10月9日から全日本大学対抗テニス王座決定試合(通称:王座)が開幕する。慶應スポーツでは、王座前に選手、監督に大会にかける思いを伺った。第3弾は、坂井利彰監督のインタビュー。
(取材日:9月26日)
――改めてリーグ戦を振り返って
男女ともに視点は違いますけど、大きく言うと土壇場で踏ん張って修羅場を乗り越えてリーグ戦を勝ち抜きました。リーグ戦を優勝するのが理想的でしたが、男女ともに王座出場を決めてくれてよく頑張ったというのが率直な思いです。
――雨天中止など天候に左右されたリーグ戦でしたが、その中で戦う難しさは
難しさというと日程が過密です。インカレの個人戦が終わって団体戦が2週間後に始まります。炎天下の中で一日置きに試合があるので本当にタフなスケジュールです。体力的にも精神的にもかなりきつい部分が学生たちにあったと思います。その中でチームが勝ち残って良かったですしその中でチームが成長したと思います。
――チームの成長についてですが、リーグ戦前とリーグ戦後のチームを比べてどういうところで成長を感じますか
4年生がよく頑張ってくれたと思います。メンバー外の選手もよく頑張りました。もちろん勝つことにより得た自信もあります。今季はいろんな部門を作りました。戦略分析の部門、栄養の部門、トレーニングの部門とかです。責任者の人がその部門のトップを務めてそれぞれ部門がいい回り方をして結果的に一つ一つ細かいことを丁寧にやってきました。リーグ戦の中で選手のテニスを磨いていくというときに、戦略的な要素やコンディショニングの要素など準備してきたことがリーグ戦でワークしてくれたかなと思います。今まで部門はありましたけど、本当にリーグ戦に向けて段階を追って準備してるのかというところはあったと思います。
――2月のインタビューではシングルス下位が日本一に向けて重要になると仰っていました。今季のリーグ戦ではシングルス下位の活躍が目立ちました
男子だとS4、S5、S6。女子だとS3、S4、S5。そこが課題という話をしてきました。我々は分業制という言い方をしますけど、今までだとダブルス出てまた同じ人がシングルスの下位に出場していました。それは見ていても精神的にも体力的にもきついです。だからダブルスに専念する選手とシングルスの下位に出場する選手を分ける分業制を敷こうということにしました。例えば、ダブルスで言うとD2川島(颯=総3・名古屋)、D3佐々木(健吾=環2・高松北)、田中(隆輔=環3・秀明英光)、小清水(拓生=総3・清風)です。女子だと大村(千乃=総3・九州文化学園)、望月(菜々子=環3・白鵬女子)です。ダブルスに専念してくれる選手がいると、ダブルスで消耗していない選手がシングルス下位に臨めます。例えば、早大戦で伊藤竹秋(法2・慶應)がインカレ優勝経験もある小林雅哉選手に勝ちました。ダブルスに出場していたらシングルスは難しいです。そういう分業制ができるようになって伊藤が小林君に勝ったのが大きかったです。分業制を敷いた成果がいろんなところで随所に出たと思います。
――男子はダブルスで苦戦しました
まさに指摘通りです。特に法大戦はD1、D3落として、次の日のD2のファイナルタイブレークを落としていたら負けていました。ダブルスの鍵を握るのは福田(真大=商4・慶應湘南藤沢)・今村(昌倫=環3・清風)組だと思います。このペアは去年の全日本選手権でベスト8に入りました。学生の枠を超えてプロにも通用するようなダブルスです。今村がインカレを優勝して疲れというのが当然あったと思います。今は王座に向けて休みを取っていますが、もう一度福田・今村組のダブルスがしっかり整ってくれば大丈夫だと思います。
――女子は下級生が主体となったチームでした
早大戦にしても明大戦もS5中村礼(総4・須坂)、S4末野(聡子=総2・芦屋学園)、S3平田(歩=総2・岡山学芸館)が勝たないと、ダブルスが終わった後にシングルスで流れを作れません。当然、S1佐藤(南帆=環1・日出)、S2永田(杏里=総1・南山)も当然プレッシャーがかかります。そこで4年生の中村、2年生の2人がいい流れを作ってくれたことは佐藤と永田にとっても大きかったと思います。
――初戦でS5に向井マリア(環4・城南学園)選手を起用していましたが、2戦目以降は中村選手がS5で出場していました。そこにはどういう意図がありましたか
向井に関しては怪我の部分がありました。太ももの痛みとかありました。一方で団体戦と個人戦は違います。中村は、主将としてチームを引っ張っていましたし、夏関(関東学生テニス選手権大会)の調子が良かったです。そういった意味で彼女の調子が良かったし、団体戦はいけるかなという思いがありました。筑波大戦を落として流れを変えるという意味では彼女しかいないと思いました。
――女子の場合、4年生でリーグ戦に出場している選手がかなり少ないです。試合に出場していない4年生の役割は
試合に出て勝つだけが4年生の仕事ではないと思います。夏休みは朝から晩まで時間があります。みんなで顔合わせる時間も多いです。授業が始まると、授業抜けで顔合わす時間が少なくなります。すごくチームとしての集中力を保つことが難しいです。そういう中で4年生が練習の中で雰囲気を作っていく役割はあると思います。中村のような4年生と試合に出場しない4年生の役割が違う部分があると思います。
――リーグ戦で監督として意識することは
勝ち負けはコントロールできません。後悔がないような準備をすることはできます。どういうオーダーを組むか、選手に対してどういう戦略を伝えるかといった準備を監督として心がけていました。それをしないと後悔しても後悔しきれないので、それは考えていましたね。インカレの個人戦とは違う部分があると思います。
――戦う上でリーグ戦と王座の違いは
王座はトーナメント制です。負けたら終わりです。そういう意味では連戦を勝ち上がるかというのがポイントです。2回戦、準決勝、決勝は3連戦です。準決勝の相手は男子だと近畿大学、女子だと関西大学というのがある程度見えてきています。決勝は男子だと早稲田大学、女子だと筑波大学というのが頭に入っています。そういうことを頭に置いて、体力的な面や、オーダーを相手に読ませないことを考えて準備をしていきたいと思います。今年の王座は同じ時間帯に男子の試合と女子の試合があります。それから女子は王座になると7本から5本に減ります。シングルスが3本になりますから少し違った準備が必要になると思います。
――特に女子の場合は5試合ですが、重要になってくるところは
ダブルスです。2-0を狙うことが重要です。女子は4年ぶり王座出場です。4年前は西本(恵=平成27年度環卒)・池田(玲=平成27年度環卒)組という今の佐藤・永田組のような強力なダブルスがいました。決勝で少しもたつきました。それでD2にプレッシャーがかかりました。結果的に両方落としてしまいました。ダブルス2本取りに行くとしても絶対エースの佐藤・永田組がしっかり取るという流れの中でD2も取るとうことが重要になってくると思います。
――王座でカギとなる選手は
男子は福田と甲斐(直登=環4・日出)。女子は中村、平田、末野です。
――シングルス下位ですか
そうです。今季はそこを貫いてやってきましたし、成果も出てきています。やってきたことが着々とできているのでそこを監督として大事にしていきたいです。
――王座に向けての意気込み
去年もやるべきことをやって王座に臨んだと思います。それで勝てなくて監督としての力不足を感じました。今年はその反省を含めて小さいことを丁寧に取り組んだので、僕自身も出し切りたいです。力みすぎず部員と一緒につかみ取りたいです。
――忙しい中、ありがとうございました!
(取材:萬代理人)