早慶戦前企画第2弾は、部のマネジメントや早慶戦の開催準備など、陰の立役者としてチームを支えてきた慶大・小笠原夢生(政4)と早大・新村久瑛(教育4)の早慶主務対談だ。主務としての業務をこなしながら部との関わり方を考えてきた二人。裏方だからこそ感じることができた思いを語ってもらった。(この対談は2017年10月23日に行われました)
—昨年度に引き続き、今年も早慶対談企画が行われるということにどう思われましたか
小笠原:ボクシングにわざわざ来て頂いて、注目していただけるというのがすごく嬉しく思います。
新村:ボクシングはどちらかというとマイナースポーツで、あんまり皆が知らないような部分があると思うので、こうやって記事にしていただいて、少しでも多くの人に見てもらえる機会があるというのは、大変ありがたいなと思っています。
—お二人から見て両校の印象は
小笠原:早稲田さんは一人一人キャラが濃いというイメージがあります。
新村:慶應さんは人数が多いのにまとまりがあって、一つの方向に向かってみんなが一生懸命汗を流しているというイメージがありますね。爽やかな感じがします。
—自校のボクシング部の特徴について教えてください
小笠原:人数が多くて試合に出れない選手もいるので、応援の練習をして出れない悔しさを感じる選手が多いかもしれません。けど学年が上がるにつれて出たい気持ちが増していくところが逆にいい影響になっているかなと思います。
新村:早稲田は逆に少人数で部員一人一人がかなり個性的です。普段はあっちこっち自分の好きな方向を見ているのですが、本番のいざという時に一つになっているなと感じます。本人たちは直前まで感じないと思いますが。
小笠原:すごくわかります。うちの部も早慶戦の時は普段以上にまとまりがあります。
—お二人のボクシング部との出会いを教えてください
小笠原:僕は新歓の時にバーベキューをやっていると聞いたので、適当にふらっとボクシング部に行ったらたまたま高校の部活の先輩がいて勧誘されました。すごく面白そうだなと思ってやってみたら、はまったので入りました。
新村:私は1年生の途中まで別の同好会に入っていたのですが、もっと本気になって大学生活で何かやりたいなと思って、団体を辞めてふらふらしていたところをボクシング部に声を掛けてもらいました。それで見学に行って、ここだったら大学生活に一生懸命打ち込めるかなと思って入りました。
—お二人が主務になったきっかけは
小笠原:僕はもともとスタッフとして主務の下で働く仕事を2年生の時にやっていたんですけど、一個上の主務に引き継いでほしいという話をちらほらされていたので、僕も心の準備をしながら一年間過ごしてきました。実際に代交代の時に主務をやってくれと言われ、僕もここまで来たらやりたいなと思ったので引き受けました。
新村:私も上の代の主務や、前監督、OBの方に一番主務になってもらいたいと言われたので、お力になれればなと思い、やらせていただいています。
—両チームの主務の仕事を教えてください
小笠原:練習のマネジメントもありますし、OBや他団体との連絡役になったりとさまざまですね。
新村:基本的な仕事は慶應さんと一緒で、大学とのやりとりだけでなくて、外部の組織とのやりとりを行うというのが主務の大きい仕事かなと思います。
—主務に求められる資質とは
小笠原:難しいですけど、周りをよく見られるような人であったり、誠実性だったり(笑)。
新村:誠実性、大事ですね。私は、部員同士、OBと部員、OB同士などに部に関わる人達のパイプ役となれるような存在でありたいなと思って主務をやってきました。そうするとやっぱり広く見る目というのが大事かなと思います。あと主務というのは部員の知らないところで一生懸命仕事をやらないといけなかったりするので、陰でも頑張れる気持ちが大事かなと思いますね。
—主務をしてきて思ったことは
小笠原:確かに大変だったっていうのはあるんですけど、関わる人がすごく増えていったのは一番自分の財産だったかなと思います。今まで、普通のボクシング部員だったら関われないような人達がいたと思うんですけど、主務という役割をもらったことで自分に対して話してくれる諸先輩方がいらっしゃったり、外部の方ともこうやってお知り合いになれたり、そこはすごくよかったかなと思います。
新村:私は2年間やっていて、昨年はとにかく「仕事をこなさなきゃ」という思いがあって、私自身は不器用でおっちょこちょいなんですけど、なんとか仕事をやらなきゃという思いで一年間やってきました。けれど今2年目をやるとなった時には、自分の仕事や、主務としての部に対する思いを後輩に伝えていかなきゃいけないなと思って、一年間どうやったら後輩に伝わるかなと考えてやってきました。実際はあんまり伝わってない気がするというか(笑)。なかなか難しいですよね。今年はそれですごく悩んだんですけど、悩んでく上で忍耐力がついたり、立場が人を作るじゃないですけど、いっぱい考えるようになったので、そこは昨年より少し成長できた部分かなと思います。
—早慶戦開催のためには、どんな仕事をするんですか
小笠原:たくさんあるんですけど、パンフレット作成や、広告協賛のお願いをすることが主な仕事です。基本的に主務はどの仕事もそうだと思うんですけど、仕事を他の人に振って、それの確認を自分がするのが一番大事だと思います。
新村:多分それが正しい主務の在り方です(笑)。私ももっと割り振って確認するようにしたいです。仕事内容は試合会場の手配、スケジュール決めなどたくさんあります。大変なんですけど、今小笠原さんの話を聞いて、もっと周りに割り振るようにしようと反省しました。基本的には仕事を割り振って確認するというのが仕事ですね。
—主務業をしていて辛かったことは
小笠原:早慶戦の開催が一番辛かったですね。ある程度やることはリスト化されているんですけど、実際開催してみてみると、何か足りてないんじゃないかという見えないグレーゾーンがあって(笑)。
新村:わかります(笑)。
小笠原:実際早慶戦が終わるまで本当に無事に開催できるか心配で、あの時期は結構辛かったです。
新村:私も今、早慶戦を早稲田大での開催のため準備しているんですけど、小笠原さんがおっしゃったように、毎晩毎晩何かやり忘れてるんじゃないかと思いながら寝たりして、終わるまでこの思いは変わらないんだなって思います。早慶戦は早稲田だけとか慶應だけじゃなくて、両校の伝統ある行事で、責任が重いので一番大変かなと思います。あと私は、あまり自分のことを周りに言えるタイプではないので、なかなか主務のつらさや気持ちが部員に通じないところが大変でした。
「今は主務業がないと物足りないくらいです」(小笠原)
—主務としてのやりがいはどうですか
小笠原:主務として多くの人と出会い、その方々から様々な人生経験をお聞きできることは、主務という立場があるからこそなので良かったと思います。あと自分に決定権があるというのは、主務のいいところかなと思っています。下の学年だと物を買うだったり、部活の効率を上げたりなどの提案をしてもなかなか通ることがなかったので、自分は一番上になってからいろんな人の意見を聞いて通すようにしていますが、最後決定権があるのはなんでも面白いと思います。
新村:決定権があるという風におっしゃっていたんですけど、主務が動かないと部の運営が回らないというところで、部を支えているんだなという実感を持てますね。学生生活でこういう大きい組織や行事を動かすというのはなかなかみんなができる経験ではないと思うので、貴重な経験ができているというのがやりがいかなと思います。あとたまに部員が「ちゃんと仕事を見てるよ」と反応をしてくれると、部のために役立っているなというやりがいを感じます。
小笠原:確かに、そうですね。
—主務業についてお互いに聞いてみたいことはありますか
新村:主務業についての話とはまた違うのですが、小笠原さんは選手も主務もやって大変だったじゃないですか。そこが私とは違うので、どんな気持ちで過ごしていたのか気になります。
小笠原:選手もやっていたんですけど、同期のマネージャーにすごく救われました。そのマネージャーがいなければ、選手の活動もできなかったので。主務も選手もやって、今は主務業が無いと物足りないくらいです。何事に対しても集中できて、気の抜けないような人生を送れていたのでその方が良かったかなと思います。
新村:一生主務をやりたいですか?
小笠原:絶対やりたく無いです。でもあの時が一番充実してたかな。
(一同笑い)
小笠原:僕は主務業で抱えるストレスを練習に晴らせていて、つらい中でも些細な喜び感じられてたんですけど、新村さんはストレスを抱え込んでつらくないですか?
新村:今息切れしてて倒れそうなんですけど(笑)、つらいですよね。抱え込むのは良くないなとお話を聞いていて思います。でもそれを誰に言おうか悩んだりもしていました。私は同期で主将の井上くん(井上稜介=早大主将)をはじめ、同期たちに話を聞いてもらったりしています。あとは食べるのが好きなので、何か食べます(笑)。言えることはどんどん言いたいですが、後輩たちには背中を見て学んでいって欲しいですし、私自身行動で伝えていきたいです。
小笠原:後輩指導って1番難しいですよね。
新村:難しいですよね。後輩指導はどうされてました?
小笠原:僕は上手くできなかったです(笑)。一人に指導しちゃうタイプなので、一個下の重増(重増耕太郎=法3・県立千葉)っていう現主務にはずっとアドバイスを言っていたんですけど、みんなに平等に指導できなかったところが、後悔してるところです。
新村:慶應さんは人数がいっぱいいるからいいなと思いますが、その分まとめたり、伝えたりするのが大変だなって思ったりもします。早稲田は人数が少ないですが、マネージャーの後輩2人をはじめ、後輩たちがよく動いてくれるので助かります。
—お二人は部活以外で趣味はありますか
小笠原:食べることが好きです。人生の半分はスロットで、4分の1くらいが部活であとは遊びです。(スロットに)命懸けてますから。
(一同笑い)
新村:結構夜行性で、夜遅くまでごそごそ起きて昼までバタっと寝たりしてます。
小笠原:怖い怖い(笑)。
新村:あとは長風呂が好きですね。
小笠原:温泉いいですよね。
—最近温泉は行かれましたか?
新村:えっと…。
小笠原:全然行ってないじゃん(笑)。
新村:昨年までは毎年草津や鬼怒川に行っていましたよ!
「早慶戦は自分の想いを再確認する・そして伝える場です」 (新村)
—今までの早慶戦で印象に残っている場面は
小笠原:僕は3つ上の長谷川さん(長谷川嵩朔=H27卒)というウェルター級の方がいまして、最後ダウンをとったシーンが印象的です。たまたま高校の部活の先輩だったんですけど、僕はその人に憧れてボクシング部に入ったので、最後にああやって決めてくれたのが印象的でした。
新村:私は2年前の早慶戦で、当時主将の赤井さん(赤井雄介=H27卒)が、4年の途中で主将になれと言われて早慶戦までやっていたんですけど、キャプテンシーのある方で、部をまとめるのも盛り上げるのも上手でした。大学始めなんですけど、早慶戦の時も熱い試合を繰り広げてくれたのがすごく印象的です。
—昨年の早慶戦は4-3で慶大が勝利しましたが、どのような思いでご覧になりましたか
小笠原:僕は試合に出たい思いが強かったのですが出られませんでした。慶應が勝利したことは嬉しかったんですけど、個人としては悔しかったです。ホームで開催して勝つということは主務としては嬉しいことなので良かったです。
新村:昨年は慶應の日吉記念館という大きな場所でやって、たくさん人も来たし、第60回でとても注目された大舞台でした。さらに一つ一つの試合が接戦でいい試合が続いていたので、3-4で負けてしまったのが悔しかったです。でも、次こそは!と次に繋がる試合になったので良かったです。
—早慶戦に対する思いを教えてください
小笠原:僕は4年間ボクシング部員としてやってきましたが、リーグ戦への出場経験はあるんですけど、早慶戦には一度も出たことがありません。なので最後は出場して、勝って、いい感じで引退したいなと想います。
新村:自分自身最後の早慶戦で、さらにホーム開催なので、最後はなんとかして勝ちたいなと思います。あと2年間主務をやって、自分が今までやって来たことはこれで良かったのかなとか、伝わっているのかなとか悩んでばっかりで、それを確認する場がありません。選手はリングで頑張っているのを私は見ていますが、私の仕事は陰で部を支えることなので、主務の想いが伝わっているのかなって不安になります。早慶戦は自分の想いを再確認する・そして伝える場です。このような想いを集約して早慶戦に関わるすべての人が輝ける舞台にしたいなと思います。
—早慶戦の見どころは
小笠原:プロボクシングは3分12ラウンドぐらいあるんですが、アマチュアボクシングは3分3ラウンドという凝縮された形です。その文、手数はアマチュアのほうが多くなるので、打ち合いが激しくなります。特に早慶戦だとさらに多くなって、白熱した試合が7試合あるのは保証できます。
新村: 3分3ラウンドという短い時間で、ただ殴り合っているんじゃなくて、そこまでに時間をかけて減量したりとか、悔しい思いをしたりとかしてきたという過程があります。リングに上がっている者同士がぶつかって、思いをぶつけ合っているというところを感じながら見ていただけたらなと思います。
—最後にこの記事を読んでくれているファンへ、早慶戦に向けての意気込みをお願いします
小笠原:部員もみんなとても練習していて、早慶戦に対して懸ける想いが強いですし、スタミナ切れしないで殴り合う試合をするのでぜひ見に来てください。
新村:早慶戦の舞台を作るために、いろんな人が準備に携わっているので、その場の熱い雰囲気を楽しんでほしいと思います。また雰囲気はみんなでつくるものだと思うので、その一員となっていただけたらいいなと思います。
—ありがとうございました!
(取材:津田侑奈)
プロフィール
小笠原夢生(慶應義塾大学法学部政治学科4年)
前慶大ボクシング部主務。慶應義塾高校出身。今年の早慶戦では最初で最後の出場を目指す。
新村久瑛(早稲田大学教育学部4年)
早大ボクシング部主務。対談中は終始、素敵な笑顔で場を和ませていた。現在は早大での早慶戦開催に向け奮闘中。