春季リーグ戦では無念の2部降格となったが、早慶バレーボール定期戦では王者ワセダとフルセットの熱戦を繰り広げた慶大。この半年間、コートには誰よりも声を出し、チームを鼓舞する彼の姿があった。コラム連載企画第2弾の今回、1年ながらチームの中心として躍動する降小雨(商1・慶應)を取材した。
春季リーグ初戦、MBとしてスタメンに名を連ねたのは1年の降小雨であった。ここまでの活躍をみればスーパールーキーといっても過言ではないだろう。「元々身長が大きかった」と語る降は中学校からバレーボールを始め、東京都代表として全国都道府県対抗中学バレーボール大会(JOC杯)にも出場した。慶應義塾高校に進学すると、1年次からMBにとして試合に出場し、同校史上初の春高進出にも貢献した。自分たちが最高学年になった代では、副将またエースとしてチームを率い、インターハイにも出場。さらには高校選抜にも選ばれ、全国の精鋭たちと共にプレーした。中学校、高校と各カテゴリーにおいて世代のトップ選手として活躍してきた。
しかし、大学バレーに向かうに当たっては葛藤があったという。周りからの期待に応えなければならないということが、降に重責としてのしかっていたのである。もうバレーを辞めようかということも考えたという。そのような状況の中、降をバレーに向かわせたのは、大学のチームメイトの存在であった。マルキナシム主将(総4・川越東)や富澤太凱副将(経4・慶應)が引っ張るチームは、1年でも自由に意見を出し合える。同じポジションを務める樫村大仁(環3・茨城高専)や清水柊吾(総3・広島城北)は的確なアドバイスをしてくれる。そこには、自分が自分らしくプレーできる環境があった。
試合をみても、ラリー中を含む声掛けやコート内での冷静さからは1年とは思えないほどの余裕を感じる。さらに降の放つスパイクやブロックのキレには目を見張るものがある。本人も「リードブロックなどの瞬発系のプレーは負けない」と自信をのぞかせる。また降がチームにもたらすものは、プレーの面だけではない。彼が得点したときにみせる感情のこもったガッツポーズは、チームに流れを呼ぶ。
「有言実行」――言ったからには絶対にやる、言葉に出すことで意識を高める。この言葉が降のモットーである。「1年生としてできることをブレずにやっていきたい」。プライドを持って戦うと真っすぐに語った。降の見据える先には、戻るべき場所が明確に見えている。この夏新たな進歩を遂げ、次は自分がチームを救う立場として、そして慶大に欠かせない存在として、今コートに立つ。
(記事:持丸嘉昭)
◇連載企画◇ 「挑戦の夏」
――この夏、新しく挑戦してみたいことはありますか?
細かい話になると、MBだとサーブ打ったあとバックレフトに入るんですけど、そこでバックセンターに入って、ラリー中にバックアタックに打って、少しでも攻撃に参加できるようにしたいです。
◇プロフィール◇
降小雨(じゃん・こさめ)
2000年10月19日生まれ/商学部1年/慶應義塾高出身/身長192センチ/最高到達点340センチ/MB/背番号9
◇バックナンバー◇