手が届きそうで遠かった、悲願の学生日本一がいよいよ近づいてきた。8月19日から岐阜メモリアルセンターで行われている全日本学生選手権大会。全国の学生プレイヤーの憧れの舞台もいよいよ佳境を迎え、慶大からはダブルスで3組が、シングルスで志賀主将(政4=秀明八千代高)が死闘を繰り広げた。この準々決勝でまた慶大勢は数を減らしたが、勝ち残ったものにはいよいよ優勝の2文字が射程圏内に入ってきた。
2013/08/24 全日本学生選手権大会@岐阜メモリアルセンター
シングルス準々決勝
○志賀正人4-6,6-2,7-5大城光(早大)
ダブルス準々決勝
○志賀・近藤6-3,6-4●矢野・髙田(同士討ち)
●井上・谷本2-6,2-6田川・遠藤(早大)
志賀主将のシングルス準々決勝はその名にふさわしい白熱の攻防となった。序盤から両者はストロークで激しくぶつかり合う。早々にブレークに成功し、一歩リードするが、そのまま順調には行かず、クロスラリーから先に勝負を仕掛けてくる相手にブレークを許し、せっかくのリードを失ってしまった。そこからゲームカウント4-5までは互いにサービスゲームを死守して進むも、試合が動いたのは第10ゲーム。セットのかかったサーブゲームで志賀主将のフォアハンドの威力も増すが、一方でミスも減らず、紙一重の差で相手に先制を許してしまった。
続く第2セットでは相手ストロークが火を吹くが、それを丁寧にスライスでしのぎ、左右に走らせてミスを誘う。しかし猛攻をいなし、いよいよ形勢逆転してネットを取ろうというところでのボレーミスなど、およそ志賀主将らしくないミスを出すと、自分でも信じられないといった様子でラケットを取り落とし手を腰にやって天を仰ぐという余裕のない姿まで見られた。だが逆にそれで冷静さを取り戻したのか、志賀は苦しみながらもストロークでポイントを重ね、リードを築いていく。3-0まで引き離すと、あとは相手の反撃を流しながら6-2で最終セットに持ち込んだ。
迎えた第3セット、先に主導権を握ったのは志賀だった。相手の粘り強さをさらに上回るラリーで流れを作ると、多彩な球やコースで相手を翻弄。3-1と幸先良くリードを築いた。しかしそこから相手の猛追を食らう。乗ってきた相手にコースを読まれてくるしい展開になると、それまで成功していた難しいコースも決まらない。追いつかれ、逆にリードを握られてしまった。だがその苦しい場面でサーブからポイントを奪い4-4で並ぶと、互いにキープして迎えた5-5の第10ゲームでリターンが相手の足元に決まり、価千金のブレークに成功。最後は角度の厳しいクロスラリーで真っ向勝負を挑み、深いボールを叩きこんで勝利を掴んだ。
いよいよ悲願の学生日本一が目前に拓けてきた。しかしその前に立ちふさがっているのは早大主将・遠藤との準決勝。志賀主将が4年間ライバルとして意識し続けてきた因縁の相手だ。ぜひここでこれまでの黒星を清算する勝利をあげ、優勝まで突き進んでくれることを期待したい。
ダブルス準々決勝では井上(経3=慶應義塾高)・谷本(環2=名古屋高)が第1シードの田川・遠藤(早大)に挑んだ。まずは谷本のサービスゲームを着実にキープすると、次のリターンゲームでも優勢に持ち込みたいところだったが、相手のサーブに怯んでしまって歯が立たず、あっさりとキープを許した。さらに井上のサービスゲームでも、サービスダッシュした井上の頭上など嫌なコースを狙われ、相手の狙い通りにミスを犯してしまう。一本粘りたい大事な場面でも、「相手が何かをしたというよりも自分たちが基本に忠実にできなかった」(井上)と振り返る通り、普段決めているボールが決まらず、サービスキープに失敗した。谷本のサービスゲームで再び一矢報いるも、それ以上食らいつくことができず2-6で第1セットを落とした。
第2セットでも同じように前に出て仕掛けていくが、やはり相手の余裕が崩せない。それでも第1セットに比べると動きがよくなり、難しいローボレーもミスなくつなぐようになった。だがゲームポイントを握ったところからが遠かった。なんどアドバンテージを握っても強烈な一本で引き戻され、ゲームを取れない。やはり圧倒的な力量の差を、その勝負強さが物語っていた。内容はよくなったものの、第2セットもやはり2-6とされて井上・谷本の準々決勝は幕を閉じた。
早大のトップとの力の差を見せつけられた試合だったが、「全然できていない部分が多いので、これをどんどん修正してとにかくレベルアップするしかない」(谷本)という言葉どおり、進むべき道は明確になったようだ。二人のインカレはこれで終了。「去年よりも確実に戦績としては成長しているが自分の目標に対してはまだまだ遠い」(谷本)と、高みを目指していく姿勢は変わらない。目前に迫っているリーグ戦でこの悔しさを晴らすチャンスは確実にあるだろう。より明確になったビジョンとともに、屈強な慶大ペアが新たな一歩を踏み出す。
また、ベスト4の残りの一枠をかけて矢野(環3=出雲高)・髙田(環2=湘南工科大附属高)ペアと志賀・近藤(環3=湘南工科大附属高)ペアが熱い火花を散らした。試合は序盤から志賀・近藤ペース。矢野・髙田は「お互いに弱点を知り合っていて、それでうまくやられちゃった」(髙田)と出遅れるも、二人でコート狭しと走り回って球をつなぎ、少しづつ追い上げを見せた。前回の対戦で、気持ちの部分で負けてしまった反省から「本当に実力で勝負したい」と意気込んだ矢野は近藤のストロークを返しながら前へでて、志賀めがけてボレーを叩きこむ。直撃を受けて眼鏡の奥を怒らせた志賀は直後のポイントで容赦なく矢野を狙い撃ち。ストロークを浴びせかけて、ポイントを奪い返した。白熱の攻防が続く中でも、やはり抜けだしたのは志賀・近藤ペア。志賀のストロークからの近藤のネットプレーが絶対の安定感をみせて、6-3でこのセットをものにした。
第2セットでより攻勢をかける志賀・近藤に対し、矢野・髙田は二人の背後のスペースを狙ってロブをあげるなど策を巡らすが、その勢いを削ぐまでには至らなかった。またも主将ペアが4-3とリードを握ると、矢野のサーブから髙田がボレーを決めて1ゲームを返すも、リターンゲームを崩せず、6-4で主将ペアのストレート勝利となった。
矢野と髙田にとってのインカレもまた準々決勝におわり、矢野は単複で志賀主将に敗れる結果となったが「やっぱり練習ででてることが試合にそのままでた」(矢野)と肩を落とした。しかし初戦の不戦勝で試合数の少ない中勝ち上がってきたことで「自分たちより下の人には絶対負けないという自信がついた」(髙田)と成果を得てインカレの舞台を去った。ベスト4に残ったのは志賀・近藤組のみとなったが、敗れた仲間たちの思いを背負って、心ひとつに優勝へ突き進んでいってほしい。
(記事 伊藤明日香)
◆選手コメント
井上善文(経3=慶應義塾高)・谷本真人(環2=名古屋高)
(今日の試合を振り返って)
谷本 相手が田川・遠藤、早稲田のダブルス1ということで、意識していたんですけど、こういうスコアで終わるのは本当に悔しい気持ちでいっぱいです。でもやっぱりまだ成長できるというか、全然できていない部分が多いので、これをどんどん修正してとにかくレベルアップするしかないという結論に至ったので、これをマイナスにするのではなく、課題が見つかったと捉えて、リーグまでにそれを潰して、リーグで優勝できるようにダブルスをやっていきたいと思います。
井上 同じで、田川・遠藤という相手に対してこういうスコアで負けてしまったのは悔しさが残る結果でした。相手が何かをしたというよりも自分たちが基本に忠実にできなかったりだとか、結構ストロークでしっかりついてくるところに対して自分たちがボレーで負けてしまったりとか、そこが敗因だと思っているので、谷本が言ったようにリーグに向けて課題が浮き彫りになったので、そこを徹底的に潰して、インカレはこれで終わってしまったんですけど、リーグに向けてやって行きたいと思います。
(インカレ全体を振り返って)
谷本 インカレは成長もできた大会だったなと感じています。シングルスでは、リーグで想定される法政の選手に1,2回戦で勝って、結局中大の選手に負けたんですけど、自分の軸はわかってきたので、リーグで結果を出すために本気で取り組めた試合でした。去年よりも確実に戦績としては成長しているんですけど、自分の目標に対してはまだまだ遠いので、それを達成するようにこれからやっていきたいと思います。
井上 去年と比べると僕も確かに上がっているんですけど、シングルスは2回戦で負けてしまって、ダブルスもシード止まりのところで負けてしまって、全然上を食えてなくて、かつ僕の場合シングルスは早稲田の今井で、シングルスは田川・遠藤で、早稲田に勝って日本一になるためにはここで二敗しているようではダメなので、そういうところで自分が早稲田のシード選手を食っていけるようにならないといけないので、まずはリーグ戦まで少しだけ時間があるのでそれまでに練習して成長して臨みたいと思います。
矢野隆志(環3=出雲高)・髙田航輝(環2=湘南工科大附属高)
(今日の試合を振り返って)
髙田 相手が身内ということもあってお互いに弱点を知り合っていて、それでうまくやられちゃったかなという感じでした。
矢野 春関のときもベスト4賭けで同じところと当たって、その時は本当に技術の勝負というよりはただこちらが引いて終わったっていう反省があって、今日はどうしてもそういうところではなくて、本当に実力で勝負したいというところだったんですけど、身内ということでお互いに知っているところを突かれて、こちらも相手にそういうところを見せないように、そういうところをなくして相手にプレッシャーをかけたいということがあったんですけど、そこを抑えきれずに、ボロが出てしまった試合でした。
(インカレのダブルスここまでを振り返って)
髙田 二回戦が棄権で、他の人よりも試合数をできなかったんですけど、自分たちより下の人には絶対負けないという自信がついたんですけど、自分たちと同格だったり上の人たちに勝つにはまだ何か足りないなと思いました。
矢野 同じですね。やっぱり他校の選手や格下の選手に対して自分たちのプレーができるっていう自信はついてきたんですけど、同格や同士討ちのときにどうしてもふらついてしまうということがあるので、そういうところで勝てないと、ベスト8からが実力だと思うので。そこまではドロー運もあると思うんですけど、そっから勝てる選手がやっぱり実力のある選手だと思っているので、そういう部分がまだ足りないと思いました。
(シングルスも含めてインカレを振り返ると)
髙田 試合をしてみて、成長している部分はあると思うんですけど、ちょっとした勝負勘とか、大事な場面になったときにどういうプレーをするべきかということや、実際にそれをイメージしてやる勇気だったり、結局は練習でそれをできてない部分があるから、そういったいいプレーが本番でできないんだと思うので、そこを練習からもっと徹底的に意識したほうがいいかなと思いました。
矢野 単複どちらもなんですけど、やっぱり最後同士討ちで終わってしまっているというのがあって、春関でも主将の志賀さんと当たっていて、今回のインカレでもここは自分にとって乗り越えなければいけないという意味もあってのドローだと思って、どうしても勝ちたいという気持ちはあったんですけど、やっぱり練習ででてることが試合にそのままでたかなという結果だったので、素直に悔しいとしか言えないです。
(リーグ戦に向けて意気込みを)
髙田 昨年リーグで関東三位に終わってしまってすごく悔しい思いをしたので、それを繰り返さないためにも、まだ少し期間があるので、歯を食いしばって調子を上げて、格上の選手にも同等に戦えるように、自信をつけていきたいと思います。
矢野 個人戦は終わってしまって、あとはもうリーグ戦、王座と大学テニスの大一番の大会が待っているので、ここはもう節目として、本当に日数ももうないので、本当にチームのために自分を磨いて、向上心をつねにもって切り替えていきたいと思います。
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