蒸し暑い日が続いているが、「秋」は着実に迫ってきている――。秋季リーグ戦開幕まであと20日。今年5月に2部降格の屈辱を味わった慶大バレー部は、1部復帰を目標に、鍛錬を重ねている。そんな中、コラム連載企画第1弾の今回、私たちは、ビーチバレーボールとの両立に挑戦する安達龍一(環1・洲本)を取材した。ビーチバレーボールU21世界選手権で17位になるなど、ビーチでの活躍に注目が集まる安達だが、インドアに懸ける思いも語ってくれた。
真っ黒に日焼けした姿が、安達のこの夏のハードさを物語っていた。取材をしたのは、全日本ビーチバレーボール選手権を直前に控えた8月3日。毎日の練習にも熱が入る。もちろん、インドアのチームに所属する安達にとって、チームの練習が最優先。そのため、練習が始まる前の午前中に鵠沼海岸や、大会会場の川崎マリエンまで向かい、ビーチバレーの練習をこなす。そして、午後は日吉に戻りチームの練習に参加する。ここまででも十分にハードだが安達はその後、体作りのためにトレーニングをこなし、家に帰ると栄養に気をつけた料理を自分で作り、家事もこなす。就寝前には日課のストレッチを行い、翌日に備える。日々の積み重ねが今の安達につながっていることを強く感じさせる。
安達は慶大から遠く離れた離島で育った。全校生徒が10人ほどの学校に通っていたため、バレーボールを本格的に始めたのは高校に入学してから。そして、慶大への進学を決めた。なぜ親元から遠く離れた慶大でバレーボールをする決断をしたのか。それは「レベルの高いところでやろうと思った」からだ。それ以外にも要因はもちろんあるだろう。それでも、一番に出てきたのは、「レベルの高いところ」という言葉だった。大学1年目、安達はその『レベルの高さ』という壁にぶち当たった。
入部してからのことを伺うと、「もう苦労ばっかりです…。へたくそなんで、僕」と苦笑いを浮かべながら振り返った。何よりも差を感じるのは基本の部分だという。全員のレベルが高く、当たり前のことを当たり前にこなせるチームメイトに入学当初は驚きを隠せなかった。それでも、安達は常に前を向いていた。自らの性格を「無理なことでもコツコツ、少しずつやる」と語った安達。確かに、その姿勢は日常生活の中からも垣間見えた。体作りのトレーニングにしても、自炊にしても、日課のストレッチにしても、当然のことのように語ったが、簡単に続けられることではない。少しでも心に油断があれば、続けることは不可能だ。この『コツコツ精神』を持つ安達が新たな風を吹き込みつつある。慶大になかったビーチバレーを持ち込み、大会に初出場を果たす。そして、推薦枠ではあるが、全日本への出場を果たした。2部降格と停滞するチームに新たな風を吹き込むのは安達かもしれない。
インドアではまだまだ苦悩している安達であるが、選手として目指すべきビジョンは見えている。「スパイク力をつけて、崩れたトスでも決めきれる選手になりたい」。そうはっきりと語った安達の目には強い意志が見えた。そのためには何が必要か。おそらく、自らの課題と真摯に向き合い、『コツコツ』と努力することだろう。それができる安達には無理なことなんて一つもない。秋季リーグ戦で新たな風を巻き起こせ。
(記事:菊地輝)
◇連載企画◇ 「挑戦の夏」
――この夏、新しく挑戦してみたいことはありますか?
今は体作りをするようにビーチのトレーナーに言われてトレーニング内容が増えてきたので、(授業がない分)時間がある夏休みに体作りをしっかりして、夏休み明けに9月から始まるリーグ戦で変わったなと言われるようになりたいなと思ってます。
◇プロフィール◇
安達龍一(あだち・りゅういち)
2000年8月7日生まれ/環境情報学部1年/兵庫県立洲本高出身/身長198センチ/最高到達点333センチ/WS/背番号18