4年引退インタビューの第3弾は副将のMF竹村薫(#11・環4・桐蔭学園)。日本代表として慶應の副将として活躍していた彼女のインタビューをお届けする。さらに今回は桐蔭学園時代のコーチである水田裕樹さん(現FALCONS)、中高6年間のチームメイトで5月の早慶戦前対談でも対談を行った早稲田大学の平野薫選手(#9・国教4・桐蔭学園)にもコメントをいただいた。
—日本一おめでとうございます。改めてお気持ちを
あの試合は始まる前からすごく楽しくて、自分たちが憧れていた江戸陸という舞台にこれたことが部員一同幸せなことで。やってやるぞというよりかは最後50分楽しむぞという気持ちでした。
—決勝に決まってからの一週間。勝っても負けても最後となる中で何を意識していましたか
今までも詰めてきたので、最後は細かい部分で例えばラスト2分1点ビハインドみたいなシーンを想定してやりました。
—細かい部分を想定してだと、決勝戦のような展開も練習していましたか
大久保HCは「あれはプランBで想定内だったよ」みたいなことは言ってたんですけど笑。私たちの中では社会人には取られても5点くらいまでだなというメンタルでやってたんで、その点では前半3点差(1-4)で終わって、取られてもあと1、2点くらいだよって思っていたので、まあ大丈夫みたいな感じでした。
—試合通して50分で5、6点を返していけばいいというメンタルでしたか
そうですね。NeOとFUSIONの試合を見ていても取られても5、6点くらいだから大丈夫というのはあったので、後半私たちが挽回していくしかないな、いい逆転優勝のためのお膳立てができたなって感じで前半終わって「よしやってやろう」ていう感じでいました。
—ビハインドで迎えた最後の10分くらいのタイムアウトでも、選手の中で笑顔があったりとチーム全体で明るくなった印象がありましたが
戦っているのは一人だけじゃなくて、もし一人だったら心細かったりもしたと思います。でも今まで一緒に戦ってきたメンバーを本当に信じることができましたし、スタンドにいる1、2年の優勝にかける思いとかを見ていて、試合の時は全力で応援してフィールドの選手たちのためになりたいと書いているのを見てました。あとは同期も当日に同期の写真が載ったTシャツをくれたりして、スタンドを見たらこの人たちのために頑張ろうと思う気持ちがあって、みんなで一緒に戦っているという気持ちが強くて、すごいパワーが出てきました。
—同点に追いついた、6点目を西村選手が決めた時に声をかけていたと聞きましたが
同点に追いついて、「やったさわこ(#33・西村)ありがとう」みたいな。あのシーンはフリーシュートでさわこが私の方を見ていて、私が打ってもいい場面で。さわこが一番端で厳しいかなと思っていて、でもシュート打つ前にさわこにアイコンタクトでいけるよって送って、それでちゃんと決めてくれて本当にありがとうって感じで抱きつきました笑
—最後に主将がゴールを決めた瞬間はいかがでしたか
最高でした。ファールから慶應がポゼッションしていて。さわこからかよこ(#99・出原)に渡った瞬間「行け!勝負しろ!」みたいな気持ちで叫んでて、そしたら本当に行ってシュートも決めてくれて最高でした。さすが主将で幸せな瞬間でした。
—あそこは決めるなら主将しかいないシーンでしたね
そうですね。あそこはかよこにボールが渡った瞬間にいけるって感じでした。
—「日本一」になりましたが実感はありますか
日本一の瞬間って最高だったんですけど、それまでの過程を振り返ると1年で悔しい思いをして。1年の時の後悔があって、最高で最強の先輩だったからこそ自分の思っていることを言わなくてもわかってくれるだろうと思ってしまって。1年だったっていうのも理由にはならないですけど、自分の思っていることを言わなかった。2年では1年間を後悔しないように日々を送ろうと思って臨んで。2年は本当に自由にやって、勝てなくて。慶應で日本一を取りたくてラクロス部に入ったのに、こんなに取れないんだ。日本一とるのはこんなに難しいんだと思って。私の慶應ラクロスのイメージは2012年2013年の日本一をとって強い慶應だったり、かっこいい慶應をイメージして入部したんですけど、理想と現実は全然違くて。3年の時はこのままじゃダメだと思って変えようと思っても結局変えられず。その年も終わり、4年になって自分が1年の時に後悔して言わなかったというのを思って、絶対そういうチームにはしたくなくて。その時の4年が悪いとかではなくて、本当に大好きで尊敬していて、最強の先輩だったからこそ私のちっぽけな意見はなくてもこのチームは勝てる、強いと思ってたんですけど。そういう風には後輩に思って欲しくなくて、どんなに小さな意見でも、それを誰かに伝えるって大切だなと思っていて。だからどんどん自分たちで発信して欲しいし、自分の意見を言いやすい環境を作りたいと思ってやってました。2月に始まったミーティングでもすごい同期とぶつかって、泣きながらミーティングもして、本当に大変でした。でもその3年間があったからこそ、自分たちに足りないものもわかったし、変えようという努力もできたので、日本一になるまで4年かかったけど、それまでの3年間があったからこそ成し遂げられたのかなと思います。
—今季を振り返って
盛りだくさんで、本当に密な時間を過ごしました。2月のシーズン始まる前に今年のスローガンみたいにお互いがぶつかり合って、ぶつかり合った先に原石が磨き上がって宝石になるという思いでつけたんですけど。学年問わず意見を言い合えたなと思っていて、日々のミーティングでも学年問わず自分が思ったことやわからないことはわからないって言ったり、プレー中でも後輩から要求があったりとちゃんと一人一人が意見を言い合ってチームをよくしたという思いがあります。私たちは自由に自分たちが思うようにやっていて、でも3年がすごいしっかりしていて存在が練習中でも大きくて、締めてくれる所は締めてくれる。かな(#73・伊藤)も「一本一本頑張りましょう」とかのどか(#66・石川)も「ファイトです!慶應ファイトです!」みたいな笑。なんだそれと思ったんですけど、そういう一つ一つの声がよし頑張ろうって思えて、嬉しかった。一人一人の声とか言動がすごく力になりました。
—個人としては日本代表活動もありましたがいかがでしたか
日本代表で学んだことは人としてという部分がすごく大きくて。学生と社会人の違いはなんだって監督に言われた時に学生は時間があるから決断しなくても、全てのことができるけど、社会人は時間が限られているから決断をきちんと一つ一つしないとその全てをやることができないって言われて。私は決断する時に人の意見も聞きたいタイプの人間で。昼食を選択するみたいな一つの決断する時でもちゃんとできるようになりました笑。
今年の日本代表でこだわっていた部分は行動の部分で。一人のプレイヤーなんだけど、ラクロスを抜いた時に相手に勝てるかっていうのを問われている時があって。ラクロスだけができる人じゃ意味がなくてだからこそ一つ一つの行動でクロス一本置くにしても、靴を置くにしても、綺麗に並べてものを大切に扱うとか、この人見ていて清々しいなと思える人になりたいなと思って行動していました。
日本代表は最初辛くて。ラクロス辞めたいなって思うこともあって。自分よりもうまい選手がたくさんいるっていうところで、慶應だったらスタメンに入れるのに日本代表だったらまだまだで。でも社会人より私の方が競技歴も長いのになんでできないんだろって思ったし、悔しくていくのが辛い時もあって、なんで私ラクロス好きなのにこんなに嫌いになるんだろって思って。それが大学2、3年にかけてで、自分より上手い人ばかりで悔しかったけど、ある時、このままじゃダメだと思った時がありました。2年の時の国際親善試合で私出られなくて、すごく悔しくて、スタンドで応援する側で、初めてその時にこんなに悔しんだと思って。素直に応援できなかったし、その立場になってわかったことがたくさんあって。私だったらこうするのになんで出してくれないんだろうと思ったりもして。その時に松本理沙選手っていう当時の明大のキャプテンの姿を見ていて、一人一人への気遣いもできて、物も大切にしていてそういうプレー以外の部分でも尊敬できる人で。私人と比べているだけじゃダメだなと。もっと私も日本代表に所属している以上このチームのために何ができるのか考えなきゃダメだと思って。私もプレー以外のことでも貢献しなきゃなと思えたし、あの日本代表の時のメンバーに入れない悔しさがあったからこそ人の気持ちをわかることができたし、だからこそ私も慶應でメンバーに入った時に責任を持って、この人たちの思いを持ってフィールドに立つ12人として覚悟を持ってやるきっかけになりました。
—一番印象に残る試合とその理由は
明大戦です。やっぱり3年前のことが大きくて。その時もフィールドに立っていたんですけど、その時に大好きな先輩がこんなに泣かなきゃいけないんだと思って。明大は喜んでるし、先輩たちは泣いているし、私がもっとあのシュートを決められていたらと思うと悔しい試合すぎて、私が1年の時に先輩たちのような力が付いていたら、勝てたんじゃないかと思うと悔しくて悔しくて。ただあの試合が強くしたんじゃないかと思っていて。あの試合があったからこそ絶対明大には勝ちたいなって3年間思っていた。あの先輩たちの分まで明大を倒して関東優勝して全国の切符を取りたいとずっと思っていて。あそこの試合に勝ててもちろん関東優勝できたことも嬉しいですけど、やっぱり明大に勝てたことも嬉しかったです。
—今シーズンを通じて主将の姿はどう映りましたか
結構かよこ変わったと思って。柔らかくなった。ちょっと自分の弱いところも見せるようになってすごくかわいいなみたいな笑。結構プライドも高いし、シーズン始まった時に「私ってプライドも高いし、頼り方がわからない」っていう話をされて。確かにプライドも高いし、あまり弱いところを見せないけどそういう風に自分で言ってくれたことも嬉しかった。かよこがいたからこそチームもまとまったし、ここまで強くなったと本当に思うので、主将の存在ってかよこみたいな人なんだなと思って。かよこだからこそこのチームが変われて。かよこはチームが良くなるためにどうすればいいかをずっと考えていたなと思うし、みんなが言いにくいこともちゃんと言える。そういう人だったからこそ、チームをよくするきっかけ作りをしてくれたのでありがとうの気持ちでいっぱいです。
—今回は5月の早慶戦前対談でも対談を行った早稲田大学の平野選手からサプライズでメッセージをいただきました!
日本一おめでとう。一番優勝して欲しくない慶應に勝たれて、正直本当に悔しかったし同じ思いでラクロス続けている身として情けなかった。関東の学生決勝の時あんなに楽しそうにプレーしてる薫を見て悔しい反面羨ましかった。高校の時からずっと慶應入って日本一になりたいって言ってた薫を知ってたからこそ感動したし、それもまた悔しい気持ちも多少はあった。改めて最高の引退、日本一おめでとう。そして10年間ありがとう。ラクロスでは負けたけどこれからは違うフィールドで戦った時には絶対に勝たせてもらうよ!
—平野選手はどんな存在でしたか
まず、日本一おめでとうって言ってくれてありがとう笑。同じ薫だし、離れていても双子感があって。常に早慶の薫って言われて嬉しかったし、10年間も一緒にやってたと思うと、彼女は早慶でやりたいって話してて、私は一緒にやりたいくて寂しかった。本当にカオツーがいてくれたからこそ頑張れたし。私はカオツーを見ると一緒に戦っているような感じで。片割れっていいのかな。本当に大好きで、一緒に4年間を過ごすことはできなかったけど、お互いがその場で一生懸命にやっていることはわかっていて、だからこそ絶対に負けたくなかった。でも最後は一緒に試合したくて。東海戦で引き分けになった時は申し訳なかったんですけど、あの平野薫がいたからこそ私も強くなれました。あの人が私が年齢制限で行けなかったU-19で活躍してくれたからこそ、私も絶対にフル代表になってやるっていう強い気持ちも芽生えました。日本代表で辛い時もあったけれど、でもカオツーと日本代表になってまた同じフィールドに立ってやろうって約束したから、向こうがダメでも私は絶対にやってやろうと思いました。
本当に大好きだ !君ほどわがままで負けず嫌いで愛が深くてパスがシュートのように早い人は見たことがないけど、本当は全て優しさだってこと知ってるよ。これからも末長くよろしく!
—もう一人、桐蔭学園時代のコーチの水田裕樹さんからもメッセージをいただきました!
全日本選手権大会、優勝おめでとう。
私自身学生の時には準決勝で負けてしまったので、学生で優勝する事の大変さはよくわかります。
素晴らしい試合を観せてくれてありがとう。
僕の秘かな夢であった、自分の教え子と同じ舞台に立つという夢を叶えてくれて本当に嬉しかったです。
薫にはまだまだ可能性があります。
支えてくれた多くの人たちに感謝の気持ちを忘れることなく、いろんなことにチャレンジして、さらに活躍できる人になって下さい。
FALCONS #19 水田 裕樹
—水田さんはどういう存在ですか
私に目指すべき場所を教えてくれた人です。この人がいたらこそ日本代表が近くなったし、人間的にも素晴らしい人で。人を大切にするし、親身になってたくさん話を聞いてくれた。この人がいてくれたからこそ私は慶應でラクロスをやるって決めることができたし、本当に私の4年間の大学でのラクロス人生を決めるきっかけをくれたので感謝の気持ちでいっぱいです。
みずっちは目指すべき場所を教えてくれた恩師です。「私もあの場所に立つ。」と言ってから4年かかってしまったけど、最後同じフィールドに立つことが出来て、試合後すごい喜んでくれて本当に幸せでした。高校2年の時、「薫には僕が尊敬する大久保さんのもとでラクロスをして欲しい」と言われ、みずっちがいなかったら慶應でラクロスをするという選択肢を持っていなかったと思うと感謝しかないです。そして卒業の時に言われた「仲間を大切に。常に笑顔で日々前進」ということをモットーに4年間過ごしてきました。調子が良い時悪い時もたまに落ち込んでた時も、どんな時も応援してくれて背中を押してくれる存在でした。特に今年は沢山心配してくれて、いつも試合前は「頑張れよ!」って言ってくれて、本当に沢山支えられました。
ありがとうございました!
みずっちに出会えてほんとに良かったです。
そしてこれからもよろしくお願いします!
私にとっていつまでも尊敬する最高の恩師です。
—慶應ラクロス部での4年間を振り返って
何にも変えられない掛け替えのない4年間になりました。こんな時間を過ごせたのはみんなのお陰です。最高に幸せです。本当に有難う御座いました。
—後輩選手に向けて
この部活に入った人は誰もが「日本一」に憧れ、それを目標としている人たちの集まりだと思います。だけど、100人いれば100通りの考え方があるはずです。だから一人一人日本一に向けての努力はそれぞれのやり方でいい。一人一人がこのチームのために出来ることをひたすら考えて今出せる全力を出すこと。そして誰よりも貪欲に成長したいと思い努力し続けること。途中で上手くいかなくて足踏みすることがあるかもしれない。足踏みして前に進めていない自分が嫌になる事があるかもしれない。そうやって感じることも全部成長に繋がっていると思います。あの悔しい時があったから、強くなりたいと思い努力する。そういった小さな積み重ねが自分の自信に繋がる、チームを強くする一つの要素になると思っています。
そしてこの部活は来年以降もどんどん大きい組織になっていくと思います。自分の思っていることを言うこと、発信すること。100人に向けて言うのは勇気のいることかもしれない。でもひとつひとつの言葉、行動がみんなを変えるきっかけになる、チームを強くするきっかけになると私は思ってます。だからみんな自分の思っている事は誰か一人でもいいから発信する、伝えることをして欲しいと思います。
最後に。仲間を大切に、戦う相手への敬意を持って、自分たちらしく、真剣にやるからこそ死ぬほど楽しい時間を過ごしてください!
—4年の同期に向けて
本当にどんな時も一人一人が自分のいる場所でチームのために全力を尽くせる同期を誇りに思いますし、最高に自慢の同期です。大好き!本当にありがとう。そしてこれからもよろしく!生涯の友よ
—最後に一言あったらお願いいたします
みんなのお陰で本当に最高な4年間になりました。
慶應ラクロス部を応援してくださり、支えてくださった全ての方々本当に有難う御座いました。
来シーズンもまた応援の程宜しくお願い致します。
—竹村選手ありがとうございました!また、メッセージをいただいた水田裕樹さん、平野薫さんご協力いただきありがとうございました。
(取材:森田悠資)