「半年預けてくれたら90kgにしてお返ししますよ」・・・11月8日、2戦2勝で有終の美を飾った嶋田翔太主将(政4)は試合後の食堂でそう言い残し引退した。ケイスポ相撲担当記者石井博己(政3)はその真相を確かめるべく、江島健生(政1)と共に約3週間後の土曜日の稽古に参加した。サークルではI.I.R慶應義塾大学国際関係会に続く道場での稽古参加。ケイスポ記者の運命やいかに!?果たして体重は増えるのか!?その一部始終を2回に分けてお送りする。
11月28日
相撲稽古@三田綱町道場
晴天の土曜日の9時過ぎ、「日本サンゴ礁学会」が行われる三田キャンパスを背に、慶應スポーツ新聞会相撲担当石井博己(政3)は江島健生(政1)、カメラマン下川薫(政1)を引き連れて綱町にある相撲部の道場へ向かった。
「失礼します!」と引き戸を開けると、中から相撲部員の「よろしくお願いします!」との元気な声が。「今日は実際にまわしを巻かれるとのことで・・・無理しなくてもいいですよ」玄関脇の台所で作業をしていた樋口貴仁(環3)の気遣いに江島は「やはり臨場感が大事ですから」と応える。さっそく藪本健太(政3)の案内で2階へ。脱ぐものを脱ぎ、タオルを巻いて1階に下り、土俵に上がると早速まわしを巻く。
まわしを巻くのは共同作業。まず端をあごに挟み、股を通す。腰にひと巻したら端を下ろし、気になるところを調節する。その後は時計回りに自らが回り、背中で締めるだけ残したら後ろで締めてもらう。江島は小学生の時に相撲経験があり、「久しぶりの感触ですね」とのことだった。
巻き終わったらいざ稽古開始。準備運動から始める。上半身をほぐし、指先、肩周りをほぐしたら、壁を頼ってアキレス腱やももを伸ばす。入念な準備でけがを未然に防ぐ。
準備運動が終わると、ようやく相撲らしい動きが始まる。まずは四股踏み。左足に全体重をかけ、バランスを取りつつ右足をあげ、伸ばす。これを左右交互に繰り返すこと100回。後半になると石井の目の前で指導してくれた平野皓大(商2)からも汗がにじむ。初心者である記者たちも途中休憩を挟みつつ80回程度踏むと、額から汗が。石井の眼鏡は熱気で曇った。
休憩を挟み、次は股割り。目いっぱい開脚し、上体を前に倒さなければならないのだが、日ごろやっていない我々にはすぐ限界が来る。後ろから押してもらいながら何とか指を5秒間接地。辛い!
そんな中、江島の後方で180度開脚し、べったり上体をつける巨体が。練習を共にする慶應義塾高校2年の北原英嗣だ。北原は物心ついたころから体が柔らかかったといい、ニコニコしながら股割りしている。うらやましい限りだ。
股割りの最後は前に両こぶしを付くのみで起き上がらなければならないが、当然記者たちには難しい。松田剛監督(平成11年卒)に引っ張り上げてもらいながら何とか起き上がる。股割り後の内ももの引っ張られた感覚・・・ちなみに藪本、平野の出身道場はとてもスパルタで、股割りで思いっきり背中を押し、何人もの内ももの筋肉がちぎられ内出血を起こしていたそう。「そうなったらがに股でしか歩けないんですよ」と当時を知る薮本は語る。
次はてっぽう。てっぽうとは、まず体重を両手のみで支えて前に預け、片手で壁ないし柱を押すというもの。どちらかの手が必ず付いてなければならず、腕、肩周りの筋肉をよく使う。押しながら手を追うように足もついていくと尚よい。これも数十回行った。これまでは下半身を使った動きだったが、てっぽうは主に腕、肩周りの運動。普段人間は体重を脚という大きな筋肉で支えているが、腕という細い肢で支えるのは本当に大変だった。
そしてすり足。四股を始める体勢から背筋を伸ばし、前進。初めはゆっくり、段々速く。相手がいることを想定して行うので、脇を締めて進む。土俵際での一押しも大事。左右に動いたことも想定し、引き付ける動きもする。土俵際で相手の脇を開け、押し出すことを意識。続く2人一組での練習に備え、しっかり行った・・・
前半はここまで。後半はついにぶつかり稽古、実戦形式での練習、そして大変な・・・食い稽古に!お楽しみに。
(記事:石井 博己、写真:下川 薫)