早慶戦特集第2弾はGKを務める熊谷晶(くまがいひかる)選手(環4=慶應義塾)。
高校時代から年代別代表にも選ばれ、実力・経験ともに豊富な彼が、今季躍進を遂げているチームのディフェンスを支える。
「困ったら、熊谷選手の声を聞けば間違いない。」チームメイトからそう断言されるほどディフェンスの要として活躍している彼に早慶戦前の想いを聞いた。
–––ご自身のポジションと役割を教えてください
ポジションはゴールキーパー(GK)をやっていて、役割はどの競技のGKも基本的には同じだと思いますが、相手のシュートをブロックして点を決められないようにしたり、他のチームメイトに指示を出して、的確に守備のシステムや動きを変えるっていうのを僕がやったりしています。
–––いつから水球を始めたのか
小学校4年生から水球を始めたので、チームの中では一番水球歴は長いですね。
–––始めたきっかけは
自分は小学生ぐらいの時にすごく太っていて、そしたら当時たまたま家の前にスイミングクラブがあって、親に「あなた、あそこのスイミングクラブでダイエットしてきなさい」って言われて行ったら、水球のコーチがそこで指導をしていて、「君、身長高いね。ボールゲーム好き?」と誘ってくれて、全く水球のことを知らなかったんですけど、水球を始めることになりました。
–––水球を始めてみて、すぐに面白いなと思いましたか
最初見た時は、面白そうなスポーツだなと思ったんですけど、どこも勧誘する時って基本的に楽しい部分しか見せないじゃないですか(笑)でも水球って試合みたいにボールを使って練習する割合は多くても半分ぐらいで、ほとんどは競泳選手みたいに泳ぎの練習ばかりなんですよ。それなので最初はなんでこんなに辛いスポーツやったんだろうとは思いましたけど、できるようになってからは本当に楽しいなと思うようになりました。
–––ゴールキーパー(GK)として自分の強みはどんなところだと思いますか
僕の強みっていうのは脚力、水球でいうと巻き足(水中で浮くためにする立って泳ぐ動作)の力が他の人より強いんじゃないかなと思います。日本代表の人と話す機会も結構あるんですけど、その人からも「君は足が強いから」と言ってもられるぐらい、巻き足は鍛えて強くしてきた自負はあるので、そこは自分の武器かなと思いますね。
–––慶大水球部はどのような雰囲気ですか
選手たちがそれぞれ考えて、知恵を絞りだして練習をしているっていうのはすごく感じますね。そうじゃないと本当に強くはなれないと思うので。だれかが教えてくれるっていう環境ではないので。だから小沢鷹士(経4)はすごい水球のビデオを見て研究しているんですけど、そういう研究熱心な選手が多いんじゃないかなと思いますね。
–––熊谷選手から見て、小沢主将はどんな人ですか
多分チームで一番水球のビデオを見ているのが彼だと思うんですよ。そういう点で彼が一番研究熱心ですし、水球に対して貪欲で、どうやったら強くなれるかを常に考えているような人間だと思いますね。それなので彼への信頼はみんなすごく厚いですね。
–––熊谷選手は今年4年生として、チームでどんな役割を果たしたいですか
そうですねやはり水球歴が長いっていうのもそうですし、今まで代表の合宿にも参加してきたっていう経験もあって、その経験というところではこのチームの誰よりもあるというふうに自負しているので、その経験をしっかり後輩たちにも伝えて、練習や試合で生かしていくというのが僕の役割かなと思います。
–––今年のチームの強みは
守備のシステムが確立できて、それを徹底してできているところかなと思いますね。昨年からこのシステムを始めたんですけど、昨年の主将が慶大のチームのストロングポイントの1つに僕の名前を挙げてくれたんですね。そこから僕の存在を最大限生かせるような守備システムを考えようということになって、そのシステムをこの2年間徹底的にやってきて、今その成果が出ているんじゃないかなと思いますね。
—昨シーズンは関東学生リーグでは1部残留、インカレでは5位入賞という20年ぶりの快挙も果たしたが
守備の面で大きく崩れず、大量失点しなかったというところが一つの成果として現れたんじゃないかなと思いますね。
—チームとして昨年からの課題は
決定機にシュートを決められないっていうのがずっと課題としてあるかなと思いますね。関東学生リーグで早稲田と2回戦って、負けてしまった2回目の試合では決定機のチャンス作る前の段階で、パスミスが起きてしまったり、決定機に繋がっても相手のGKにぶつけにいくようなシュートになってしまったりしていたので、そういうところをしっかりしていけば、あの試合ももっと違う展開になっていたと思います。
—今シーズンを振り返って。関東学生リーグ6位、これは2部構成になってからは初の快挙。また第3戦は早稲田に歴史的勝利もあげたが
僕からすれば、早稲田に勝った試合も、早稲田のミスが多かった試合だったので、勝つべくして勝った試合だと思います。それなので関東学生リーグ6位という結果は驚く結果でもなければ、悲観するほどの結果でもないのかなと思いますね。
—早慶戦の勝因は
相手にパーソナルファール(重い反則)を多く付けることができて、それをしっかり決めきることができたっていうのは大きかったんじゃないかなと思いますね。逆に早稲田はそれがあまりできなかったという印象があるので、そこで差が生まれたのかなと思います。
—早稲田に勝った瞬間の気持ちは
そうですね、これを他の人に言うとドライだなというふうに思われると思うんですけど、勝ったのはもちろん嬉しかったんですけど、歴史的な勝利をしたっていう感覚は全くなくて、先ほども言ったように、勝つべくして勝ったなっていうような感覚でしたね。
—その後行われた早稲田との5位6位決定戦では10-14で敗戦。敗因はどこでしたか
第2ピリオドが終わった時点では同点で、でも第3ピリオドで連続失点をしてそこで負けてしまったんですけど、水球は結構、流れのスポーツと言われていて、連続失点をした時にどうチームに声をかけて悪い流れを止めるかというのが重要なんですが、この試合はそこの対処ができなかったというのが敗因であると同時に、水球競技歴の短い人チームの所以なのかなと思うので、そこはしっかり僕がなんとか競技歴の面で支えていければというふうには思いますね。
—熊谷選手にとって理想のGK像は
小学生の時に監督から言われた言葉で、「お前が全部シュートを止めれば、確かにチームは負けないけれども、お前がチームメイトに指示を出してシュートを一本も打たせなければ、絶対に負けることがないんだから、そうなるようにうまくコーチングできるようになりなさい」といわれたので、チームメイトにわかりやすくコーチングできるようになるのが僕の理想だと思いますね。
—今度の早慶戦に向けて、熊谷選手にとって早慶戦とは
歴史がある大会の中で自分が試合に出られるというのは本当にすごいことだなって思っていますし、先輩たちが何年も大会を続けてきたからこそ、今こうやって盛り上がっているのかなと思うので、僕たちもその伝統を引き継いでいけるように、また新たな歴史を作っていけるように、できればいいかなと思いますね。
—昨年の早慶戦は8-12 で敗戦。今年勝つために必要なことは
勝つために必要なことは、辛抱強くディフェンスをすることかなと思いますね。やはりリズムを作るのはディフェンスからかなと思いますし、うちのチームは泳ぎの速い選手がいるっていうのも一つの特徴で、カウンターを武器にしているんですけれども、カウンターっていうのはそもそも守らないと出せないものなので、そういう意味ではディフェンスをしっかりしてカウンターを何本も出し続けるっていうのが、勝つために必要なことかなと思います。
—早慶戦を前にチームの雰囲気は
いつも以上に闘志を燃やして、集中して練習できているっていう感じがしましたね。
—水球の観戦ポイントを教えてください
水球のルールの特徴として、ボールを持っている選手にはタックルをしていいというルールがあるので、選手たちがそのタックルをどうやって受けているのか、巻き足で耐えているのか、それともうまい技術で相手を交わそうとしているのか、それとも泳いでタックルされないように逃げているのか、そのあたりは水しぶきもすごくあがって、迫力があるので、そういうところを注目してみてくれれば、「おお、このスポーツ面白いな」と思ってもらえるんじゃないかなと思いますね。
—最後に記事をご覧の皆さんに早慶戦に向けて意気込みをお願いします
早慶戦は長い間、勝っていないんですけれども、24年ぶりに勝つことができるチャンスだと今年は言われているので、24年ぶりに歴史を変えて、またここからは慶應が早稲田に勝っていくという新たな歴史の一歩になればいいかなと思っているので、応援宜しくお願いします。
—お忙しい中ありがとうございました!
取材:長田ゆり