昨季、王座出場権を逃した庭球部女子。その中でひと際責任を感じていたのが今季の主将を務める江代純菜(総4・九州文化学園高)だ。ラリーに持ち込み、しぶとく戦うことでポイントを重ねるプレーを持ち味とする。初めて単複でリーグ戦に出た昨季を「悔しいシーズンだった」と振り返る。だから、今年こそ。その粘り強さと負けん気で江代がチームを引っ張る。
「自分の強みはメンタルの強さ」
(昨季を振り返っていかかですか)
自分の壁を越えられた試合もあったし、ポジティブになれる試合もあったんですけど、やっぱり一番心に残っているのは、自分が筑波大戦のダブルスで負けて、早大戦でも単複で負けたことでチームを終わらせてしまったことです。一言で言うと、本当に悔しいシーズンだったなと思います。
(壁を越えたというのはどういった点ですか)
今まで競れなかった相手に競れるようになったのは一つ大きな進歩かなと思います。例を挙げると、インカレで戦った山学大の寺見選手は、今まで自分には無理だろうと思っていて、自分から壁を作ってしまっていたのですが、あの試合では、ファーストセットから進むにつれて自分の中でもいけるんじゃないかという気持ちが出てきました。そういった部分は大きな成長だったと思います。
(江代選手の粘るテニスというのは相手からしたら嫌だと思うのですが、その武器についてはどう捉えていますか)
押野(紗穂=環3・つくば国際大学東風高)や村瀬(早香=環4・京都外大西高)のように、自分からハードヒットしてどんどんエースを取るという派手なプレーはできないので、自分の強みはラリーでも負けないメンタルの強さや、気持ちの部分でどんな状態でも対処できることだと思います。そういった面では、粘らないと自分の武器が生かせないので、派手なプレーに憧れる時期もあったんですけど、今ラストイヤーになって、やっぱり自分の武器を使って相手を根負けさせるくらいできたらいいな、と思っています。
(リーグ戦など単複で出る試合も多かったと思うのですが、粘るテニスで試合の時間も長くなって、きつかったことはありませんでしたか)
1、2年生の時は単複で出たことはなくて、ダブルスは3年になって初めて出たので、想像していたより大変ではあったのですが、アドレナリンが出ていたのかあまりきついとは感じませんでした。
(チームの主将を務めることになりましたが、今の気持ちは)
率直に言うとやはり日本一になりたいという思いが強いです。先輩方から毎年毎年「来年は日本一になってね」と声をかけていただいているので、今年こそ、と思っています。私についてきてくれている部員全員を日本一にしたい、という気持ちもありますが、先輩方への感謝は結果でしか表せないので、とにかく今年は勝負強いチームを作りたいです。男子はコートに立つと一人で踏ん張れる選手が多いのですが、女子はチームとしてまとまりやすい反面どこかでチームに逃げてしまうところがあるので、今年はまだ誰が出るかわかりませんが、出た選手には、一人でも戦える勝負強い選手でいてもらえるよう、勝負強い選手の集合体のようなチームにしていきたいです。
(3年間一緒に過ごしてきた同期はどんな存在ですか)
私の同期はすごく人数も多く、面子も濃いのですが、個性が強い分いろいろな立場からいろいろなアプローチをしてくれるのでとても頼りにしています。幹部としてもそれぞれ全然役割が違うので、みんな任された役割を務めようとしてくれて心強い存在です。
日本一へ
(現時点でのチームの仕上がり、手応えは)
インカレインドアでは男子が単複優勝して、女子は結果こそ出せませんでしたが、今までにないくらい予選から本戦に上がる選手や本戦の本数を増やせていて、チーム全体の層が厚くなってきているのを感じています。特に女子チームについては、あとはどうやってチャンピオンを出すか、トップに登りつめるまでの壁をどうやって壊すかが課題なので、そこに手をつけていけば必ず日本一はあると思っています。
(インカレインドアで男子が単複優勝したことは女子にも刺激になっていますか)
そうですね。男女で一緒にやっていて、男子しか結果を出せなかったというのは正直悔しい部分もあるのですが、今年の女子は弱いなどということは全然なくて、男子が優勝してくれた分、女子も春関では絶対やってやろうという風に気持ちに火が付きました。
(リーグ戦を経験している選手が多いことは、やはりプラスに働いていますか)
今年は経験者が多く残ってくれていて、押野や西田(奈生=総3・済美高)のように上級生に経験者がかたまっているのは4年生としてすごく心強いです。新1年生が入ってきたら思いっきりやらせてあげたいので、その環境が整っていて良かったなと思っています。
(昨年度課題として言われ続けていたダブルスについてはいかがですか)
ダブルスに手をつけなければいけないことは今年も変わっていなくて、インカレインドアでは3本をベスト8に入れることはできたので、そこから上に行くために、もっと外部の試合を経験し、学生の枠を超えてもっと上のレベルでの経験を積むことが必要だと思っているので、今年は全日本室内などもっと上のレベルの試合にチャレンジしていきたいです。
(昨年度のリーグ戦2位は筑波大。インカレインドアも筑波大のペアが優勝しました。今年も相手としてキーになると思うのですが、その意識はいかがですか)
筑波大のペアには、うちの村瀬・押野も(試合が)ファイナルに入っていて、スーパータイブレークで正直どっちに転ぶかわからない試合だったので意識はしているのですが、「やばいな」というネガティブな感情は全然なくて、「いけるな」と感じています。
(今年の江代選手個人の目標を教えてください)
インカレ優勝を目指しています。
(それは単複両方ですか)
はい。
(そのために取り組んでいることなどはありますか)
技術面やフィジカル面もあるのですが、一番はメンタル面が大きいと思っていて、今までは結果が出ている選手と当たると「自分はもうダメなんじゃないか」と自分を否定してしまうことが多かったので、今年はどんな選手にも壁を作らず歯向かっていけたらいけるなと感じていて、今はそこに向き合っています。
(主将に就任されてから自分の中で見方が変わった部分はありますか)
一人一人と向き合わなければいけないなというのをすごく感じています。今までは自分の近くにいるメンバーばかり見てしまって、下級生も見るようにはしていたのですが、練習時間の関係で難しいと言い訳してBチームの同期に任せてしまっていました。でも、主将になって、私についてきてほしいと言っているからにはそういう人間にならなければいけないと思っているので、今年1年はチーム関係なく一人一人と向き合っていきたいです。今までは思っていても言えないことがあったのですが、これからは相手にどう思われようとチームのためになると思ったことは発信していくようにしています。
(慶大庭球部に入って良かったと思うことは何ですか)
入った時から同期に恵まれて、先輩にも良く見てもらって、後輩も「ついていきます」とたくさん言ってくれているので、そうやって周りの人に支えられていると感じた時に、このチームで良かったなと思います。
(慶大でプレーする最後の1年、チームとしての目標や意気込みをお願いします)
目標は男女で日本一になることです。新進、春関、インカレ、夏関、リーグ王座と、全タイトル慶大で占められるように、自分がコートで引っ張るのはもちろんなのですが、発言や行動でも背中で引っ張っていけるような主将になりたいと思っています。
(取材・記事 森本凜太郎、鈴木優子)