全日本選手権出場に向けた戦いがついに始まった。まずは、東日本選手権進出を懸けてダイドードリンコアイスアリーナで行われた東京選手権大会。9月23日に行われたシニア女子ショートプログラム、翌日のフリースケーティングに慶大から4名が出場。庄司理紗(総3)、鈴木美桜(法4)はショート・フリーを通して安定した演技を披露し、上位13名のみが出場できる東日本選手権進出を決めた。
9月23日、24日 東京選手権大会@ダイドードリンコアイスアリーナ
選手名 | SP得点 | FS得点 | 合計 | 順位 |
庄司理紗 | 45.98点 | 82.82点 | 128.80点 | 6位 |
鈴木美桜 | 44.66点 | 82.36点 | 127.02点 | 8位 |
小堀瑛美 | 33.48点 | 69.91点 | 103.39点 | 17位 |
鈴木星佳 | 38.78点 | 63.30点 | 102.08点 | 19位 |
ショートプログラム6番滑走で登場した庄司は「Flamenco」を披露し、この日一番の輝きを見せた。冒頭のコンビネーションジャンプを鮮やかに決めると、庄司に笑顔があふれる。次のトリプルトウループ、ダブルアクセルも成功させると、客席からは大きな歓声が上がった。ステップでは手拍子が湧き、「本当に楽しく滑ることができた」と言うように、生き生きとした表情でリンクを舞った。ノーミスで演技を終え、観客からはスタンディングオベーション。これまでジャンプで苦しむことが多かったが、練習の積み重ねが実を結び、4位につけた。
小堀瑛美(環1)のショートプログラムは「A Day in the Life」。トリプルサルコウで着氷が乱れると、続くジャンプでは転倒してしまう。演技終盤のダブルアクセルには高さもあったが、やはり二つの3回転ジャンプのミスが響き、得点は伸びず。それでも、手の動きまで工夫された美しいスピンではすべてレベル4を獲得するなど、ジャッジからの評価も受け、フリー進出を果たすことができた。
慶大の3番手は主将の鈴木美。集大成の今季のショートプログラムは「Time to say goodbye」。「自分が気持ちいいように滑りたい」と振り付けを自ら行っている。トリプルトウループとダブルトウループのコンビネーションジャンプこそ成功したが、続くトリプルサルコウでは両足着氷に。最後のダブルアクセルも回転不足と判定されてしまい、翌日のフリーへ向けジャンプでは改善点を残してしまった。ただ持ち前の手足の長さを生かしたスピンやステップ、観客を魅了する美桜スマイルはこの日も健在。念願の全日本出場に向けて、ショートプログラムは「自分の目指して来たスケートが演技としてできた」スタートとなった。
鈴木星佳(総2)は最終滑走で登場。サーモンピンクの衣装と「浜辺の歌」でショートプログラムに挑んだ。演技序盤のダブルアクセルと3回転—2回転のコンビネーションジャンプを成功させたが、最後のトリプルトウループは転倒に終わった。ただ、曲に合わせたステップワークや体全身を使ったスピンは完成度も高く、上位選手にも決して引けを取らない。大学2年目の今季は昨季以上の結果も期待できると感じさせるスケーティングだった。
そして、翌日のフリー。一番滑走で「The Great Gatsby」を披露したのは小堀。ショートではジャンプがはまらなかったが、フリーでは「思いきりやろう」と臨んだと言う。この日は落ち着きを見せ、3回転―2回転のコンビネーションジャンプを決めると、その後もジャンプを一つずつ着氷させていった。曲調の変化を上手く捉えた滑りでも観客を魅了。ショートから順位を上げ、最終順位は17位。東日本進出には一歩届かなかったが、収穫のある大会となった。
次に登場したのは、鈴木星。フリーの「カルメン」の音楽が鳴り響くと、手先までキレのある力強い動きを見せる。冒頭のジャンプは転倒してしまうが、次のトリプルサルコウーダブルトウループのコンビネーションジャンプは鮮やかに決めた。回転速度の速い美しいビールマンスピンも披露。後半から立て直したいところだったが、転倒や回転不足のミスが出てジャンプの精彩を欠いてしまう。それでも、終盤のステップシークエンスでは激しい曲調の音楽に合わせて体を大きく使ったダイナミックな動きを見せ、体力面の課題を克服して最後までスピードを落とさずに滑り切った。東日本選手権への切符を逃し演技後は表情を曇らせたが、この悔しさを必ず次につなげてほしい。
鈴木美のフリープログラムは「オペラ座の怪人」。冒頭のジャンプは抜けてしまうが、ステップシークエンスでは柔らかい手先の動きと表情で優美な世界観を作り上げ、観客をひきこんだ。後半もジャンプのミスがあったものの、トリプルトウループと、最後のダブルアクセルは綺麗に着氷。長い手足を生かした伸びやかなスパイラルでも見せ場を作った。持ち味の表現力でミスをカバーし、全日本予選となる東日本選手権への切符をしっかりつかみ取った鈴木美。悔しさをにじませながらも「課題はフリー」と語り、さらなる強化を目指す。ラストシーズンの特別なプログラムで、自分らしさを突き詰めた演技に期待だ。
ショートプログラムで4位と好位置につけた庄司。フリーは「The Notebook」を披露した。優しい音色に合わせてしなやかな動きを見せると、冒頭のトリプルループを綺麗に着氷し、笑顔を見せる。ステップでは音に合わせて表情豊かに舞い、会場からは自然と手拍子が起こった。後半も壮大になっていく曲調に合わせて次々とジャンプを決め、会場はスタンディングオベーション。演技後は笑顔がこぼれた。前回の大会から生活の中心をスケートに置きたくさん練習を積んできたことが、自信にもつながったという。ジャンプの出来には満足しつつも、「スピンやステップでは自分の思うようにはできなかった」と振り返った庄司。課題を克服し、さらなる高みを目指したい。
(記事 反保真優、森田悠資、西村夏菜 写真 伊藤史織)
◇以下、選手コメント
小堀瑛美(環1)
(今大会に向けてのコンディションは)4月から学校が始まって、家が遠くてあまり練習ができていなかったのですが、8月から夏休みになって合宿や試合などがあって、調子は良い感じでした。(ショートを振り返って)直前の練習では上手くいっていたのですが、本番は全然上手くいかなくてものすごく悔しかったです。(フリーを振り返って)思いきりやろうと思ったら、自分の中ではすごくいい出来で終わることができました。(今大会を通して見つけた課題は)このあとの試合がフリーだけの試合が多いのでフリーを中心に練習をしていきたいというのと、ジャンプの回転不足を減らしたいと思います。
庄司理紗(総3)
(今大会に向けてはどのような調整を)前回の試合が8月の末にあって、そこから1ヶ月間は朝と夜と練習をしていて、生活の中で練習を中心に動いてきたので、1ヶ月振り返ると練習をいっぱいしていたなというイメージがあります。その自信が今回につながったかなと思います。(ショートプログラムを振り返って)フリーよりも不安要素が少しあったんですが、それがうまく自分にはまって、緊張していた中でもいっぱい動けたので途中からは本当に楽しく滑ることができました。(フリースケーティングを振り返って)フリーは自信があったんですが、試合になると緊張感も違いますし、氷も違う中で何が私に出来るかなと思ったんですが、いろいろ考えても出来ないなと思って自分を信じてやれました。それがそのままジャンプに生かせたので良かったと思います。(ミスが少なかったが、プログラムの完成度は)ショートは自分の中で完成度が高かったかなと思うんですけど、フリーではまだぎこちない部分だったりスピンとかステップとかでも自分の思うようにはできなかったのでそこがまだまだかなと思います。(東日本選手権への進出も決まったが、今後に向けては)東日本の前に東インカレがあるので、また怪我をしないように今回の課題を見つめ直して一からコツコツやりたいと思います。
鈴木美桜(法4)
(終わった後の笑顔が印象的でしたが、昨日のショートプログラムを振り返って)ジャンプで悔しい部分があったのですが、それよりも昨日は自分が目指してきたスケートというものが演技としてできたかなと思います。ただやっぱりジャンプが抜けてしまったのは悔しいです。(ショートプログラムは自分で振り付けされたとのことでしたが、こだわりはありますか)所々先生に手伝ってもらったところがあったり、アメリカで佐藤有香さんに直していただいたりしたのですが、自分が滑りたかった曲で自分が気持ちいいように滑りたいなと思って振り付けをしました。(フリープログラムを振り返って)前半跳べるジャンプが抜けてしまったのは悔しいですし、後半ももったいないミスをしてしまったので、もっとできたのになという思いがあります。ですが、2本目のトリプルトウループや、最後のアクセルはサマートロフィの時よりは良かった点かなと思います。(ステップで意識されていることは)曲調が柔らかくなるので、表情や手の使い方を柔らかくするように気を付けています。(次に向けて)課題はフリーだと思います。次の試合まで約一か月あるので、フリーを強化して行きたいです。一番は自分自身の気持ちだと思うので練習の時からしっかり本番を見据えて、全部締めるという気持ちで練習していけたらと思います。