8月末に開幕した秋のリーグ戦。ケイスポではこのリーグ期間中、選手のコラムを数回にわたってお届けしていく。記念すべき第1回は、ここまで攻守にMVP級の活躍を見せている吉敷秀太(政4・慶應義塾志木)。慶大のバスケを象徴するハッスルプレイヤーである彼が、いかにして今季大ブレイクを遂げたのか、その秘密に迫った。
無尽蔵のスタミナでコートを縦横無尽に駆け回り、リバウンドの局面では果敢にボールに飛びついていく。泥臭くルーズボールをもぎ取ってベンチを沸かせ、ボードを使ったフリースローで会場をどよめかせるのも、もはや恒例行事となった印象すらある。慶大の試合を見ていた他校の選手や観客が、「あの慶應の8番って誰?」と話しているのを耳にすることも多い。それほどまでに、大学バスケ界における吉敷の注目度は高まっている。
繰り返しになるが、今季の吉敷の活躍ぶりは目を見張るものがある。多くの項目でリーグ上位の数字を叩き出しているが、特筆すべきは、「思い切って取りに行くぞという気持ちと、下から滑り込んでしつこく、という部分を意識している」というオフェンスリバウンドの強さ。1試合平均4.5本は、堂々のリーグ2位。上位の他の選手は190、200cm級のビッグマンであることを考えると、178cmと小柄な吉敷がそこにランクインしているのは驚異的だ。サイズの無い今季の慶大がリバウンドでむしろ優位に立てているのは、彼の貢献が大きいと言えるだろう。
さらに攻撃面での成長も目覚ましい。開幕戦で12得点を挙げると、勢いそのままに全4試合で二桁得点をマーク。リバウンドを押し込むだけでなく、力強いドライブで相手のファウルを誘い、フリースローから得点を重ねるケースも目立っている。直近の日体大戦では3ポイントを3/6で沈めるなど、アウトサイドの精度も試合を追うごとに高まっている印象だ。当の本人も、「オフェンスの面でここまでやれるとは思ってなかった」と驚きを隠さないが、エースの山﨑純(総3・土浦日大)の不在を十分以上にカバーしているのは間違いない。
そんな吉敷も昨季まで、というより今季のリーグ戦が始まる直前までは苦悩の日々が続いた。下級生の頃はほとんど出番が無く、昨季のリーグ戦でも全18試合のうち、出場はわずか5試合で計18分。ベンチを温めながら、「自分が出ていたら、今のボールも追えただろう」と感じることもあったという。今季の早慶戦でも、同期の小原陸(政4・慶應義塾志木)が大車輪の活躍を見せた一方、自身は思うような結果を残せず、「自分の仕事が全うできず、情けなかった」と悔しさをにじませた。「自分たちベンチ陣に足りないのは、何より“自信”だと思う」、試合後にはそんな言葉を残していた。
その“自信”を掴んだのは、開幕の江戸川大戦、部の公式SNSでもベストプレーに選ばれた場面だった。味方のシュートのこぼれ球を相手ベンチに飛び込んで確保し、鳥羽陽介(環4・福大大濠)の3ポイントへと繋げたシーンは、おそらく試合を観た全員の記憶に残っているはずだ。「自分の中でも熱くなる瞬間だったし、これが出来るなら自分もやっていけるな」、そう確信したという。その後の素晴らしい活躍については、これまでに散々述べてきた通りだ。高校時代からのチームメイトである小原も、「今まであまり出場機会は無かったけど、試合に出ればチームに貢献してくれる頼もしい選手」と同期の飛躍を喜んでいる。
しかし吉敷は結果に満足することなく、「リバウンド後のボール処理や、ファウルの多さは改善しないといけない」と更なる向上を目指している。また憧れである篠山竜青選手(川崎ブレイブサンダース)のように、「コート上で誰よりも声を出して、後輩がやりやすい環境を作ってあげたい」とプレー以外の面でもチームへの貢献を誓った。開幕から強豪との試合が続く中で2勝2敗という結果には、吉敷も手応えを感じている。「チームの雰囲気も良いので、調子をもっと上げていって、1部昇格に突き進みたい」。これからもストイックに、泥臭いプレーを連発して、慶大のバスケを盛り上げてくれるはずだ。
(記事:徳吉勇斗)
☆リーグ戦第5・6節スケジュール
日付 | 開始時刻 | 対戦相手 | 会場 |
9/8(土) | 14:40 | 国士館大 | 日体大世田谷キャンパス |
9/9(日) | 13:00 | 立教大 | 日体大世田谷キャンパス |