10月30日、神宮球場では野球の早慶戦が行われていた。集まった観衆こそ少なかったが、神宮に負けず劣らず熱戦が繰り広げられた。前半は慶大が集中した守りからリズムを作ると、CTB柏木のビッグゲインからWTB清水がトライ。この後帝京大に1トライ1ゴールを許し逆転されるも、そこからは主導権を帝京大に握らせなかった。しかし後半はタックルで相手をなかなか倒せなくなると、そこからペースを握られ、終わってみれば10-38。点差をつけられての敗戦となってしまった。
関東大学ジュニア選手権 vs 帝京大
2016/10/30(日)13:30K.O.@帝京百草園グラウンド
得点 | ||||
慶大 |
| 帝京大 | ||
前半 | 後半 |
| 前半 | 後半 |
1 | 1 | T | 1 | 5 |
0 | 0 | G | 1 | 3 |
0 | 0 | PG | 0 | 0 |
0 | 0 | DG | 0 | 0 |
5 | 5 | 小計 | 7 | 31 |
10 | 合計 | 38 |
得点者(慶大のみ)
T=清水、楠本
ポジション | 先発メンバー | 交代選手 |
1.PR | 渡邊悠貴(経2・慶應) | →後半0分 榎本雄一(商4・慶應志木) |
2.HO | 中本慶太郎(経2・慶應) | →後半0分 中川丈豊(経2・慶應) |
3.PR | 吉田雄大(総3・秋田) | →後半0分中島雅大(環2・桐蔭学園) |
4.LO | 植竹創(商2・湘南) |
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5.LO | 永末千加良(法3・慶應) |
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6.FL | 中村京介(文3・明和) | →後半33分 西村雄大(環4・桐蔭学園) |
7.FL | 川合秀和(総1・國學院久我山) |
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8.No.8 | 山中侃(商2・慶應) | →後半0分 竹田和正(法4・慶應志木) |
9.SH | 江嵜真悟(商2・小倉) | →後半11分 桜井修(経4・慶應) |
10.SO | 斉藤大介(商4・慶應) |
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11.WTB | 清水祐輔(4・明和) |
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12.CTB | 柏木明(経3・慶應) | →後半24分 青井郁也(商3・慶應) |
13.CTB | 瀬川慶太(環3・otago boy’s) |
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14.WTB | 吉迫雅俊(商4・慶應志木) |
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15.FB | 楠本遼(経4・慶應) | →後半8分 佐藤航大(理2・國學院久我山) |
前半はロースコアの引き締まった試合になった。開始序盤はロングキックの応酬。両チームが互いに相手の出方を窺った。前半7分に帝京大WTBのビッグゲインを許した後は、慶大は自陣に押し込まれる時間が続く。それでもここ最近、慶大がフォーカスしている“Beat the brakedown”がここでも如実に表れる。自陣6mライン近辺でフェーズを重ねる帝京大に対して、慶大も1対1で臆することなく、低いタックルでラインブレイクを許さない。14分にはゴールまで後数mというところまで迫られるが、粘り強いディフェンスで相手のペナルティを誘いピンチを脱する。前半17分にはセンターライン付近でのラインアウトモールで陣地を獲得、SO斎藤のキックはワンタッチ。帝京大ゴール前6mラインまで陣地をさらに獲得する。そして19分、慶大のラインアウトから一気に攻撃を仕掛ける。SH江嵜の素早い球出しから、斎藤、CTB柏木へとパスをつなぐ。「相手のSOのところを狙って行け」というHCの助言に応えた柏木がインサイドブレイク。ビッグゲインに成功すると、柏木は冷静に左へ展開。最後は清水が左隅に飛び込みトライ。これには慶大応援席から思わず黄色い歓声が起こる。斎藤のコンバージョンは失敗したが、5点を先制する。しかし前半27分には慶大ゴール前で、相手SOにキックパスを通されトライを許す。コンバージョンも決められ5-7と逆転される。この後も帝京大が慶大陣内でフェーズを重ねるが、慶大はブレイクダウンで圧力をかけ続けこれ以上の失点を許さない。結局前半は5-7と2点のビハインドで終えた。
後半開始4分、慶大はブレイクダウンからターンオーバーを許すと、そのままボールを展開されトライを許す。しかし後半8分には前半の得点シーンに続き柏木が中央で大きくゲインすると、走りこんで受けた斎藤へつなぐ。斎藤はこのまま順目につなぎ、余裕をもってFB楠本がトライ。斎藤がコンバージョンを決めきることができなかったが、10-14と帝京大と互角に渡り合う。しかし慶大のタックルで相手を仕留めることができなくなると、徐々に試合が帝京大ペースになる。慶大が自分たちのラグビーが思うようにできなくなると、プレーが後手後手に回り、軽微なペナルティが目立つようになる。そしてセットプレーでも圧力を受けるようになると、完全に試合は帝京大のものに。後半12分にはラインアウトモールからそのまま押し込まれ被トライ。後半24分には帝京大がフロントロー3人とフランカー2人を入れ替えると、さらに慶大はブレイクダウンやセットプレーでさらに圧力を受けるようになる。この後、慶大は3トライを許し、10-38で試合終了。前半とは打って変わって一方的に押し込まれる時間が続いた後半であった。
先の対抗戦、そしてJr選手権と慶大は連続して帝京大を相手に戦った。その中で、複数の選手が一定の手ごたえを口にした。この試合での収穫を挙げるとすれば、前半での戦いぶりだ。これまで取り組んできた低いタックルやブレイクダウンが徐々に結果として表れてきている。事実、前半は帝京大に対して粘りのディフェンスを見せ互角に戦った。しかし慶大の目標は“日本一”だ。手ごたえを得て満足するだけではなく、行く行くは打倒帝京大を果たさなければならない。奇しくも、Jr選手権の決勝トーナメントの一回戦の相手は帝京大だ。次こそは勝利という結果を手にして、慶大蹴球部を勢いづけたいところだ。
【ケイスポ的MOM】縦への強さで絶対王者を翻弄 CTB柏木
この日慶大が挙げた2トライ、その両方の起点となったのがこの男、柏木明だ。Jr選手権、初めての試合では緊張の視野が狭くなっていたこともあったという。しかしこの試合では、CTBとしてラインブレイクからチャンスメイクするだけではなく、帝京大のフィジカルに恵まれた選手に対しても果敢に“低いタックル”で攻撃の芽を摘んだ。本人の目標はAチームの試合に出場すること。この秋成長したこの男がタイガージャージを身に纏い秩父宮の地に立つ日もそう遠くはないかもしれない。
(記事・合場將貴)
以下選手コメント
WTB清水
(今日の試合を振り返って)前半良い手応えで戦えました。前半はFWがラインアウトで相手ボールを獲得してくれ、またディフェンスも全体として良かったです。後半こちらのペナルティの多さにやられてしまったことが敗因だったと思います。(今日のゲームプランは)うちはアタックよりもディフェンスのチームなので、相手の強いフィジカルをこちらのディフェンスでどれだけ止められるか、そこで止めて最後ロースコアにもっていこうという話でした。(後半ペナルティが増えてしまった原因は)相手のFWのフィジカルが強くて大きいので、そこでプレッシャーを受けてペナルティが増えてしまったと思います。(対抗戦での帝京戦も出ていたが今年の帝京大の印象は)戦い方は毎年あまり変わらないですが、昨年やったときや今年の夏にやったときに比べると、慶大が戦えるチームになってきたと感じます。なので、大きな相手というよりは、倒せる相手という印象です。(今後のご自身の目標は)まずは、ずっと対抗戦に出られるようになるということ、そして最後は大学日本一になってそこに貢献できるようなプレイヤーになることが目標です。
LO永末
(今日の試合を振り返って)前半は自分たちのやりたいことといいますか、チームで決めていたことができたと思うんですけど、後半入りの部分から受けに入ってしまったのと、同じやられ方が多かったのにもかかわらず、試合途中に修正できなかったのが次に繋げていかないといけないところだと思います。(前半はゴールライン際のブレイクダウンで粘り強さを見せた)フォーカスの一つに掲げていたのがBeat the brakedown なのですが、その部分で一人一人が意識を持って戦うことができました。一対一では負けないという意識が、前半の失点の少なさに繋がったのだと思います。(低いタックルも決まっていた)そうですね。そこは慶大の強みなので、持ち味が発揮できたと思っています。(後半相手のフロントローが変わったあたりから一気に相手ペースに傾きました。前半との違いは)確かに相手のフロントローが代わって元気だったというのもあるのですが、やはり自分たちの形でスクラムができなくなったのが大きかったです。前半できていたことが後半できませんでした。(具体的に全体で修正すべき課題は)まずは規律の部分ですね。ペナルティで自陣に入られてるというのが大きくて、そこから相手の得意なモールを得点源にされてしまっているので、そこの対策をしていかなければならないと思います。(シーズンもいよいよ佳境を迎えた。今後の個人としての意気込みを)僕が出たい試合はこのグレードではないので、アピールして上で出るチャンスをもらえればと思います。
CTB柏木
(今日の試合を振り返って)思ったより自分のフィジカルプレーが相手に通用して、良いラインブレイクができたので良かったです。(今日はトライにつながる2つのビッグゲインがあったが)相手のSOのところを狙って行けと監督にも言われていてそれ通りにうまくいってよかったです。(前半は粘り強いディフェンスで相手の攻撃を凌いでいた)いつも通りディフェンスをしてすぐ立っての繰り返しだったのであまり意識はしていなかったです。(前半に比べて後半はブレイク弾で圧力を受けることが多くなったが、その原因は)タックルでまず食い込まれて一人目がだんだん倒せなくなってきて、そのせいでブレイクダウンで食い込まれてどんどんゲインされるという悪循環になってしまっていていました。(Jr選手権全体として振り返ってみてどうだったか)今年が初めてなので、最初の方は緊張しながら自分のことしか考えられなかったのですけれども、今日は結構落ち着いてプレーができたので、こういったところがJr選手権を通して成長できたのかなと思います。(今後のご自身の目標は)まだAチームで試合に出ることができていないので、Aチームで試合に出て日本一に貢献できたらいいなと思っています。