慶應スポーツ新聞会

【少林寺拳法】千田有希乃コラム~「文武両道のその先へ」

早慶戦でも2年連続勝利を挙げている千田

 

「#KeioOneTeam」を先導する慶大少林寺拳法部。昨今、體育會の中でもその存在感は高まりつつある。今回はそんな慶大少林寺拳法部62期唯一の女子部員、千田有希乃(薬3・桐生)のコラム記事をお届けする。千田は薬学部に学び薬の開発を志す一方、少林寺拳法でも関東大会入賞の実績を持つ。文武を究め、「完璧超人」を目指す彼女の生き様に迫った。

「今は2年で履修した科目の復習と、あとはTOEFL ITP受験に向けて英語の勉強をしてますね」。

3年生の言葉だ。高校生?否、大学3年生である。「少林寺拳法で全国の舞台を射程とする」という枕詞を添えても良い。上の言葉は「今一番打ち込んでいるものは?」への返答。なんのためらいもなく「勉強」と言い切った。

発言の主は千田有希乃。慶大少林寺拳法部62期、唯一の女性拳士。薬の開発を志し、薬学を学ぶ。

「大学生は人生の夏休みだ、って聞いてちょっと期待してたんですけど…(笑)」

そうはにかんだ女子学生は、学部でも成績上位。大学院への進学も視野に入れている。一方、白衣から道衣に着替えれば、関東大会5位入賞の実力者だ。「文武両道」は既に成したといえよう。次の目標は「完璧超人」。この一見不思議な目標について語る前に、まずは千田の歩んできた文武の道を辿っていくとしよう。

白衣との出会い

群馬県は大泉町、「ブラジル人の街」で育った千田。薬学を志したのは、少林寺拳法を始めるよりずっと前、小学校3年生の時だった。虫垂炎を患い入院。ここで「薬にできないことがある」ことを思い知る。

恐ろしい手術を乗り越えると、いよいよ薬への関心は強まった。薬の効用、限界そして副作用まで。もっぱらテレビ番組が勉強の場。小学校の卒業文集には「薬の研究者になりたい」の一節が。少女の夢はかくして定まった。

道衣との出会い

さて、ここで純粋な疑問。白衣の少女はどんな経緯で道衣にも身を包むようになったのか。ルーツは高校時代にある。群馬県桐生高等学校、普通科は200名、理数科は80名。普通科は男子校で、理数科は「ほぼ」男子校だという。そんな「ほぼ」男子校にあって、女子に人気の部活が少林寺拳法部だった。

「部活の雰囲気が好きで入ったんです」。

週3回の本練習に、週3回の自主練習。自主練習は「端っこで『人狼ゲーム』をやって、気が向いたら少林寺って感じ」。本人曰く、「身体を動かすのは好きだけど、運動は苦手」。そんな千田にとって、この雰囲気が入部の決め手となった。

デビュー戦最下位から関東5位の実力者へ

迎えた高校のデビュー戦。県の新人大会だった。

演武は演技終了直後に点数が表示される。結果はすぐにわかった。予選最下位だった。

「周りのみんなは予選で勝ち上がって関東大会で入賞したりしていて…悔しかったですね。体育館にいること自体もだんだんきつくなってきちゃって、体育館を出て、泣きながら(体育館の)周りをぶらぶら歩いたりしてましたね」。

この涙の散歩路が転機となる。以来、週3回の「人狼ゲーム」を断ち、鏡の前で型の練習に励む日々。「周りから『ノリ悪いな』とか思われてたかもしれないですけど」、千田の意志は揺らがなかった。

結実の時は高校3年の関東大会。ここで5位入賞の好成績を残し、見事インターハイ出場を果たす。「よくここまで来られたな、と自分でも思いましたね」。県予選最下位の屈辱から充足の関東入賞。もっと言うなら、生徒会で、慶應薬学部で、インターハイ出場だ。「文武両道」という言葉が、頭を垂れてこちらへやってきても不思議ではない。

高校時代から取り組んできた演舞(提供=少林寺拳法部)

再戦の果たし状

この関東大会、実は一つのドラマがあった。当初、千田の順位は「同率4位」。順位を決定するため、再演武が行われた。そして結果は1点差の「単独5位」。実力伯仲のライバルとの出会いだ。大会後、インターハイでの再戦を誓うも、それはかなわず。両者インターハイには出場したものの、決勝まで駒を進めることはできなかった。

試合後、好敵手が観客席の千田を訪ねてきた。

「大学でも続ける?」再戦の果たし状だった。

もともと「慶應」ゼッケンへの憧れがあった。きっかけは高校で指導にあたってくれた4つ上の先輩。背中にはいつも「慶應」の二文字がかっこよく刻まれていた。

断る理由、ナシ。千田の「続けるよ」の一言で、再戦は受諾された。

「慶應」を背負い戦う(提供=少林寺拳法部)

文と武の道

高校時代の千田がそうであったのように、大学入学後も、文と武の両立は続く。

正直、きつくないですか?以下、千田の返答。「(大学に)入った後に、勉強が思ったよりもキツイことに気が付きましたね」。一つ、苦笑い。しかしすぐに真顔になって、「精神的に体力があるというか、なんでもできるだろ、とけっこう楽観的に考えていて」。

その言葉通り、千田の文武の道には抜かりがない。文、つまり学業は前述の通り。武はどうか。好敵手との再戦が試金石だろう。大学2年の関東大会。高校時代は1点差で敗れた。今度は千田が「1点から2点差」で勝利、見事リベンジを果たす。武での成長を裏付ける一勝となった。

「完璧超人」

あらためて。千田の目標は「文武両道」ではない。それを超え、それを究めた「完璧超人」になることだ。では、なにをもって完璧な超人たり得るのか。

まずは「薬の開発」。「自分の力で何かしらの薬の開発したい」。小学校の卒業文集以来変わらない千田の人生設計だ。

次に「全国大会で入賞」。その心は?
「高校でインターハイに出場した時、『やったインターハイに出れる!』と思ってたんですね。」
でも。
「会場で決勝の演武とかを見ていると、全然レベルが違ったんです。全国の舞台には立っているけど、全然実力が足りないな、と痛感して。だから大学では、高校の時に自分が『憧れていた側』になってみたいと思っています」。

文武両道は成し遂げた。次はそれらを「完璧に」するだけ。
まずは武の道。全国大会入賞、いや、「できれば優勝」。「文武両道」のその先へ、千田の歩みは止まらない。

(記事:野田 快)

 

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