昨季、王座で早大に惜しくも敗れはしたが、そこから大きく成長した慶大男子庭球部。今回は新体制企画第1弾として、今季から男子部主将に就任した中村進乃介(新商4・慶應湘南藤沢高)に意気込みなどを伺った。主将そしてエースとしてチームをけん引してきた上杉海斗(環4・清風高)が引退した今、男子庭球部の浮沈はこの男に掛かっている。
【取材日 2月25日(日)】
――個人として昨季を振り返っていかがですか
いい結果も出た一方で、突き抜けきれなかったと思います。新人戦ではシングルス準優勝していいスタートを切ったんですけど、春の一番大事な大会では2回戦で負けて、インカレも予選からの出場で本戦でもあまり勝てず、目標としているところに一歩二歩届かない結果でした。それもあって、団体戦も単複で出場機会を増やしたかったんですけど、リーグでは3回しか出られず、早慶戦にも選ばれるような結果が出なかったので、物足りないシーズンだったなと思います。
――目標に届かなかった要因は
シーズンを通してモチベーションに浮き沈みがあったことだと思っています。冬に結果が出たから春も何とかなるだろうという気持ちがあって、自分のテニスに本気で向き合いきれていなかったり、春に結果が出なくて沈んでしまう時期があったりしました。調子の良し悪しはもちろんあるけれど、そこでモチベーションまで下がるのか、原因にしっかりと向き合って改善していくのかで全然違うと思うので、そこがぶれてしまったのが一つの要因だったと思います。
――チームに元気を持ってこられる試合がしたいとおっしゃっていましたが、それは達成できましたか
そこは持ち味で、最低限の仕事だと思うので、できていたと思います。でも今は最上級生で主将なので、元気だけではなくテニスで結果を出さなければいけないと思いますね。
――チームとしてはどんなシーズンでしたか
昨年は上杉さんが絶対的なエースとして存在していたのが大きかったと思います。そこにみんな信頼を置いていたし、それがあるからみんなのびのびとしていたというシーズンだったと思います。リーグで初戦からギリギリの戦いでS1にかかったときも、上杉さんがしっかり勝ってくれましたし、上杉さんがケガをしていて難しい時期もありましたが、最後はしっかりとした主将の軸が部員に安心感を与えていたと思います。王座は準優勝でしたが、今まで自分がやってきた中で一番、日本一を取れるんじゃないかと思えた1年でした。
――主将の存在が大きかったということですか
そうですね。上杉さんがコートに入ると、ちゃんとやらなきゃなという雰囲気にさせる存在感があったので、そこは本当に大きかったと思います。
「新しいことに挑戦していくことが自分たちの色」
――新チームでここまで主将としてやってきてどうですか
部を動かすことの大変さを痛感していますが、幹事全員で自分たちの代の色を出していける立場にあるので、やりがいを感じています。大変な分、これが本当に先につながるなという実感があるので、今後は今できていないところを改善していいチームづくりをしていきたいと思います。
――「自分たちの代の色」とは
伝統やきまりに縛られずに、物事を一から考えていると思います。本当にこれは日本一になるために必要なのか、今まで不要とされていたことが実は生きるんじゃないかということを考えて、実践してみることを大事にしています。新しいことに挑戦していくことが自分たちの色だと思います。
――今のチームの状態は
全員がモチベーション高くやれている点はいいと思います。誰が試合に出るかは決まっていないので、部員の中での競争力が上がっています。一方で、外に目を向けきれていないというのもあって、部内で競争しあうのもいいけれど、13連覇中の早大に勝つためには、今の自分たちの練習のレベルがそこに達しているのかを考えなければいけないですし、まだまだ足りないところがあると思います。自分自身もそうですし、他の部員にもそういう認識を持ってもらって、みんなで基準をあげていきたいです。
――主将としてはどのような役割が求められていると思いますか
二つあると思っています。一つは、チーム全体が同じ方向に向かっていける組織作りです。組織作りと言っても方法は一つではなくて、予定の組み方だったり、この時期にどういう話し合いをすればいいのかということだったりを幹事中心に考えなければいけないと思っています。もう一つは、昨年の上杉さんを見て主将がテニスで引っ張っていけることはどんなにうまい言葉よりも大きいと感じたので、そこはまだ自分に足りていないと思うし、その結果を出すための努力を主将が先頭に立ってやっていかないと誰もついてこないと思うので、大事だと思います。
――チームの目標を改めて教えてください
結果目標はもちろん早慶戦で勝つことと王座で優勝することですが、その内容にもフォーカスしたいと思っています。部員全員が、今年経験したことが将来自分の人生の中で生きていると思えたらいいなと思っているので、結果にもこだわるし、自分たちのやってきたことに自信を持ってもらえる取り組みをしていきたいと思います。
――その目標に向かって意識していることは
全員に役割を持ってもらうことを意識しています。部門の中でも細かく何をするのか明確にして、何もやらない人を出さないようにしています。
――主将になって自分の中で変わったことはありますか
自分の言動の重さは自ずと重くなってくるので、本当に今やっていることが正しいのかというのを自然と考えるようになりました。また、調子の良し悪しや試合の勝ち負けはコントロールできないけれど、調子が悪かったり負けていたりしてもその中でどう戦うかを背中で見せていくのが仕事だと思うので、そこを意識するようになりました。あとは人に厳しいことを言うのがあまり得意ではないんですけど、違うんじゃないかと思ったときは指摘することを意識しています。
――個人としての目標は
全国トップの選手に勝つためには自分も全国トップのレベルに行かないといけないとは思っているのですが、現段階では全国2回戦くらいなので、目安としてはシングルス全国ベスト16、ダブルスベスト8に入る結果を出したいと思っています。それを出さないとリーグ戦に出たときも勝ち星を持ってこられないと思うので、そのラインは意識しています。
――そのためにはどういう練習をしたらよいと思いますか
フォアが武器なのでそれを強化するということと、フットワークで相手を揺さぶるというか、守備に回る機会があってもそこで相手を揺さぶれるように工夫できると思います。練習中から、攻める球と相手に攻められないようにする球の判断をつけられるようにしたいです。また、最低限のサーブ力をつけるためにサービス練習を増やして、速さだけではなくコースや球種で相手を揺さぶれるようにしたいです。
――最後の一年になりますが、意気込みをお願いします
納得できる形で終わりたいと思うので、一分一秒を成長のために使って、自分がやらなければいけないことにひたむきにやっていきたいです。あくまで楽しく、真面目にやっていきたいと思います。
――お忙しい中ありがとうございました!
(取材:鈴木優子 写真:堀口綾乃)