関東大学対抗戦Aグループ
慶大35−3青学大
9月1日(日)11:15K.O.
@菅平高原サニアパーク
20年ぶりの大学日本一に向けた戦いが始まった。対抗戦初戦、まずは勝利が欲しい慶大の相手は昨年98−14で大勝を収めた青山学院大学。後半にかけて細かいミスが目立ったものの、相手をノートライに抑え35−3で今年も快勝。次戦に向けて弾みをつけた。
8月31日、9月1日の2日間、ラグビー合宿の聖地・菅平に16の大学が集結し、関東大学対抗戦並びにリーグ戦が開幕した。今月20日に開幕するラグビーW杯日本大会による影響で1ヶ月丸々試合を行えないことから、例年よりも早いこの時期に開幕する。菅平の澄んだ冷たい空気とは対照的に、駆け付けた観客の応援も相まって数々の熱戦が繰り広げられた。9月1日、慶大蹴球部の日本一への熱い戦いも、この菅平の地で幕を開けた。
試合開始早々、慶大は反則を2つ立て続けにとられてしまう。それにより、前半3分、ペナルティゴールにより青学大に先制点を許し、立ち上がりの流れは少々悪いものとなってしまった。しかし、その後すぐに青学大のペナルティにより慶大はゴールライン前でのスクラムのチャンスを得る。相手のコラプシングにより何度か中断がなされたものの、13分に最後はスクラムを押し込んでトライ。SO中楠一期(総1・國學院久我山)のゴールキックも決まり、7−3と逆転を果たす。
前半23分にまたもスクラムで青学大のペナルティを誘うと、慶大はキックを選択し敵陣22mライン付近でのラインアウトに持ち込む。このラインアウトを成功させた慶大は、パスで着実にゴールラインに迫り、NO.8山本凱(経2・慶應)がゴール中央に飛び込んで得点を重ねた。さらに前半32分にも敵陣深くでのマイボールラインアウトからトライを成功させ21−3と青学大を突き放す。その後、度重なるスクラムでの反則により青学大の選手がシンビンになるなどし、慶大が優位にゲームを進めるも、追加点はないままハーフタイムへ突入した。
迎えた後半4分、慶大は早くも敵陣のゴールライン前でマイボールスクラムのチャンスを得る。NO.8山本がボールを持ち出してそのままトライかと思われたが、ここで痛恨のノックオン。青学大ボールで試合が再開されると、ディフェンスを一気に突破され自陣の22mライン付近まで青学に大きくゲインを許してしまう。その後9分に得た敵陣でのラインアウトも、ラインアウト自体は成功したものの、ペナルティを犯しボールは青学大のものに。ディフェンスの隙をつかれ、ここでも大きくゲインを許してしまう。
攻めきれない慶大だったが、20分、敵陣で得たラインアウトから慶大はパスでゴールへ近づき、最後はSO中楠からボールを受けたWTB宮本恭右(環3・慶應)が相手ディフェンスの穴をついてトライ。これが後半初の得点となった。
このまま勢いづきたい慶大だったが、ここからも細かなミスを連発してしまう。ディフェンスの隙を突かれ突破される場面が多く見受けられ、ゲームは青学大主導で展開、トライは許さなかったものの慶大は守りの時間が続いた。試合終了が近づいた40分、やっとのことでインゴール間際へ攻め入ることに成功し、慶大のトライへの期待が高まった。そんな中、まさかのハンドリングエラーで青学大にボールを奪われてしまう。しかし、意地を見せた慶大はSO中楠のタックルでボールを奪い返して大外へ展開、ディフェンスの間を抜けWTB宮本がグラウンディング。ゴールキックも決まり、35-3で試合を終えた。
後半、慶大は細かなミスが目立ち、悪い流れからなかなか抜け出すことができなかった。SO中楠が「我慢して立て直すことができなかった」と振り返るよう、甘えが出た部分であろう。このような課題もある一方、好材料も多く見つかった試合であった。まず、相手をノートライに抑えたことは大きく評価できる。スクラムは青学大を終始圧倒し、PR有賀光生(総4・國學院久我山)も「自分たちがやろうとしていたスクラムが組めた」と振り返ったよう、日々の練習の成果を発揮できた部分であった。さらに、春季大会ではチーム全体で成功率が低かったゴールキックについても、今回の試合ではSO中楠が危なげなく5本すべてを成功させた。夏を経て慶大は確実に強くなっている、そう感じさせられる試合であった。
次戦、「筑波大戦はターニングポイント」(有賀)であり、昨年は勝利こそしたものの苦戦を強いられた相手との対戦である。絶対に負けられない試合だが、いまの慶大ならば万全の準備で、今回よりもさらに大きくなった姿を見せてくれるに違いない。20年ぶり、悲願の大学日本一を勝ち取る日まで、黒黄軍団は歩みを止めない。
(記事:松嶋菜々美 写真:川下侑美、萬代理人)
次戦vs筑波大
9月8日(日)11:00K.O.
@龍ケ崎市陸上競技場たつのこフィールド
(以下コメント、出場メンバー)
◇コメント
栗原徹ヘッドコーチ、FL川合秀和副将(総4・國學院久我山)(共同記者会見)
──試合の総括
栗原HC:菅平での開幕ということで非常に楽しみにしておりましたし、16チームの大学が集まってすごく盛り上がったものとなり、慶應もいいパフォーマンスができたと思っています。修正点はまだ多々ありますので、今後に向けていい一歩が踏み出せたらなと思います。慶應大学を今後とも応援よろしくお願いします。
FL川合:初戦ということで、自分たちのやるべきことにフォーカスして取り組みました。実際にはできた部分とできなかった部分があり、課題も多く残った試合になりました。しかし、まずは初戦勝利できたことは次につなげられると思うので、そこはポジティブにとらえて、日吉に帰ってからしっかりと練習し次に向けて準備していきたいと思います。
──栗原HCは対抗戦初采配となりました。率直な感想を
栗原HC:やってきた練習と準備してきたものの先に勝利があると思いますので、結果として勝利できたことは非常に良かったと思っています。しかし、出し切れなかった部分というのもありますので、次に向けて調整していきたいと思います。
──川合ゲームキャプテンに向けて。栗原主将が怪我で不在のなか、チームを公式戦に向けてここまでどのようにまとめあげてきたか
川合:天理戦では相手にフォーカスしすぎてしまった部分があって、その部分を明治戦に向けて自分たちにフォーカスするように修正をしました。ミーティングを通して自分たちのやるべきことは何なのかを考え、実際にそうすることでおのずと自分たちがすべきことが見えてきて来ました。青学戦もどのようなイメージを持って臨むべきか、というのは今まで練習でやってきたことを出すのみだとして、自分たちにフォーカスすることをより意識しました。
──ラグビーマガジンの中で栗原HCは学生をサンウルブズのボランティアに関わらせたとおっしゃっていました。なにか収穫はあったか
栗原HC:基本的にいろんな場所に成長のスイッチがあると思うのですが、そのスイッチ実際どこにあるのかはわからないのでいろんなところを押してみている感じです。その中で僕の意図通りに進むこともあれば、まったく意図していないときに成長してくれる場合もあるので、それを毎日楽しみながらやっています。サンウルブズに行かせたことも何らかの効果があるとは思うのですが、具体的にどんな効果かはわからなくて、しかしできる限りいろいろな環境に学生を触れさせたいと思っています。
──慶應の陣地の応援に一体感を感じました。試合に出ていない選手などの声援などに対してどう思ったか
栗原HC:一体感は出そうと思って出すものではないと思っていて、日々の積み重ねの中で学生がいろんなものを感じ取って出してきてくれるようになってきたと感じています。学生たちの成長をうれしく思っています。
──明治と行った練習試合から今回の対抗戦初戦をむかえるにあたって、どのような心持ちで臨んだか
川合:自分たちは長年優勝ができていなくて、明治大学戦から、その自分たちが日本一を目指すにあたって、自分たちはどのチームに対しても挑戦者である、というチャレンジャーマインドを持って試合に臨まなければいけないと話し合ってきました。今回の青学大戦も、自分たちは挑戦者として、ここから日本一に向けて試合をしていくんだという意味で、このチャレンジャー精神を大事にしてきました。
PR有賀光生(総4・國學院久我山)
──試合を振り返って
ノートライで抑えることはできましたが、やはりうまくいかない時間帯もありました。もっとFWがスクラムなどでターンオーバーできていたら、より慶大の流れになっていたのではないかなと思います。
──序盤はスクラムで相手のペナルティを誘う場面も多く見られました
自分たちがやろうとしていたスクラムを組むことができました。ヒットでしっかりと出て低く組むということをキーワードとしてやっているので、それができた結果青学さんに通用したのではないかなと思います。
──夏の練習の成果はこの試合で出せましたか
そうですね。アーリーセットを心掛けてきていたのですが、そこの部分は出せたと思います。
──本日のMOMを獲得されました
自分だとは思っていなかったので、本当に驚きました。ですが、貰った時に「FWを代表して選びました」と言っていただいたので、次の試合でもしっかりとFWから勝っていけるように頑張ります。
──来週の筑波大戦に向けて意気込みを
W杯で1ヶ月間空くこともあり、最初の3戦(青学、筑波、成蹊)の中で筑波大戦はターニングポイントになってくる試合だと思います。スクラムでしっかりと圧倒して、コンタクトの部分で負けないように頑張ります。
SO中楠一期(総1・國學院久我山)
──試合を振り返って
夏合宿から、確実なプレーで攻撃を重ねる・我慢するということを自分たちのキーワードにしてきました。その中でしっかりとマネジメントできたことは良かったと思います。ですが後半で流れが悪くなってしまったときに、自分がもう一度我慢して立て直すことができていませんでした。来週に向けての課題にしたいと思います。
──今日はゴールキック5本を全て成功させました。夏はどのような練習を
週に数回、8カ所からボールを蹴ってその成功率をノートに記録・コーチに報告するという練習をしていました。その積み重ねが今日の結果につながったのだと思います。
──後半にかけてチームのミスが増加してしまいましたが、その要因を挙げていただくと
後半に入ってからみんなのフィットネスが落ちてしまっていたと思うのですが、そこでもっと「我慢する」という意思統一をする必要があったと思います。僕自身もしっかりと走ってコミュニケーションを取りながら、いいマネジメントで流れを変えていきたいです。
──はじめての対抗戦、そしてその初戦でしたが
塾歌を歌ったりなど、やはり普段の試合とは違う雰囲気がありました。ですが、その中でも「いつも通り」を意識しながらプレーすることができたのでよかったと思います。
──来週の筑波大戦に向けて意気込みを
次の試合の勝ち星によって大学選手権への道も左右されてくると思うので、1週間いい準備をして、いい試合をしたいと思います。
WTB宮本恭右(環3・慶應義塾)
──試合を振り返って
今日は対抗戦初戦で、すごく大事な試合でした。自分たちが今日フォーカスしてきたテーマに、チャレンジャーマインドといういつもチャレンジャーな気持ちを持って試合をする、というものがありました。先週の明治戦に比べるとどこか浮わついた気持ちがあり、隙を見せてしまった部分があったので、次の試合からそういうことがないように気を引き締めていきたいと思います。
──ご自身のトライ2つを振り返って
今日のトライはフォワードが敵陣でゲインして空いたスペースにバックスがまわしてくれたときにインゴールに置いただけで、自分で何かしたわけではないですが、仲間がチャンスメイクしてくれて良かったです。
──今日は対抗戦の初戦でした
特に対抗戦には特別な思いがありますが、硬くならないようにリラックスして1試合通してプレーできたので良かったです。
──次戦に向けて一言
また一週間しっかりトレーニングして良いパフォーマンスが出せるように頑張りたいと思います。
◇出場メンバー
【Starter】
1.PR(プロップ) 有賀光生(総4・國學院久我山)
2.HO(フッカー) 原田衛(総2・桐蔭学園)
3.PR(プロップ) 大山祥平(経3・慶應)
4.LO(ロック) 相部開哉(政3・慶應)
5.LO(ロック) 今野勇久(総1・桐蔭学園)
6.FL(フランカー) 川合秀和(総4・國學院久我山)
7.FL(フランカー) 良知健佑(商4・慶應NY)
8.No.8(ナンバーエイト) 山本凱(経2・慶應)
9.SH(スクラムハーフ) 上村龍舞(環4・國學院栃木)
10.SO(スタンドオフ) 中楠一期(総1・國學院久我山)
11.WTB(ウィング) 宮本恭右(環3・慶應)
12.CTB(センター) 鎌形正汰(商3・慶應)
13.CTB(センター) 三木亮弥(総3・京都成章)
14.WTB(ウィング) 高木一成(商4・慶應)
15.FB(フルバック) 小谷田尚紀(経3・慶應志木)
【Booster】
16. 田中慶伸(総2・慶應)
17. 松岡勇樹(法1・慶應)
18. 室星太郎(総4・静岡聖光学院)
19. 池田勇希(商3・熊谷)
20. 大谷陸(政3・慶應)
21. 五藤隆嗣(商1・慶應)
22. 菅涼介(政2・慶應)
23. 佐々木隼(総1・桐蔭学園)
【選手変更】
64分WTB高木一成→23 佐々木隼
67分SH上村龍舞→21 五藤隆嗣
68分LO今野勇久→19 池田勇希
74分PR大山祥平→18 室星太郎
74分PR有賀光生→17 松岡勇樹
74分HO原田衛→16 田中慶伸
76分CTB鎌形正汰→22 菅涼介
76分FL良知兼佑→20 大谷陸