【アメフト】早慶戦直前特集④兵頭宣俊

#1兵頭宣俊

#1兵頭宣俊

2日後に迫った第64回早慶アメリカンフットボール対抗戦。5日連続で掲載中のインタビュー企画第4弾は、DB (ディフェンスバック)の中でも最後の砦となるS(セーフティ)を務める兵頭宣俊(商4)だ。一番後ろからチームを統括する熱き副将に早慶戦への意気込みを語っていただいた。

 

――このオフシーズンはどのような練習をされてきましたか

兵頭 いやー、本当にベーシックな練習を繰り返してきましたね。去年は結構アメリカンフットボールの試合で実際に使うような動きばかり練習していたんですけど、今年は野球だったら素振りみたいなベースの、本当に基礎的な部分を強化しようと取り組んでいました。アメリカンフットボールは戦略的なスポーツで、組織的にどう動くかを考える頭を使うスポーツなんですけど、正直言ってアメフトは1対1で勝てば、ディフェンスで言えば守れるし、オフェンスでいえばタッチダウンを取れるスポーツなんですよね。だから本当にベーシックなところで勝負して、コンタクトスポーツだからウェイトや食事でしっかりと体を作って、とにかく自分の力で勝てるようなチームを作れば、日本一に近付けるんじゃないかなということで、ベーシックな練習を特にディフェンダーは意識して練習してきました。

 

――そういった基礎的な練習は昨シーズンを振り返って、リーグ戦4位という結果を受けてのものだったのですか

兵頭 そうですね。例えば、慶應の選手でよく言われるのは、頭が良くて、戦術を考えるのが得意だし、自分がどのように動けばいいのかを頭の中でシミュレーションするのがうまいってよく言われるんですけど、でも実際にプレーするのは自分の体だし、気持ちがすごく大事になってくるんですよ。そこでやっぱりコンタクトスポーツは自分の体が武器だから、鍛えて鍛えて相手にぶつからないと勝てないし、頭を使っても自分の想像する動きが実際に体現できていないと勝てない。そういったファンダメンタルの重要性を今年改めて見直して、日本一になるためには1人1人が個々で素晴らしいテクニックを身につけて、勝つためにベースの練習をしっかりと積んでいこうという話になりました。

 

――日本一というチームの目標を達成するために今季必要なことは

兵頭 たぶん昨季よりは選手もみんな気持ちは入っていると思うんですけど、アメフトというスポーツで最後に勝つためには気持ちの部分が本当に大事なんですよね。やっぱり相手にぶつかっていくのって怖いじゃないですか。でもそこで、死んでもいいやぐらいの気持ちで相手にぶつかっていけるかどうかが、重要だと思っています。例えばディフェンスのタックルひとつとっても、気持ちを込めて、相手を奥で倒すんだっていう想いがもっと出てくれば、強いチームになれるんじゃないかなと思います。

 

――今年は副将としてもチームを引っ張っていくわけですが、どういった役割を副将として果たしていこうと考えていますか

兵頭 僕は副将としてなりたい確固たる姿を決めていて、どういうリーダーがいいか自分の中で答えが出ているんですよね。僕、高校時代は野球部でそこでも副将をしていたんですよ。正直、僕はアメフトにおける実力を見ると、幹部の中では一番低いと思います。そんな別に圧倒的な実力を持っているわけではないし、主将というポジションでもない。そういった中で、じゃあ自分が副将として何をしなきゃいけないかって考えたときに、僕はリーダーっていうのは、組織の中で一番信頼されているポジションじゃないといけないと思うんですよね。僕が信頼されていれば、僕が言ったことを部員たちが聞いてくれて、自分が言ったことに関してみんなが信頼して努力してくれれば、チームがひとつの方向に向いていくっていうのが、自分の中の答えなんですよ。でも、スポーツにおいて実力っていうのはすごく大事なことで、例えば自分が「こういうのをやろうよ」って提案しても、自分がそれをミスすることもあるじゃないですか。そういうことを考えると、日々の練習に向き合う姿勢だったり、部員1人1人とコミュニケーションをとることだったり、とにかくお互いをリスペクトしあって、自分を本当に尊敬、信頼してもらうってことができるようになるリーダーになれたら最高だと思いますね。だから僕は「兵頭さんはそんなにアメフト上手くないけど、こんだけ努力して、こんだけ熱くて、下手なりにもこんだけ頑張っているんだから、俺らも一肌脱いでやろうか」って思われるリーダーになることが理想ですね。そういうリーダーになりたいと思っています。

 

――練習中も選手の声が飛び交っていましたが、試合でもサイドラインにいる選手たちの声は聞こえているのですか

兵頭 そうですね。結構意識しているので、聞こえてきますね。例えば、僕が去年試合に出ていてサイドラインにいる後輩から「兵頭さん、相手チームがこういう体制だから、このプレーくるかもしれないよ」って声かけられて、まさにそのプレーがきたりして、本当にそういうところは助けられる部分であるし、例えばディフェンスのときは、相手オフェンスがボールを投げて、僕が後ろから追っているときは、本当にボールが来るかどうかわからないんですよね。でもそこでサイドラインの選手が「ボール来ているよ」って言ってくれれば、「あ、投げたんだ」と思って、より激しくぶつかっていけることもあって、そういうところはサイドラインの選手ができる大きな仕事だと思っています。だから僕は、アメフトっていうのは究極のチームスポーツだと思っています。やっぱり野球もラグビーもベンチに入る選手は限られているんですけど、アメフトはサイドラインも含めて全員で戦えるスポーツなので、そういった意味では僕は素晴らしいスポーツだなと思っていますね。

 

最後の砦がタッチダウンを許さない(提供=アメフト部)

最後の砦がタッチダウンを許さない(提供=アメフト部)

――ディフェンスとしての自分の強みはなんだと思いますか

兵頭 僕はやっぱり気持ちを前面に出したプレーですかね。僕は未経験者で大学からアメフトを始めたんですけど、やっぱりアメフトを上手くなるためには、勉強もしっかりしないといけないなと思っていたので、アメフトというスポーツに対する理解度という意味では、他の人には負けない部分だと思いますね。あと、僕のやっているポジションはセーフティというディフェンスの一番後ろにいるポジションで、まさに名前通り、保険みたいなものなんですよ。でも僕の後ろをオフェンスに抜かれたら、もうタッチダウンにつながってしまうので、セーフティっていうポジションは、みんなを統括して、一番後ろからチームを鼓舞するっていう役割があるので、僕にはそういったことができる強みがあると思いますね。みんなを統率して引っ張っていくような部分が自分の強みかなと思います。

 

――兵頭選手が考えるディフェンスの魅力は

兵頭 やっぱりタックルですよね。タックルできるのはディフェンスしかいないですし。ラグビーとかはメットをしないので、思いっきりタックルするのが厳しい時もあると思うんですけど、アメフトは本当に思いっきりコンタクトできる唯一のスポーツだと思っているので、それがディフェンスの魅力だと思っていますね。あとはディフェンスもタッチダウンが取れるんですよ。相手のオフェンスが投げたパスを自分がキャッチして、インターセプトしたボールをそのまま持って走れば、タッチダウンもできるんですよね。そういった面から考えても、ディフェンスは素晴らしいポジションだなと思いますね。

 

――今年の個人的な目標として、「誰が見ても必要とされる選手になる」ということが書かれていましたが

兵頭 ディフェンスのプレーをしっかりやるということはもちろんですけど、僕はやっぱりリーダーとして人間的にみんなに慕われるような存在になれれば、僕はこのユニコーンズでリーダーをしている責務を果たせているんじゃないかなと思いますね。

 

――デイヴィッドヘッドコーチが就任して4年目ですが、ディフェンスに対して求められていることは何だと思いますか

兵頭 もう一言で、気持ちですよね。先ほどからも言っているように、ディフェンスはタックルしてヒットしないといけない、最後はハートでいかないといけないですよね。辛い状況もあるんですよ。オフェンスの攻撃がうまくいって、例えば僕がタックルしようとしても、ブロッカーが3人ぐらい立ちはだかっている状況がある。でもやっぱり止めないといけないじゃないですか。そしたらもう最後は気持ちですよね。デイヴィッドヘッドコーチは、もともと選手時代はディフェンスだったので、ディフェンスに対する気持ちも熱いですし、やっぱり最後は気持ちだといつも言われているので、本当に意識してやっていますね。

 

――今年からDBとして新たに取り組まれていることはありますか

兵頭 新しく取り組むというよりも、デイヴィッドヘッドコーチが就任して4年目で、僕たちの入部と同じ年に就任されて、自分は1年生の時からデイヴィッドヘッドコーチの考えてくださったメニューとかトレーニングをしてきたので、今年はその集大成として体現できる代だと思っています。それなので、これまで積み重ねてきたことを、もっともっとこだわって、デイヴィッドヘッドコーチが思い描く完璧な理想の形を作り上げていくのが、僕らの責任かなと思います。

 

甲子園ボウルへ向け、良い勢いをつける

「泥臭く」タックルする姿に注目だ

「泥臭く」タックルする姿に注目だ

――4月29日にはいよいよ早慶戦がありますが、早大のオフェンスに対してどんな印象がありますか

兵頭 早大のオフェンスは、今年はランプレー中心なんじゃないかなと思います。毎年ランプレーを中心としているんですけど、早大のQB(クォーターバック)は能力の高い選手が多いので、もちろんパスも投げると思うんですけど、最初はやっぱりランでゲームをコントロールしてくると思います。でも実は、早大ってロングパスが多いんですよ。だから一発も結構取りに来るので、ディフェンスがまずしっかりとランを止めて、パスが多い試合状況でもリードしてパスを防ぐことができれば、勝てるんじゃないかなと思います。

 

――早慶戦は新入生も多く来ると思いますが、一押しの観戦ポイントを教えてください

兵頭 そうですね。やっぱりアメフトは激しいスポーツなので、コンタクトも多いと思うんですけど、その中で選手が思い切って相手にぶつかりに行くシーンや、オフェンスで主将の李卓君が日本代表レベルの選手なので、彼のランプレー、ボールを持って走る姿も見どころかなと思いますね。ディフェンスの見どころとしては、やっぱりタックルやインターセプトなどのプレーを見ていただければなと思います。

 

――最後に早慶戦に向けて意気込みを教えてください

兵頭 昨年は、早大が関東1位になって甲子園ボウルに行ったということで、今年も気合入って立ち向かってくると思うんですけど、今年は僕らが絶対に甲子園ボウルに行って勝利するということを目標にしていますし、努力すれば叶うと思っています。それなので、まずは関東王者を圧倒して勝って、良い勢いがつけられるように頑張りますので、皆さん応援よろしくお願いします。

 

 

(取材 長田ゆり)

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