25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第26回となる今回は、男子ハンドボール部の鈴木悠斗(環4・桐光)。鍛え上げた肉体を武器に、圧倒的なフィジカルの強さを活かした全身を投げ出すセーブで幾度となくチームを救ってきた。2年間にわたり主将として3部時代の過酷な時期も経験した。常にチームを鼓舞し、勝利を渇望し続けた彼の4年間に迫る。
ハンドボールを始めたきっかけは、小中学生時代に打ち込んだ野球だった。培った肩の強さを活かせる新天地として選んだのが、ハンドボールのゴールだ。しかし、慶大を選んだ理由は技術的な背景だけではない。「早慶戦という最高の舞台で、早稲田を倒したい」という強烈な情熱があったからだ。「桐光学園時代の尊敬する先輩を超えたかった。兄が早稲田にいたこともあり、絶対に負けたくなかった」。その執念こそが、彼を4年間突き動かす最大の原動力となった。
下級生時代は、人数の少なさから膨大な雑務に追われる日々。早々に試合に出場し順風満帆にも思われるが、「シュートを止めきれず、先輩を勝たせられなかった」と精神的な苦悩も味わった。転機は3年時。異例の早さで主将に就任したが、当時のチームは3部リーグに沈み、部員が去るなど「後がない」窮地に立たされていた。「自分のメンタリティがチームに反映される」――。主将としての重圧を背負い、人数不足の中で練習の質をどう保つか、自らをどう高めるか。ハンドボールにすべてを捧げる日々を送りながらも、鈴木は「チームを任せてもらえる環境は光栄だった」と前を向いた。

至近距離から放たれる強烈なシュートに全身で立ち向かうハンドボールのGKというポジション。その孤独な戦いを支えたのは、やはり仲間の存在だった。「自分が止めた時も嬉しいですが、4年間共に頑張ってきた川瀬(川瀬寛人(経4・慶應))がシュートを決めて喜んでいる姿や、マネージャーの璃音(大木璃音(経4・青山学院横浜英和))が笑っているのを見るのが、心から幸せでした。」 と振り返る。悔いが残るのは2025年春季リーグの明星大戦での逆転負けと話す。「勝たせてあげられなかった」と不甲斐なさを口にするが、勝利に飢え、一切の妥協を許さないその背中は、後輩たちに「慶應の守護神」としての在り方を示し続けた。

鈴木の支えとなった
同期の川瀬(写真左)と大木(写真右)
目標としていた「早稲田打倒」には、一歩及ばなかった 。しかし、大歓声の中で戦った2025年の早慶戦での鈴木の雄姿は、慶應ハンドの主将として、守護神として、まさに「有終の美」を飾る、鮮烈なものであった。彼の人生にとって唯一無二の宝物となった 。「早慶戦の悔しさは忘れないでほしい」 。そう語る鈴木は、特にこれからの底上げを担う下級生に期待を寄せる。リーグ戦を戦っていく中で、彼らの存在が練習や公式戦でも重要になると考える。試合数も多く疲労が溜まるリーグ戦では、必ずと言っていいほど怪我人が出るため、スタートの選手のコンディションを高く保つためにも、交代する選手のクオリティーは高く求められると鈴木は考えている。「交代する選手のクオリティーが高いとやっぱり戦術に幅も出ますし、試合の流れに良い意味で左右されなくなると思います。また、自分の価値や役割をどういう風に見出すかを考えることができる時期でもあると思います。そう言ったところで、出場機会が少ない選手には心身ともにレベルアップして欲しい。」と語った。さらに、自身の後任を務める次期主将である中村信介(政3・桐光)には、「自分らしく妥協せずに頑張って欲しい。」とエールを送った。全身でゴールを守り、心でチームを守り抜いた鈴木。彼の想いは、次なる世代へと引き継がれる。

(取材・記事:伊藤梨菜)

