まさに「挑越」を成し遂げた。「挑越」とは文字通り、挑み越えていくという意味の今年のチームスローガンである。そして春シーズンにおいて慶大が「越える」べき相手は無論、宿敵・早大であった。3月の東京六大学バスケットボールリーグ戦で早大に20点差で敗れてはや3か月。2年連続で早慶戦に敗れている悔しさをバネにし、反骨心で練習に取り組んできた。そして掴んだ大金星。77回を数える伝統、そして母校への誇りを胸に選手たちは敵地・早稲田アリーナで躍動した。
2019/06/22(土) @早稲田アリーナ | |||||
第77回早慶バスケットボール定期戦 | |||||
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
慶大 | 15 | 15 | 24 | 17 | 71 |
早大 | 14 | 21 | 14 | 14 | 63 |
◆慶大スターティングメンバ―◆ | |||||
| #4 山﨑純 (総4・土浦日大) | ||||
| #5 髙田淳貴(環4・城東) | ||||
| #6 工藤翔平(政4・慶應) | ||||
| #10 岩片悠馬(環3・広尾学園) | ||||
| #14 人見快(法2・慶應志木) |
第77回を迎えた今年の早慶戦は早大戸山キャンパスに昨年12月竣工したばかりの早稲田アリーナで行われた。そのため早大関係者が観客席を多く占め、まさに完全アウェーの状況。その真新しいコートに慶大の選手が駆け出してゆく。大歓声の中、伝統の一戦の火ぶたが切って落とされた。
第1Q、早慶戦独特の雰囲気と緊張からか、試合開始当初は両校選手のショットがリングを捉えられない展開が続いた。開始から1分半、早大が3ポイントで先制するも慶大は主将でエースの山﨑が3ポイントを沈め早々に同点とする。慶大はミドルを中心にオフェンスを展開しつつ、リバウンドを積極的に奪い、セカンドチャンスに繋げた。一方のディフェンスも序盤は早大の高さのあるインサイド陣に苦戦し失点したものの、後半に入るとしっかりと対応を見せた。山﨑が11得点を挙げる活躍を見せるも早大も譲らず、15-14で第1Qを終えた。
第2Q。第1Qの途中から出場した成長著しい注目のルーキー、水谷祐葵(環1・四日市工業)がいきなり連続で3ポイントを沈め会場を沸かせる。そして山﨑がレイアップ、ゴール下のショットを立て続けに決め慶大は6点のリードを奪う。たまらず早大はタイムアウトを要求するも慶大の勢いは止まらず、髙田が3ポイントを沈めるなど得点を重ねる。しかし終盤、早大のミドルが立て続けにヒットし逆転を許してしまう。結果、慶大は30-35で前半を終えた。
前半で特筆すべきなのは主将・山﨑の圧倒的な存在感である。シュートはもちろんのこと、何度も見せたルーズボールへの積極果敢な飛び込みなど山﨑が見せる華麗なプレーに会場全体が引き込まれ、一挙手一投足に歓声が上がった。慶大の前半の得点30点のうち、実に17得点が山﨑によるものであった。
後半3Q、盛り返したい慶大はミドルを積極的に放ち、安定して得点を重ねる。こちらも成長株のガード・人見が2本の3ポイントを沈めると、山﨑が3連続得点でチームを鼓舞する。慶大応援席から山﨑コールが巻き起こる中、慶大の得点源としてチームを支えてきた髙田がジャンプショットを決める。そしてこのQ途中で水谷の名前がコールされると観客席は水谷コールに包まれ、それに応えるように水谷は積極的なプレーを見せた。終盤には人見のアシストを受けた泉友樹雄(経4・慶應志木)がバックシュートを決めるなど、まさにチーム全員で得点を積み重ねた。早大もミドルで応戦したものの積極的なディフェンスを展開した慶大が勝り、慶大は54-49とこのQ見事に逆転を果たした。
勝負の最終4Q。泉がミドルを沈めると、この試合インサイドのディフェンスで大きくチームに貢献してきた工藤が3ポイントをヒットし、リードを8点とする。工藤がハッスルプレーを見せ会場を沸かせ、全員でリバウンドを奪取する。必死のプレーで早大の反撃を許さず、僅差のまま残り時間が少なくなってゆく。工藤のアシストを受けた岩片がバックショットを決め、さらに髙田が連続でジャンプショットを沈め、残り時間が1分となった時点で点差は7点。ここで早大はファールゲームを選択したが慶大はフリースローを確実に沈め点差は縮まらず。そのまま71-63で慶大が勝利を収めた。
最高の舞台で、最高のパフォーマンスを見せ、そして最高の結果をもぎ取った選手たち。この勝利はとても一言では書き表せないような大きな意味を持つ。そのことは試合終了直後の山﨑の涙が全てを物語っていた。新チーム発足から鍛えて続けてきたディフェンス、果敢なルーズボールへの飛び込み、そしてリバウンド。地道に積み重ねてきたもの全ての歯車が噛み合い、選手だけでなくスタッフ含めチーム一丸となった結果、早慶戦勝利という目標を達成することができた。会場の誰もがその勇姿に心を奪われた。だが、選手たちは既に前を向いている。早慶戦勝利はあくまでも通過点。秋のリーグ戦1部昇格という最大の目標に向け、すでに気持ちを新たにしている。主将・山﨑を中心に着実に成長を遂げてきた慶大。“挑”み続ける彼らに“越”えられない壁など、あるのだろうか。
(記事:染谷優真、写真:船田千紗・柴田航太郎)
山﨑純(総4・土浦日大)
――今日の試合を振り返って
もちろん勝てたことは嬉しかったんですけど、自分たちの代だけの勝利じゃなくて、今まで本当に去年もそうだし一昨年もそうだし、昔からの先輩の積み重ねで勝てたと思うので、そういう部分で本当に今感謝の気持ちが大きいです。
――早慶戦への気持ちが大きかった印象だが
やっぱり早慶戦は特別な舞台で、最後は気持ちの勝負になるなというのが分かっていたので、そのことは常にチームメイトにも言っていたので、そういう部分では早稲田に気持ちの部分で勝っていたのかなと思います。
――六大学で早大に敗れてからの今回の早慶戦でした
六大学は30点差くらいだったと思うんですけど、やってきたことは本当に基礎的なことでディフェンスだったりルーズボールだったり精神面だったりでした。それを今日みんな出してくれたので勝てたんじゃないかなと思います。
――ご自身も何度もルーズボールに飛び込んでいました
もうあんまり頭では考えていなくて、気持ちで飛び込んでいました!!
――途中足を痛めている部分もありましたが
前半に相手の膝が入ってそこが後半痺れていたのですが、自分がベンチに戻っている時に4年生を中心にみんなが繋いでくれたので、本当に全員で勝ち取った勝利かなと思います。
――ベンチに戻っている時間に会場が盛り上がっていたがどんな思いでしたか
頑張ってくれ!と思っていました。みんな練習でやっていたことを出せていたので、みんなの活躍が本当に嬉しかったです。
――前半5点ビハインドからの逆転勝利でした。優勝が決まったときの気持ちはいかがでしたか
最初はめちゃめちゃ嬉しくてはしゃいでいたのですが、気が付いたら泣いていました。すごく涙が出てきて…大谷部長も最後仰っていましたけど、大谷部長がトロフィーを閉会式で渡せるのが最後だったので、そういう部分も色々と重なって、本当に周りから色々とサポートされていることを感じていたので、そういう部分がすごく嬉しかったです。
――春の目標を達成しました。ここから秋の開幕に向けての目標をお願いします
早慶戦で勝ったことに満足するのではなくて、秋もしっかりとリーグ戦に勝って1部に昇格するというのが秋の目標なので、しっかりと1部に昇格してインカレに出て後輩が来年1部でプレーできるように最後4年生で果たしたいなと思います。
髙田淳貴(環4・城東)
――今日の試合を振り返って
勝てて最高の気持ちです。それから、個人的に1年生のときは勝ちましたけど、試合には全く絡んでいませんでした。2年、3年でスタメンを任せられるようになって何もできず悔しい思いをしてきました。個人的に描き方が全く違う試合だったので、そこを本当に勝ち切れて嬉しく思います。
――後半にパフォーマンスが上がった印象がありますが
前半戦ってみて5点ぐらいリードされている状況で前半を折り返しましたが、印象としてまだまだプレーできる手応えがありました。第3Qの入りで強気で行こうということを話しましたが、それがいい方向に働いたと思います。
――ディフェンスについて
シュートが入らない中、みんな声を出して我慢してディフェンスをしてくれてチームとしてすごく良かったと思います。それ以前にスカウティングなどを含めてチームとして向こうがしたいことを全て研究して守るという練習をしてきました。その成果が出たと思います。
――第4Qはリードしている展開でしたが、どういう心境でプレーしましたか
5点ぐらいリードはありましたが、全然勝っているという気持ちにはならなかったです。ずっと肉薄した展開の中でプレーしていたので。その中で終盤の方で集中力を高めて自分が2本3本連続でシュートを決めることができて仕事ができたと思います。
――秋のリーグ戦に向けての意気込み
春は早慶戦勝利という最高の結果を置いて夏合宿などで土台を作り直して一部昇格とインカレ出場を目指して頑張っていきたいと思います。
工藤翔平(政4・慶應)
――早慶戦勝利おめでとうございます
ありがとうございます。
――今の率直なお気持ちは
本当に勝ったのかってあんまり実感ないんですけど、チームで勝てたのが本当に良かったです。
――今日の勝因は
ディフェンスでしっかり相手のやりたいことをチームとして守ろうとしてきたところを守れたっていうところと、それを4Qまで一試合通してできたっていうことです。あとは山﨑髙田が点を決めてくれて僕は基本ディフェンスで貢献しようって思っていたので、できたのかわからないですけど良かったです。
――僅差の展開でした
僕たちのほうが格下なので勝つにしても負けるにしてもこういう試合になるっていうのはもともと言われていたんですけど、その中でやりたいことが一試合通してできたっていうのが大きくて、最後は髙田のところでシュートを決めてくれて向こうが外してくれて点差ついて勝てました。
――オフェンスに関しては
最初一本打って入らなくて、今日はやっぱり緊張してシュートあんまり当たらないなって思ったので、ディフェンスとかオフェンスリバウンドのほうで今日はできるだけ貢献していって、その流れで後半シュート打って一本入ったのでそれは本当に良かったです。
――ディフェンスでは飛び込みなど気持ちが表れていたプレーが多くみられました
僕は泥臭く、ああいうところでチームのムードを変えたりだとか、そういうところは入部した時からやってきたことがこうやって最後の早慶戦で出たっていうのが僕にとって本当にうれしかったです。
――改めて早慶戦3年ぶりの勝利についていかがですか
本当に勝てると思っていなかったので、本当に勝てて、やっぱり今まで頑張ってきたことは最後報われるんだなと思ったのでこの調子で、気抜かずにリーグ戦に向かっていこうと思いました。
泉友樹雄(経4・慶應志木)
――今日の試合を振り返って
練習で対策してきたこと、キーマンをしっかり抑えることだったりというのは出来たと思います。今試合に出てる人達だけでは無くて、ベンチもベンチ外もOB、OGも含めてみんなで勝った試合だったと思います。
――勝った時は
本当に嬉しくて。正直最後コートに立ってたかった気持ちはあったんですけど、現状試合に出れたことが幸せだったので、結果本当に勝てたことが幸せでした。
――山﨑選手に変わっての出場でしたが
坂口先生から言われてきた事ですし、それが自分の役割だと思っていたので、いつそういう時が来てもという準備はしていたので、ちゃんとやれて良かったと思います。
――ゴール下でゴールを決めた時は
本当に覚えてなくて、8番(早大・津田選手)が来たっていうのはわかってましたけど、そのあと何したか覚えてないです。
――2つ目の得点は
積極的にシュート狙っていけと言われていたので、それが良い結果につながって良かったと思います。
――短い時間での出場でしたが
短い中でも自分のできることはわかってますし、先生からも出た時は声を出してっていうのは言われてましたので、そこは自分に役割を全うできたと思います。
――ファンに向けて一言お願いします
春の目標を勝てたことは大きかったので、この流れを秋につなげて1部昇格できるようにみんなでチーム一丸となって頑張っていきたいと思うので、応援よろしくお願いします。
岩片悠馬(環3・広尾学園)
――今のお気持ちはいかがですか
今シーズン始まってからずっと早慶戦勝利というのを考えてやってきたので、勝ってうれしい、本当にそれだけです。
――今日の試合を振り返って
自分はあまり得点で貢献できなかったのですが、スタメンで起用された理由にもリバウンドが取れるということがあると思うので、そういう部分は徹底できたかなと思います。
――今日の勝因は
早稲田より気持ちが強かったと言ったらそれだけなのですが、練習でやってきたことを全員が出せて全員良いプレーができて純さん淳貴さんだけに頼らずできたということが良かったと思います。
――オフェンスではどのようなことを意識されましたか
4年生の2人がやりやすいようにというのがチームでやっているオフェンスだったのでそれを意識していました。あとはあわせて動けるようにとかフリーを作ってあげられるようにということを意識してやっていました。
――リバウンドに加えていつも以上にディフェンスの強度が強かったようですが
途中でコーチからも自分が三線にいるようにと言われていたので三線に残って、その結果ブロックできたりして良かったです。
――身長の高い相手のインサイドに対してどのような対策をされましたか
ベースライン側にあえて行かせて2人でついて、というのをやるという話をしていたのですが、思ったほど1対1をしてこなかったので大丈夫でした。
――秋に向けての意気込みをお願いします
今良い感じにチームができあがってきていて、その途中で早慶戦に勝利できたのでこの流れをそのままリーグ戦に向けて一部昇格という目標を達成できたらいいなと思います。
水谷祐葵(環1・四日市工業)
――初めての早慶戦でしたがいかがでしたか
試合の出だしは緊張感があり、思うようにプレーはできませんでしたが、先輩からもらったパスをリングにつなげてシュートを決めることができて本当に良かったと思います。
――今日の試合を振り返って一番良かったと思うところはどこですか。
シュートが入ったのはもちろんですが、相手は一部リーグで活躍するチームなので勝つためにはディフェンス面を強化しないといけないと感じたのでそこを重視し、しっかりとできて良かったです。
――初めての試合でフリースローを入れたり3ポイントを決めたりと沢山の活躍が見られましたがどんなことを意識しましたか
自分自身が下級生のうちは思い切ってプレーすることができるので、コートに入ると徐々に緊張が解け、必死になってプレーすることができました。
蛇谷幸紀(環1・近大付属)
――勝利した率直な心境
初めての早慶戦でどんな感じか分からなかったんですけど、観客がすごい中で(勝てたということで)ただただ嬉しいですね。
――初めての早慶戦でしたが
僕はそんなに点数を取ったりするプレイヤーではないので、とりあえず先輩にどれだけ気持ちよくプレーさせるかということを考えて、臨みました。
――今日の試合を振り返って
ディフェンスの面で、ずっと早稲田の対策をしてきて、その対策がだいぶ活きたと思っていて、ディフェンスリバウンドとかルーズボールとか泥臭い部分も気持ちで負けてなくて、そこが勝利につながったのかなと思います。
――ご自身のプレーを振り返って
緊張していたのもあって、あんまり思うようなプレーができず、これからの課題につながったのかなと思います。
――今後に向けて
まだ来年も早稲田には身長のでかいプレイヤーがまだ残っているので、身長のでかい僕が、しっかりとそのようなプレイヤーを止められるように成長していきたいと思います。