第72回国民体育大会冬季大会のフィギュアスケート競技が長野県で開催されている。1月29日、30日に行われる成人女子に慶大から鈴木美桜(法3)が早大の松嶋那奈と昨年に引き続き、神奈川県代表として出場予定。前回大会では神奈川県を2位に導き、今大会でも二人で表彰台を狙う。今回は長年ライバルとして切磋琢磨してきたお二人に様々なお話を伺った。
――今シーズンを振り返っていかがですか
松嶋 良い時も悪い時もありましたが、今シーズンは試合に向けての調整が上手くできたシーズンだと思います。
――松嶋さんは今シーズン特に好調が続いていますが、要因はどのように考えていますか
松嶋 ヨガに行き始めたことですかね。(笑)
鈴木 私も行こうかな。(笑)
松嶋 ヨガに行って、体幹を多少やるので、そういうところが良かったのかなと思います。
――全日本・インカレと高得点を出されていましたが、どのように感じていますか
松嶋 とても嬉しかったのですが、一回出してしまうとそれを続けなきゃというプレッシャーがあるかなと。でも、自分の演技がその度できるようになれたら得点も伸びていくと思うので良い経験にはなったと思います。
――今年はトーループートーループの成功率がとても高かったですが、ご自身の感触はいかがですか
松嶋 練習では決まらないことが多いですが、本番は気合で跳ぶしかないと思って。
鈴木 えー、決まってるじゃん。(笑)
松嶋 試合よりかは失敗していて、気合で跳んでいます。
――鈴木さんは今シーズンを振り返っていかがですか
鈴木 私は結構悔しい時もありましたが、その分上手くまとめられた試合も同じくらいだったかなと。でもやっぱり、目標としていた全日本に出られなかったというのは一番悔しかったです。今シーズン、夏にアメリカで練習したことで気持ちの面が変わったかなと思います。
――アメリカでの練習はいかがでしたか
松嶋 日本と練習環境が違うよね。
鈴木 練習環境が全然違って、本当に氷の上に乗っているのが、平均で5,6人とか。一セッションも45分と短い時間で限られているのでその短い時間の中でどれだけ集中できるかというのも今までの新横の練習とは違うと思います。鈴木明子さんだったり、ジェレミー・アボットだったり、アリッサ・シズニーだったり、世界のトップレベルで活躍している選手と一緒に練習を3週間積めたというのは私にとってすごく勉強になりました。
――1番最近のインカレではフリーでノーミスの演技をされていましたが、インカレを振り返っていかがですか
鈴木 ショートは全然ダメだったので、ショートの悔しさをフリーでぶつけようと思った結果があのようにフリーで出せました。ショートが良かったら逆にフリーはわからないですが、次の今シーズン最後の国体は両方揃えられるようにしたいです。
――技術面と表現面でそれぞれどのようなところが具体的に伸びたと感じていますか
松嶋 私は全日本に行けることになってからスピンのレベルを取らなきゃいけないと思って。レイバックはいつもレベル2とか3で、4を狙って取っていませんでしたが、全日本は狙おうと思ってやりました。結局レベルは取れませんでしたが、とても回転のスピードも上がって、スピンの技術が結構伸びたかなと思っています。表現面では全日本はプレッシャーとかも何もなく、笑顔で滑ることを中心的にやってきたのでその分下も伸びるようになったと思います。
鈴木 私は今まで組み込んでいるジャンプがトーループとサルコウだけでした。練習もその二つしかやっていなかったのを今シーズン試合では入れられませんでしたが、練習中ではループ、ルッツ、3-3とかもちゃんとできるようになってきました。結果としては表れるところまではいけませんでしたが、ジャンプは着実に跳べるようになってきているのかなとは思います。表現力の面では特に今シーズンはフリーをシンデレラという曲を選んで自分が物語もわかっているし、とてもイメージしやすかったです。その物語が表現できるようにしようと思って滑っていました。
――今シーズンのプログラムの完成度はいかがですか
松嶋 ショートは練習ではまだまだ曲に入らない状態が多くて。でも試合ではとても良い点数が出ているので、試合だけ言えば80%くらいの感じで、練習では30%くらいです、完成度としては。
鈴木 そんなに低いの?(笑)
松嶋 アクセルもループも入らないから…フリーでは練習でも結構良い感じで、試合でも点数が伸びてきているので、表現面も入れたら完成度は80%くらいかな。まだまだ伸ばせるというのはありますが、国体で曲は最後なので全力で100%できればいいなと思っています。
――本番に強いなと感じるのですが
松嶋 はい。本番に強いです。(笑)
鈴木 うらやましい。
――鈴木さんはいかがですか
鈴木 ショートに関しては今シーズンノーミスでまだ滑り切れていないので50%、40%くらいかな。フリーに関しては2回一応ジャンプを全部降りてまとめられているので、それでも85%くらいです。ノーミスをしても2種類しかトリプルを入れていないのでもっともっと上を目指して100点を超えられるようにしたいというのが目標です。今シーズン最後の国体では構成は変えないつもりなので着実に、この前のインカレくらいの点数を出したいです。
――話は変わりますが、お二人の出会いはいつですか
松嶋 10歳?
鈴木 10歳。私は4歳の時にシンガポールでスケートを始めて、帰国して5歳の時から新横浜でやっています。那奈ちゃんはイタリアで始めて、10歳の時に新横浜に来たので、10歳からですね。長いね。
松嶋 長いね。もう10年以上だよ。
――その時のお互いの印象はいかがでしたか
鈴木 声が高い。(笑)
松嶋 大きいなって。同い年とは最初思わなくて、知り合って年を聞いて、同い年ということに本当に驚きました。それが一番の印象かな。
――お互いの尊敬するところはどこですか
松嶋 笑顔で滑っているところがうらやましいなと思います。私は真顔で滑ってしまっていて、先生にも「笑顔で滑りなさい」とか「目、開けて」って言われます。(笑)
鈴木 那奈ちゃんは朝に強いところがうらやましいなって。毎朝5時50分から朝練があるんですが、結構最初から毎日乗っている人ってたぶん那奈ちゃんくらいだと思うんですよ。誰よりも早く来て、アップして、5時50分から毎朝ちゃんと滑っていて、すごいなって思います。
松嶋 それを一回始めちゃうからやめられないんだよ。
鈴木 逆に那奈ちゃんがいないと「え、なんかあった」みたいな。(笑)
松嶋 一回寝坊したことがあって、そのときに「遅刻しました。すみません。」って先生に言ったら、自転車でいつも来てるんですけど、「事故したのかと思った」って心配されちゃって。「寝坊です、すみません。」って言って。(笑)逆に心配されちゃうことが多いです。遅刻できないんですよ。遅刻したらいろんな先生に「どうしたの?」って言われちゃうので。本当は朝、弱いんだよ。
――今ではお互いどのような存在ですか
松嶋 美桜ちゃんがいないとやる気がないというか。やっぱりライバルがいるからこそ伸びたり、もっと頑張ろうって思ったりします。同い年っていうのもあって。年下でも前はライバルがいて、今は辞めちゃった鈴木春奈ちゃんとか同じ先生でライバル同士でしたが、やっぱり同い年の美桜ちゃんが年上だったり、年下だったりしたらここまで自分も伸びなかったと思うので、ライバルや良い友達としてとても大きい存在になっています。
鈴木 ありがとう。(笑)
松嶋 このまま一緒に最後の一年を頑張って、一緒に笑顔で終われたらいいなって思う存在です。
鈴木 私も那奈ちゃんとはずっと一緒にやってきて、同い年のスケーターってどんどん学年が上がるにつれて、少なくなってきますが、その中でもこうして新横の7級として神奈川県の国体でも何回も出させてもらって、私にとっても良いライバルというか、いてくれて良かったなと私も思います。3回転―3回転を今年やろうと思ったのも、那奈ちゃんが跳んでいて、私も跳びたいなって思ったのがきっかけだったので、私も那奈ちゃんがいなければたぶんこんなに向上心みたいなのも続かなかったと思います。最後できれば来年も二人で国体に出て、二人で一緒に引退したいなと思っています。
――スケート以外で会うことはありますか
松嶋 最近ないよね。前は結構同期で集まったりとか、ディズニー行ったりとか。
鈴木 ボウリングも行ったよね。
松嶋 ボウリングも行った。ごはんは結構行きます。最近はお互い大学もあって。
鈴木 那奈ちゃんが遠いんだもん。
松嶋 そうなんだよね。もっと大学が近ければ、空き時間に会おうとかできますが、私が大学に一時間とか二時間かけて行っているので、なかなか時間が合わない状態が多くて、最近は全然会えてないです。
――大学入学前と入学後でスケートに対して意識の変化はありましたか
松嶋 大学に入って、遠いというのもあって、練習時間が短くなったので、短期集中になったかなと思います。最近の学校のない間は長時間練習ができますが、一時間以上集中力が続かないという感じで、ちゃっちゃとやって、休憩して、という良い練習ができるようになりました。
鈴木 私は、高校と大学で練習時間はそんなに変わらないです。気持ちの面で、高校までは部活に入ったことがなくて、大学から部活に入って、部練が週2回ありますが、それが結構最初は大変だなと思っていました。今年は主将として引っ張っていくということもあり、意識が学年が上がるにつれてどんどん変わっていきました。週2回部活に出るというのは正直大変ですが、その分、初心者の子の上達を見られるのは楽しいですし、スケート以外の部分でも学ぶことがたくさんあって、部活に入って良かったなというのは思います。
――新横浜での練習環境や雰囲気はいかがですか
松嶋 朝は小さい子がとても多くて、練習はしづらいです。多い時だと30人以上滑っているので。
鈴木 もっとじゃない?シーズン中だと60人とか。
松嶋 曲かけ争奪戦になるんですよ。曲かけは朝6時くらいから始まるんですけど、今までだったら6時15分にみんなばーって行って、早い者勝ちという感じです。今年はすごい異常で。
鈴木 朝練は曲かけが自由なので並べなくて、出したもの順です。みんなそわそわ周りを見ながら滑って、一人が行くとばーっとみんな集まりだして曲かけをするんですけど、それが結構大変なんだよね。シーズン中なのにかけられないとか。
松嶋 そういう面では新横浜のリンクはどうなのかなというところはありますが、変えようにも変えようがないです。
鈴木 練習時間は長くあるので、そこはいいなと思います。
松嶋 昔は大きい子たちがいたら、出なきゃいけないという感じがありましたが、今では逆で。上手い子たちがよけなさい、みたいな感じになっていて、よけるので練習が疲れちゃうこともあります。そういうところがちょっとね。(笑)
――高校でスケートを辞めてしまう人も多い中で、大学でも続けている理由はありますか
松嶋 インターハイに行って、入賞という良い成績が残せたので、ここまで来たんだったら大学までちゃんとやって引退したいなと思ったのでスケートを続けています。
鈴木 私は正直言うと、今までの中でスケートを辞めようと思ったことは2,3回あります。その一つが大学に入学した時で、悩みましたが、自分からスケートを取ったら何が残るんだろうと考えたら、たぶんきっと自分の心の中に穴が空くんだろうなと思ったのが大きかったのと、やっぱり滑るのが好きだったからというのが一番大きな理由かなと思います。
松嶋 スケートを辞めたら、今まで練習してきた時間は何をすればいいんだろうと思います。
鈴木 もう中心がスケートで、高校だったらクラス会があっても夜練があるから行けなかったです。
松嶋 大学とか高校の集まりに行けないとか誘われてもスケートがない日じゃないと行けないというのがあって。スケートを辞めたら本当に何をしたら良いかわからない状態になるんじゃないかなと思います。
――スケートを続けてきて良かったと思うのはどんなときですか
松嶋 試合で良い結果が出たときに努力したのが報われたなと思います。そういう時に続けてきて良かったと思います。
鈴木 同じです。
――フィギュアスケートでは熱いファンがたくさんいらっしゃると思います。自分にファンがいるということについてどのように感じていますか
松嶋 ファンがいてくれるからこそ一回一回の試合で全力を出し切れるというのもあって、とても大きい存在です。
鈴木 全然世界レベルの選手でもないけれど、こういうふうに毎回応援して下さる方がいるから、そのために頑張ろうと思えるし、試合で「良かったよ」と言ってもらえるとまた頑張ろうと思えるし、それがまた嬉しくて続けているというのもあります。
松嶋 ファンに一回一回の試合でここを頑張ってきたというのを見せることができて、驚きとかも言って下さるのでいつも感謝しています。
第2弾に続く!