【ハンドボール部】「エースの宿命」を背負い、駆け抜けた4年間。1点の重みに捧げた情熱の軌跡。/4年生卒業企画「光るとき」 No.24 川瀬寛人

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25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第24回となる今回は、ハンドボール部の川瀬寛人(経4・慶應)。ハンドボール部の「点取り屋」として、常に相手の脅威であり続けた川瀬。怪我に泣かされた下級生時代を経て、チームの浮沈を背負う絶対的エースへと成長した彼が、引退を迎えた今、その胸中を明かした。

憧れの舞台へ。怪我を乗り越えて掴んだ「大学ハンドボール」の壁。
川瀬のハンドボールとの出会いは小学4年生。ドッジボール好きの少年が友人に誘われ、競技の魅力に取り憑かれた。慶大への進学を決めたのは、小学校時代の先輩の活躍、そして何より早慶戦の圧倒的な迫力に心を奪われたからだ。しかし、大学での競技生活の幕開けは試練の連続だった。1年時の肩の故障、2年時の足首靭帯断裂。「自由にプレーできない」もどかしさと戦いながら、復帰したリーグ戦では大学ハンドボールの洗礼を浴びた。「高校までは個人の1対1で点が取れていましたが、大学では通用しなかった。フィジカルの差はもちろん、戦術の重要性やオフザボールの動き……自分に足りない技術がこれほどあるのかと痛感しました。」と振り返る。
 
因縁の法政大戦。越えられなかった「1部の壁」への悔恨

4年間で最も印象に残っている試合を問うと、苦い記憶が刻まれた「4年秋の法政大戦」の名が挙がった。 前年もわずか2点差で敗れた因縁の相手。1部レベルの実力を持つ強豪であり、相手チームには中学時代の後輩もいた。「絶対に負けたくない」。エースとしてのプライド、そして勝てば1部昇格へ大きく前進できるという重圧。並々ならぬ覚悟で臨んだ一戦だった。しかし、結果は惜敗。「今でもこの結果を変えられないことがもどかしい」と唇を噛んで振り返る。

忘れられない「10得点」と届かなかった「1部昇格」

4年時の早慶明定期戦。明治大を相手に叩き出した10得点は、まさにエースの証明だった。自らの強みを最大限に発揮し、チームを勢いづけた瞬間は、4年間の努力が結実した瞬間でもあった。しかし、悲願の1部昇格にはあと一歩届かなかった。「4年間で最も実力があった代」と自負するからこそ、後半の勝負所で勝ち点を逃した悔しさは今も消えない。 勝負所での1点に泣いた2025年シーズン。「個人の得点王、そして1部昇格。目標を達成できず、チームを勝たせられなかった」。その言葉には、常に最前線で戦い続けた彼の真実の悔しさが滲む。伝統の早慶戦についても、「慶應の名を背負えたことは一生の宝物」と語る一方で、期待に応えられなかった悔しさを「今後忘れることはない」と唇を噛む。そのストイックさこそが、彼をエースたらしめる所以だ。

副将としての苦悩と主将への感謝

川瀬の活躍はコートの上だけではない。2年間副将を務めチームに貢献した。3年時に副将に就任するも、チームは3部降格という憂き目に遭う。「4年生に素直な意見を伝えられなかった」という自責の念。エースとして、副将として、勝利に導けない責任の重さが彼を苦しめた。その分、4年時に同期であり主将の鈴木悠斗(環4・桐光)と共に戦った時間は特別なものだった。 「悠斗がコート内外のマネジメントをすべて引き受けてくれたおかげで、自分は『点を取って勝たせる』という任務に集中できました。点が取れず焦る時も、後ろから鼓舞し続けてくれた悠斗やチームの存在が、最大の支えでした」と語った。

二人三脚で歩んだ鈴木(左)と川瀬(右)

 

「1点の重み」を背負う後輩たちに託す未来
「ここまでアドレナリンが出るものは、今後の人生でもそうそう無い」と四年間の慶應ハンドボール部での活動を振り返る川瀬。彼が後輩たちに最も伝えたかったのは、覚悟だ。「点が止まった時、ここぞという場面で1点をもぎ取れるか。その責任を背負って日々の練習に、一生懸命に泥臭く臨んでほしい。」という川瀬の思いは、慶應ハンド部の未来に繋がる。副将の後任である二人(松沢陽太(政3・國學院久我山)嶋田涼太(環2・桐光))に対してはこう語る。「副将の陽太は視野が広く、冷静。悩んでいる部員がいたら声をかけて支えてあげてほしい主将の信介(中村信介(政3・桐光))や嶋田の考えを上手くまとめ上げてくれるはずだ。」と、調整役としての手腕に期待を寄せる。「嶋田に対しては、誰よりも熱い想いを持っている。チーム全体を見ながら、時には冷静に引っ張っていってほしい。ただ、気負いすぎないかは少し心配ですが(笑)」と、共に戦った仲間だからこその温かい気遣いも見せた。自身の代で果たせなかった「1部昇格」という悲願。そのタスキを託された後輩たちが、さらに強くなった慶應の姿を見せてくれることを、誰よりも確信している。試合経験豊富な選手が多く、経験値も高い人材がそろっている次代。川瀬も「後輩のみんななら、接戦を勝ち切ってくれると信じている。」と熱い思いを語る。泥臭く、誰よりも勝利に飢えていたエース。彼が残した「1点の執着心」は、新チームの大きな武器として引き継がれていく。

未来のハンドボール部への期待を膨らます川瀬

                              (取材・記事:伊藤梨菜) 

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