第82回早慶バレーボール定期戦まであと4日。本日は、早慶男子オポジット対談をお送りする。早大・宮浦健人選手(スポ2・鎮西)と慶大・富澤太凱選手(経3・慶應)のおふたりに、ポイントゲッターとしての覚悟、そして早慶戦に向けての意気込みなど、たっぷりとお話を伺った。
(※この取材は4月22日(日)に早稲田スポーツ新聞会と合同で行いました。)
――面識は
富澤 彼(宮浦)は雑誌の中のすごいヒーローって感じでした(笑)。僕は彼と違って春高(全日本高等学校選手権)にも出ていないですし、大きな大会では予選で毎回負けていたので、本当に彼は雲の上のような存在です。
宮浦 いやいや(笑)。僕は早慶戦で初めて試合をして、スパイクをとにかく思いっきり打ってきてインパクトがすごいというか。ブロックに当たれば全部ぶっ飛ぶっていうイメージでした。
――お互いに今の話を聞いてみていかがですか
富澤 照れますね(笑)。宮浦くんと早慶戦で初めてネットを挟んで対峙して、1枚も2枚も上手だなと感じました。まだまだ勉強したいことがたくさんあります。オポジットとして宮浦くんのような形が1つの完成系かな、と思うこともあります。
宮浦 昨年の早慶戦では試合には勝ちましたが、初めて富澤さんのようなゴリゴリのパワー系スパイクを受けたので驚きました。オポジットは攻撃的なポジションですが、自分自身は高校の時「パワーが足りない」とよく言われていたので、富澤さんのようなパワーは尊敬します。他のチームにはない、変わった選手だなと感じます(笑)。
富澤 「変わっている」はよく言われます。
宮浦 (笑)
――おふたりはスパイクを左手で打たれていますが、普段も左利きなのでしょうか
富澤 僕は字を書くのとごはん食べるのは右で、運動だけ左です。
宮浦 自分は基本左で全部やっています。
富澤 僕は左利きで生まれたんですけど、1回直されました。結局運動だけ左に戻っちゃって。勝手に自分でハイブリッド型って呼んでます(笑)。
――スパイクで得意なコース、好きなコースはありますか
宮浦 僕はクロススパイクの方が好きです。ストレートコースはあまり得意ではないので、練習中です。
富澤 僕は逆にストレートが大好きです。今はクロスのインナーに早打ちできるような練習を意識していますが、なかなかうまくいかなくてストレートに逃げちゃいますね。
――スパイクを打つ時は、どのタイミングでコースなどを決めているのでしょうか
富澤 (宮浦を見ながら)俺、それめっちゃ気になるわ(笑)。
宮浦 ジャンプした瞬間にブロックがこっちにいるなとか見ながら決めています。ボールもブロックも見て打っているんですが、たまに見えない時もあります。あと、自分がクロスをよく打っているというデータがある時は、相手もクロススパイクに対するブロックを張ってくると思うので、ストレート増やしてみようかなって考えることもあります。
富澤 僕はある程度は自分の得意なコースであるストレートを軸におこうと思っています。ストレートにブロックが来るようならクロスに変えて、ダメだったらまたストレートに戻してみたいな感じです。宮浦くんほどあまり考えられていないかもしれません。考えられるプレイヤーになりたいです。でもブロックって見えない時はとことん見えないですよね?
宮浦 あー、分かります。見えないときは見えないですよね。
富澤 特に西の方の大学とか、1枚ブロックでがっと振ってくるから、そういうのちょっと勘弁してほしいっす(笑)。
宮浦 (笑)
――スパイクを打った時、調子が良いと感じるときはどのように判断されるのでしょうか
富澤 僕はスロースターターなので、セッター(吉田祝太郎=政2・慶應)にスタートの打数を多めにしてくれと言うこともありますし、アップからしっかり体が温まっていれば特に何も言わない日もあって。その序盤のスパイクを打って自分の調子を確かめるって感じです。
――宮浦選手は学芸大戦(4月15日)後のインタビューでは「2セット目中盤から調子が上がった」というお話がありました
宮浦 どうなんですかね…(笑)。あんまり考えてないですね。とりあえず毎回落ち着いて、(スパイクの)判断をやらないといけないと思っています。調子悪いとかを考えちゃうと余計自分の調子が落ちてしまうので、常にスパイクをミスしても「なぜミスったのか」とかを考えて次に生かせるようにやってます。調子がいい時はいいって認めてますが、悪い時は重く捉えないようにしてます。
――富澤選手は調子が悪いと感じるときにすることはありますか
富澤 調子悪い時はセッター(吉田)が怒りに来るので(笑)。それに対してなにくそ〜って思って打ちます。それで打っているうちに調子が出てきてっていうパターンが多いですね。セッターの彼とは高校の時からの付き合いで、ずっとコンビを組んでいるので、彼に言いたいことがあればすぐ言ってきますし、僕もそれに応えるようになるべく頑張っています。褒めてくれるときは褒めてくれます(笑)。
――スパイクの調子が良くなると、サーブやブロックの調子も上がるといった相乗効果はありますか
富澤 僕はそういうのありますね。
宮浦 自分もそうです。
富澤 僕がなんでコートにいるかって考えた時、自分が1番点数を取らないといけないポジションであって、それがしっかりできているということは調子がいいってことなので。チームに貢献しているって分かると、他のプレーも相乗して上がっていきます。
――オポジットはそのポジション上、苦しい場面でトスが上がることが多いのではないでしょうか
富澤 プレッシャー、めっちゃあります。ありますけど、そこを打ち切るポジションなので、緊張している暇があったら点を決めようって感じです。
宮浦 試合終盤とか、競っている時とかは上がってきたトスは、迷ってしまうと相手ブロックと合ってしまう可能性が高くなるので、とにかく自分は思いっきりここって決めたらそこに打つということを考えています。
――同じライトというポジションとして、お互いに聞いてみたいことはありますか
富澤 ちょっと待ってください。めっちゃ聞くことあるんですよ。頭の中整理します(笑)。
宮浦 待ちます(笑)。
富澤 打つ時、逆の右手をしっかり前に出すと左手しっかり引ける?めっちゃフォームきれいだよね。
宮浦 (富澤にフォームを見せながら)自分はここでボールを合わせるんですけど。肩慣らしのキャッチボールから体の軸を使うことは意識しています。引けば体の軸を使って打つことが出来るからです。肩を少し痛めていて、肩だけで打つと肩への負担が大きいので、体全体を使うようにしています。
富澤 ありがとうございます!
宮浦 富澤さんはストレートを打つ時にブロックに当たってもボールが飛んでいくことがあるじゃないですか。どこをめがけて打っているのかなーって。長いところを打っているのか、ブロックの脇を狙っているのかが気になります。
富澤 なるべく決め打ちを早くしてます。どちらかといえばコースを抜く印象。その延長線上に相手の腕があって、結果的にボールが出ているという感じです。どこに打つか決めるのは早くした方がいいかも。
宮浦 じゃあ2段トスとかは…?
富澤 2段トスはちょっと恥ずかしいから聞かないで。
宮浦 なんでですか(笑)。自分、2段トスどこに打てばいいか分からなくて。どうやったら決まるのかなと。
富澤 段トスはもう昔から俺は基本的に、対角線の奥に入れるのがセオリーなのかなと思ってる。
宮浦 実戦します。プレーに期待です(笑)。
富澤 対角線に打ってたら、お、俺のお陰か~って(笑)。
宮浦 早慶戦でちょっと試しますね(笑)。
富澤 まじで手つけられなくなるからやめてくれ(笑)。
――富澤選手はパワフルなサーブ、宮浦選手はコントロールサーブですが、何かサーブで気を付けていることはありますか
富澤 僕はトスを高く前に出すようにします。低いとタイミング合わせづらいですし、意外とボールの捉え方が不安定になってミスしやすくなっちゃうので。今日とかも上に前に捉えてということを意識していました。
宮浦 自分はコントロールの部分で精度を高めていきたいと思っています。人を狙うとか、空いている所を狙うとか。自分の前が鉄也さん(武藤鉄也=スポ3・東亜学園)のジャンプサーブで、後ろが幸也さん(鵜野幸也=スポ4・早稲田実業)のジャンプサーブなので、合間の繋ぎのサーブということも考えながらやってます。
――データなども重要視されるのでしょうか
宮浦 そうですね。あとは後衛の人のバックアタックを潰すとか、そこはデータもそうですが自己判断の部分も大きいです。
――宮浦選手はジャンプサーブを打たれないでしょうか
宮浦 そうですね、まだ温存しています、封印中です(笑)。打つことがあるかは分からないですけど。高校の時からずっとフローターサーブですね。
――逆に、富澤選手はフローターサーブを打つことはありますか
富澤 高校の時はロングサーブでやっていましたけど、高校の監督が変わって「ジャンプサーブやってみなさい」ということだったので、それからずっとジャンプサーブです。
――ジャンプサーブではコートのどの辺りを狙いますか
富澤 1番スピードが出るのが…ってこれ言っちゃっていいのかな、色々ばれちゃう(笑)。
宮浦 (笑)
富澤 高いところから巻いて、相手が取りづらいような軌道に変化をつけられるよう考えて打っています。
――目標にしている選手はいますか
宮浦 自分はクビアク選手(ミハウクビアク=パナソニックパンサーズ)です。高2くらいからクビアク選手の動画とかをずっと見ていました。ずっと尊敬してきましたね。
富澤 渡辺大地先生(慶應義塾高校バレーボール部監督)ですね。大地先生が現役の頃、(日吉)記念館でリーグをやっていた時に日体大の試合をちょうど僕が観戦していたんですけど、その時も本当にチームを鼓舞していて。苦しい時は先生が打って決めて、誰よりも喜ぶという姿が印象的でした。監督として2年間教わった時も、この人のようになれたらもっと自分はうまくなれるなと感じていました。渡辺先生のようなプレイヤーになることは、ひとつの自分の最終目標かなというふうに感じています。
――クビアク選手の魅力的なところは
宮浦 クビアク選手は世界的に見れば身長が小さい方で、その中でもトリッキーなプレーやスイングのスピード、トスの速さなど、小さいなりに工夫してやっているというのが魅力で、すごいなと思います。(クビアク選手はウイングスパイカーで)自分はオポジットでポジションは違いますが、自分も世界的には身長はそこまで高くないほうなので、そういうプレーができたらと思っています。
――黒鷲旗(黒鷲旗全日本男女選抜)でクビアク選手が見られるかもしれませんね
宮浦 そうですね。去年の黒鷲旗でも観戦しましたが、やっぱりひとり違うなと思いました。みんなを魅了するプレーというか、観客を引きつけるプレーが本当にすごかったです。尊敬します。
――それぞれチーム内でのライバルはいらっしゃいますか
宮浦 豪(村山豪=スポ2・駿台学園)はやっぱり攻撃の面でもばこばこ決めていて、意味が分からないくらいやばいです(笑)。自分も、そういうスパイクしたいなと思うことはありますが、なかなかできないので、ずるいなって感じです(笑)。豪に負けないように、自分も観客を引き付けられるようなスパイクを打っていきたいと思って、豪にしました。
富澤 僕はもうマルキ(マルキナシム=総3・川越東)一択です。1年生の頃からずっと試合に2人で出ていて。練習中とかでもマルキが調子良いと、嬉しい反面、「俺より目立つの、マルキ?」みたいな(笑)。負けず嫌いな面が出ちゃいます。お互いに高め合ってきた3年間だったので、マルキが試合中活躍すると、僕も負けじと決めたいな、かっこよくいきたいなと欲が出ちゃいます。それで今日(4月22日、中大戦)もお互いに相乗効果として結果を出し合って、慶大の2枚看板として得点に絡めていけたので。彼を永遠に切磋琢磨するライバルとして挙げました。
――それぞれ同学年の選手を挙げられていますが、普段から仲はいいのでしょうか
富澤 ちゃんと遊びますよ(笑)。僕らの学年は先輩からも後輩からも言われますが仲がいいらしいので。この前も同期8人でドライブして温泉に行きました。割とそういう時はみんな一緒にやることが多いですね。
宮浦 自分も豪とか、駿介(中村駿介=スポ2・大塚)など2年の同期4人で仲がいいです。豪は一緒に試合に出ることが多いので、コートチェンジする時もよく喋ります。豪のことを、駿介と自分でいじったりとか(笑)。豪とは授業もほぼほぼ一緒です(笑)。
――4月14日に行われた春季リーグ戦での早慶戦について
富澤 やっぱり昨シーズン同様、早稲田の伝統的な粘り強さだったり、勝負どころで絶対に慌てないで確実に点を取ってくるところだったり、狙うものをしっかり狙って自分たちのバレースタイルに持っていこうというところだったり。本当にリスペクトというか、早稲田の組織としての徹底ぶりに感動、敬服します。ミーティングめっちゃ長いよね?
宮浦 40分くらいですかね。早稲田はセッター(小林光輝=スポ4・創造学園)うまいし、ミドル強いしで勝手に点決めてくれてるので(笑)。なんか、ミドルの強さが自分はいつもすごいなーと思っています。
――宮浦選手からみた慶大の印象は
宮浦 マルキさんと富澤さんが乗ったらもうやられると思っていたので、とにかく最初からもう2人を潰しにいく感じで。
富澤 乗る前に潰されてしまって、気づいたら試合が終わっていました…。2セット目とか、後ろでただ待ってるだけでしたもん。
宮浦 3セット目でちょっと富澤さんが乗ってきたので、やばいなと思いました。
富澤 サーブがね。
宮浦 ギリギリ勝てたという感じです。
――今後修正していきたいところは
富澤 言える範囲でね(笑)。色々バレちゃうので。
宮浦 (笑)
富澤 自分たちが年度初めに掲げたチームスタイルを今一度徹底するだけかなと思っています。
宮浦 リーグ戦(春季関東大学リーグ戦)でたくさん課題が出ています。そこを修正することと、個人的にはブロックがあまりよくないと感じています。フォームなど基礎的なところから見直して、しっかり早慶戦に臨めればいいかなと思います。
――昨年度の早慶戦で何か思い出に残っていることはありますか
宮浦 自分は春リーグ(春季関東大学リーグ戦)に出場していなくて、早慶戦がデビューでした。割と緊張していて、自分が出て負けたりしたらどうしようとか色々考えていました(笑)。慶大が2部から1部に昇格してきた直後だったこともあって、秋(秋季関東大学リーグ戦)で当たったら嫌だなって思った印象があります。
富澤 自分たちのミスからリズムが作れなくなっていく場面が多く、その間に早大に畳み掛けられて気づいたら試合が終わっていたという感じでした。宮浦くんには決めた決めたって言われているのですが、僕自身は満足できる内容ではなくて、決定率もそんなに良くありませんでした。あの試合は反省する点の多かった試合でした。その後にも東日本インカレ(東日本大学選手権)でも当たったのですが、もっとやられてしまって。去年の6月はずっと反省していました。東日本、ボコられたよね。
宮浦 自分、東日本インカレいなかったです。
富澤 あー、そうだ!宮浦くんいなくてもボコられてしまいました(笑)。
宮浦 (笑)
富澤 実は前日まで、樫村(樫村大仁=環2・茨城高専)から「宮浦は(早慶戦に)出ない」っていう話をしていて。
宮浦 出ないと言われていたんですが、急に引っ張られてきて、えっみたいな(笑)。
富澤 出るじゃん、出てんじゃん、めっちゃ強いじゃん、ってなりました(笑)。
――昨年から学年が1つ上がって出場することになりますがいかがですか
富澤 昨年同様、コート内に4年生がいない時が多いので、僕とマルキがいかに覇気のあるプレーで示すことができるかということが大事だなと感じてます。キャッチ(サーブレシーブ)も今1年生が2人入っていて、頼ってしまっている部分もあるので。1年生が必死になって上げてくれたボールを、僕らが決め切るっていうのが責任だと思っています。プレー面での責任を感じることが多くなりました。…って言うと怒られるんですけどね。「太凱さんは、考えなくていいから!決めればいいから!」って。それでもやっぱり責任は感じます。1点1点の重みとか。
宮浦 北川(北側諒=教1・早稲田実業)が今スタメンとして入っていて、声かけの面で気にかけています。「ナイスプレー」とか、「いいね」みたいな。北川も自分に軽く当たってきてくれるので(笑)。北川が緊張しないように声がけは続けてできたらいいかなと思います。自分自身のプレーは、まだ2年生なので、伸び伸び思いっきりプレーできたらいいかなと考えています。
――大学バレーを通じて、どんな選手になっていきたいとお考えですか
宮浦 『勝負どころで決めきる選手』です。最後の1点だとか、競ってる場面、点数が欲しいという場面でトスを託されるような選手になりたいと思っています。自分はそういう場面でも思い切って打つということは意識しているのですが、それを考えすぎて肩に力が入ってしまい上手くボールがミートしない時が結構あるので、頭は冷静に、体は思いっ切りということができればいいなと思っています。精神的に柱になれるような選手になりたいです。
富澤 『慶應の顔になる』です。この言葉の中にはもちろん宮浦くんの言っていた「勝負どころで決め切る」という意味も含まれていて、そこに僕はプラスで自分が常にプレーの中心、攻めの中心にいることによってチームを回していく、僕がチームの勝利に1番貢献したいという気持ちが強いです。幼稚舎から慶應にいるので、付属校の人間として自分が頑張っていることも、みんなに見せられればいいなという思いも込めています。
――6月10日の早慶戦に向けた意気込みをお願いします
富澤 早慶戦はただの試合ではなくて、80年以上続く重みのある伝統の一戦なので、チーム一丸となって早大を倒したいと思っています!
宮浦 富澤さんも言った通り、伝統があって、OB・OGの方たちもたくさん来る試合なので、早稲田のプライドをもって慶大に勝てるように頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材:早稲田スポーツ新聞会 松谷果林/慶應スポーツ新聞会 藤澤薫)
第82回早慶バレーボール定期戦は6月10日(日)とどろきアリーナにて開催されます。
◇プロフィール◇
宮浦健人 (みやうら・けんと)
1999年2月22日生まれ/早稲田大学スポーツ科学部2年/鎮西高/身長189センチ/最高到達点338センチ/オポジット
富澤太凱 (とみざわ・たいが)
1997年9月1日生まれ/慶應義塾大学経済学部3年/慶應義塾高/身長191センチ/最高到達点335センチ/オポジット