9月13日の青学大戦で、白星発進を果たした慶大蹴球部。関東大学対抗戦、チームはここまで開幕から3勝2敗と、掲げる目標「日本一」へ向けて歩みを進めている。
この先には、名だたる強豪校が立ちはだかる。そして11月23日、聖地・秩父宮ラグビー場で迎えるのは、第102回を数える伝統の早慶戦だ。慶大が2010年以降勝利から遠ざかっている宿敵・ワセダを前に、蹴球部員たちは今、何を思うのか。
今回はケイスポラグビー班が、大川竜輝選手(理4・慶應)、小林祐貴選手(政1・慶應)に対談形式でお話を伺いました(取材:10月23日)。ぜひ最後までご覧ください!
——他己紹介をお願いします
大川→小林:小林祐貴くんです。高校は慶應義塾高校出身で、夏までは怪我をしていたのですが、ランのスキルがとても高く、復帰後に出場機会を増やしています。
小林→大川:ありがとうございます。えっと、、、(笑)大川竜輝さんです。さっき気づいたんですけど、自分と大川さんは慶應義塾高校に推薦入試を経て入ったという共通点があって、同じSOです。ラグビーの部分で言うと、僕にはないフィジカルを持っていて、パスやキックのスキルも精度が高く、チームのオーガナイズに関する声かけがとても上手いので尊敬してます。性格面だと、最初は僕がビビっていたのですが、優しく話しかけてくださる完璧な先輩です。
大川:なんか今すごく気持ちの良い時間だったな(笑)。

——今季を振り返って
大川:個人としては、去年の春は試合に出れていた中で秋に出場機会が減ってしまった苦い経験があるので、今年こそは主力として試合に出続けることを目標にしています。チームとしては、夏から秋にかけて成長を続けてきた結果、試合ごとに様々な戦術を使い分けられることがチームの強みになっていると思っています。このまま成長を続けていけば良いところまで食い込めるのではないかという感覚があります。
小林:僕は春はずっと怪我で欠場していて、グラウンドの外から見ていて大学ラグビーのレベルの高さに驚いていました。ただ、夏に復帰してからは先輩に色々教えてもらいながら成長できていると実感していて、対抗戦も3試合中2試合に出れているので、個人としては良い状態で来れているのではと思っています。この後も出場を続けていれば更に上達出来ると思うので、個人としてはもっと試合に出場したいと思っています。チームとしては、まずディフェンスがとても良くて、オフェンスも竜輝さんや椋平さん(今野椋平/環4・桐蔭学園)を中心にBKから仕掛けてトライを取れるシーンが多いので、チームとしても今年は結構強いんじゃないんですか?
——印象的だった試合、プレーは
大川:立教戦は印象深かったですね。青学には春に負けていて、絶対に勝たなければという話をしていた中で勝利を掴めた、くらいの感覚だったのですが、立教は春試合しておらず、準備期間が短いなど不安要素が多かった中で、圧勝できたことが大きな糧になったと思っています。
小林:僕は筑波戦です。初めて10番をつけてスタメンで出場して、会場が秩父宮だったこともあり試合前はとても緊張したのですが、試合が始まると楽しくプレーできました。ただ、チームとしては試合に敗れてしまいましたし、個人としても良いプレーは少なかったので、10番を着れた嬉しさと、自分の課題の両方を得られた試合でした。
——今シーズンここまで辛かった出来事は
大川:合宿しか思い浮かばないですね。去年と比べても圧倒的にしんどくなっていました。坂とか階段をひたすら上りまくって、FWはその時間ひたすらしんどいスクラム練習に打ち込んでいて、、、なので、こちらもしんどいのですが、FWにしんどい顔をできないというか、、、。
小林:FWがこなしているメニューが過酷すぎて、、、(笑)
大川:そう(笑)「いやそんなやってないでしょ、こっちはスクラムやってたし」みたいな感じだったので、おつかれさまです、みたいな。夜は車をグラウンドまで運んで、車のヘッドランプで照らしながらスクラム練習していたらしいです。FW陣に聞いてみてください(笑)。
小林:僕も合宿は辛かったですね。ちょうど合宿のタイミングで復帰して、S&Cの田原 茂行さんに「体重を3キロ増やせ」と言われて、食トレの中で基準値を達成しないと寝れないみたいな縛りがあったり、走りトレも含めて、合宿はきつかったですね。あ、体重はちゃんと増やしました。
——その辛い合宿をどう乗り越えたか
大川:耐えてたら終わったよな(笑)。モチベーションとしては、山中湖に「ペーパームーン」というケーキ屋さんがあって、そこのケーキを2個食べた時は幸せでしたし、頑張ろうって思えましたね。あ、そう考えるとご飯は美味かったね。焼肉とかユッケとか、、、
小林:馬刺しもめっちゃ美味しかったです。
大川:そういう感じですね。自分はご飯のところでモチベーションを保っていました。
小林:怪我明けで、初めてまともに大学ラグビーの環の中に入った中で、いきなりシニアに入れて 、刺激がとても強く、充実感に満ち溢れていました。全体通してずっときつかったのですが、ラグビーをしている時間は楽しかったです。
——ご自身の強みや、その強みを磨く方法
大川:僕は安定したゲームメイクが長所だと思っています。足が速かったり、ステップがきれたり、パスが遠くまで届くような飛び道具を持っていないのは自覚しているので、その分、チームの方針を誰よりも早く設定して、設定した目標にチームを誘導することが自分の得意分野です。強みを磨く方法は、、、特に意識したことがないですね。試合を重ねて培うものだと思っています。
小林:僕はスピードの部分と、ランで仕掛けるところが強みです。どう磨いてるかというと、、、今は得意分野を磨くというよりは、パスなどのスキルにフォーカスしたり、体重を増やすためにフィジカルを強化しています。

——ご自身にとってSOというポジションとは
大川:花形ですよね!司令塔と呼ばれるポジションですし、1番「ラグビーやってる感」があるポジションだと思っています。
小林:僕もSOにはラグビーに関わる全ての要素が集約されているポジションだと思ってます。パスもキックもコンタクトもやりますし、1番かっこいいポジションだと思ってやっています。
大川:1番ボールに触るのはSHですが、ハーフには判断の要素が少ないので、1番ボールに触りつつ、1番判断するのがSOだと思っています。
小林:チームを引っ張るポジションですよね。
大川:この話題、どこかで止めてもらわないと2人で30分くらい喋れちゃいますけど大丈夫ですか?(笑)
ーーご自身がSOに向いていると思うか
大川:絶対向いてます!特別なスキルを持っていない中で、頭を使うポジションが向いていると思っているので、ここが1番合っていると思います。
小林:自分はSO以外にも、WTBやCTBでのプレー経験もあり、SO向きかと言われるとわからないのですが、プレーしていて楽しいのはSOで、自分が仕掛けながら、パスを放るか放らないかの駆け引きでラインブレイクを狙うのは得意ですし、そういう部分は向いていると思っています。
大川:彼(小林)は俺と違って色んなポジションができるので、ゆくゆくはFBとか、他のポジションに回る可能性もありますが、楽しいのはやっぱりスタンドだよね。
小林:楽しいですね。

ーー憧れの選手
大川:中楠一期さん(令5卒・現BR東京/日本代表)です。中楠さんもおそらくランを長所としているわけではなく、オーガナイズの速度やパス、キックの精度がとても高くて、自分が目指せる理想像は中楠さんなのではないかと思っています。あのレベルに到達するのはとても大変だと思いますが。
小林:僕は山田響選手(令6卒・現S東京ベイ)です。自分と同じようにユーティリティで、様々なポジションをこなしつつ、スピード、ステップ、パスのレベルがとても高い選手なので、常に憧れの存在でした。
大川:僕はあの人のプレースタイルにはなれないからな。2年の時の合宿で山田響塾っていう企画があって、、この話ってしたっけ?
小林:合宿の時に聞きました。「俺には合わないけど響さんはこんなこと言ってたよ」みたいな感じで。
大川:毎晩響さんがBKを10人くらい集めて、シチュエーションごとのプレー選択などいろいろな部分を教えていただきました。

ーー9番の橋本弾介選手(法4・慶應)との連携について
大川:ラグビーのユニットの中でも9番と10番って特別で、この2人でチームを動かしていくので、僕は高校の時から7年間ずっと彼と組んできたので、言わなくても通じるところもあるので、そういう部分ではやりやすいですね。
小林:弾介さんはパスが正確で判断も早く、僕がいちいち声をかけなくても、最適な判断のもとにボールを動かしてくださるので、とてもやりやすいです。
大川:僕とコバ(小林)のどちらが出てるかで少しディフェンスのオーガナイズが変わるので、コバがどう思ってるかはわからないけど、個人的に弾介の1番ありがたいところは、僕がフロントディフェンスを担当しているとき、あいつがすごい勢いで内側からタックルに来てくれることですかね。
小林:練習でもいつも1番勢いのあるタックルをされていますよね。
大川:あいつには「しゃかりき」って言葉が似合うよね。

ーー今季の対抗戦、好調の要因は
大川:夏に積み上げてきたディフェンスがカギだと思っています。対抗戦に入ってからディフェンスで崩されるシーンはほとんどありませんし、ディフェンスに自信があるからこそアタックで色んなチャレンジができていて、ディフェンスが揺るがないからこそ色んな部分を積み上げることが出来ていると思います。
小林:自分自身もディフェンスの部分は合宿で頑張っていましたし、フィットネスの部分もすごく力を入れていて、練習の時に嫌になるくらい走っているので、試合でも走り切れていると思います。
大川:試合がない週は火水木で走ってるんですよ。
小林:あと日曜もですね。
大川:そうだね。フィットネスはすごくきついですし、やってるときは嫌ですけど、試合になると不思議と、、、体重は増えているのに走り切れるんですよね。普段の成果が出ているのではないかと思います。
ーーSO同士の団結は
大川:夏合宿が同じ部屋だったのがすごく大きかったです。僕からしたら、得体の知れない3個下の高校日本代表が入ってきて、でも夏まで怪我していたのであまり関わりがなくて、この先どうなってしまうのだろうと思っていたのですが、合宿中は同部屋、同じポジション、同じカテゴリーということもあって、常に共に行動していて打ち解けることができました。健太郎(和田健太郎/理2・清真学園)とコバの3人と、合宿を通してとても仲良くなりましたね。また今度3人でご飯いこうね(笑)
小林:僕も夏に復帰して、いきなり去年対抗戦に出ていた2人と同じ環境に入っていって、どうなってしまうのかと思っていたのですが、グラウンドの中でもすぐにアドバイスをいあただけますし、グラウンドの外でもギスギスした部分がないのがSO軍団の良いところだと思っているので、3人で高め合えているのがすごく良いなと感じています。
大川:僕は健太郎とコバそれぞれに尊敬する部分があって、自分が出たい気持ちと同じくらい、健太郎とコバが出てくれるなら応援したいとも思っているので、うまく言い表せませんがとにかく可愛い後輩たちです。
小林:3人ともSOとしてのタイプが違うのも良いですよね。
ーーそれぞれの特徴は?
大川:俺は保守的というか、チームを動かすことに特化したSOですね。
小林:僕はランで仕掛けられること、スピードが持ち味で、素早く味方を使いながらアタックを牽引するのが他の2人と違った強みだと思います。健太郎さんは逆にギリギリまで引き付けるのが上手いですね。あと、利き足が左なのも差別化ポイントです。
大川:健太郎はハイセンスな感じなんですよね。
小林:独特で、オーソドックスなタイプじゃないですよね。
大川:そう!なんか外れたところにいるよね。左利きだし。擬音で表すと、僕が「ビッビッ」って感じで、コバが「ギュンギュン」って感じで、健太郎が「ギューン、ギュン」って感じですね。
小林:今のはあんまりよく分からなかったですね(笑)
一同:(笑)
大川:まあ、そんな感じです(笑)

ーー大川選手、大学4年間を振り返って1番印象に残っている試合・プレー
大川:2年春のワセダB戦です。毎年春に行われている定期戦の裏ゲームとして行われている試合に同期たちと出て、キックの差で勝ったのですが、今までワセダに勝ったことがなかったのでとても記憶に残っています。試合の中で最も印象に残っているのは、自陣ゴール前のスクラムディフェンスで、相手の10番が突っ込んできたのを思いっきり倒してペナルティーを取ったプレーですね。
ーー大川選手、慶大蹴球部に入部し、4年間で得られたこと・成長したこと
大川:色んな人と触れ合う中で、自分の芯が強くなったと思っています。自分はとても頑固で、それが長所でもあり短所でもあるのですが、自分の芯を強く持てるようになったことが1番成長した部分だと思います。
ーー大川選手、今の代ならではの変化
大川:朝練が午後練、夜練に変わったことですかね。朝練ほどしんどくはないのですが、1日があっという間に過ぎていきますね。
小林:今週の火曜日に朝練があったのですが、、、エグかったですね。朝起きた時の絶望感は半端なかったのですが、終わってみたら「あれ、この後暇?」みたいな。たまにやるくらいはあってもいいかもしれません。
ーー大川選手にとって同期はどんな存在か
大川:個性豊かな人間ばかりで楽しいですね。あと、オフを共に過ごすメンバーが固定化されていないのが、126代全体の仲の良さを物語っていると思います。同期はラグビーを頑張る源になっています。
ーー大川選手にとって小林選手は
大川:プレースタイルが違うというのもありますが、僕にはできないことをたくさんこなせる選手なので、先程の話とも少し被りますが「こいつには負けたくない」っていう気持ちと「こいつだったら応援できるな」という気持ちが両立しているので、漫画みたいな素晴らしい関係なのではないかと思います。コバの事なら本当に一点の曇りなく応援できます。

ーー小林選手の代はどんな代
小林:仲はやっぱり良いですね。練習後は寮のB235室、宍戸くん(宍戸孝行/総1・國學院久我山)と金谷くん(金谷悠世/法1・慶應)の部屋にみんなで集まって楽しくしゃべっています。
ーー小林選手にとって今の4年生はどんな存在か
小林:ラグビーに対してとてもストイックで、今年にかける思いのようなものが伝わってくる一方、オフグラウンドの切り替えもプロレベルで、話も面白いなと思っています。
ーー小林選手にとって大川選手とは
小林:竜輝さんも先程仰っていましたが、全然タイプが違う中で、竜輝さんも逆に自分にはない状況判断能力やパスなどのスキルを持っているので、卒業するまでにたくさんのことを学びたいですし、健太郎さんも含めて3人で最後まで高め合っていければなと思っています。
大川:良い後輩に恵まれました。
ーー小林選手、入学前の早慶戦に対する印象は
小林:僕は高校から慶應に入ったのですが、慶應進学のきっかけは2018年の大学選手権でワセダと当たった時、古田京さん(平31年卒)の代だったのですが、試合としては最後ワセダに逆転トライを取られて負けてしまったのですが、慶大出身の父と見ていてとても魅力的な試合だったので、憧れの舞台という印象です。
ーー大川選手、これまでの早慶戦を振り返って
大川:今のヘッドコーチの和田拓さん(平23年卒)の代がワセダに勝って以来、15年くらい慶應は勝てていません。ワセダは日本代表を多く輩出している大学ですが、そういう大学を慶應が倒す、というところにロマンがあると思っているので、自分の代で絶対に早慶戦勝利を成し遂げたいと思っています。
ーー早慶戦とはどんな存在
大川:ロマンですね。
小林:出たことがないのであまりよく分かっていませんが、慶應がずっと負けているのは見てきたので、慶應にとって特別な試合で、だからこそ絶対に勝ちたいという思いが強いですね。

ーー早慶戦、慶應のキーマンは
大川:僕は小舘(太進/商4・茗渓学園)です。彼は今年絶好調で、対抗戦で2度MVPを取っていますし、突破力がある選手なので、ワセダに対してもどんどん前に出てもらって、突破口を開いてもらいたいと思っています。
小林:驥世(申驥世/文1・桐蔭学園)にします。1年生らしからぬリーダーシップを発揮していて、、、
大川:昨日すごかったよね。「こいつキャプテンだったっけ?」って思うくらいみんなを統率してた。言葉だけじゃなくて、プレーでも最前線で体を張ってみんなを引っ張れる選手なので、いつも頼りにしています。
小林:体も張れるし、運動量も豊富で、早慶戦で驥世が良いタックルとかジャッカル入って、それを起点に勝てれば盛り上がると思います。
ーーワセダに思い入れのある選手は
大川:植木太一(人科2・関東学院六浦)です。彼は中学の同級生で、お父さんが慶應なので誰もが慶應に来ると思っていたのになぜかワセダに行ってしまったという人物です。今はFBの控えをやっているのですが、矢崎(矢崎由高/スポ3・桐蔭学園)の日本代表活動次第で、太一がスタメンで出てくるのではないかと思っているので、戦いたいなと思っています。
小林:PRの平山風希(スポ1・大分東明)とスクラムハーフの川端隆馬(スポ1・大阪桐蔭)は、Uー17日本代表、高校日本代表と2年連続同じチームでプレーした経験があり、今も仲良くしているので、同じ舞台に立ちたいですね。

ーー早慶戦で注目してほしいプレー
小林:僕はラインブレイクに繋がるようなランと、向こうに服部(服部亮太/スポ2・佐賀工)がいるのであまり大きな声では言えませんが、一応キックも武器なので、プレースキック、エリア取るキックなど、そのあたりに注目していただきたいです。
大川:僕のプレーって外から見ていると全然目立たないんです。なので「慶應がすごくきれいなトライを取ったな」とか「慶應今うまく行ってんな」とか、そういう感想が出てきたら、僕の顔を思い浮かべていただきたいなと思っています。
ーー最後に、早慶戦の意気込み
大川:長年勝てていない中で、慶應がワセダを倒すというところを慶應関係者の皆様が望んでいることだと思いますし、自分たちも絶対に成し遂げたいと思っているので、全力で勝利に貢献したいと思います。
小林:初めての早慶戦ですが、今年のチームで勝ちたいという思いも強いですし、1回だけでなく、卒業までになるべく多くの早慶戦で勝ちたいと思っているので、全力で頑張ります!

貴重なお話をありがとうございました!
(取材:島森沙奈美、月井遥香 記事:髙木謙)


