12月6日(日)、慶大少林寺拳法部が早慶定期戦に臨んだ。目指すは第52回大会以来となる早慶戦勝利。新人の部では、初出場の1年生拳士たちが奮闘を見せ、引き分けに持ち込む。本戦の部はお互いがっぷり四つに組んで、2年連続の代表戦へともつれ込んだ。
≪新人の部≫
| 慶大 |
| 早大 |
先鋒 | 岡田毬花(文1・川越女子・六級) | 〇2-0 | 小圷紗愛(法1・水戸第一・五級) |
次鋒 | 佐藤玲伊(文1・日大豊山・六級) | ●0-5 | 宇田樹(教1・早稲田実業・二段) |
中堅 | 庄司(法1・六級) | △1-1 | 三森菜々香(法1・早稲田実業・二段) |
三将 | 田川千鶴(法1・清泉女学院・六級) | ●1-4 | 遠藤直(文構1・早稲田実業・三段) |
副将 | 小林慶大(薬1・国立・二段) | △1-1 | 藤井陸(社1・早稲田実業・初段) |
大将 | 岡田希美(政2・女子学院・二級) | 〇3-1 | 氏平鷹子(政経2・船橋・一級) |
通算:慶大2勝2敗2分で引き分け
≪本戦の部≫
| 慶大 |
| 早大 |
先鋒 | 山内嶺央(経2・西大和学園・二段) | 〇5-0 | 芝田健自(商3・城北・三段) |
次鋒 | 多家桜子(看1・国立・二段) | ●2-12 | 籾美吹(社2・大阪産業大付属・三段) |
中堅 | 西山航生(文2・厚木・初段) | 〇2-0 | 下村裕太郎(政経3・聖光学院・二段) |
三将 | 千田有希乃(薬3・桐生・二段) | ●0-5 | 上重美桜(商3・長岡・初段) |
副将 | 並木秀太(商3・桐蔭学園・初段) | ●0-1 | 笠井直樹(政経3・駒場東邦・初段) |
大将 | 多田光伯(商3・逗子開成・初段) | 〇5-2 | 井上将(基幹理工3・城北埼玉・二段) |
代表戦 | 多田光伯(商3・逗子開成・初段) | 〇3-1 | 井上将(基幹理工3・城北埼玉・二段) |
通算:慶大3勝3敗の引き分け(代表戦の結果、慶大が勝利)
激動の2020年が終わりへと向かう中、「始まりの一歩」を踏み出した部が一つ。それが慶大少林寺拳法部だ。多くの競技において、早慶戦はチームの「集大成」に位置付けられる。しかし、少林寺拳法部にとって早慶戦は、新体制で迎える初めての公式戦となる。出場拳士はすべて3年生以下。慶大少林寺拳法部は、今大会大将を務める多田光伯(商3・逗子開成)や主将の諸江優(政3・慶應)を中心に、決戦の舞台・早稲田アリーナへ乗り込んだ。
《競技説明》
今大会は2年生以下が出場できる「新人の部」と、3年生までの全学年が出場できる「本戦の部」に分かれて行われる。試合は前後半ともに1分ずつで、間に1分間の休息を挟むという形式だ。判定は技ありのみで、その本数の差によって試合の勝敗が決する。また、最終的な早慶定期戦の勝敗は、本戦の部における勝ち数で決定される。
《新人の部》
先鋒戦 岡田毬花(文1・川越女子・六級) 〇2-0 小圷紗愛(法1・水戸第一・五級)
一瞬の静寂が会場を包み、新人戦の部が始まった。慶大の先鋒を務める岡田は1年生で、立合の経験もあまりなく、表情には緊張の色がにじむ。それを和らげるためか、主将の諸江に声をかけられて戦いの舞台へ向かった。
序盤はお互いに攻め合うが、決め手に欠ける展開が続く。しかし、30秒が経過したところで岡田の上段突きが決まり、技ありを獲得。主導権を握った岡田は後半戦でも中段突きを決めて、見事初戦を勝利で飾った。
次鋒戦 佐藤玲伊(文1・日本大学豊山・六級) ●0-5 宇田樹(教1・早稲田実業・二段)
続く次鋒戦。佐藤は厳しい戦いを強いられることになった。開始早々に相手に技ありを取られて後手に回ると、前半戦、3連続で技ありを奪われる。一矢報いたい後半戦だったが、相手の厳しい攻めになかなか攻撃に転ずることができず、0-5で悔しい敗戦となった。
中堅戦 庄司(法1・六級) △1-1 三森菜々香(法1・早稲田実業・三段)
1勝1敗で迎えた中堅戦。何とか勝利を収めたい試合に庄司が臨んだ。両チームにとって大事な位置づけとなるこの試合、前半戦はお互いに一歩も譲らず、技ありがないまま終わる。続く後半戦、試合を動かしたのは庄司だった。相手が攻撃を仕掛けたところを見事にいなし、10秒が経過したところで上段突きを決めた。しかし、相手の攻めの姿勢に庄司の牙城が崩れ、終了間近に中段蹴りを決められて1-1の同点で試合を終えた。
三将戦 田川千鶴(法1・清泉女学院・六級) ●1-4 遠藤直(文構1・早稲田実業・三段)
三将戦はお互いに攻撃を仕掛け合う熾烈な展開となった。しかし、前半戦から相手に2連続で技ありを取られてしまう。後半戦も連続して技ありを取られて差を広げられるものの、最後に中段突きを決めて一矢報いた田川。敗れはしたものの、続く試合に勇気を与える試合内容となった。
副将戦 小林慶大(薬1・国立・二段) △1-1 藤井陸(社学1・早稲田実業・初段)
絶対に負けられない副将戦。しかし、開始早々に相手に技ありを取られる。その後は、焦りからか小林は攻撃を繰り出すものの、なかなか得点に至らない歯がゆい展開が続く。後半戦も序盤は両者一歩も譲らず、このまま終わるかと思われた。しかし、55秒で小林が繰り出した中段蹴りが見事に決まり、1-1の引き分けにもちこんだ。
大将戦 岡田希美(政2・女子学院・二級) 〇3-1 氏平鷹子(政経2・船橋・一級)
勝負は大将戦に託された。岡田は序盤から仕掛け続け、25秒が経過したところで上段突きを決める。しかし、さすがは大将戦。後半戦開始早々に相手も技ありを奪い、勝負を振り出しへ戻す。しかし岡田は焦ることなく、25秒で中段蹴りを決めて再びリードを奪う。そして、終了間際、最後は仕上げと言わんばかりの上段突きを決め、慶大に勝利をもたらした。
この結果をうけて、新人の部はトータル2勝2敗2分の引き分けに終わった。
《本戦の部》
先鋒戦 山内嶺央(経2・西大和学園・二段) 〇5-0 芝田健自(商3・城北・三段)
第52回大会ぶりの勝利へ。まずは先鋒・山内嶺央が先陣を切る。試合開始から4秒、中段への素早い突きで先制すると、前半だけで3本の技ありを奪ってペースをつかむ。後半にも得点を重ねた山内。早慶戦3年連続出場の実力者・芝田を寄せつけない圧巻の白星を挙げた。
次鋒戦 多家桜子(看1・国立・二段) ●2-12 籾美吹(社2・大阪産業大学附属・三段)
1年生多家にとっては、これが初の早慶戦。しかし、それを感じさせないほど堂々と攻め込み、戦い抜いた。一瞬の隙を逃さない籾の攻撃をうけながらも、前半40秒で中段に突きが入り、技ありを奪う。後半に入ってからは守りにも安定感が出てきた。全日本王者に対して食らいついたこの経験は大きな糧となるはずだ。
中堅戦 西山航生(文2・厚木・二級) 〇2-0 下村裕太郎(政経3・聖光学院・二段)
昨年の新人戦の再戦となったこのカード。西山のリベンジが成った。後半31秒に中段蹴りで先制、続く53秒に上段突きを入れて勝負あり。昨年の悔しい逆転負けから成長した姿を見せた。
三将戦 千田有希乃(薬3・桐生・二段) ●0-5 上重美桜(商3・長岡・初段)
2年連続で早慶戦勝利を挙げている千田が三将戦で出場。今年はやや押し込まれる格好で試合が進んだ。2本の技ありを奪われて迎えた後半、隙を見つけては攻めにかかるも最後まで相手には届かず。悔しい敗戦となったが、文武両道の拳士の歩みは止まらない。
副将戦 並木秀太(商3・桐蔭学園・初段) ●0-1 笠井直樹(政経3・駒場東邦・初段)
トータル2勝2敗で迎えた副将戦。これが早慶戦初出場となった並木は、後半31秒に先制を許してしまう。残り時間わずかの局面、並木が前に出て攻め込んだ。決死の攻勢はしかし、審判団競技の末、技ありとはならず。命運は大将戦に委ねられた。
大将戦 多田光伯(商3・逗子開成・初段) 〇5-2 井上将(基幹理工3・城北埼玉高・二段)
負ければ終わり、勝てば二年連続の代表戦。大将・多田はこの重圧をはねのけた。前半から積極的に攻め込み、4本連続で技ありを奪取。後半に入って井上の攻めを受けた格好となったが、前半のリードが生きた。3年ぶりの栄冠へ、希望をつなぐ一勝を挙げた。
代表戦 多田光伯(商3・逗子開成・初段) 〇3-1 井上将(基幹理工3・城北埼玉・二段)
2年連続の代表戦、すべてを決する60秒間が始まった。17秒、多田が動く。後方へ下がった相手に対し、上段への突きを一撃。マスク姿の部員からは大歓声が起こる。続いて26秒、早大主将にして大将・井上の右拳が多田を捉える。今度は慶大と正対する早大陣営からの絶叫。これで同点となった。
残り30秒の攻防はまさに意地のぶつかり合い。一方が攻め込めば、一方がそれをいなす。10秒、9秒、8秒…試合終了が刻々と近付いていく中、電子時計が「0:06」を示した時だった。審判の左手が慶大陣営の方に90度上がって、早稲田アリーナが沸いた。上段突き、技あり、これで2-1。再び時計が動き始める。多田は最後まで引かなかった。終了間際、仕上げの突きを叩き込んで勝負あり。「恥ずかしい試合はできない」と語った大将が、見事その拳でチームを3年ぶりの栄冠に導いた。
≪試合後コメント≫
多田光伯(商3・逗子開成)
――まずは早慶定期戦3年ぶりの勝利おめでとうございます。多田さんご自身の率直な感想をお聞かせください
チームの皆で考えてやってきたことに自信を持っていたので、それが間違っていなかったと思えてとても嬉しかったです。
――昨年度は新人の部の大将、そして今年は本戦の部の大将を務めることになりました。この大役を担うことに対して何か特別な意識はお持ちでしたか
例年は主将が大将を務めるのですが、今年は自分が大将を務めることになりました。主将の諸江からも、メンバーを頼んだと言われており、大将として恥ずかしい試合はできないと思っていました。
――2勝3敗で大将戦を迎えました。どのようなことを考えて試合に臨まれていましたか
負け越しではありましたが、緊張はなかったです。むしろ自分次第でどうにかなる形で回ってきてよかったと思っていましたし、そこまで頑張ってくれたメンバーに「ありがとう、お疲れ様」と思っていました。
――前半だけで4本の技ありを奪い優位に立ちましたが、後半は早大・井上拳士に得点を許す場面もありました。代表戦に向けて不安な想いはありましたか
後半になって対応されたなと感じましたが、自分が普段練習でやることをやるだけだと考えていたので、不安はなかったです。
――結果的に代表戦でも井上拳士を破り、見事優勝を果たしました。試合の後、井上拳士に声をかけていたように見えましたが、何か言葉を交わされていましたでしょうか
まずは「ありがとう」と、それから「いい試合だった、強かったよ」と伝えました。
――ここから新チームとして本格的に始動していくことになると思います。多田さんご自身の今後の目標をお教えください
部員全員が部に誇りを持てるよう、今よりもさらにいい組織を作れるように頑張ります。
立合ではこれからもチームを引っ張っていって、全日本で団体優勝を目指したいです。
諸江優(政3・慶應)
――3年ぶりの早慶定期戦勝利となりました、率直なお気持ちをお聞かせください
非常に嬉しく思います。私が入部してから初めての早慶戦優勝ということもあり、監督やコーチ、先輩方、お世話になった皆様に恩返し出来たことが誇らしいです。私自身は出場が叶いませんでしたが、仲間達の勇姿を見て「部員の誰しもが主役になり得る、面白いチームだ」と感じました。
――前後半のインターバルの時間に、諸江さんから後輩や同期の拳士に対して声かけをしているシーンが多く見られました。この時どんな言葉をかけられていたのでしょうか
今回意識したことは、良い意味で「自分の世界に入らせないこと」でした。早慶戦は歓声も大きく、頭が真っ白になることもあります。リラックスして、平常心で臨める様な言葉をチョイスして話しかけていました。
――2年連続で代表戦までもつれ込みました。代表戦に挑む多田さんとは何か言葉を交わされましたでしょうか
多田には「お前が負けるビジョンが見えないから、心から安心出来る」と何度も伝えました。彼は精神的にタフで、私の声掛けが無くともきっと上手くやってくれると信じていたので、敢えて励ます言葉は掛けませんでした。
――コロナの影響で例年とは異なるチーム作りを余儀なくされていると思います。主将として、これから慶大少林寺拳法部をどんなチームにしていきたいとお考えですか
先代の先輩方から引き継いだ熱意と論理、そして対話を軸にチームを統率していきたいと考えています。大会や合宿も相当数削られ、チームの転換点になり得る場面が減っている以上、日々のコミュニケーションや動機付けが例年以上に大切になります。幹部だけでなく、1年生から卒業生まで全員の力を借りて、最高のチームを創り上げたいと考えています。
(記事・写真:野田快 菊池輝)