25年度に引退を迎えた4年生を特集する特別企画「光るとき」。第14回となる今回は、蹴球部の小舘太進(商4・茗溪学園)。今野椋平(環4・桐蔭学園)主将、山本大悟(環4・常翔学園)副将を筆頭に層の厚いCTBというポジションで、3年生までほとんど公式戦にメンバー入りする機会が無かった小舘。それでも、ラストイヤーの25年度はシーズンを通して13番を背負うと、対抗戦では2度POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)に選出されるなど、慶大勝利の突破口を切り開いた。そんな小舘の活躍の裏には、誰にも負けない反骨精神と、転機となった出会いがあった。
憧れた対抗戦、遠かったAチーム
地元の高校でラグビー部の顧問を務めていた父の影響で、近所のラグビースクールに通い始めた。高校1年生から地元・青森を離れ、茨城県の名門・茗渓学園でラグビーに没頭していた小舘は、かつて父がプレーした対抗戦というカテゴリの中で、特に文武両道の印象が強く、ラグビーエリートに立ち向かう反骨精神を持つ慶大蹴球部に惹かれ、入部を決意した。
しかし、入部直後から厳しい現実に直面した。怪我からのリハビリから始まった春は試合に出場することが出来ず、1年目のちに126代の主将を務める今野、副将を務める山本ら同期は黒黄デビューを飾る中、Cチーム、Dチームの練習試合に出場することで経験を積んだ。年を重ねるごとに上級生は減ったが、今度は後輩にも有力選手が増えた。春季交流大会、関東大学Jr.選手権では徐々に出場機会を得るが、秋季対抗戦という舞台に出場する機会は訪れなかった。入部から3年間で対抗戦1試合の出場のみに留まった小舘は、蹴球部で過ごした日々を「長く厳しい4年間」と表現する。

4年目の出会い、開かれた突破口
それでも小舘は自分を信じて努力を続け、どんな状況にも動じない精神力を身に着けた。そんな中ラストシーズンを前に、小舘にレギュラー確保への突破口が開かれる。
きっかけは25年シーズンから慶大蹴球部のヘッドコーチに就任した和田拓(平23法卒)との出会いだったと小舘は言う。「春先から熱心に声をかけていただいたし、ずっと自分のことを信じて使い続けてくださった。拓さんがいなければ、ラストイヤーも試合に出られなかったと思う」。新たな師と出会った小舘は、ラストイヤー春季交流大会初戦の立正大戦からアウトサイドCTBのスタメンの座を掴んだ。「ホワイトボードのAチーム・背番号13の場所に、初めて自分のマグネットが貼られていた時のことは忘れられない」と振り返る小舘は、同大会で攻守両面で力強いプレーを発揮。5月に札幌で行われた早大との招待試合で1トライ2ゴールを記録する活躍を見せるなど、徐々に存在感を強めると、最終的に春季交流大会では全5試合にスタメンを果たした。
役割を徹底、果たした倍返し
夏合宿の期間もスタメンを死守した小舘は、対抗戦の開幕戦・青学大戦で初の公式戦先発出場を果たす。春季交流大会の最終戦で敗れた青学大相手に、小舘の4年分の思いを込めた倍返しが炸裂する。
拮抗した展開が続いた前半35分、タックラーを弾き飛ばす豪快な突破から対抗戦初トライを挙げると、青学大に逆転を許した後半13分にも相手の追跡を振り切りインゴールへダイブ。チームを救う2トライ目を記録した。小舘の2トライで勢いづいた慶大は青学大にリベンジを果たし、25年度の行方を占う対抗戦初戦に勝利。さらに、小舘はこの試合でPOM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)にも選出され、個人としてもチームとしても最高の形でラストイヤーの船出を飾った。大一番で会心のパフォーマンスを見せた小舘は、黒黄の13番の座を更に確固たるものにしていく。

第3節・立教大戦では2トライ2ゴールを記録。この試合では自陣で立教大のパスをインターセプトし、素早く相手の背後にキックを蹴ってトライを演出するなど、強気なプレーでスタンドを沸かせ、今季2度目となるPOMを獲得した。第4節以降も、ディフェンスでは慶大伝統の「魂のタックル」を体現。アタックではチームのトライの足がかりとなるラインブレイクを繰り返し、アウトサイドCTBとしての役割を全うした。
小舘は試合に出続けられた要因を「自分の役割を徹底したこと」だと分析する。「ボールキャリーと外側のディフェンスの部分を1年間ぶれずにやりきった」。自分の武器を信じ、揺るがぬ努力を続けてきた小舘はラストシーズン、憧れ続けてきた対抗戦の舞台で強烈な爪痕を残した。

苦しいときも不屈の闘志を燃やし続けられた裏には、家族の存在があったと小舘は話す。「一貫して自分以上に自分の活躍を信じ続けてくれた。帰省するたびにかけてくれた言葉は心の支えになった」。離れて暮らしていても、家族の絆は常に小舘の支えとなっていた。
「石の上にも三年」。小舘はまさにこのことわざの化身である。どんなに厳しいポジション争いに置かれても、どんなに苦しい時間が続いても、自分を信じて鍛錬を積み、最後の最後に憧れの舞台で躍動した小舘は、蹴球部での4年間で培った反骨精神を糧に、これからも自らの道を切り開いていく。
(取材:神谷直樹、髙木謙 記事:髙木謙)

