慶大は前回の法大戦では戦力の拮抗する相手に苦汁を飲まされる結果となったが、同じく3回戦で日体大に敗れた日大と、7位の座をかけてトーナメント最後の大事な試合に臨んだ。第1ピリオド、慶大はパックを奪えず日大の厳しい攻撃に合うが、しっかりと守り切り怪我からこの試合で復帰した史習成リック(総2)が見事先制。第2ピリオドで一旦は追いつかれたものの第3ピリオドで3点を連続で決め、そのまま逃げ切った慶大が日大に4-3で勝利し、7位で今大会を締めくくる結果となった。昨年の関東大学リーグ戦では7位と、慶大の8位よりも1つ上の順位だった日大に見事4-3でリベンジを果たした。
秩父宮杯第64回関東大学アイスホッケー選手権大会 7位決定戦
2016年4月29日(金)10:00F.O. @DyDoドリンコアイスアリーナ
慶應義塾大学4-3日本大学
Period | 1P | 2P | 3P | Score |
慶大 | 1(16) | 0(10) | 3(14) | 4(40) |
日大 | 0(20) | 1(18) | 2(10) | 3(48) |
※()内はシュート数
試合開始直後は大久保健介(経3)、滝智弥(政2)ら慶大の強力なFW陣が得意の速攻で相手ゾーン内に攻め込む。慶大ペースで試合が進むかと思われたが、徐々に日大にパックを支配される時間が長くなり第1ピリオドは日大のペースで進む。少ないチャンスを大事にして相手ゴールに向かう慶大であったが、味方と息がうまく合わない。そんな中、田中陸(政1)が相手DF2人を持ち前のハンドリングでかわしチャンスを作り、相手の反則を誘って14分にパワープレー(数的有利)を得る。ここでも日大の厳しい守備で点を取れずに終わったが17分には慶大の反則もあり、第1ピリオドは慶大のピンチで終わるかと思われた。しかしキルプレー(数的不利)中の19分、パックを相手ゾーン内で取った田中がゴール前の史にパスを出し日大GKの肩口に突き刺さるシュートを決め、先制点をもぎとって第1ピリオドを終えた。
1点リードで迎えた第2ピリオド、次第に試合はパックがリンクを行ったり来たりする展開となり、お互い良い形でシュートをあまり打てないまま時間が経つ。慶大は持ち味の走るホッケーでハードワークを続けるが、7分の慶大の反則によるキルプレーで失点を許し、試合を振り出しに戻されてしまう。しかし慶大は気持ちを切り替えて、試合は再び両チームがパックを取り合う展開となる。1年生ながら先発のGK河合智也(環1)の危ないところにリバウンドを出さない落ち着いたプレー、阪本航大(環3)らの体を張ったプレーでその後は相手からゴールを守る慶大。一方攻撃では、長谷川真之介(政1)などがスピードを活かしてゴール前までパックを持ち込むなど何度もチャンスを作ったが、このピリオドは日大GKのファインセーブに得点を阻まれ、そのまま1-1で第2ピリオドを終えた。
どちらが先に点を取るかが大きな意味を持つ第3ピリオド、史の試合の流れを変えるスピード感あるプレー、滝のテクニックと速さを活かしたプレーを中心に慶大は積極的な攻めを展開する。4分に日大が反則をし、重要な場面でパワープレーのチャンスが到来する。このパワープレーが始まって約40秒が経った時パックをキープしていた田中は、スロット(サークルとサークルの間のスペースの事)の十文字開紀(商1)にマークがついていない事を見逃さなかった。絶妙なタイミングで十文字にパスをつなぎ、ゴール前の日大DFがこれを防ごうと寄ってきたところを十文字も落ち着いてゴール前の在家秀虎(環2)にパス。相手ディフェンスを完全に崩し、在家が勝ち越しゴールを挙げる。このゴールで完全に相手の気持ちをへし折った慶大は45分に滝、46分に富田康太(政2)が連続で追加点を奪い、2分の間に日大に3点差をつける。その後の試合は荒れ始め、激しいチェックによる音がリンク内に響くことが多くなる。その上得点後、慶大はミスなどから12分、16分と立て続けに失点を許し1点差まで追い詰められる。しかしそれからの守りはこれまでの試合の疲れを感じさせないもので、瀧澤慎之督(経1)らDF陣は果敢に日大の攻撃からゴールを守る。残り1分21秒で日大はGKをベンチに上げ、一か八かの6人攻撃に乗り出す。慶大もキャプテン小池玲央(環4)を中心としたディフェンスとGK河合の安定したプレーでチーム一丸となって守り切り、60分間の激闘を4-3の僅差で制した。
忘れてはならないのが1年生のGK河合の存在だ。この試合ではセーブ率94%をマークし、1年生ながら大学トップクラスの実力を持つ。また、主力の一人である史が肩の怪我から復帰し久しぶりの試合で値千金の先制ゴールを挙げた事や、史も含めて2年生4人が得点、1年生の田中が2アシストを達成するなど、今後の早慶戦に向けて収穫の多い試合だった。今大会はいわゆる戦前の予想通りの結果に終わったが、慶大はジャイアントキリングを目標の1つにしている。5月7日の早慶アイスホッケー定期戦は日本一の観客動員数を誇る試合で「早慶戦独特の雰囲気」(滝)の中で、慶大の40年ぶりのジャイアントキリングを期待したい。
(記事 鈴木 啓仁)
以下コメント
主将 小池玲央(環4)
(今日の試合を振り返って)いつも立ち上がりを意識していて、今日はフェイスオフをしっかりとって放り込んでフォアチェックから詰められたので、入りは良かったのです。ゲームプランというものがうちのチームには3つあって、ディフェンスゾーンで1つ、ニュートラルゾーンで1つ、Aゾーン(相手側のブルーラインの内側のゾーン)で1つ、流れの中であるのですけれども、それの徹底が出来なかったです。日本代表のコーチが練ってくれたゲームプランなので、それをしっかり遂行することができればしっかり勝てるようになってくれています。しかしそこを意識できなくて、1点入ったのはよかったですけれど、あまりいい流れで第1ピリオドを終えることができなかったので、試合の入りはまだまだ課題が残ると思っています。(第3ピリオドは3得点とオフェンス面が良かったが)やっぱり1部Aに勝ち切るということは秋につながるので、みんなその自覚はあったと思います。FWはシンプルに奥に(パックを)放り込んで、ゴールに向かってネットプレーができたので、そこは評価していいと思います。そして富田の初ゴール場面やエースの滝がしっかり決めた場面が見られました。そういう得点はチームの流れを作るきっかけとなるので、それを含めて良かったと思います。(ディフェンスはどうだったか)立ち上がりはパックをブレイクアウト(自陣からパスを繋いでブルーラインより前にパックを進める事)とかパックマネジメントの部分では悪くなかったと思うのです。しかしDFが下がりすぎていたのと、シュート数を見てもわかる通り、ゴール前の混戦を勝ち切れずにシュートを多く打たれました。そこは失点の原因となってしまうので、今後もそこを修正していかなければならないなと思います。(春の選手権の4試合を終えて)反省点はやはり試合の入りですね。それは普段の練習からなのですけれども、一つ一つのプレーや、後はアップや控室の雰囲気など、練習から気を引き締めていってオンとオフの切り替えを大事にしてこういう試合を迎えないとどこかでぼろが出るので、そういう気持ちの部分でまだまだ課題があるかなと思います。今日の試合で4-1になって3点リードしたにも関わらず2点取られてしまったじゃないですか。その場面でみんなここは勝ち切らなければいけないよという雰囲気づくりを全員でできたので、そういうチームの雰囲気を作るという意味では、試合時はスタッフの力を借りずとも、学生主体でそういう雰囲気を作って勝ち切ったということは通して評価できることであると思っています。(今日の勝ちをどう来週の早慶戦に繋げていくか)勝ったということは良い流れなのですが、そこで満足することなく、修正点もたくさんあるので、来週ある3回の練習で早稲田対策と自分たちのホッケーをしっかり体現できるように練習していきたいです。(早慶戦の意気込みを)歴史的勝利を挙げたいので、皆さん会場に駆けつけていただいて、応援の方よろしくお願い致します。
史習成リック(総2)
(出場後数秒での先制ゴールについて)もちろん狙っていました。久しぶりの試合だったので、そこまで上手くいくとは思わなかったですが、なんとか入りました。(肩の怪我の調子は)今日は「試し」として出させてもらったのですが、もう言い訳はできないので、早慶戦に向かうことで、怪我はあまり考えないことにしました。(復帰戦の手応えは)自分としては「普通」だったのですが、チームとして勝利したことが一番大事だと思います。次の試合に向けてすごく良い壁を乗り越えたので、最後の大会を勝利で終えられることができたのは、とても大事なものになりました。(次の早慶戦に向けて意気込みを)言い訳なしで勝ちます!
在家秀虎(環2)
(勝ち越しゴールについて)ここで決めることによってチームに勢いをもっていきたいなという気持ちもありました。僕のところまで来たのは後輩(十文字)のパスが上手かったおかげだと思います。(自身の今日の守備について)今日は全然(良くありませんでした)。1対1で抜かれかけた場面もありました。氷に乗る期間がちょっと減るので秋のリーグ戦と夏のトーナメントに向けてもう一回体を作っていきたいと思います。(今大会中の守備陣について)去年山中さんがコーチになって、DFをやっていた経験者として教えてもらったことは大きかったです。コーチに教えられたという経験をしていた人も3・4年生に多かったです。山中コーチが就任して2シーズン目になり自信もついてきましたし、去年に比べて抜けた人はいないけど新しい人が入りました。その部分で去年よりはすごい守備がよくなっているのかなと思います。(大会を終えて7位という結果について)正直僕たちの目標は5位だったので、悔しい部分はありましたけど、僕達はまだ5月7日に早慶戦があって、何としても最後の試合は勝って、いい雰囲気で終わりたいのでそういう点では今日勝てたのは良い事だと思います。(早慶戦について意気込みを)昨年は惜しくも1点差まで追い詰めたのですが勝てなかったですが、今年こそは歴史を塗り替えたいので、慶應の応援是非よろしくお願い致します。
滝智弥(政2)
(専修戦以来の得点について)ずっとチャンスが来ている中、法政戦も中央戦も僕の仕事である点を取ることが出来ていなかったので、今回は得点することが出来てほっとしています。(2ピリを1-1で折り返して、どのような気持ちで3ピリに臨んだか)やっているホッケーは悪くなかったので絶対点は取れると思っていたし、全員でしっかり体張ってまずは守りからという事を徹底して、先取点をとって勝ち越したいという気持ちでした。(この試合での2年生の活躍について)僕らの代は去年から試合に出ている人が多くて、人数も多いのでチームを引っ張っていく代という自覚はありました。でもその二年生が今まで試合で活躍できていなかったので今回はその二年生が点を取って勝つことができて良かったです。それと、4年生が上手くチームをまとめてくれて自分たちはついていっているだけなので、もっと手助け出来るように全員で頑張っていきたいです。(今大会7位という結果について)7位は目標にしていた順位ではなくて、もっと上を狙っていたのですが、春は怪我人も多くてヘッドコーチもいないという厳しい状況の中では最善の結果を出せたと思います。本番としてまだ早慶戦という舞台があるのでそこで勝てるようにもう1回しっかり準備していきたいと思います。(早慶戦への意気込みは)何十年と勝てていないのでそろそろ勝ちたいです。早慶戦独特の雰囲気で去年の春は緊張してしまったのですが1回やってもう慣れたので、今年の春は全員一丸となってしっかり守って、今年の早稲田は強いけれど絶対勝ちたいです。
富田康太(政2)
(初ゴールが勝利を決める4点目でしたが、感触は)本当に良いパスが僕のところに来て、あとは当てて入れるだけでした。リードしている状況での4点目だったので、まさか決勝点になるとは思っていなかったです。去年は怪我が多くてなかなか決めるところで決められなかったので、素直に嬉しかったです。(決めた後にチームメイトが駆け寄ってくれましたが)毎回試合前にチームメイトから「いつ決めるんだよ」と声をかけられることが多かったので、決めることができて本当にホッとしました。何よりみんなも喜んでくれていたのが嬉しかったです。(今日の得点は全て2年生でしたが)人数も多くて、お互いに高め合っていける良い関係にあると思います。同期が活躍しているのは僕自身も嬉しいですし、これからも2年生がチームを盛り上げていけるように、頑張っていきたいと思います。(次戦は宿敵早稲田との定期戦ですが意気込みを)去年の早慶戦(第79回早慶アイスホッケー定期戦)で腕を怪我して退場してしまっているので、今年は無事に出場をして点を狙っていきたいです。春のトーナメントでは皆が責任感を持ってプレーをするということを培って得られた結果だと思います。それぞれが自分のプレーをして責任を全うし、40年間勝っていない相手ですが勝ちにいきたいと思います。
次戦予定
5月7日(土) 16:30F.O. vs早稲田大学(第62回早慶アイスホッケー定期戦)@DyDoドリンコアイスアリーナ