし。それを感じながら、でも慶應としてのプライドを背負って、あとは出ている選手だけじゃなくて駐車場を整備している部員がいたり売り子の仕事をやってくれている選手もいるし、あとはこの舞台って基本的には主務が、学生が主体となって作り上げている舞台であって仲間たちがそういう舞台を作り出してくれているわけで、あとは過去のOBのいろんな人たちの協力があってこういう最高の舞台ができるわけだから、そういう思いもしっかり汲みながら、自分も監督としてこういう舞台に立たせてもらえるということに感謝しながら自分の精一杯の準備をして、あとは選手たちと一緒に最高の舞台で最高の結果が出せるように一生懸命頑張りたいと思います。

(取材:桑原大樹 写真:高橋春乃)

冨田賢(とみた・けん)

須田芳正前監督のもと6年間慶大ソッカー部のコーチとして経験を積み、昨季は女子サッカーの名門、武蔵丘短期大で指揮を執った新進気鋭の監督。大学時代は慶大で主将を務めるなど中心選手として活躍し、卒業後はザスパ草津で3年間プレーした経験を持つ。現役時代のポジションはDF。

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