慶應義塾大学体育会には現在、43の部活がある。そんな体育会各部は普段どのような雰囲気で、どのような練習を行っているのか。試合などでは見られない、体育会の知られざる日常に迫る。第4回となる今回取り上げるのは自動車部。日本有数の設備と実績を持つ慶應自動車部の練習にお邪魔し、小野徳馬(文4・慶應)主将にお話を伺った。
1931年にモーター研究会として発足してから現在に至るまで、長い歴史を持つ慶應自動車部。「ジムカーナ」「ダートトライアル」「フィギュア」の3種目の競技で関東・全日本大会を戦い、その総合成績によって授与される「全日本総合杯」の獲得を年間の最大目標に掲げている。現在の部員男女比は9:1と男子が多いが、女子部員も大会の女子団体部門で躍動するなど、存在感を遺憾なく発揮している。
日吉キャンパスの最奥部、東海道新幹線が貫くトンネルの真上に慶應義塾大学の自動車練習場が存在する。一般の学生は日吉開講の自動車の授業を履修しない限り、中に入ることはできない。
門をくぐると早速何台もの自動車が目に飛び込んでくる。自動車部と聞いて想像しやすいスポーツカーはもちろん、一般車やトラックなども、そこに鎮座している。
部活で使う競技車両はナンバーを取得していないため公道を走ることができない。そのため、日吉から出る際はトラックに競技車を載せて会場に向かうのだそうだ。
奥へ進むと、そこには広大なコンクリート舗装の空間が現れる。キャンパス内に自動車練習場を持つ大学は日本でもほぼなく大変珍しい。自動車の授業や普段の練習はここで行われる。「私有地なので、普通自動車免許を所有していなくても敷地内であれば自由に運転することができます。免許を持っていない新入部員が今年は半分ほどを占めているので、運転の練習をここでできるのはとても便利なことです。」と小野主将。
取材日はちょうど大会終了直後であり、部活は大会で使用した車の整備が中心となっていた。実は直前の練習で車に大きい故障が発生し、部員たちはその修復に追われていた。
部員の一人は「車自体が30年近く前と古いものなので、部品の製造が終了していることもある。車はもちろん部品も大切に扱います。」と語る。「どんなに良いドライバーがいても車が動かなければお話にならない」というように、運転だけではなく整備ももちろん部活の一環だ。
他の部活と大きく異なる点というと、活動時間の制限が挙げられるだろう。自動車部では競技練習は16時までと決められている。それは自動車が大音量を出すというこの部活特有の理由である。特に冬場ともなると、16時を過ぎれば日もだいぶ傾いてくる。日吉キャンパスは住宅地に囲まれているということもあり、活動する上で周辺住民への配慮は欠かすことはできない。近所との良好な関係構築も自動車部の目指すところだ。
後編にて、小野主将のインタビューをお届けします。
(取材・撮影:東 九龍)