ついに今年最後の大会、全日本インカレを迎えた。慶大の初戦は、関西1部9位の大体大(大阪体育大)。第1セットを順調に取ったものの、相手の独特な雰囲気に飲み込まれ、第2・3セットを落としてしまう。だが、マルキナシム主将(総4・川越東)・富澤太凱副将(経4・慶應)を中心に粘り強さを見せた慶大。第4・第5セットを取り返し、見事に逆転でフルセット勝利を収めた。慶大は、翌日の2回戦vs筑波大戦に駒を進めた。
2019年11月26日(火)
第72回全日本バレーボール大学男子選手権
1回戦 慶大×大体大
@港区スポーツセンターサブアリーナ
得点 | ||
慶大 | セット | 大体大 |
25 | 1 | 20 |
18 | 2 | 25 |
28 | 3 | 30 |
25 | 4 | 12 |
15 | 5 | 9 |
出場選手(サーブ順) | ||
ポジション | 背番号 | 名前(学部学年・出身校) |
S | 29 | 高倉真古都(商1・慶應) |
WS | 2 | マルキナシム(総4・川越東) |
MB | 9 | 降小雨(商1・慶應) |
OP | 21 | 富澤太凱(経4・慶應) |
WS | 1 | 吉田祝太郎(政3・慶應) |
MB | 19 | 樫村大仁(環3・茨城高専) |
Li | 23 | 小出捺暉(環2・駿台学園) |
途中出場 | 5 | 宮川郁真(総2・松本県ヶ丘) |
〃 | 15 | 加藤靖丈(商2・慶應) |
いよいよ全日本インカレが始まった。慶大は、2日前の慶関定期戦と同じスタメンを起用した。「負けたら引退」のトーナメント戦。何が何でも勝利を収めたい。
第1セット始まりは、マルキと降小雨(商1・慶應)の2枚ブロックからだった。慶大の高くて幅のあるブロックで相手スパイカーのミスを誘い、細々と得点を重ねていく。吉田祝太郎(政3・慶應)の強烈なサーブで相手を崩し、2段トスがネット近く上がったところを樫村大仁(環3・茨城高専)と高倉真古都(商1・慶應)が確実に仕留めるなど、終始安定していた慶大。25-20で危なげなく第1セットを先取した。
続く第2セットも、序盤は富澤がスパイクにサーブにと得点を稼ぎ、7-4とリード。しかしここから、2連続サービスエースを許すなどして4連続失点。相手チームの異様な雰囲気に徐々に飲まれていく。なんとか食らいつく慶大だったが、15-16の場面から、このセット2度目の相手連続サービスエースを含む5連続失点。富澤の連続得点などで追いすがる慶大だが、最後もこのセットを象徴するかのように相手サーブがコートに落ち、18-25。セットカウント1-1で並ばれた。
嫌な流れを切りたい第3セットだったが、心ない言葉が聞こえるなど、あまり好ましくない相手チームの空気に押されてしまった。6-7の場面から、ミスを連発して4連続失点。一時5点のリードを奪われる。だが、ここからの慶大が強かった。途中出場の宮川郁真(総2・松本県ヶ丘)がラリーの末に1枚でブロックを決め、コートを駆け回る。さらに、先に20点台に乗られてからもなお粘りを見せた慶大。マルキのスパイクで3連続得点を挙げると、20-24の場面から、富澤の強気なサーブを起点にして、樫村の高さと速さが光るクイック、マルキのバックアタックなどで4連続得点。土壇場で追いつき、デュースへ。最後は自陣スパイクがブロックにあい、28-30でセットを落とすも、最大5点差から粘りを見せ、慶大が勢いを取り戻したセットだった。
第4セットは、大体大が審判団の再三の注意に応じなかったため、慶大に1点が加算されてからのスタートとなった。相手とは対照的に前のセット後半から調子を取り戻した慶大は、マルキと富澤のスパイクで得点を重ね、6-1と大量リード。その後も、「ワンタッチが取れるようになった」と宗雲監督が振り返るように、相手スパイクをワンタッチでつなぎ、最後はマルキ・富澤の4年が確実に決めるという理想的なバレーを展開。12-25と、圧倒的な力の差を示した。勝負は、最終セットへ。
勝負を決める第5セットだったが、アンテナに当たるなどして立ち上がりに2連続失点。だが、この試合「粘り強さ」を見せた慶大は、このセットも集中していた。マルキのバックアタックや高倉のブロックポイントなどで着実に点を重ねていく慶大。コートチェンジとタイムアウトを挟み、5連続得点と、相手を寄せ付けなかった。最後は樫村がブロックを決め、試合終了。慶大は、フルセットで勝利を収め、翌日の2回戦に駒を進めた。
2セットを落としても、相手の雰囲気に飲まれても。「自分たちのやることは変わらない」(宮川)と冷静さを保った慶大。吉田や小出捺暉(環2・駿台学園)の正確なサーブレシーブや、高倉の丁寧なトス回しに支えられた攻撃が光り、チーム全体の粘り強いバレーが印象的だった。
とくに目立ったのは、やはり4年2人だろう。高いスパイク決定率で得点を量産したマルキ、相手セットポイントでも強烈なサーブで攻め続けた富澤。決めてほしいところで確実に仕事を果たし、主将・副将、そしてエースとしての意地を見せつけた。「このチームでも1日でも長く」(宗雲監督)。現在の慶大のチームとしての完成度は、日に日に高くなっているように感じる。この「一枚岩」の状態で、この後も挑めるか。悔しい思いを重ねてきたTeam Malkiが、1部強豪、筑波大に牙を向く。
(記事:藤澤薫 写真:増田将大・尾崎崚登・藤澤薫)
◇次戦◇
2回戦 vs筑波大
11月27日(水)第2試合(11時30分頃~)
@港区スポーツセンター
以下、コメント
宗雲健司監督
――今日の試合を振り返って
この間の関学との定期戦(慶関定期戦)もそうですけど、勢いはほぼほぼ相手にあったのに、よく切れなかったですよね。(吉田)祝太郎も気持ち切れなかったし。本当に学生は粘り強くなった。最後の最後になって粘り強くなりました、良くなりました。
――今年最後の大会ですが、選手たちの気持ちはどのように映りましたか
昨日、大阪産業大学さんと日吉で練習試合を1セットやったんですけど、そのときにすごく気持ちが入っていて、すごく良いバレーをしていたので、「あ、彼らはこのインカレで一枚岩になろうとしているな」というのは感じました。今日も、最後まで切れなかったのと、4セット目すごく巻き返していたのを見たら、彼らの気持ちがそのままバレーにつながっているような、そんな感じでした。
――先に2セットを取られ、さらに最終セットも先行される形となりましたが、それでも勝利を収めました。今日、慶大が良かったところは、やはり先ほどおっしゃっていた『粘り強さ』でしょうか
そうですね。今年最後の試合で、急きょ出ている1年生の高倉も頑張っていたし、4年生も頑張っていたし。こういうチームで1年間戦いたかったんですけど、でもまあまだ終わってないですし、1日でも長くこのチームで戦ってほしいですね。
――明日の筑波戦に向けて
格上は間違いないんですけど、勝ちたいですね。『チャレンジャー』と表現すると多分、チャレンジして散るので、散らないで勝ちたいですね。勝てるくらいの力になるんじゃないかなと今思うので、明日も頑張らせます。
マルキナシム主将(総4・川越東)
――今日の試合を振り返って
相手のレフトの選手がブロックに当てて飛ばしてくるのは分かっていたので、それをうちの高いブロックでしっかり囲んで、ボールを拾って展開することをミーティングで話し合っていました。しかし、それが3セット目くらいまではなかなか対応できなくて、相手に簡単にサイドアウトを切られてしまって。うちがサイドアウトを2~3回連続で切ることができなかった上に、相手のサーブが強かったこともあって、こういう競った展開になってしまいました。
――第4セット以降どう改善させ、勝利につなげましたか
相手のセンターのクイックが少ないと分かってきて、だんだんサイドになってきたことでうちのブロックが機能し始めたので、そこからの展開で僕と富澤で最後打ち切る方針に変えたことがうまくいきました。また、レッドカードなどで相手自身が崩れたということもあって逃げ切ったかなという感じです。正直良い内容ではなかったです。
――ご自身のプレーを振り返って
最初と最後は良かったんですけど、2セット目・3セット目などは、相手のレシーバーにだんだん対応されるようになったときに何もできませんでした。その辺りを修正して、同じ打ち方を続けるのではなくて、違うところに打つなどの工夫を頭の中に入れてやっていきたいなと思います。
――明日の試合に向けて意気込みをお願いします
今日の試合内容でいったら明日はすごく苦しい展開になると思うんですけど、頭を切り替えて明日の筑波のことだけを考えて、4年生なので力を出し尽くして勝利したいと思います。
富澤太凱副将(経4・慶應)
――今日の試合を終えての感想を
決して楽な相手ではないということはわかっていたんですが、予想以上に相手の勢いもあって、逆にこっちも決して良い形とは言えない状態で入ってしまったので、こういた結果になってしまったんですが、まあ勝ち切れてよかったです。
――ご自身にとって最後の大会、チームメイトに何か声を掛ける機会はありましたか
いや、とくに。逆に意識してそういうふうにしないようにしました。それはやっぱり普段からみんな「いつも通り」ということを言葉を心掛けていて。やっぱりいつもと違うことをすると余計な力が入ってしまうとかそういうことがあるので、今日はいつも以上に「いつも通り」を意識して試合に臨みましたね。
――第2セット以降、少し乱れてしまいましたが、その要因などは
相手の攻撃にちょっと対応できなくて。そこに相手の雰囲気もまじわって、自分たちが後手に回ってしまったのが、その要因の1つかなと思っています。
――2セットを先に取られた後の第4セット、切り替えはありましたか
チームとして、3セット目ビハインドから盛り返してデュースまで行けたっていうので少しみんなリラックスできた部分があって。しっかり4セット目は切り替えて、自分たちも良いプレーが出ているという自身をもって臨めたので、結果としてああいう4セット目が出たのかなと思います。
――明日以降も試合は続きます
今日以上に、点を取って雰囲気を作っていくっていうふうに、自分の本当にやらないといけない仕事っていうのを思い返して、しっかり対策して臨みたいと思います。
――今日のご自身のプレーは
数字を見ればそこまで悪くないと思うんですけど、まだまだ攻撃の軸になれていないというか。なので、明日はもっともっとトスを呼び込んで、相手に少しでもプッシャーを与えられたらなと思います。
宮川郁真(総2・松本県ヶ丘)
――今日の試合を振り返って
大阪体育大学さんはディグ(スパイクレシーブ)が良くて。1セット目は綺麗に取れたんですけど、2セット目から自分たちのスパイクが(ブロックに)引っ掛けられ始めて。相手の人数が多くて、雰囲気ガアーっと中盤持っていかれたんですけど、最後はうちの底力が出たというか。4年生2人が引っ張ってくれて勝てた試合だと思います。
――相手の雰囲気に少し飲み込まれてしまいました
僕はコートにあんまり入ってないのでわからないですけど、タイムアウトで帰ってきたときとかは、まずは自分たちがやることをしっかり。サイドアウト側は、本当に自分たちのやってきたことをしっかりやれば、点を取れるっていう話をして。相手の雰囲気もあるけど、自分たちのやることは変わらないし、こっちで対策というか、どうしようというのは声が出ていたので。あっちが勝手に盛り上がっていたけど、自分たちがやることをやるっていうふうにきっちり分けられていたので、そこは良かったかなと思います。
――ピンチサーバーを何人も投入してきたり、サービスエースを取られたり、とチーム全体でサーブレシーブに苦戦していたように感じます
良いサーブ多かったけど、まあ最終的に(吉田)祝太郎さんと(小出)捺暉が耐えてくれていました。
――ご自身途中出場されましたが、今日のプレーを振り返って
ビハインドで入って、雰囲気も(相手に)飲まれていたから、「途中から出たら(雰囲気を)上げよう」と思ってやっているので、得点を取ったら走ることは意識していました。あとはまあキャッチ(サーブレシーブ)が良くなかったので、キャッチをまず入れてから、自分のプレー、スパイクの打ち切りやっていきたいです。
――明日以降に向けて一言
明日は筑波大学さんで、もちろん1部の中でも上位に入ってくる強豪なので、そこはもう自分たちは「当たって砕けろ」っていう気持ちで、しっかり対策はしてきたし、ここが山場だと思って準備してきました。4年生2人がコートの中で引っ張ってくれると思うので、自分たちはそこに乗っかって、良いプレーを出せるように、頑張りたいなって思います。
小出捺暉(環2・駿台学園)
――今日の試合を振り返って
最初からめっちゃ煽られましたね(笑)。3セット目のめっちゃ競ったところで、多分、最後のやっぱりサーブミスが響いて。なかったら、多分4セットで終わったかなと思います。まあ最終的にしっかり勝ち切れたので、明日に向けてまた準備していきたいです。
――相手の雰囲気に飲み込まれてしまっているようにも感じました
1セット目は取ったんですけど、2セット目からすごい、(相手に)押されて。全体的にすごいシーンとなっちゃって(苦笑)。でもそこで、4年生が中心になって引っ張ってくれて、逆境の中で決め切ってくれたので、うちの雰囲気が最終的には上がって行けたので、よかったです。
――慶大のサーブレシーブを振り返って
昨日とか慶関戦とかも、(吉田と自分の)2枚キャッチをやっていて。それがちょっと崩されて、(マルキを加えた)3枚にする、みたいなことがあって。その3枚キャッチに変えるっていう対応が、結構早くできていたので、そこは良かったと思います。マルキさんも、今まで結構崩れ気味だったんですけど、そこを崩れないでしっかりキャッチを返してくれていたので。キャッチは別に、自分的には、そんなに崩されたなっていうイメージはないんですけど、自分がそんなに調子悪くなかったからですけど。だからまあ良かったです。
――今日のご自身のプレーは
まあキャッチは結構返ったかな。ディグも、まあ4セット目くらいからは結構上がり始めて。ブロックとレシーブの関係性が全体的に良かったから、自分も拾う場所をできるだけしぼってできたので、まあそれは明日に向けて良い流れを作れたかなと思います。
――明日以降に向けて
明日は筑波大学とやるんですけど、まあ1部の上位、すごく強い格上のチームなので、そこに、まあ「当たって砕けろ」じゃないですけど、全力で向かうところと。あとは…今まで、ほかの関西とかの、まあ勝てるだろうっていうチームに対しては、「最後まで絶対負けない」っていう気持ちというか、そういうのがあって、最終的に5セット目勝ち切るっていうことが多い。でも、1部リーグずっとやっていて、もともと勝てないチームには勝てなくてもいい、そういう雰囲気がちょっとまああったと思うので、そこを変えて。諦めないというか、最後まで出し切って勝ちたいと思います。
高倉真古都(商1・慶應)
――今日の試合を振り返って
最初はやっぱり緊張してしまって。1セット目は、周りの先輩方がカバーして打ってくれていて、まあ1セット取れて良かったと思うんですけど、2・3セット目は相手もすごいちょっと煽ってきたりだとかして。で、先輩方も一生懸命自分のプレーになって、でも僕が、まあ緊張したまんまで。ちょっとそこが上手くいかなかったけど、僕も自分の中で、4・5セット目はもうなんか緊張も全然なくなってきて。4年生、(富澤)太凱さんとかマルキさんにトス持っていって決めてもらって、っていうのが、まあ良い形で勝てたのかなと思います。
――良かったところと悪かったところを1つずつ挙げるとすると
良かったところは、ここ1点とろうっていう場面で、即ミスしないで、きっちり決めたり、あとはリバウンド取ったりして、もう一回こっちの攻撃の形にできたところが良かったかなと。あともう1個良かったのは、雰囲気。僕がすごくやりやすいように、緊張している僕を、周りから、ベンチからも、試合に出ている人も、「自分のあげたいところ、やりやすいようにやっていいよ」っていう声をたくさん掛けてくれたので、僕はもうすごく支えられているなっていうのはすごく個人的には良かったところで。悪かったところは、まあ、やっぱり、相手の煽りというか…。僕はトスを上げる側なのでとくに言われなかったんですけど、スパイカーが言われているのを、ちょっと僕も気にしちゃって。僕のトスが悪いからスパイカーが言われてるんだなってちょっとマイナスに捉えちゃったのが良くなかったところかなと思います。
――今日のご自身のプレーを評価すると
いやもう緊張して縮こまっちゃって。全然何もできなかったです。まあ明日も試合続くので、今日みたいなプレーはしないようにしたいです。
――明日以降に向けて一言
4年生最後っていう言葉が絶対についてくるっていうのはわかっていることなので、それを考えて緊張するんじゃなくて、むしろ、1年生らしいプレーをもっとできたらなと。今日も、表情かたいって何回も言われていたので…(苦笑)。そこを、もっと1年生らしく、やりたいと思います。