慶大弓術部にとって春シーズンの重要な大会の一つである全関東学生弓道選手権大会が6月16日と17日に日本武道館にて行われた。5月10日に行われた早慶戦で2年ぶりに勝利しはずみをつけた慶大女子は予選で同中競射にもつれ込み、予選を突破。その後も良い流れで決勝トーナメント1回戦を突破し勝負は翌日の2回戦へと続いた。しかし目標とするベスト8まであと1勝という戦いで相手に1本差で敗戦、惜しくもベスト16という結果で今大会を終えた。
第48回全関東学生弓道選手権大会
6月16日(土)、17日(日)@日本武道館
ポジション | 選手名 | 予選 | 決勝トーナメント進出のための射詰競射 | 決勝トーナメント1回戦 | 決勝トーナメント2回戦 |
大前(おおまえ) | 橘田英里香 (経3・慶應女子) | 0 | ○× | 3 | 0 |
中(なか) | 湯浅汐里(環4・東洋英和女学院) | 3 | ○○ | 4 | 4 |
落(おち) | 小竹成実(法3・慶應女子) | 3 | ○○ | 3 | 2 |
合計 |
| 6 | 5 | 10 | 6 |
対戦校 |
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| 東京外国語大 | 麻布大 |
計 |
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| 7 | 7 |
※1回の試合で4本矢を放つ。女子団体は3人で構成され、計12本のうち上位24チームが決勝トーナメント戦へ勝ち進む。トーナメントは2チームが同時に矢を放ち始め、計12本のうち的に中(あた)った本数の多いチームが勝ち進む。
6月にしては少々肌寒い中、そんな気温とは打って変わり日本武道館では熱い戦いが繰り広げられた。全関東学生弓道大会は関東の約80の学校が集まり、各大学が関東一の座をかけ争う春シーズンの重要な試合である。
女子部主将を務める湯浅(環4・東洋英和女学院)は事前の対談で今大会での目標を「予選を突破してベスト8に残ること」と語っていた。その目標達成に向け、慶大女子チームは、本大会出場経験のある湯浅、小竹(法3・慶應女子)に加え、東京都学生連盟の記録会で3位に入賞するなどの活躍を見せている初出場の橘田(経3・慶應女子)という期待のメンバーでこの試合に臨んだ。
予選は一人4射、チーム合計12射をひき、この予選での的中数上位24校が決勝トーナメントに進める。目標とするベスト8に進むため、まずは予選を難なく突破したいところであった。しかし湯浅が「アリーナでの試合は初めて出る人にとってはうまくいくことが少ない」と語るよう、その独特の空気に呑まれたのであろうか、初出場の橘田が0中と崩れてしまう。慶大は計6中という結果で予選を突破しきれず、競射にもつれ込んだ。
競射は、14校が決勝トーメント進出の残りの4枠をかけた争いとなった。この競射一人一手(2射)、チーム合計6射という少ない矢数での負けられない勝負、より一層緊張感とプレッシャーが高まる選手陣。しかしここで簡単に負けてはいられない。昨年の予選敗退という結果から、緊張した場面でも安定して高的中を出すために初矢を詰めることを強化するべく練習を重ねてきた。その練習の成果が発揮され、初矢を全員が詰め、計5中という結果で14校中1位タイを記録。ここ一番での強さを見せ見事決勝トーナメントへと駒を進めた。
迎えた決勝トーナメント、初戦の相手は東京外国語大学。大前橘田が初矢をしっかりと的に押し込むと、チームは波に乗り初矢から9連中を記録した。この連中が相手チームに圧力をかけ、計10中で7中の東京外国語大学に大差をつけ勝利、2回戦進出を決めた。
翌日朝から行われたトーナメント2回戦。ここで勝利すればベスト8という大事な一戦、前日の1回戦の良い流れを継続したいところであった。しかし、試合はそう簡単には進まなかった。湯浅が主将としての貫禄をみせ4本すべて的に入れる皆中を出したものの、合計は6中。計7中の麻布大学を前に惜しくも1本差で敗れ、一歩力が及ばず決勝二回戦敗退、ベスト16という結果になった。
今大会、目標としていたベスト8にはあと一歩及ばなかった。しかし3年ぶりのトーナメント2回戦進出という結果は、慶大弓術部女子が目標とするインカレでの優勝、リーグⅠ部復帰への大きな一歩と捉えてよいであろう。満足のいく結果であったとは言い難いものの、予選の競射や決勝トーナメント1回戦のように、これまでの練習の成果を存分に発揮できたことは選手の自信にも繋がっただろう。目指す場所への道のりは険しくも、着々と目標地点には近づいている。まずは今週末、全国大学弓道選抜大会でひと回り大きくなった彼女たちの新たな一歩に期待したい。
個人戦は入賞者なしに終わる
選手名 | 二次予選 |
宮﨑いずみ(政2・致遠館) | ○○× |
菊池瑠璃(文2・鷗友学園) | ○× |
橘田英里香(経3・慶應女子) | ○○× |
川島友花里(経4・東京女学館) | × |
※射詰…サドンデス形式で各選手順番に矢を放っていく試合形式。3本目までは尺二(36cm)の的、4本目以降は八寸(24cm)の的を使用する。順位決定は同じ的を狙い、中心に近い順に順位を決定する遠近競射が行われた。
団体戦後に行われた個人戦には6月10日に行われた予選の結果、川島(経4・東京女学館)、橘田、菊池(文2・鷗友学園)、宮崎(政2・致遠館)の4人が出場した。射詰形式で行われたこの個人戦では4選手いずれも尺二寸的の段階で抜いてしまい、残念ながら入賞には至らなかった。
(記事:松嶋菜々美)
監督・選手コメント
越後雅之監督
―――ベスト16という結果に終わりましたが、今大会を振り返って
選手自体は頑張ってくれて、今までの試合の積み重ね、経験がある意味全部出し切れた人と、心の中でもやもやっとしていて迷ってしまって力を出し切れなかったという大きく2つあるなという感じです。
―――今回の結果をみると、回ごとに的中に波があったと思いますが、今回の敗因はどこにあるとお考えですか。
やはり、自分の頭でどうやってひくのかをいかにクリアにして射位に入っていくのかというのが課題だと思っています。去年も、大きな試合あるいは重要な試合で初矢から抜いてしまって自ら崩れて負けてしまったという試合が多かったので、今年は初矢をしっかり中てていこうという練習をかなりしてきました。その結果が、例えばトーナメント1回戦の時や予選の競射の時にはしっかり出し切れたのですが、予選やトーナメント2回戦では初矢を抜いてしまいそれが不安材料になり迷ってしまうという形だったので、その点が敗因なのではないかと思います。
―――練習での的中を試合で出せない、という昨年からの課題に関しては
先ほどと少し被るのですが、初矢からしっかり中てていくということが一番の課題であると思っていました。それから、自分の癖というのが練習や練習試合では出てこなくて中っても、負担の軽い試合で自由にのびのびとひいてしまっていた分、大きな試合の時に自分の癖が急に出てしまう、それに対応しきれず負けてしまうのではないかと思っています。
―――主将湯浅選手は12射11中という高的中でした
素晴らしいなと思いました。就活中で、あの選手たちの中では練習量は一番少なく、射自体もあまりよくなかったのですが、試合の中で自分をきちんと出し切って、自分の射をやり切るという、選手として責任感というのがすごく後輩の人たちに対しての見本になるのではないかと思います。
―――来週の選抜大会にむけて
自分の射をしっかりやり切る、そして今までの課題である、頭の中で自分の射を整理して射位に入るということができればきちんとした数字が出せる選手たちだと思うのでそれをやり切るのみです。
湯浅汐里主将 (環4・東洋英和女学院)
―――自身にとって最後の全関、どのような気持ちで臨みましたか
他の選手と比べて就職活動で十分な練習ができない中でこの全関に出場することが決まり、しっかり中てないと示しがつかないな、と考えて臨みました。また、最後の全関ということは特別に意識せず、ただアリーナという会場でしっかり中てていこうという気持ちで臨みました。
―――目標とするベスト8には届かなかったが、チームとして試合を振り返って
全関で決勝トーナメント2回戦に進出できたのは三年ぶりでした。予選では的中が伸び悩んでしまい、ぎりぎりで競射に引っかかったという形ではありましたが、他校より多くアリーナでひく経験をして決勝に進むことができたことは良かったと思います。また、順当にいけば勝ち進めるなという自信はありました。
―――自身は12射11中だったが、個人としての結果はどう考えているか
1日目で中てられたことは2日目同じようにひけば抜かないという自信になりました。二日間かけての試合で1日目を踏み台として2日目に挑めたことは良かったと思います。
―――今大会で見つかった課題又は良かった点は
私が初めてアリーナでひいたときが1中だったように、アリーナでの試合は初めて出る人にとってはうまくいくことが少ないと考えていて、橘田は今回その初めてのアリーナでの試合でした。橘田にとって今回の経験が次にアリーナで行われるインカレに向けて収穫のあるものとなれば良かったと思います。また、チームとしても今回勝ち進んで一本でも多くひけたのは次回の大会に向けて大きな一歩となったと思います。この経験を次に活かしていきたいと思います。
―――来週の全国選抜に向けて
昨年の全国選抜には良い思い出があるので今年もしっかりひけるといいなと思います。4本のうち4本中てるということに最後までこだわり、上位を目指していきたいと思います。