8月19日から岐阜メモリアルセンターにて行われている全日本学生選手権が23日、大会四日目を迎えた。厳しさを緩めない暑さと、それに比例する熱戦の数々。少女たちにとって己の威信をかけた負けられない戦いが、いま山場を迎えつつある。
2013/08/23 全日本学生選手権大会@岐阜メモリアルセンター
試合結果 シングルス4回戦 ○西本恵6-1,6-2内田望充(関大) ●坂元君佳2-6,6-2,1-6寺田美邑(立大) ダブルス3回戦 ○池田・西本3-6,7-6(4),6-1寺田・吉田(立大) ○藤岡・安形6-4,7-6(4)入江・金子(専大)
ここまで3試合をストレート勝利で進んできた西本(総2=岡山学芸館高)はこの日も乱れを見せなかった。試合開始後のサービスゲーム、探りあうようなラリーが展開されたが、ここできっちりとキープすると、ネットをすり抜けたような低く重いストロークが相手コートを襲う。ミスから相手に献上した序盤の1ゲームしか失うことなく第2セットへ。やはりここでも余力を残した動きでラリーを支配し、6-2で準々決勝進出を決めた。 ここまで快進撃を続けている坂元(政2=湘南工科大附属高)が対戦したのは、今大会勢いのある立大の寺田だ。正確なストロークでワイドに走らされ、徐々にリードを広げらると、防戦一方となった第1セットは2-6で落としてしまった。
追いかける展開となった第2セット、今度は坂元がその実力を発揮する。鋭いラリーで挑んで相手のペースに飲まれた第1セットとはプレースタイルを変え、3回戦のときと同様、ロブ戦で勝負を挑んだ。その戦略がはまり、6-2で取り返して迎えた最終セット、苦しげな表情から体力が消耗されていることが伺われた。炎天下での連戦が坂元からスタミナを削り取っていったことは想像に難くない。激しいラリーの応酬の中でポイントを奪ってもすぐにミスが出てリードを保つことができない。それでも序盤、体に引きつけたバックハンドから逆クロスに強打を放ち、ブレーク成功。しかしゲームを奪うことができたのはここまでだった。
その後も度々ゲームポイントを握る場面はあったが、その度に相手の強気なプレーにミスが出てしまって決めることができない。1-5と追い詰められたところで身体のダメージも限界を迎えた。メディカルタイムアウトをとり治療を受け、坂元のサービスゲームで再開。ボロボロの体にむち打ちながら、わずかな可能性にかけてサーブを放つも、あっという間に0-40とマッチポイントを握られてしまった。それでも共に諦めない仲間の声援を背に受け、サーブポイントで一本しのぎ、相手のミスでさらに一本。そしてラリーで食らいついてデュースにまで持ち込んだ。少し勢いづいた坂元はそこから二度アドバンテージを握るが、相手の低い弾道の球を持ち上げようとストロークが大きくなり再びデュースに。諦めず前へ攻めるがスマッシュで下がり切れずマッチポイント。そして放ったサーブは無情にも二本ともフォルトとなった。崩れ落ちた後ろ姿が、ここで終わりたくなかった無念さを物語っていた。 坂元は、今大会ベスト16という結果に終わった。ノーシードから激戦区のドローを勝ち抜いての大躍進だ。悔し涙は自信と原動力に変えて、すぐ先に待つリーグ戦では慶大のエンジンとなって躍動する姿が見られるに違いない。
シングルスの後、レストを挟んで行われたダブルス3回戦でも大きなドラマが待ち受けていた。 藤岡(総3=徳島市立高)・安形(環1=城南学園高)の二人は専大の金子・入江と対戦。安形にとっては夏関決勝の再戦だ。まずは藤岡が元気よくポーチボレーに飛び出して慶大ペアがキープに成功。次第に相手を引き離し、5-2と第1セット先取に手をかける。しかしここから2ゲーム粘られ6-4で漸く第1セットをものにした。第2セットでも同じように、試合を決定するゲームを確実に取れない場面が見られた。5-4で迎えた安形のサービスゲーム。サウスポーでサーブを武器とする安形にとって、またとない好機だ。しかしやはりこの最初のチャンスで終わらせることはできなかった。強気な相手に3度のブレークポイントを握られ、粘り負け。もつれるようにシーソーゲームとなり、再び訪れたゲームセットのチャンスは6-5の藤岡サービスゲーム。40-15とマッチポイントを握り、相手を瀬戸際に追い詰めたかに見られた。しかしここからデュースに持ち込まれ、さらにタイブレークへともつれ込む。ここで二人は今度こそ強気のプレーを見せた。一点差の場面で安形がスマッシュを決めるとリードが広がり、藤岡も前衛の隙を撃ち抜くリターンを披露。粘り強い相手をストレート勝利で退けた。
第2シードで今年こそ優勝を狙う西本・池田(環2=富士見丘高)は思わぬ伏兵の襲来をうけることになった。その伏兵とは今大会単複ともに勢いのある立大の吉田・寺田。春関以来の再戦となったが、「春関のときとはかなり違い」(池田)があった。お互いサービスキープし合う立ち上がりとなったが、3-4と相手が頭一つ抜け出す。もちろんそんな小さな差はすぐに返上されるものだと誰もが信じて疑わなかっただろう。しかしなんと慶大ペアはそこから一ゲームも奪うことなく第1セットを落としてしまう。 第2セットに入ってもズレてしまった二人の歯車はまだかみ合わない。2-4とリードを奪われると、単調になるラリーを相手前衛がボレーで叩く。ミスのない相手に食らいついてブレークに成功しても、次のサービスゲームではダブルフォルトなどのミスに始まり、甘くなったサーブを容赦なく叩かれ、2ゲームの差が縮まらない。春関女王たちはついに3-5と追い詰められてしまった。
だが、相手が勝利を確信したであろうこのゲームから、慶大ペアの反撃が始まる。「なんでもいいから入れるという一本で流れが完全に変わった」(池田)。池田と相手後衛の速いラリーを見守っていた西本が、思い切ってそこに飛び込みポーチボレーを叩き込んだのを皮切りに、二人のボレーやストレートへのエースが次々に決まっていく。しかし依然として危機にかわりはない第10ゲーム、攻撃から生まれたミスでマッチポイントを握られてしまう。それを池田のポーチボレーで回避すると、ついに相手がスマッシュをネットにかけ、慶大ペアは5-5と相手に肩を並べた。 そこからは両者一歩も引かないシーソーゲームのままタイブレークに突入。5-4から西本のサービスポイントで攻めたてると、ついに大逆転でこのセットを奪いとった。 日が傾き出したため、ファイナルセットは室内コートに移動して行われた。そしてそこにいたのは、攻めあぐねて途方に暮れていた第1セットのときの二人ではなく、リスクを恐れず大胆に攻める強い第2シードの二人だった。最後は相手を寄せ付けず6-1で圧倒。閉ざされかけた頂点への道筋に再び光が差した。 慶大ペア2組もこれからいよいよ準々決勝に臨む。これまでよりもさらに苛烈な試合となるのは必至だ。しかしここで強敵との激戦を制した自信が追い風となって彼女たちの背中を押すだろう。自信と実力、そこに勢いを加えればまさに鬼に金棒。こわいものなしの慶大女子庭球部にもはや死角はない。
(記事 伊藤明日香)
◆選手コメントシングルス 西本恵(総2=岡山学芸館)
(今日の試合を振り返って)今日の相手は粘り強くプレーしてくる選手だったので、自分も我慢しつつ、自分のプレーをするということをテーマにしていました。(インカレシングルスでは三試合目ですが感触は)まだ修正すべき点や変えていかなければいけない点はあるんですけど、今はそんなにゲームを落とすことなく、しっかり抑えられているかなという感じです。(連戦ですが疲れの影響はありますか)いや、大丈夫です。(優勝を狙う上で警戒している選手は)次が準々決勝で対戦相手のレベルも上がってくるので、一戦一戦相手に向かっていくだけだと思っています。(試合のレベルが上がると試合時間もこれまでより長くなると思われますが、対策は)チェンジコートのときに日傘を使ったり、氷や飲み物の準備をしっかりするとか、本当に基本的なところなんですけど、しっかり忠実にやっていきたいと思います。(ここまででの課題は)まだ単純なミスとかがあるので、しっかり決められるところは決めていくという点です。(準々決勝に向けて意気込みを)本当に優勝を狙って来ているので、明日の試合もしっかり勝って、後三試合勝ち切るということを考えてやっていきたいです。
ダブルス 西本恵 池田玲
(今日の試合を振り返って) 西本 ファーストとセカンドの途中まで流れを掴みきれないままいってしまったんですけど、それが反省点ではありますが、劣勢から立て直して勝てたということは自信にはなりました。 池田 同じですが、ファーストとセカンドの途中まで完全に相手の流れになってしまって、今日の試合では相手のマッチポイントもありましたが、一本なんでもいいから入れるという一本で流れが完全に変わったかなと思うので、気持ちの面でもあったし、反省するところはありますが、乗り越えられたことをプラスにして次に臨みたいと思います。 (春関以来の対戦でしたが、変わっていた点は) 西本 相手も春関のときとはまた違う形でプレーしてきて、進化していて、っていうことは感じました。 池田 同じなんですけど、しっかりした基本的な形なんですけど、ラリーをして前で決めるという形を相手もやってきたので、春関のときとはかなり違いました。 (序盤で劣勢になった要因は) 池田 春関のときとは違うということは分かってはいたんですけど、実際やってみるとまた違うということもあって、そこでちょっともたついたかなと思います。 (準々決勝はどう戦っていきますか) 西本 自分たちの役割りがはっきりしているので、それを相手に関わらず自分たちのやるべきプレーをやるだけです。 池田 同じです。
コメント