12月5日(日)、日吉記念館にて少林寺拳法の早慶戦が行われ、見事慶大少林寺拳法部が昨年に続いての早慶戦優勝を果たした。今回は本戦出場拳士3名とチームをけん引してきた諸江主将への試合後インタビューをお届けする。
佐藤生一(文2・日大豊山)「慶應を日本一に」
2年生ながら本戦の部に出場。見事な逆転勝利でチームの早慶戦優勝に貢献した。今回の早慶戦のテーマ「No Passion! No Victory!」の発案者。
――チームからは先鋒として勝利を期待されていたと思います。そんな中で前半いきなり3点を先取されました。あの時は平常心で戦っていたのか、それとも焦りや不安が生じたのかで言うとどちらでしょうか
3点先取されたときは、自分でも驚くほど冷静でした。私は試合前に自分の失点パターンを二つ程想定していて、3点全てがその想定通りの失点パターンでした。私にとってこの3点は想定内のことだったので全く焦ることはありませんでした。
――後半は一気に畳みかけて見事な逆転勝利を挙げました。前半から後半にかけて意識して変えた部分は何かありましたか
前半戦が終わり、1分間のレストの際に、渡辺先生から「焦るな」という言葉を頂きました。その瞬間に、「自分は焦っているのか」と我に帰り、もっとリラックスして自分の得意な中段突きのカウンターで逆襲しにいこうと決めました。その作戦が上手くはまり逆転勝利することができました。
――佐藤拳士は2年生ということで、来年の早慶戦はもちろんのことそれ以外の場面でもチームの中心的存在になっていくと思います。今後に向けて意気込みをお願いします
私の目標は慶應を日本一にすることです。自分自身の結果も追い求めつつ、いかに他を巻き込んで部員全体の技量を向上できるかを考えています。実技と分析の両輪をまわし、熱い「passion」を持って慶應少林寺拳法部を最高の「victory」へと導いていきます。これからも応援よろしくお願いします。
山内嶺央(経3・西大和学園)「1勝をもぎ取ろうと」
昨年に引き続いての早慶戦勝利。緊迫した試合展開の中、研鑽を積んできた中段突きで接戦を制した。次期副将。
――1勝1敗で迎えた中堅戦、どんなことを考えながら立合に臨みましたか
自分が勝てば後ろに控えている3人が戦いやすくなるので、しっかり1勝をもぎ取ろうと考えながら臨みました。
――前半の60秒間は互いに見合う時間が続きました。あの展開は山内さんの狙い通りだったのでしょうか
想定通りでした。足腰を怪我しており攻撃の手数を出せなかったことと、対戦相手が関東3位の実力者だったことから、前半は相手の様子を観察しようと決めていました。前半で思い通りに戦えたため、後半も自分のペースで試合を進められ、勝利を収めることができました。
――新人の部、本戦の部ともに山内さんが他の出場拳士に声をかけている姿が印象的でした。山内さんご自身で何か特別な意識をもって動いていたのでしょうか
選手の緊張や不安を少しでも和らげようと考えていました。試合に落ち着いて臨むことで、試合中の動きが固くなり過ぎず、視野も広がります。そうすることで個人のパフォーマンスは向上し、勝率を上げることができるので、声掛けは不可欠だと考えています。
――来年度はチームの副将として部を引っ張る立場になります。どんなチームを作り上げていきたいとお考えですか
貪欲に結果を求めるチームにしたいです。今年度の先輩方が成し遂げた「インカレ総合3位」の偉業を超えるためには、並大抵の修練ではダメだと思っています。一人ひとりが自分に限界を設けず、目標達成のためにPDCAを回し続け、しっかりと結果を残す必要があります。私は副将として、部員全員が好成績を収めるために、戦略策定や技術指導の面でチームを引っ張りたいと考えています。
多田光伯(商4・逗子開成)「引き分けは全く頭になかった」
「慶應の立合に多田光伯あり」(西山)と称されるほどの実力は、今年の大一番でも遺憾なく発揮された。慶大のエースとして優勝を決める見事な勝利。
――本戦の部大将として、そして部全体として2年連続の早慶戦勝利となりました。多田さんご自身の率直な感想をお聞かせください
素直に嬉しいです。でも、このチームだったら勝てるという確信があったので、「勝利も当然だよな」という感情もありますね。
――今年は引き分け以上で早慶戦勝利という状況で出番が回ってきました。ゲームプランとしては、ある程度引き分けに持ち込むことも意識していたのでしょうか。それともあくまで勝ちに行くことを優先していたのでしょうか
引き分けは全く頭になかったです。全力で打ち負かすことが相手への敬意だと思っていたので、勝ちに行こうと考えていました。ただ、有利な状況で回してきてくれたので、4年間最後の試合を楽しもうという気持ちも持つことができました。
――前半終了間際に先制することに成功しました。先ほど伺ったゲームプランに何か変更はありましたか
勝ちに行く姿勢には変わりはありませんでした。ブレずに最後まで前に出ることができたと思います。
――この早慶戦をもって多田さんはじめ4年生は引退となります。これからの慶大少林寺拳法部を作っていく後輩たちにむけてメッセージをお願いします
チーム運営は正解がわからない事ばかりだと思います。みんなには、自分たちの信じた道を突き進んで欲しいです。それを正解にできるだけの力が君たちにはあるのだから。
僕たちはいつでも、君たちのことを応援しています。今年よりもさらに最強で最高になったチームを見られることを、楽しみに待っています。
諸江優(政4・慶應)「足し算から掛け算に」
第62代少林寺拳法部主将。「三大目標」をテーマに部の強化に努め、創部以来初となるインカレ総合3位の立役者となった。早慶戦では演武披露の大役を担い、会場を沸かせた。
――2年連続の早慶戦優勝おめでとうございます。「早慶戦優勝」は2021年度のチームにおける「三大目標」の一つでもありました。その一つを達成した今、主将としての心境をお聞かせください
この最高のチームで戦い、目標を達成出来たことを誇らしく思っています。
昨年は新幹部就任からたった2~3週後の早慶戦であり、チームとして全く完成出来ず、結局「出場選手個人の足し算」によって作られたチーム力でした。もちろん勝利は嬉しかったですが、出場メンバー頼みで戦略が不十分だったことを今でも悔やんでいます。
本年度の早慶戦は勝利までのプロセスが全く異なりました。三大目標に向かって1年間全員で考え抜き、厳しい練習やタスクをクリアし、戦略にのっとって勝利できました。同じく貴重な一勝ではありますが、「部員全員の力の掛け算」によって得られたものでありました。
出場メンバーも、サポートメンバーも全員、最高の働きをしてくれました。
――昨年の早慶戦では、出場拳士に積極的に声をかけている諸江主将の姿が印象的でした。今年もそうした光景はよく見かけたのですが、一方で主将以外の拳士(特に本戦の部出場メンバー)もサポートに努めていた印象があります。これには諸江主将から何かしらの働きかけがあったのでしょうか
私が当日新たに指示を出したことは全くありませんでした。ひとえに「チームで助け合って勝つ」という想いが共有出来ていたからだと思います。
当部の三大目標の中でも最も重視している「人格的成長」という目標のもとに、部員は常日頃から周囲への感謝を忘れずに行動しています。各部員はチームのために動き、仲間を助けるということが当たり前にできているからこそ、当日も声をかけ合えたのだと思います。
その点でも昨年より確実にチームが成長出来ていることを実感出来ました。ありがとうございます。
――インカレ総合3位に加え、早慶戦優勝。2021年度は慶大少林寺拳法部にとって飛躍の一年になったように思います。これからのチームを作っていく後輩たちに向けて、最後にメッセージをお願いします
インカレ・早慶戦ともに後輩達の活躍に助けられました。前例の無い育成計画を十二分に達成してくれたのは、彼らの努力の結果に他なりません。
これからも指導陣に全力で食らいつき、チームの戦略を信じて走り切れば、必ず最高の勝利を掴めます。
今まで幹部を信じて一緒に走ってくれて、本当にありがとうございました。
今年度早慶戦の様子はこちらから!
(記事・写真:野田快 松田英人)