第60回早慶ボクシング定期戦が12月3日(土)に慶應義塾大学日吉キャンパス日吉記念館にて行われる。60回の節目を迎える今年、来場者数600人を目指し、対談企画が始まった。第1弾は、早大・淡海昇太(教4)と慶大・田中和樹(総4)の主将対談。高校時代からライバル同士の二人が、引退前最後の早慶戦に向けて意気込みを語った。
「最後にもう一回、田中くんと試合したい」(淡海)
「受けて立ちますよ」(田中)
−−−今年から早慶戦対談企画が始まったわけですが、この企画を聞いたときの率直な気持ちは。
淡海:嬉しいなと思いました。今まで早慶戦やボクシングが注目されることがなかったので、注目してもらえることが嬉しいです。
田中:率直に何を聞かれるのかなと緊張しているって感じですが…。(笑)こうやって取り上げられることは嬉しいことですね。盛り上がる環境でボクシングしたいなと思うので今後もやっていきたいなと思います。(笑)
−−−お二人は高校時代からの知り合いとのことですが、お二人の出会いは。
淡海:自分の高校であった練習会のときに初めて出会いました。自分は中学生のときからボクシングやっていて、田中はまだボクシングを始めたばかりだったんですけど、すごく強い奴がでてきたなって。(一同笑い) 。
田中:そうですね。高校1年生のときに初めて会いました。
淡海:(笑) 。空手をやってたらしいって噂は聞いてたのですが、めちゃめちゃ強いなって。
田中:それで高校1年で試合だっけ?スパーリングをしなくちゃいけなくて。
淡海:階級は…
田中:一緒だったよね。
淡海:それで試合したみたいな(笑)。
−−−では、お互いの印象を一言でいうと。
淡海:神奈川のエースですね。インターハイに出ているので。最初見た時はまだ自分は経験あったので、田中のことは強いかなって思う程度だったんですけど、どんどん田中が上がってきて強くなっているなって思うようになって、追いつかなきゃなって思うようになりました。
田中:一言でいうと常に気になっている存在。同じ神奈川県で階級も似ていてライバル的な存在だったので、そのときから常に意識する相手でした。
−−−いよいよシーズンも終盤に差し掛かってきたわけですが、お互い今季これまでを振り返って。
淡海:リーグ戦に関しては去年3部リーグに下がってしまったので、団体戦で戦えず個人でしか戦えなかったところがちょっと寂しかったですけど、その中でもチーム一丸となって戦えたと思います。自分たちの代で2部に復帰しようと決めていたんですけど、それは叶わなくて非常に残念に思っています。
田中:去年2部リーグで4位になってここ最近にないぐらい良い成績で終われたので、そのプレッシャーっていうのを感じつつもチームの調子は良い状態で今年は臨みました。けど今年のリーグ戦では4連敗もあって、最後は必死でした。あの試合(最終節の専修大学戦)は今でも一番緊張した試合だったと思うんですけど、最後は勝ててほっとしました。
−−−そして、シーズンの最後を締めくくる早慶戦がいよいよ2ヶ月後に迫っているわけですが、今の調子はどうですか。
淡海:調子はかなりいいですね。リーグ戦や夏の大会が終わってから、最後早慶戦だけだと思うと結構いい意味で緊張がほぐれているというか。最後楽しもうって思うようになれるので、そうするとどんどん動きが良くなって、今は絶好調です。
田中:チームとしてもリーグ最終戦で勝って良い流れできていて、個人としても8月の国体の関東ブロックで初めて関東大会で優勝できて、個人的にも体も精神面もいい調子できているなと。あとは早慶戦!といったところですね。
−−−お二人は昨年の早慶戦で対戦しています。あの試合はどういった気持ちで臨みましたか。
淡海:まさか田中がライト級で出るとは思ってなかったんですけど、本当に去年の早慶戦はめちゃめちゃ調子がいいというかすごく頑張って早慶戦に向けて調整していたので、だれが来ても負けないだろうという思いで挑みました。チームとしては勝てて良かったんですけど、個人としては田中に負けちゃって。そういう悔しい思いをしたので、そのあと結構いろいろ悩んで、一時期はサウスポーに変えたりして。
田中:(笑)。
淡海:試行錯誤するほど悔しかったんですけど、そのおかげで今成長できているのかなって。いい早慶戦でした。
田中:淡海とは逆で個人では勝てたけど、チームで負けてしまって。個人的に勝ってもチームで負けたので全然嬉しくないというか。悔しい気持ちが大きかったなと思いますね。淡海と対戦することは手の内探られているような感じでやりづらいなって思っていて、いざ試合するときになったら緊張して上手く戦えなかったかな(笑)。なんとか勝ててよかったです。
−−−試合前と後ではお互いの印象は変わったりしますか。
田中:ずっと知っていてずっと同じようにやってきたんで、戦ったあとも変わらずなんですけど。普段はこうやって喋るんですけど、試合前は会ったりしても喋らないので。
淡海:ピリピリした雰囲気ですね。
−−−今までで一番印象に残っている早慶戦の試合はありますか。
田中:自分の試合じゃないんですけど、2年前の日吉記念館での試合で、3−3で最後の階級が回ってきたときに2つ上の先輩(長谷川嵩朔さん=H27年経卒)がダウンをとって相手を倒した瞬間が頭のなかに残っています。すごく感動した試合で、あれがあったから早慶戦ってすごいなって。
−−−そのときの試合は自分も見ていました。
田中:あれはすごかったですね。会場全体が総立ちになって若き血を歌っていて。あんな試合をもう一回したいなって思います。
淡海:自分は去年の主将の赤井先輩(赤井雄介さん=H27年政経卒)の試合ですね。本当はライトウェルターで64キロの選手なんですけど、チーム状況的にバンタム級の56キロまで減量して出場していて、減量中の姿を見ていると主将として相当なものを背負っていたと思います。コンディションはすごく体重も落としていたので良くはなかったと思うんですけど、それでも気合いで勝利をもぎ取る姿はかっこよくて、そういう姿を見習おうと思って今主将をやっています。
−−−今減量の話題が出ましたが、減量は普通いつごろから始めるのですか。
淡海:1ヶ月半前くらいから意識し始めるぐらいですかね。
田中:そうなんですね(笑)。
淡海:まあ、どの階級に出るかによるんですけど。
田中:リーグ戦のときは60、56、52キロの3階級に出場して、普段は60キロくらいかなと思うんですけど、だいたい1ヶ月くらい前から減量し始めますね。
−−−じゃあ、そろそろ減量の時期が近づいてきますね。
淡海:階級にもよりますけど、そろそろ…。
田中・淡海:探りあいが。
田中:どの階級でだれが出てくるかの探りあいがすごく重要になってくるので。
−−−もう自分の心の中では出場したい階級も決めているのでしょうか?
淡海:早稲田はいま選手層が薄くて選手が多いわけでもないので、チーム状況にもよるんですけど、最後にもう一回田中くんと試合したいなって思いもなくはないですね。
田中:まあ受けて立ちますよ!(一同笑い)
−−−もし対戦が実現した場合、ここを意識して戦いたい!というポイントはありますか。
淡海:そうですね、自分のボクシングを。
田中:守りに入ったな(笑)。
淡海:あんまり詳しくは言えないんですけど…。
田中:知り尽くしているので、対策はバッチリです!
「どんなにプレッシャーがかかっても、弱音を吐かずにしっかり試合で勝って、背中で見せるのが理想の主将像」(淡海)
「練習したものがすべて。そういったところがボクシングの魅力」(田中)
———本年度は主将として1年間部を引っ張り続けたお二人ですが、主将を務める上で心がけていたことはありますか。
淡海:主将になりたての頃は自分の価値観で厳しくしようと押し付けていたんですけど、人数も多くないのでしっかり周りや後輩の意見を聞きながら、しっかり自分の芯を持ちつつも、全員でいい雰囲気にしていこうと心がけていました。
田中:意識していたのは、自分の勝ちたいという思いを伝え続けることですね。「一つ一つこうしよう、ああしよう」というよりは、思いのほうを先に強く伝えるということをしていたかなと思います。まあいろんな部員がいるので難しかったですけど。
−−−早慶戦でも、主将の試合が勝敗を分けるポイントになってくると思うんですが、ご自身の理想の主将像みたいなものはありますか。
淡海:うーん、むずかしい。自分は歴代の主将の先輩方がかなり理想で、どんなにプレッシャーがかかっても弱音を吐かずにしっかり試合では勝って、背中で見せるっていうのを目指してやってますね。できているかはわからないんですけど、最後そういう風に終われればいいなと思います。
田中:理想の主将ですか…。やっぱり背中で見せてくれる、その人が自分で動いて自分でやっている姿を見せてくれるっていうのは理想かなと思います。それを目指して一年やってきたという感じです。
−−−先ほど前主将の赤井さんのお話をありましたが、赤井さんから何かアドバイスをもらったりしましたか。
淡海:これからもらいます(笑)。
−−−参考にしている先輩はいますか。
田中:自分のなかでは、2つ上の先輩(友野直人さん=H27経卒)が印象に残っているんですけど、主将として一番チームを気にかけてくれて、声もかけてくれて。自分が練習で気持ち的に上がらないときも、主将自ら盛り上げてくれて自分のモチベーションになったので、やっぱりそういう主将でいたいなと思います。
−−−お二人が思うボクシングの魅力はなんですか。
田中:大学から始めた選手も勝てることですね。練習したものがすべてというか。小泉信三の「練習は不可能を可能にする」があると思うんですけど、本当にこれだなと思います。高校ですごい選手がいても、大学から始めて努力してきた選手が勝ってしまう。そういったところが魅力かなと思います。
淡海:田中とほぼ同じになるんですけど、努力が報われるスポーツというか、努力すれば今まであった差を簡単にひっくり返すことができるスポーツなので、だからこそ頑張れるし楽しいんだと思います。
−−−お互いのボクシング部についてはどう思っていますか。
淡海:良い部をつくっているなと思いますね。みんな同じ「勝つ」に向かってみんな一生懸命突っ走っている雰囲気が慶應から感じられるので、そういうところは見習っていきたいなと思いますね。
田中:どっちかというと、今までは慶應が気持ちで戦うスタイルで、技術面では早稲田が上回っていたんですけど、去年の早慶戦では逆に気持ちで押し負けたところがあったので、慶應本来の「気持ちで戦うボクシング」を早稲田が思い出させてくれました。
−−−ちなみに、両校の選手がプライベートで交流することはありますか。
淡海:仲が良い人もいるんですけど、部員によりますね。
田中:部活として早慶戦後に打ち上げにいくくらいかな。
淡海:せっかく主将同士がつながりあるので、早慶仲良くやっていきたいですね。
田中:階級で探りあうスポーツなので、シビアに(笑)。
−−−あんまり仲良くなっちゃうといろいろ知られてしまいますもんね。
淡海:探られちゃいますね。
「早慶戦は、早稲田が一番輝ける場所」(淡海)
「一番自分自身が熱く試合できる場所」(田中)
−−−早慶戦でお互いに警戒したい選手は。
淡海:やっぱり田中選手ですかね(笑)。けど慶應の選手は全員強いし気持ちもありますし、全員に勝つつもりでいきます。
田中:もちろん主将である淡海が警戒するところかなと思います。やっぱり去年は相手の主将が勝って流れをもっていかれてしまったので、主将は倒しておきたいなと思います。
−−−お二人にとって、早慶戦とはどんな舞台ですか。
淡海:早稲田が一番輝ける場所。慶應を相手にするからなのかもしれないんですけど、チーム一丸となってそこで勝って輝きたいと思います。
田中:絶対に負けられないっていつも思っています。早慶戦はリーグ戦にもなく個人戦にもない、すごく特別な盛り上がりや環境があって、そこで試合をするっていうことは、僕は4回目になるんですけど、一番自分自身が熱く試合ができる場所かなと思います。
−−−ボクシング早慶戦を初めて見に来られる方に向けて、ここに注目してほしい!という観戦ポイントを教えてください。
淡海:アマチュアボクシングは力というよりは、テクニックもあったり、早い展開だったり、駆け引きもあったりするので、そういうテクニックの部分を見ていただければと思います。
田中:3分3ラウンドでプロの試合より時間が短いので、すごく凝縮されていて展開が早い。1ラウンド目から気持ちと気持ちがぶつかる勝負があると思いますし、そういった試合をしたいと思っているので、そういう熱さや気持ちのぶつかり合いを見て欲しいなと思います。
−−−最後になりますが、早慶戦に向けて意気込みをお願いします。
淡海:今まで長いボクシング人生でしたけど、最後チームで勝って有終の美を飾ろうと思っています。
田中:60回目という節目の大会で、個人的にも高校から始めてちょうど80試合目になるので、最後勝って引退したいです。僕が1、2年のときは勝って、3年では負けて今2勝1敗なので、最後勝ち越して終わりたいなと思います。
(取材:高橋廉太朗・佐野ちあき)
淡海選手、田中選手ありがとうございました!
第60回早慶ボクシング定期戦は12月3日(土)に慶應義塾大学日吉キャンパス日吉記念館にて行われます。ボクシングファンはもちろんそうでない方も、慶大ボクシング部の雄姿をその目で見届けましょう!