第178回早慶庭球対抗試合
2014年6月14日(土)、15日(日)@慶大蝮谷テニスコート
全試合結果
慶大 | スコア | 早大 | |
D1 | ○高田航輝・上杉海斗 | 6-3、7-6(4)、5-7、2-6、6-4 | ●古田陸人・今井慎太郎 |
D2 | ●井上善文・近藤大基 | 3-6、4-6、4-6 | ○岡村一成・梶修登 |
D3 | ●権大亮・谷本真人 | (2)6-7、7-5、2-6、3-6 | ○大城光・小堀良太 |
S1 | ●谷本真人 | (6)6-7、6-4、1-6、4-6 | ○岡村一成 |
S2 | ○近藤大基 | 6-2、6-4、7-5 | ●今井慎太郎 |
S3 | ●渡邉将司 | 1-6、0-6、1-6 | ○大城光 |
S4 | ○高田航輝 | (6)6-7、7-6(4)、6-3、6-2 | ●古田陸人 |
S5 | ●権大亮 | 4-6、6-3、6-4、5-7、3-6 | ○松崎勇太郎 |
S6 | ○上杉海斗 | 6-4、6-4、3-6、6-4 | ●栗林聡真 |
ダブルス:1-2
シングルス:3-3
計:4-5
初日に行われたダブルス。3面展開で3試合同時にスタートした。
思いがけない展開となったのがD2の井上善(経4・慶應義塾高)・近藤(環4・湘南工科大学付属高)組。春関で下位シードから頂点まで登りつめた岡村・梶組の勢いに終始押される展開に。ミスの多かった慶大ペアも徐々に落ち着きを取り戻すが、早大ペアのパワフルなダブルスに対応しきれず、まさかのストレート負けとなった。
一方で粘りを見せたのが権(総4・秀明栄光高)・谷本(環3・名古屋高)組。春関準優勝の早大ペアに対し、得意のラリー戦でポイントを重ねていく。第1セットをタイブレークまで挽回すると、その勢いのまま第2セットを奪い返す。結果こそ1-3だったものの、実績のある早大ペアに自分たちのダブルスを貫き通せた意味は大きい。
そしてエース対決のD1。慶大は春関で好調だった上杉(環1・清風高)を高田(環3・湘南工科大学付属高)と組ませ、昨季のインカレインドアチャンピオンの古田・今井組にぶつけた。この大胆な策が吉と出る。高田の安定感のあるストロークと、上杉の技術の高いネットプレーがかみ合い、緊張気味な早大ペアからポイントを奪っていく。1-0で迎えた第2セットもタイブレークまでもつれたが、ここでも上杉の果敢な攻めでセットを奪い、一気に王手をかける。その後早大ペアも意地をみせ2セットを奪い返して最終セットに持ち込まれる。緊迫の最終セット、ここでたたみかけたのは高田・上杉組だった。「最後は昨年できなかった自分から攻めるということを徹底できました」(高田)「失うものはないですし思い切ってできた」(上杉)と語るように、最後まで攻めの姿勢を貫く。最後はチャンスボールを上杉が叩き込み、慶大に待望の1勝をもたらした。
1ポイント差で挑んだ翌日のシングルス。例年、下位のシングルスを簡単に落として離される場面が多かったが、今年の慶大は違った。ダブルスで好調だった高田、権、上杉が登場すると、3人がそれぞれの特徴を発揮して奮闘する。
高田はダブルスでも対決した古田のパワーに押される展開に。しかし、「重要な局面がきたらミスしても良いから攻める」(高田)と、高いコートカバー能力を生かした攻撃を展開していく。中盤以降は疲労の色が見え始めた古田のミスにつけこんだ高田が圧倒し、今まで勝ったことのなかった古田から1勝をもぎとる。
さらに上杉も昨日の勢いそのままに、ネットプレーと強力なフォアで相手を圧倒する。2セットを先取したあとはやや体力が落ちたようにも見られたが、終盤でギアを入れなおして完勝。高田、上杉の活躍で3-2とリードを奪う。
その頃、権は松崎との壮絶な死闘を繰り広げていた。ストロークが得意な両者の白熱したラリー戦は、取っては取られてを繰り返す。2-1で迎えた第4セットも5-3とし、勝利まであと1ゲームにまで迫った。しかし、松崎が絶体絶命の場面で驚異的な粘りをみせてこのセットを奪い返すと、最終セットは勢いの差が出てしまった。
実に5時間以上にも及んだ激闘を落とし、さらに渡邉(総3・名古屋経済大学市邨高)が主将・大城に完敗を喫したことで、勝負ありかと思われた。しかし、ここで踏ん張れるのが今年の慶大だった。
S2に登場した近藤は高校時代の後輩・今井との一戦。先輩としても、前日のダブルスのリベンジを果たすためにも絶対に負けられない一戦に挑んだ近藤は、前日とはうってかわって動きにキレが戻っていた。ミスが増えて焦りを隠せない今井に対し、近藤は無理をすることなく、時に大胆な攻めをみせながら試合を優位に進めていく。最後まで盤石だった近藤がストレートで勝利。土壇場で4-4に追いつき、勝負の行方はS1対決にゆだねられた。
泣いても笑ってもこれが最後の試合。運命の一戦に挑んだのは今季の新進大会チャンピオン・谷本だった。会場全体の視線が1つのコートに注がれ、両校全部員の応援が結集した一戦は、序盤は4年生の意地をみせる岡村が主導権を握る。谷本もダブルスで培ってきたネットプレーを多用してなんとか踏みとどまる。第2セットの終盤はこれ以上ない完璧なプレーを見せてこのセットを奪い、慶大の勝利を予感させた。それでも、王者の真の底力をここからまじまじと見せつけられる。第3セット以降は岡村の鋭いフォアの前に谷本がミスを連発。最終盤でブレークバックするも時すでに遅く、1-3で敗戦。何度か王座を脅かすことに成功したが、王座奪還までは至らなかった。
ここ数年は早大の背中を追い続けてきた早大。少し前までは、その距離は遥かに遠いものだったかもしれない。そのような中でも、「自分たちの力を信じて引き出せれば結果は絶対に出る」(坂井利彰監督)とチーム全体が意識し始めたことで、徐々にその距離を狭めてきた。何度離されても、必死に食らいついてきた。そうして導かれた4-5という結果。しかし、「(早大に)勝てる実力がある」(上杉)、「必ず日本一になれる」(坂井監督)。ここからが、日本一への真のスタートとなる。
(記事・写真 飯田駿斗、太田悠貴)
坂井利彰監督
―まずは男子の試合を振り返って
権の4thセットの5-3を取れていれば勝てたわけで、本当にあと一歩のところまできていると感じました。学生たちは負けて何かが足りないという言い方をしていましたけど、僕は今回出た課題をつぶしていけば必ず日本一になれると確信した早慶戦でした。
―以前から早大との差は縮まっているとおっしゃられていたが、今回でより実感されたのでは
それって僕が言っていた通りだったでしょう。新進の前に、皆が思っているほど差は広くないから言い訳できないという話をしたと思うんですけど、まさにそれが予想通りだったということで、うちの学生たちがしっかり自分たちの強みを理解してそれを引き出せれば僕は勝てると思います。
―また、近いうちに結果が出るともおっしゃられていたが、これほど早く結果が出ると予想していたか
していましたよ。あとは自分たちの力を信じて引き出せれば結果は絶対に出ると。今回は結果こそ出せなかったけど、絶対に今後結果は出ると確信しています。
―試合では特に上杉選手の活躍が光ったが
彼はもちろん良い選手ですし、韓成民や桐生も試合に出られるぐらいの実力があるので、今回出ていない選手にも期待しています。
―また今まで早慶戦で結果が残せなかった近藤選手も勝利をあげたが
元々持っているものはすごく良かったのでそれを引き出せれば絶対勝てると思っていました。それを引き出せた結果がこういう結果につながっていると思うし、まだまだ力は出ると思います。
―女子の試合については
ダブルスを2-0にできたところや江代のシングルスは勝てるチャンスがあったと思っていてそこが課題ですけど、次にやるときはそこを勝つようにする自信があります。
―そのダブルスやシングルスに1年生が絡んでいることについて
しっかり経験を積んでいけば実力を発揮する方法も分かってくると思うし、時間の問題かなと思っています。
―西本選手は春関のリベンジを果たしたが
速いコートを得意としているので、インドアコートでしっかりリベンジしてくれたんですけど、今度外のコートで試合をするとなったときにまだ改善すべき点もあるので、その改善すべき点に真摯に取り組んでほしいと思います。
―男女ともに1ポイント差ということで、その1ポイントを埋めるための答えはもう見つかっているか
そうですね。やはり今までやってきたことをしっかり貫けるかということで、今回貫けた部分と引き出せなかった部分があるので、そこをもう一度整理して今までやってきたことを継続して迷わず出せる確率を上げることが必要だと思います。
―また、今までの早慶戦と違い今回は勝負所でポイントが取り切れる場面が目立ったが
それはありますよね。近藤も3rdセットなんか特に、リードしてからのプレーが淡白になってしまうんですよね。ずるずるといってしまうところがあるので、そこはメンタルの部分だと思うので経験を積んで対策していきたいです。
―今回こういう結果が出たことで、今後選手に期待することは
8月から試合が始まりますので、7月末までにしっかり課題に取り組んでいくことが大事になると思います。そこまでにやれることをしっかりやっていきたいと思います。
高田航輝(環3・湘南工科大学付属高)
―この2日間を振り返って
昨年もこの早慶戦には出させてもらって、ダブルスはファイナルセットで負けてしまっていて、今年はダブルスの出だしというのを集中していました。今年の相手は昨年負けたペアだったので絶対勝ちたいと思っていて、今年も同じような局面で似たようなスコアでしたが、最後は昨年できなかった自分から攻めるということを徹底できました。それができたからこそ相手も引いてくれましたし、技術的に昨年と変わったというわけではないですけど、気持ちの部分でダブルスの勝ちにつながったと思います。シングルスの相手も今まで勝ったことのない相手で、昨年の個人戦でもファイナルセットまではいっても最後は相手にもっていかれてしまっていて、それも結局自分から攻められずに守りに入ってしまっていたので、今日はチャレンジャーということもあって重要な局面がきたらミスしても良いから攻めるという気持ちを強く持っていてそれを貫こうと思っていました。
―ダブルスでは1年生の上杉選手とのペアだったがどのような声かけをしたか
僕も1年生のときにダブルスに出させてもらって、そのときすごい緊張して自分のプレーができなくて、上杉には1年生だしとにかくのびのびやれと言いました。特にミスしても気にすることないし、思い切ってやるだけだと。あとは自分が責任をとるって伝えました。あいつは本当に勝負強かったです。
―早大に1ポイント差まで迫ったことについては
昨年の王座決勝は0-9で誰もセットを取ることができなくて、もちろん勝ちたかったですけどこの段階で4-5まで来るということは昨年の王座で負けた頃には考えられなかったことなので、今までやってきたことが良い方向に進んでいると思っていて、でも負けは負けでどれだけ競っても結局まだ僕らに何か足りなかったということなので、その足らなかった部分をチーム全体で意識してやるのと、個人の課題はそれぞれ違うので1人1人が意識高くやっていかないとそこの壁を乗り越えられないと思うので、また厳しくなるとは思いますが練習を皆で頑張っていきたいという気持ちが強いです。
―来年はその壁を乗り越える自信は
はい、あります。
―インカレなど今後に向けて
自分も今日の試合や今までの試合で早稲田の選手と当たってきた中で勝率が上がってきていて、自分が良いプレーをすれば早稲田の選手でも勝てるということが最近は自分の自信になっているので、今回勝ったのは自信にして、自分は失うものはないですし大学の中で結果を出している選手ではないので、重要な局面がきたときにどれだけ気持ち強く持ってラケットが振れるかというところを、テニスを楽しみながらやっていれば結果もついてくると思うので、それだけですね。
上杉海斗(環1・清風高)
―この2日間を振り返って
初めての早慶戦で早慶戦の雰囲気が分からなくて、分からないからこそ思い切ってできたかなと。自分は団体戦が好きなので、楽しかったです。
―ご自身の試合を振り返って
ダブルスは1で出させてもらって、相手が昨年のインカレ室内優勝ペアということで、失うものはないですし思い切ってできたかなという感じです。シングルスは途中体力が心配でしたが、最後は応援の力で踏ん張ることができたかなという感じです。
―早大に1ポイント差まで迫ったことについては
1敗差ですけど、勝てた試合もありましたしあと何ゲームかで勝てた試合もあったので、昨年の王座とかで0-9をつけられたところからここまできたのは早稲田に少し近づいたのかなというのは感じます。近づいたけど、近づくだけではなくて勝てる実力があると確信しました。
―でもこの結果には上杉選手の活躍も大きかったのでは
いや…(笑)。でも、自分が少しチームを盛り上げられたのではないかと思います。
―1年目で単複2勝あげられたことについては
個人的には嬉しいですけど、団体戦なので。慶應はチームで戦ってきたというのもあるので、負けを受け入れなくてはいけないのかなと思います。
―今後に向けて
この悔しさを晴らすためにリーグや王座では優勝したいですし、個人でも上を目指して頑張っていきたいと思います。
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