定期戦の開催中止、そして練習の制限。今年度、慶大ボクシング部の前には、かつてないほど大きな壁が立ちはだかった。そのような状況で迎えた早慶戦。ライトフライ級で主将・成澤諒(理3・東京工業大学付属)が1勝目をあげると、その後も各選手が全力で慶大のプライドをみせつけた。結果、慶大は6勝1敗で見事、早慶戦5連覇を達成した。
12月5日(土) 第64回早慶ボクシング定期戦 @慶大日吉記念館
階級 | 勝敗 | 慶大選手名 |
| 早大選手名 |
LF | 〇 | 成澤諒 (理3・東京工業大学付属) | RSC 2R2’21 | 岡村泰靖 |
F | 〇 | 古山皓介 (環4・新潟江南) | 3-0 (30-26,30-27,30-26) | 磯村時将 |
B | ● | 上田竜司 (経3・都立国際) | RSC 3R1’40 | 伊藤礼 |
L | 〇 | 安部飛雄馬 (環1・慶應) | 3-0 (29-27,29-28,29-28) | 三輪裕之 |
LW | 〇 | 池田穂高 (総4・麻布) | 3-0 (29-28,29-28,30-27) | 藁品健介 |
W | 〇 | 松村和弥 (総2・浅野) | 3-0 (28-29,29-28,29-28) | 高橋良典 |
M | 〇 | 武智琉馬 (環3・新田) | RSC 2R0’51 | 清山左近 |
今年、慶大が所属する関東大学ボクシングリーグは、コロナ禍によりリーグ戦が中止に。さらに、感染症対策の観点から練習する機会も減り、慶大は苦難の日々を過ごすこととなった。そのような状況において、慶大そして早大ボクシング部関係者、全員の尽力により早慶戦を開催することがかなった。慶大は昨年4連覇を成し遂げたプライドを胸に、戦いにのぞんだ。
初戦のライトフライ級に出場した成澤は、ゴングが鳴るやいなや、果敢に攻めはじめた。岡村泰靖(商3・早稲田実業)の素早い攻撃を巧みにかわしながら、冷静にボディに打ち込んでいく成澤。第1ラウンド終盤、強烈な右ストレートを決め相手がよろめくも、成澤は攻撃の手を緩めなかった。第2ラウンドも成澤は試合の主導権を握り、華麗なワンツーを決めると、そのまま見事にRSC勝ちを収めた。
続くフライ級、前主将・古山皓介(環4・新潟江南)は、第1ラウンド序盤からジャブを打ち好機を狙った。相手が引いてしまうところ、古山は一歩踏み込み、そして積極的に攻めた。終盤に右ストレートをくらうも、古山はまったく怯まなかった。第2ラウンド、力んだ相手の隙を突きリング際に追い込むと、右ストレートなど連続で攻撃。古山は第3ラウンド、疲れをみせる相手に対して、自らも負傷しながら、ワンツーを繰り出す。ポイント判定の結果、この試合は古山の勝利となった。
第3試合、バンタム級に登場したのは副将・上田竜司(経3・都立国際)。対する早大の伊藤礼(スポ1・新潟南)は、長い手足を活かし、第1ラウンド序盤から猛烈な攻撃を繰り出す。上田はそれに応戦し、左ストレートを顔面に入れ、伊藤の勢いを削ごうとする。しかし第2ラウンド、伊藤の猛攻に体力を奪われ始めた上田は、多くのパンチをもらい、右ストレートも決められた。上田は第3ラウンド、持ち直すことがかなわず、悔しくもRSC負けとなった。
第4試合のライト級に登場したのは、安部飛雄馬(環1・慶應)。対する早大は、昨年慶大から白星を挙げている主将・三輪裕之(文4・鎌倉学園)。第1ラウンド、安部は低い姿勢から淡々と、三輪のボディを狙った。続く第2ラウンドも、フォームを崩すことなく、早いパンチを繰り出していく安部。相手はアッパーを狙うが、安部はそれをかわしつつ、右ストレートを決める。迎えた第3ラウンド、両者譲らぬ戦いとなったが、一貫して安定した攻撃を見せていた安部が見事ポイント勝ちを収めた。
続く第5試合。ライトウェル級には、池田穂高(総4・麻布)が登場。第1ラウンドから接近戦となり、池田は積極的に打ち込んでいく。第2ラウンドも、池田は勢いそのまま、相手の隙を狙っていく。しかし、池田も相手もこれといったパンチが出ない。もつれ込んだ第3ラウンド終盤、池田は相手にリング際に追い込まれることもあったが、ボディや顔面へのパンチを確実に入れた。池田は戦い抜いた結果、ポイント勝ちを収め、この時点で慶大の勝利が確定した。
だが戦いは終わらない。慶大ボクシング部は、最後までどん欲に勝利を求め続けた。第6試合、ウェルター級に登場したのは松村和弥(総2・浅野)。第1ラウンド、序盤に早大の高橋良典(スポ4・茗渓)から右ストレートを決められるが、松村もくらいつく。しかし第2ラウンド、相手の強烈な右フックを浴び、ダウンを奪われる。このまま追い込まれてしまうのか。だが松村はあきらめなかった。焦りから大振りが目立つようになった高橋に対し、松村はワンツーを決める。松村の冷静な読みがあたり、結果ポイント勝ちを収めた。
いよいよ最終戦、ミドル級に登場したのは武智琉馬(環3・新田)だった。武智は1R、相手を上下に揺さぶりながら、相手の甘い踏み込みを逃さなかった。確実なボディへの打ち込み、そして武智が繰り出す顔面への強力な右ストレートは、着実に相手を疲弊させていった。その後も圧倒的な強さを見せつけた武智。結果は2R51秒、RSC勝ちであった。こうして、6勝1敗で慶大が早慶戦の勝利を掴み取った。
激動の2020年、慶大ボクシング部は勝利で締めくくった。最優秀賞には成澤、敢闘賞には安部が輝いた。早慶戦の舞台で素晴らしい活躍をみせた慶大ボクシング部。来年は、リーグ戦で躍動する姿を見ることができるよう祈るばかりだ。慶大ボクシング部は、今回の勝利を胸に、「1部昇格」と「早慶戦勝利」を目標に掲げ進み続ける。
(記事:青木満智子/写真:左近美月)
以下、コメント
成澤諒(理3・東工大付属)
——試合を振り返って
コロナ禍でかなり大変だった中、試合をできたことが本当に嬉しいです。皆、結果を出そうと意気込んで、試合で1敗はあったのですが、勝つことができて良かったと思います。
——自分のプレーを振り返って
去年も対戦した相手で、かなり気持ちが強い選手と知っていたので、押し負けないように自分から、自分から、詰めていこうと思っていました。ですが、少し力んでしまい、ちょっと技術的なところというよりは力で押してしまったんですけど。2ラウンド目で試合を止めることができて、良かったなと感じています。
——後輩たちのプレーについて
そうですね。ウェルター級に出てた松村はちょっと反省点が多いと思うので、これから気を引き締めていく必要があるんですけど。安部は本当に、一番強い相手としっかり戦って勝ちを持ってきたので、今後も引き続きリーグ戦につなげて頑張ってほしいなと思います。
——最優秀賞を受賞したことについて
この試合に向けて、準備とかほとんど僕は携わってなくて。主務とかマネージャー、OBの方とか、ジム室の方とか、凄い準備に力入れてくれて、僕が準備を何も考えなくてもいいくらい試合に集中することができたので。結果で、最優秀賞をもらえることができて、恩返しができたんではないかと思います。
——慶應ボクシング部を応援してくださっている方へ
これからもボクシング部、頑張っていきますので、引き続き応援よろしくお願いします。
古山皓介(環4・新潟江南)
——試合を振り返って
勝てたことに関しては及第点かなと思いますけど、内容としては全然納得のいく内容ではなかったかなと。
——自分のプレーを振り返って
結構、やってて体が重いなというのがあったので、1ラウンド目なんかは、ちょっと試合の入り方を失敗しちゃったなって。2ラウンド目ちゃんと盛り返せた部分、修正できた部分は良かったかなと思います。ただ、3ラウンド目に頭(の治療)とかで中断しちゃったことは、不完全燃焼になったなと思います。
——早慶戦5連覇について
僕は正直、あまり早慶戦何連覇とか意識してなかったので。結果としてついてきただけなので。皆の頑張りが報われた結果が5連覇かなと思います。
——4年間を振り返って
4年間やってて、8、9割がしんどかったですね。なので、残りの1割は試合に勝ってっていうのがあって。最後勝てて、本当に良かったと思います。
——後輩たちに向けて
ポテンシャルが高い選手も数多くいるし、特に今年の早慶戦に出てた安部だったり、それ以外の1年生というのは努力家も多いので。僕もOBになってもサポートしていくので、来年の早慶戦だったり、リーグ戦で勝てるように頑張ってほしいなと思います。
池田穂高(総4・麻布)
——試合を振り返って
相手は結構強かったんですが、その中でも自分の力を思いきり、精一杯出し切ることができて良かったと思っています。
——自分のプレープランは
相手が結構体重が違ったんで、慎重に攻めていくことを意識して。それができたんで良かったと思います。
——集大成の試合でした
最後倒して引退したかったんですけど、それができなくて悔しい部分もあるんですけど、勝って終われて良かったと思います。
——後輩たちに向けて
この歴史をどんどん引き継いで、より良く、より強くなっていってほしいかなと思います。