2016年度慶大蹴球部のシーズンが幕を開けた。今年で6度目を迎えるオール早慶明三大学ラグビー。2011年度より東日本大震災の復興支援として始まったチャリティーマッチで、今年度は熊本・大分地震の復興支援も兼ねて行われた。現役部員とOBで組まれた混成チームが、各大学総当たり、一試合40分で戦った。オール慶大は、全早大戦では逆転負けを喫するものの、全明大戦では計4トライを獲得。OBを交えたチームではあったが、春季大会に向けここまでの練習の成果と課題が表れた試合となった。
【全早大戦】
2016/4/24(日)13:00K.O.@秩父宮ラグビー場
全慶大 |
| 全早大 |
1 | T | 1 |
1 | G | 0 |
0 | PG | 1 |
0 | DG | 0 |
7 | 合計 | 8 |
得点者(全慶大のみ)
T=小原
G=和田
ポジション | 先発メンバー | 交代選手 |
1.PR | 長尾昴(環4・茗渓学園) | →渡邊悠貴(経2・慶應) |
2.HO | 川村慎(H22卒・現NEC) | →16佐藤耀(H28卒・現NEC) |
3PR | 榎本雄一(商4・慶應志木) |
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4.LO | 辻雄康(文2・慶應) |
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5.LO | 永末千加良(法3・慶應) |
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6.FL | 廣川翔也(環4・東福岡) |
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7.FL | 明本大樹(H24卒・現横河武蔵野) | →20 中村京介(文3・明和) |
8.No.8 | 竹本隼太郎(H18卒・現サントリー) |
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9.SH | 中鉢敦(経4・慶應) |
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10.SO | 和田拓(H23卒・現キャノン) |
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11.WTB | 小原錫満(総2・東海大仰星) |
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12.CTB | 染原健人(理4・修猷館) |
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13.CTB | 木口俊亮(経4・仙台第三) |
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14.WTB | 宮本瑛介(経2・慶應) |
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15.FB | 丹治辰碩(政2・慶應) | →22 古田京(医2・慶應) |
先制点を得たのは慶大。開始早々1分、FB丹治がシャープな動きで相手をかわすと、ボールを受けたWTB小原が左サイドにトライ。SO和田のコンバージョンも決まり、7点を獲得した。その後は相手陣で、一進一退の攻防が続く。Bks陣を中心に大きくゲインするシーンが目立つも、あと一歩ディフェンスラインを割ることができない。一方で、早大の反撃に対し慶大も前に出るタックルで全員が体を張る。プレッシャーをかける慶大に対し早大もミスを連発。チャンスをものにすることができない。互いに得点を得られないまま試合は終盤にさしかかった。試合が動いたのは32分。早大がモールを形成するとトライを決め、5点を得た。そして慶大のリードで試合終了かと思われたロスタイム45分。粘りを見せた早大が一気に自陣へ攻め込むと、ゴールポスト前でPGのチャンスを獲得。そのまま早大に3点が追加され、ここでノーサイド。一瞬の隙をついたオール早大の逆転勝ちとなった。
【全明大戦】
4月24日(日)14時50分K.O@秩父宮ラグビー場
全慶大 |
| 全明大 |
5 | T | 1 |
4 | G | 0 |
0 | PG | 0 |
0 | DG | 0 |
33 | 合計 | 5 |
得点者(全慶大のみ)
T=古田、小原、増田、中鉢、丹治
G=古田3、堀越2
出場メンバー | ||
ポジション | 先発メンバー | 交代選手 |
1.PR | 細田隼都(商3・慶應) |
|
2.HO | 松岡大介(環4・小倉) | →16金子大介(H22卒・現キャノン) |
3.PR | 角田匠輝(法4・慶應) | →19吉田雄大(総3・秋田) |
4.LO | 辻雄康(文2・慶應) |
|
5.LO | 永末千加良(法3・慶應) |
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6.FL | 廣川翔也(環4・東福岡) | →20山中侃(商2・慶應) |
7.FL | 竹田和正(法4・慶應志木) |
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8.No8 | 竹本 隼太郎(H18卒・現サントリー) |
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9.SH | 江嵜真悟(商2・小倉) | →21中鉢敦(経4・慶應) |
10.SO | 古田京(医2・慶應) | →22丹治辰碩(政2・慶應) |
11.WTB | 小原錫満(総2・東海大仰星) |
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12.CTB | 今成哲(経3・城北) | →23堀越貴晴(総3・茗渓学園) |
13.CTB | 増田慶介(H23卒・現東芝) |
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14.WTB | 関東申峻(H26卒・現釜石SW) |
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15.FB | 楠本遼(経4・慶應) |
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明大のキックオフで試合は始まった。10分、明大が先制トライを決めるものの、その後一貫して流れは慶大に傾く。まず16分、慶大にチャンスが訪れる。WTB関東のビックゲインにより相手陣に駆け込むと、パスを繋げ、最後はSO古田がゴールポスト中心にトライ。自身でゴールキックも決める。19分には、FL廣川を起点とし、ボールを繋げていく。そして、SH中鉢からFB楠本にボールが渡ると、最後は再びSH中鉢が受けトライ。慶大のコミュニケーションの高さが生んだトライだった。さらに30分には、22mライン付近での明大ボールラインアウトからターンオーバーすると、慶大がゴールライン内にボールを蹴り込む。そこにCTB増田が圧倒的スピードで反応。追加点を得、社会人の強さをみせつけた。その後、スクラムでも圧倒するなど、果敢にアタックし続ける慶大。そして38分、WTB関東からのパスを受け、スピードのあるランで敵を突き放し、WTB小原がトライを決めた。ロスタイム41分には、CTB堀越からSO丹治へつなげ、ダメ押しの追加点獲得。33-5と慶大の圧勝で試合を終えた。
「若い選手が活躍した」(金沢ヘッドコーチ)。OBに交じり、WTB小原やFB丹治をはじめ経験値の少ない選手も試合に絡み、奮闘した。三大学で最もOBが少ないチームではあったが、トップリーグの選手を相手に臆することなく攻め続けた姿勢からは、現役部員一人ひとりの意識の高さがうかがえた。「個人個人の考える能力が高いという印象を受けました」(CTB増田)。チャリティーマッチ開催にあたっての精神である「one for all, all for one」を具現化する姿は、観る人に勇気を与えたことだろう。新チーム発足から力をそそぐディフェンスでは、タックルで手ごたえを感じる選手が多かった。全早大戦、全明大戦ともに、相手のトライ数を各1に抑え、好ディフェンスを発揮した。一方で課題は、「ブレイクダウンでのプレッシャー」(金沢ヘッドコーチ)。接点での攻防で競り勝つことが今後のカギを握るだろう。まもなく迎える春季大会開幕に向け、慶大がどのような準備をしてくるのか。期待して勝利の瞬間を待とう。
【ケイスポ的MOM】頭脳明晰な若き司令塔・SO古田京
彼も若い戦力として活躍した選手の一人。昨年度一年生ながらにして大学選手権出場を果たした期待の2年生だ。医学部でありながら体育会蹴球部の前線で活躍する姿に注目しているファンは多いだろう。「(精度は)まだまだ」としながらも「キックは自分の武器」と語る。今試合でもコンバージョンキックを任せられ、正確なキックを発揮した。それに加え迷いのないランと巧みなパスワークをこなす姿には頼もしさを感じる。いよいよ始まる春季大会、彼の活躍に期待がかかる。
(記事・室塚あす香)
【コメント】
金沢篤ヘッドコーチ
(今日の試合を振り返って)昨年出ていなかった若い選手が多かったので、どのくらいできるのかというのを見ていました。また、春から取り組んできたディフェンスとブレイクダウンで、どのくらい通用できるのかを見ました。ディフェンスでは、前に出て低いタックルができていてよかったと思います。一方で、ブレイクダウンでは、特に早大戦でプレッシャーを受けていたので、その点はこれからトレーニングしていかないといけないと感じます。総じていえば、比較的若い選手が頑張ってくれていたのがよかったです。(全早慶明での試合が定着しています)慶大はもともと内部の出身者が多いので、あまり外からの風に当たることはないのですが、トップリーグ行っているOBは、慶大ではない色々な大学の文化に触れてきている人たちなので、試合を通して慶大にはない意識というのを学生に吹き込んでくれました。
CTB増田慶介
(チャリティーマッチとして行われたこの試合。どのような心境で臨んだか)直接現地に行って、支援をすることは難しいと思っていました。ですが、こうやって試合に出ることでお客さんも集まりますし、このように間接的な形で支援出来るならと思って、ちょっとでもお客さんに楽しんで頂けるようなプレーを心掛けました。(出場された明大戦を振り返って)最初はディフェンスの時間が多かったですが、途中FWが安定してくれて、BKまでボールが回るようになりました。良い展開で点が取れました。(久しぶりにタイガージャージを身に着けた感想は)今ではオール早慶明でしかジャージを着ることができないので、着ると身も引き締まりますし、恥ずかしいプレーは出来ないという気持ちになります。(後輩の現役選手とプレーしてみて印象は)今回、3チームの中で現役選手の人数が一番多かったと思うのですが、物怖じせずに自分達で引っ張っていこうという姿勢が良かったです。OBとしても少しサポートする程度でしたし、個人個人の考える能力が高いという印象を受けました。(現役選手に期待することは)目標としては大学日本一だと思います。僕等はこういう時でしか一緒にプレー出来ないですけど、練習などに行ける時はサポートをしたいと思っています。今は帝京大が強いですし、他のライバル校も強いですが、日本一の瞬間にグラウンドに立つんだ、という強い気持ちを持って、切磋琢磨してやっていってほしいです。(増田選手自身の目標、意気込みをお願いします)今は日本代表だったり、サンウルブズだったりと目標となる舞台は多く用意されています。まず、自分のチームで個人としても成長したいですし、その結果上のステージに行ければという目標があります。直近の目標としては自分のチームでしっかりレギュラーを取ることです。
SO古田京
(今日の試合を振り返って)全早大戦では最後昨年の早慶戦と同じ形で逆転されてしまい、勝ち切らないといけない場面だったので、そこは反省点として挙げられます。全明大戦は全体的に良かったです。(早大戦から明大戦にかけて修正したところはありますか)特にはなかったのですが、とにかく自分たちが今やっていることをやろうと思い、やり切りました。(OBの方との試合でした)竹本さんや和田さんを始め、みなさんに様々なことを教えてもらって、良い経験になりました。(今季のご自身のキックの精度はいかがですか)まだまだですね。今日もゴールを一つ外してしまっているのでまだまだです。自分の武器なので、もっと磨いていきたいと思います。
WTB小原錫満
(今日の試合を振り返って)試合と試合の間が40分空いてたので、身体の疲れる場面が多かったですが、しっかり声を出して、しっかりトライが取れるところを取れたので頑張れたと思います。(オール明大戦でのトライは前にいた相手選手を突き放す圧巻のトライでした)ボールが蹴られてカウンターを狙う場面だったので、空いている外側にいた味方にパスした後、しっかりフォローすればチャンスがくると思って走りました。良い形だったと思います。(初のトップチームでの出場で2トライを獲得。この結果は満足できるものでは)満足といえば満足だったんですけど、ボールタッチ数がとても少なく、自分からボールを貰いに行くプレーがまだまだできていなかったので、そこは反省すべき点だったと思います。(今日はチーム全体としてタックルが決まっていました。チーム内でのタックルへの意識は高まっていますか)はい。3月から新チームが始動して、練習ではずっとディフェンスを意識しているので、今日はできている局面も多かったように思います。でも、途中で抜かれたり、間を相手にブレイクされる場面もあったのでそこは課題です。(今日はBK陣同士の連携がしっかり取れているように見えました)空いたスペースにしっかり外から声をかけていくってことができたので良かったです。(春季リーグに向けて意気込みを)まだ(自分がした)トライはボールを貰って真っ直ぐ走るだけのありがとうトライだけなので、これからもっと個人技を使って大量にトライを取っていきたいと思います。
SH中鉢敦
(早大戦を振り返って)僕がプレッシャーを受けることが多くて、そこでなかなかテンポを出せなかったことが課題です。(明大戦を振り返って) 一人一人が前に出れたので、自分の強みも生きて楽しい試合でした。(OBと共にプレーした感想は)(OBは)強いので、刺激される部分がありました。見習える部分を盗んで、今後に生かしたいと思いま す。(現時点でのチームの状態は)今フィットネスやウエイトなどの基礎を中心にやっているのですが、来週から春季大会が始まる ので、チームとしての練習をこれからやっていきます。(今年の目標は)レギュラーになってその上で日本一になる舞台になることです。(春季大会に向けて意気込みを)全勝でいきたいです。
FB丹治辰碩
(今日の試合振り返って)久しぶりの試合でしたが、自分の持ち味を出せました。(試合のプランは)(FBでは)ランが自分の持ち味で、広いスペースを使ってランで勝負したいと思っていました。しかしそれだけでは、相手が強くなった時に通用しないので、自分だけでなく味方も行かせるようなユーティリティプレーヤーを目指しました。(SOでは)周りの人をうまく活かせるようにプレーする事を心掛けていました。(オール明大戦のトライを振り返って)堀越さんから良いオフロードパスをもらい、前が空いていたので、あとは走るだけでした。気持ち良かったです。(春季大会に向けて意気込みを)今年からAチームに入り、まだ不安もありますが、そういった不安を練習で潰して、思い切ったプレーをしていきたいです。