第57回全国大学ラグビーフットボール選手権 VS早稲田大
慶大14-29早大
12月19日(土) 11:35K.O.
@秩父宮ラグビー場
6大会ぶりの正月越えを懸けて臨んだ大学選手権準々決勝。奇しくも先月の再戦となったこの一戦は、早大が3連続トライを挙げて序盤から主導権を握る。対する慶大は、FL山本凱(経3・慶應)、CTBイサコ・エノサ(環2・King’s College)のトライで詰め寄るも届かず。夢の続きは3年生以下の部員たちに託された。
今年の慶大ラグビーは「これで戦う」という形を持っていた。強固なディフェンスからペースを作り、磨き上げられたキックで敵陣に入る。ペナルティーを起点にインゴールラインに迫ると、最後は必殺のドライビングモールで仕留める。明大戦で形づくり、帝京大戦そして先の京産大戦で確立した理想のラグビーだ。
しかし、このリベンジマッチにおいて、理想のラグビーを完全に再現することはできなかった。まずは持ち味にして生命線のディフェンス。スタンドの栗原監督も「一つ一つの局面でプレッシャーを受けた」と振り返るように、少しずつ早稲田のアタックに押し込まれていった。その結果、空いた外のスペースを古賀・槇の両ウイングにうまく突かれて計3トライを献上。トータル5つの被トライは今季最多の数字だった。
対するオフェンス。これまで抜群の安定感を誇ってきたラインアウトがクリーンに入らないという苦しい展開が続いた。この試合ラインアウトから挙げた唯一の得点は、前半24分の一シーン。バックスラインから角度をつけて走りこんできたFL山本がボールを受け、そのままディフェンスラインを突破。一時10点差に迫るトライを挙げた。
後半に入ってからは敵陣内でアタックする時間が増えた慶大。後半12分にはCTBエノサが追撃のトライを挙げるも、その後は早大守備陣に対して決定機を演出することができなかった。「14-29」でノーサイド。慶大蹴球部の快進撃が止まった瞬間だった。
あと少し、このチームの雄姿を見たい。そう願ったファンも少なくないはずだ。指揮官も「成長してきたこのタイミングでチームが終わってしまうのは残念」と121代との別れを惜しむ。
LO相部開哉(政4・慶應)、北村裕輝(経4・慶應)そしてCTB三木亮弥(環4・京都成章)のタックルは、東と西のラグビーファンをあっと言わせた。SH上村龍舞(環4・國學院栃木)が蹴り上げる美しい弾道のボックスキックと、それを追うWTB沖洸成(総4・尾道)。公称168センチの小さな巨人は、幾度となく大きな巨人をなぎ倒した。今年1番の座を射止めた苦労人・竹内寛(政4・慶應)は攻守にゴール前での強さを発揮し、不動の3番・大山祥平(経4・慶應)は泥臭くボールに絡んでチームを救った。数々の名場面と共に、第121代の挑戦は幕を閉じる。
「大学ラグビーは儚い」。敗戦の中にあって獅子奮迅の活躍を見せた慶大7番は、かつてこう語っていた。今年も果たせなかった正月越えと、その先にある日本一の栄光。敗れた者のみが味わう別れの儚さを胸に、慶大蹴球部は新たな一歩を踏み出す。
(記事:野田快 写真:栗栖翔竜、相良葉子)
◇共同記者会見より抜粋
――試合について
栗原監督:今シーズンの慶應はここにいる相部キャプテンを中心に4年生が必死に頑張って参りました。結果として、ここでチームが終わってしまうのは残念に思います。
LO相部主将:今日の試合はチャレンジャーとして、どれだけ相手に対してひたむきに自分たちのプレースタイルを貫けるか、というところに焦点をあてて戦いました。ただ、所々で早稲田大学の圧に押され、得点を許してしまいました。今日の敗戦は非常に残念ではありますが、後輩たちがここから何かを学び、生かしてくれればと思います。
CTB鎌形:「自分たちの1年間やってきたものを全て出し切ろう」という想いで、全員でこの試合に向き合いました。結果的に負けてしまい、正直に言ってすごく悔しいです。来年からの後輩には、今日の試合から何かを学んで、来年以降に生かしていって欲しいと思っています。
――1か月前の試合から今日の試合に向けて修正した点は
栗原監督:ゴール前でボールを動かしてトライを取りきることです。1か月前(11月の早慶戦)はそのエリアで取りきれないことが課題でしたが、今日はその場所に行くことがあまりできませんでした。早稲田のプレッシャーの小さな積み重ねが、エリアを取れなかったことにつながったのではないかと思います。
――ラインアウトにおける早大のプレッシャーについて
相部主将:自分たちの想定では、既存のサインワークで散らしていけば得点できると思っていました。ただ、想定以上に早稲田の、特に下川選手のプレッシャーが強かったです。そこの圧力に少しずつ負けて自分のサインワークが乱れた結果、全体としてプレッシャーを受けてしまった、と感じています。
――栗原監督2年目のシーズンを終えてみての心境
栗原監督:今年の慶應は成長幅が大きく、ここ1か月で本当に成長してきました。だからこそ、このタイミングで敗退し、このチームが終わってしまうことを非常に残念に思います。この成長の幅の大きさを考えると、春からそういう想いを持って取り組んでいかないといけないなと実感しました。
◇出場メンバー
【Starter】
1.PR(プロップ) 竹内寛(政4・慶應)
2.HO(フッカー) 原田衛(総3・桐蔭学園)
3.PR(プロップ) 大山祥平(経4・慶應)
4.LO(ロック) 相部開哉(政4・慶應)
5.LO(ロック) 北村裕輝(経4・慶應)
6.FL(フランカー)今野勇久(総2・桐蔭学園)
7.FL(フランカー) 山本凱(経3・慶應)
8.No.8(ナンバーエイト) 福澤慎太郎(環1・本郷)
9.SH(スクラムハーフ) 上村龍舞(環4・國學院栃木)
10.SO(スタンドオフ) 中楠一期(総2・國學院久我山)
11.WTB(ウィング) 佐々木隼(総2・桐蔭学園)
12.CTB(センター) イサコ・エノサ(環2・King’s College)
13.CTB(センター) 三木亮弥(環4・京都成章)
14.WTB(ウィング) 沖洸成(総4・尾道)
15.FB(フルバック) 山田響(総1・報徳学園)
【Booster】
16. 田中慶伸(総3・桐蔭学園)
17. 松岡勇樹(法2・慶應)
18. 岡広将(総1・桐蔭学園)
19. 村松龍之介(経3・慶應)
20. 髙武俊輔(総2・尾道)
21. 安藤快(経4・慶應志木)
22. 鬼木崇(法2・修猷館)
23. 鎌形正汰(商4・慶應)
【選手変更】
前半17分 三木亮弥→22鬼木 崇
後半00分 竹内 寛→17松岡勇樹
後半21分 今野勇久→20髙武俊輔
後半21分 佐々木隼→23鎌形正汰
後半24分 原田 衛→16田中慶伸
後半30分 大山祥平→18岡 広将
後半31分 上村龍舞→21安藤 快