試合終了の笛が響く中、その場に立ち尽くす選手たちの姿があった--前週に閉幕した春季リーグ戦ではチーム内での歩調が乱れ、連敗から抜け出せなくなった慶大。背水の陣となった1部・2部入替戦でも、その逆境を跳ね返すだけの力を発揮することはできなかった。第3セット以降、自陣ミスから失速し、セットカウント1-3で敗戦。慶大は、2017年春以来の2部降格が決まった。
2019年5月25日(土)
春季関東大学男子バレーボールリーグ戦
1部・2部入替戦 慶大×青学大
@駒澤大学玉川キャンパス体育館
得点 | ||
慶大 | セット | 青学大 |
23 | 1 | 25 |
25 | 2 | 23 |
14 | 3 | 25 |
18 | 4 | 25 |
出場選手(サーブ順) | ||
ポジション | 背番号 | 名前(学部学年・出身校) |
WS | 23 | 小出捺暉(環2・駿台学園) |
MB | 12 | 清水柊吾(総3・広島城北) |
OP | 21 | 富澤太凱(経4・慶應) |
WS | 5 | 宮川郁真(総2・松本県ヶ丘) |
MB | 19 | 樫村大仁(環3・茨城高専) |
S | 1 | 吉田祝太郎(政3・慶應) |
Li | 7 | 永田将吾(総2・高松) |
Li | 17 | 加藤真(商3・慶應) |
途中出場 | 2 | マルキナシム(総4・川越東) |
| 26 | 谷舜介(環2・徳島城東) |
| 6 | 片波見和輝(文4・成田) |
第1セット、立ち上がりからスパイクをなかなか一度で決められず、相手にブレイクを許してしまう。だが、慶大も1部の意地を見せた。Li永田将吾(総2・高松)が窮地を救うレシーブを連発したほか、樫村大仁(環3・茨城高専)のサーブで崩れたところを清水柊吾(総3・広島城北)がダイレクトスパイクで決めるなど、個々の好プレーが光った。その後も取って取られてを繰り返し、迎えた終盤。慶大は相手ミスなどに助けられ、20-21と1点差まで迫った。しかし最後はクイックで逃げ切られ、慶大が23-25でセットを落とした。
第2セット、序盤はサイドアウトの取り合いとなった。流れが変わったのは8-10の場面から。連続ブロックポイントを含む4連続得点で逆転に成功すると、直後には富澤太凱副将(経4・慶應)の強烈なサービスエースでさらに突き放す。このリードを守りたい慶大は、エース富澤を中心にサイドアウトを切っていった。終盤、富澤のスパイクがブロックに落とされ23-23と追いつかれてしまうが、最後は吉田祝太郎(政3・慶應)が土壇場でサービスエース。慶大は接戦をなんとか逃げ切り、第2セットをものにした。
しかし第3セット、サーブレシーブの乱れから序盤に3連続失点を許してしまう。不穏な空気は払拭できなかった。相手ミスなどに助けられて9-7と逆転するも、直後からスパイクミスが相次ぎ、4連続失点。その後も不安定な展開が続いた慶大は、12-16の場面からマルキナシム主将(総4・川越東)を投入した。しかし、噛み合わない歯車を1人で直すことはできない。慶大はトスやスパイクのミスが止まらなくなり、6連続失点などで一気に引き離されてしまった。最後もトスが合わず失点。11点の大差をつけられこのセットを落とした慶大。ついに崖っぷちに立たされた。
このセットを落としたら2部降格…そんな状況で迎えた第4セットだったが、慶大は悪い流れを断ち切ることができなかった。タッチネットやスパイクミスなどで失点を重ねたほか、自陣スパイクがブロックに捕まり、サイドアウトを一度で切れなくなった。中盤にはサーブレシーブが乱れ、5連続失点。一時、10点の大差をつけられた。10-19の場面から富澤副将の連続サービスエースを含む5連続得点で意地を見せるも、ここから大きな差を詰め寄るだけの力は残っていなかった。18-25で逃げ切られ、試合終了。無念の2部降格が決まった。
「正直、まだ受け入れられていない」。試合後、小出は苦しそうにこう話した。昨年のスタメンの大半が引退したわけでもなければ、急に調子を落としたわけでもない。むしろ個々人のレベルは上がっているように感じるときもあった。なのに、勝てない。それは、「バレーボールは6人でやるスポーツ」(マルキ)だから。その一言に尽きるだろう。
チーム内で助け合い、補い合い、信じ合う。それでこそバレーボールだ。率直に言って、今季の慶大は、「個人で戦っているのか」と感じてしまうほど、チームとしてのまとまりに欠けていた。そのような状況では、本来の力を発揮することはできないだろう。チームスポーツである以上、やはり求められるのは「チームで勝つ力」だ。これは、決してコート上の選手6人の能力値を足し合わせたものではない。発揮の仕方、組み合わせ方、そしてそれぞれの相乗効果によって、その力は大きく変化する。強いチームは「6人が強い」のではない。「6人で強い」のだ。
2部降格という挫折を経験した慶大。もう一度原点に立ち直り、チームを作り直すことが必要だ。いや、「作る」という表現はおかしいのかもしれない。主将や4年生だけがチームを「作る」のではなく、一人一人が主体的にチームに関わっていけば、自然とそういうチームに「なる」はずだ。雨降って地固まるか。今後の慶大の進化に期待を込めて。
(記事:藤澤薫・菊池輝 写真:堀口綾乃・持丸嘉昭・藤澤薫)
以下、コメント
マルキナシム主将(総4・川越東)
――今の率直なお気持ちを
悔しいですね。
――サイドアウトをなかなか切れない場面が続くなど、苦しい展開も多くありました
サイドアウトはもちろんそうなんですけど、1週間、入替戦に向けての練習という意味では、やってきたことを出せたのかな…ただ、(富澤)太凱以外のところはブロックで抑えて、太凱に関してはディグで反応してくるっていう、うちが今まで1部でも苦戦してきたやり方を相手がやってきて。そこはやっぱり相手が上手かったと認めざるをえないです、サイドアウトに関しては。
――第3・4セットは序盤に点差が広がってしまいました
今日への気持ちはまあ全員強かったです。それのおかげで、こういう結果で終わっちゃいましたけど、試合を通して気持ちを切らせた人は誰もいなかったと思います。ただやっぱり、今日だけ、今週だけ頑張っても仕方ないことだったなと思います。
――試合後のミーティングでは
終わったあとは正直もうミーティングにならないですね…みんな悔しいから。でも、春から振り返ってみて、気持ちの部分でチームがどうしても1つになれたとは言えない結果に終わっている。その部分に関してちょっと振り返って、もう一回チームを作り直そうっていうことで今日は終わって。また再開したときに全体でミーティングして、チームを作り直すことに一番フォーカスしてやっていかなきゃいけないなって思います。
――チームを立て直すために何が一番必要でしょうか
やっぱり…今日の試合中もずっと言っていたんですけど、誰かのせいにしない。バレーボールは6人でやるスポーツ。技術面のことを一つ一つ気にし始めると、どうしても他人のせいにしてしまうというか、原因探しみたいなものをしてしまう。それをもう一回捉えなおすというか、戦うにあたってまずどういう心の持ち方で戦うのか、チームをどういうふうに練習から作っていくのかっていうのを、もう一回考えていかないとなって思います。
――ご自身にとって最後の1年、その半分が経過しました
半年やってみて、自分が主将として情けなく、チームもまとめられなかったっていう現状が出ているので。まさか2部に落ちるとは思っていなかった。だけどもうこれは一回現実として受け止めて、残り半期で結果残して、1部に上げることをしないといけない。僕だけじゃなくて4年は全員そう感じているはずなので、そこでどうやって気持ちの部分で下級生だったり、自分たちにアプローチしていくのかっていうのをもう一回明確にしていきたいです。
――今後に向けた決意を
気持ちの部分で慶應が生まれ変わった姿を…今もこれだけ応援してくれる人たちがいるので、その人たちにもっと僕らが戦って楽しんでいる姿、喜んでいる姿っていうのを見せられるように残り半年やっていきたいと思います。
富澤太凱副将(経4・慶應)
――試合を終えられて
不甲斐ない試合をしてしまったと思っております。
――この入替戦はどのように臨みましたか
昨日の練習まで、チームが今まで以上に1つになろうと話している中で良い雰囲気を持って臨めたと思っていたのですが、そこは僕たち最上級生のまとめ方が甘く、勝負所でチームがばらけてしまったのかなと思っています。
――コート上の最上級生から見て、今日のチームの雰囲気は
僕の中では勝ちに向かって進んでいるのかなと思っていたのですが、間宮コーチから客観的な意見をいただきまして。誰かのせいにしている風潮がまだあり、(チームが)1つになれていないというご指摘をもらいました。今後のシーズンに向けてどうチームがまとまっていくかがすごく大事だと感じました。
――試合で出しきれなかった点はどういったところでしょうか
相手を上回る、点を取りに行く気持ちが足りなかったのではないかと思います。
――富澤副将のサーブが試合の流れを変えました
元々技術のところは練習していたんですけど、最後は気持ちだなと。あれは僕の気持ちが乗ったサーブだったので、ああいうプレーが試合を通してできればどんなところにも負けないのかなと思います。
――今後に向けた決意を
応援してくださった方々の期待を裏切るようなことをしてしまい、チームの顔として本当に申し訳なく思っています。しかしまだシーズンは続くので、また休みを入れて、今後とも応援に来ていただければ幸いです
清水柊吾(総3・広島城北)
――今の心境は
悔しいのが一番ですね。
――後半流れを掴まれる展開になりました
チームや周りに対して声かけはしていたんですけど、割と自分のことでいっぱいいっぱいになってしまって。そこでミスが続いたりしたときにすぐ切り替えられなかったので、それが流れを掴まれた理由の1つかなと思います。
――入替戦に向けて、チームの雰囲気はいかがでしたか
雰囲気というのを大事にしていて。1週間で技術とかは変わらないので、いかに入替戦に向けてチームの雰囲気を上げられるかというのを念頭に置いて練習してきました。
――1部残留のためには何が足りなかったのでしょうか
間宮コーチに言われたんですけど、みんな自分のことしか考えてなくて、チームのことを…
うまく表現できないんですけど、チームとして1つになれていなかったというのがあると思います。
――今後に向けた決意を
リーグ戦・入替戦を通して、自分の技術不足だったり足りない部分だったり、メンタル的にも(課題が)いっぱい出てきたので、そこをしっかり詰めて1部に上がれるよう頑張りたいです。
小出捺暉(環2・駿台学園)
――今の率直な気持ちをお聞かせください
悔しいですね。勝てると思っていたっていうのがあったんですけど、まあだからこそちょっとなんか…なんで負けたんだろう、みたいな感じで。正直言ってちょっとまだ受け入れられていないというか、そんな感じです。
――サイドアウトをなかなか切れないなど、苦しい展開が続きました
そうですね、序盤はまあまあ良かったと思うんですけど、中盤から終盤にかけて、やっぱり集中力とか、言葉の掛け合いというか…チームがどんどんバラバラになっていっちゃったなって思うので。そこを修正していきたいと思います。
――チームの雰囲気はいかがでしたか
入替戦に向けて頑張ろうって、結構(雰囲気を)上げて練習とかできたと思うんですけど、やっぱり…ちょっと点差がついちゃうと「だめだ…」ってなって、どんどんどんどん離されちゃう、っていう『いつもの(パターン)』が出ちゃったので、そこでもっと耐えられるチームを作っていきたいです。
――ご自身は今季ずっとコートに立ち続けられていました
まあずっと負けているので…やっぱり精神的にちょっときついですね。2部はもう全部勝つつもりで、次の(秋の)入替戦に勝って、また1部で戦いたいです。
――1部復帰のために、慶大に必要なものは
今日、間宮さんからも言われたんですけど、やっぱり、チームとしてどう戦うか。結構バラバラになりがちなんで、そこでまあみんなで協力して、話し合って、まあチームとして強くなれれば、また1部に上がれると思います。
――今後に向けた決意を
1部に上がって…目標である、全日本インカレでもベスト4までに入れるように頑張ります。