昨季1年生ながら開幕デビューを果たし、関東リーグ新人賞を受賞した松木駿之介選手(総2・青森山田高)。跳躍力を活かしたヘディングとゴールへ迫る姿勢は相手の脅威となり続けた。しかし昨年の定期戦はケガで欠場。悔しい思いをした。そんな松木選手に早慶定期戦への特別な思いを聞いた。
「自分への戒めになる前期」
――まずはチームの前半戦の戦いを振り返ってもらえますか
目標としている優勝から逆算すればやっぱり納得のいく出来ではなかったですし、首位の明大との勝ち点差を見てもだいぶ離されてしまったので、不甲斐ないといえば不甲斐ない結果だったと思います。ただシーズン途中からいろいろと選手たちの意識とかも変わってスタッフとのコミュニケーションも増えて自分たちのサッカーが少しずつ変わって確立されてきて、これからだなって、後期を楽しみに迎えられる前期だったかな、と前向きにも思います。
――松木選手個人としては開幕から全試合先発出場でしたが、自身の出来はいかがでしたか
やっぱりどうしても昨季の結果と照らし合わせてしまって、個人的に言うとシーズンの最初に「15得点が目標」と大きい口を叩いたんですけど、昨季の前期の3得点を超えることができず2得点で昨季の自分にも負けてしまいました。やっぱり周りからは「勘違いしたんだな」とか思われると思いますし、そういう面ではすごく自分への戒めになる前期だったかなと思います。
――新人賞受賞や全日本大学選抜への参加によって、対戦相手からのマークがきつくなることも予想されましたが、実際にプレーしていてそのあたりは感じましたか
やっぱり自分のプレーというのは相手に把握されているというか、声とかを聞いていても「13番はここに入ってくる」とか声を掛けられていて、自分の入りたいポジションに入れないと感じた部分もありました。でもこれはGKコーチの高橋(一真)さんにも言われたんですけど、「そういう相手にマークされながらも結果を出せる選手じゃないとプロになれない」ですし、プロっていうのはだいたいそういうマークがきつくなったりとかもある中でやってるので、そういうところを言い訳にしちゃだめというか、その中でどれだけ結果を出せるかというのにこだわってやっていきたいです。
――「プロ」という言葉がありましたが、もうすでにプロへの意識というのは芽生えているのですか
小さいころからずっと夢でしたし、去年ああいうシーズンを過ごせて、プロの練習参加とかにも行かせてもらったりして、すごく意識するようになりました。
――今季の開幕前のインタビューでパスやボールコントロールの部分での課題を口にされていましたが、それは今も意識的に取り組んでいますか
本当にそこが今のチームに必要なことというか、下でボールを大切にしてというサッカーに変わってきてその中で自分がボールロストが多いとかチームの課題として僕個人が挙がってしまうので、本当にそういったところの課題というのは自分自身ちゃんと把握できています。克服しなければ自分のポジションもないですし、危機感を持って取り組んでいます。
――前半途中で交代させられた試合があったりしましたが、悔しさはありましたか
流経大戦ですね。自分のサッカー人生の中でも前半で交代させられるという経験はなかなか無かったので、相当(メンタルに)きましたし危機感を感じるきっかけにもなりました。元々ずっと結果が出ていなくて危機感は感じていましたけど、前半に代えられて試合後に須田監督からは「その試合の出来ではない」と、「チームの流れが悪くて前線の選手しか代えられなくてどうしても調子のよかった小谷(春日)を使いたかった」という話をされたんですけど、でもやっぱりそういうチーム状況が悪い中で代えられてしまうというのは自分自身の評価です。本当に小谷の調子が良くてライバル視はしますし、そういうことを強く感じたのが流経大戦でした。
――逆に取り組んできたことの成果が出たなという試合はありましたか
今年はまだ出せていないですね。今季始まる前に、対人というかドリブルをもっと磨いて、ゴールに向かっていくプレーが自分の特徴なのでゴール前でのドリブルの仕掛けというのをオフシーズン取り組んできたんですけど、それを出せてゴールにつながったシーンというのもありませんでしたし、逆に中盤で不用意なドリブルをしてチームの流れを崩してそこでボールを失ってとか、そういう悪い部分にはたらいたところもあったので、ドリブルのスキルアップとその使い分けというのを最近はだいぶ意識しています。中盤では簡単にプレーしてゴール前に入っていって、そこからは自分の力の出しどころだっていうのは須田監督からも口酸っぱく指導されて理解してきているので、そういった部分を後期出せたらいいなと思います。
――松木選手自身のゴール数もそうですが、前線の選手のゴール数がなかなか増えなかった原因は
前線の選手の動きが少ないというか、前4枚がそのポジションのまま攻めているというのはプレーしていて感じていて、もっともっと流動的に動けると面白い選手がいるんじゃないかなと。僕たちの前4枚の特徴を見たとき、もっと流動的に動くことができれば相手も怖いだろうし、ゴール数も増えるんじゃないかなと思っています。
――チームは開幕してからなかなか調子が上がりませんでしたが、最終的には5位で折り返します。調子が上向くきっかけとなったターニングポイントはありましたか
日体大戦に負けたことですね。試合前の時点で最下位の日体大に負けて本当に尻に火が付いたというか、元々勝てなくて「やばいぞやばいぞ」とは感じていましたけど、日体大戦に負けてスイッチが入りました。練習に対する取り組みも本当に変わったと思いますし、オフの時間でもコミュニケーションもサッカーの話が増えましたし、いいきっかけだったかなと思います。
――松木選手自身も意識が変わりましたか
僕自身は開幕2,3試合と良いプレーも出せず結果も出ずというスタートで、最初から自分にプレッシャーは掛けていましたし元からスイッチは入っていましたけど、なかなか抜け出せないというか自分の行きたい到達点にはまだまだ程遠いという状況なので、これからやっていきたいです。
「ピッチに立ってとにかく自分の点でチームを勝たせたい」
――今年、松木選手自身初の定期戦出場が目前のところまで来ましたが、昨年はけがで悔しい思いをされたと思います。あの時、どんな気持ちでピッチを見つめていたのですか
早大がだいぶ空中戦に強くて慶大はそういうところでやられていて、「自分が出ていたらもっと起点になれる」だとか「攻撃を始められる」だとかそういったもどかしさはありました。クロスが上がっても最後の最後で触ることができず、「自分だったらあそこに入っていって触れたのかな」とかそういうふうに想像して見ていたので、今年はピッチに立ってとにかく自分の点でチームを勝たせたいです。
――運営の仕事なども経験して、今年に懸ける思いというのは相当なのではないですか
去年の早慶戦の時期というのはそういった運営の方の姿を見て自分もやって、本当に早慶戦って1日かけて駐車場警備とかゴミ拾いとか細かいところからあって、1日みんなが働いている姿を見ました。今年ピッチに立つチャンスがあるというか立つ気でいるので、そういった運営する人たちの姿を見た分しっかり感謝して、試合で勝って運営する人たちと一緒にみんなで喜べるように戦いたいです。
――5月に行われた関東リーグでの早慶戦では見事2-1で勝利を収めましたが、あの試合を経て定期戦をどう戦いますか
去年までは本当に相手をリスペクトしすぎたというか、リスペクトするのはもちろんなんですけどそれが過剰に行き過ぎていた部分があって、今年は良いリスペクト感と自分たちのサッカーを自信を持って挑めたので、今年の早大がどうこうというよりは今年の自分たちがどれだけ自分たちのやりたいことを90分間通して粘り強くできるかというところに懸かっていると思います。
――昨年は3回早大と対戦して3連敗を喫しましたが、その中で松木選手は唯一慶大で得点を決めています。良いイメージで定期戦に臨めるのではないですか
プレー的にも去年の早大戦というのは良かったですし、得点も決めることができて、早大に苦手意識はないというか得意と言ってしまえば得意です。良いイメージで5月の試合にも入れましたし、本当に早慶戦というのは楽しみにしています。
――では点を取るイメージ、そして勝つイメージはできていますか
できています。クロスに合わせて、という感じですね。ゴール前に入っていって自分の特徴を活かして決めるイメージはあります。
――お客さんに自分のココを見てほしいというところはありますか
ゴール前でのプレーというのは注目してほしいです。ボールを持ってどうこうできるとかという部分では他にもっと良い選手がいますけど、ゴール前での動きでスペースを空けたりだとか自分がゴールに向かっていくプレーというのはどんどん出していくので、そういったところに注目してもらって、慶大のゴールが生まれる瞬間を見せたいと思います。
――松木選手にとって早慶戦とは
特別な一戦ですよね。公式戦以上のものがあると思いますし、これだけ特別な舞台というのはなかなか無いし、1万人以上の観客が入る中で試合ができるというのは幸せなことで、ワクワクしています。
――大舞台に強いイメージがありますが
僕もありますね。
――楽しみですか
楽しみですね。大舞台に強いイメージは自分自身もあるので、自分の力をそういうところで発揮してラッキーボーイになれれば嬉しいです。
――最後に早慶定期戦に向けて力強い意気込みをお願いします
慶大のサッカーを90分間通してやり続けて、最後90分間終わって笛が鳴った後にオール慶應で喜びを分かち合えるように戦うので、応援よろしくお願いします。
(取材 小林将平)