慶應義塾大学蹴球部には毎年日本中の名門高校から数多くのラガーマンが”日本一”の野望を胸に入部する。そんな慶應選手を輩出する高校で指揮を執る監督に当時の選手の姿や現在の成長を聞く取材企画。トリを飾る第5弾は我らが慶應義塾高校。現在の4年生までを指導した稲葉潤監督に、中学・高校から大学へと繋がっている慶應義塾だからこそできる指導、慶應らしさについてお話を伺った。
―自己紹介をお願いします
稲葉と申します。1999年卒で、その後東京ガスでプレーしました。2003-2004年はニュージーランドのクラブチームでプレーして、その後オーストラリアでのプレーを経て東京ガスに戻り、現役を引退しました。2008年から塾高のコーチを始めて、2011か2012から監督をやって、8年間務めて2018年のチームを最後に監督を離れたという感じです。
ー<共通質問>教え子たちが慶應のみならず関東、全国のラグビー部に羽ばたき活躍している。送り出した監督としての受け止めや感想など
高校の監督をやってた時の教え子たち、高校時代でいうと8代あって、その中のだいぶ多くの生徒が大学で、中にはトップリーグでもリーグワンでも続けている子もいますが、まずは大学で試合出る出ないというのはありますが、充実した蹴球部での学生生活を謳歌してるかというところを見ています。細かくは見れませんが、高校時代は試合にあまり出られなかった子が大学では出られるようになったなとか、逆ももちろんありますが。生徒たちが高校を終えた後どのように活躍してるかというのはインターネットですとか、最近ではSNSとかで見たりします。場合によっては試合、海外に行ってしまったのでなかなか試合を直接見ることはできなかったのですが、映像で見たりとか、そういったことはあります。
―塾高は慶大にそのままつながっていて実質7年間プレーできるところが強みだと思うのですが、内部から見た塾高ならではの強みであったり塾高だからできることは?
もちろん一貫校として大学と一緒に高校の練習をできたりとか、場合によっては大学のリソースを使いながら強化できるというのは圧倒的に強みであります。2014年の代(記者註:この代は神奈川大会決勝で桐蔭学園の10連覇を阻止し、単独では13年ぶりに花園出場を果たした)なんかは頻繁に合同練習とかフォワードのスクラム台などのセッションだったりとか、そうしたことをやることによって強化に当然つながりました。あとはS&Cのスタッフですとかトレーナーの派遣とか、そういったことを他のアイテムも入っているかもしれないですが、当時の大学のスタッフと共有しながらやることによって強化に大きくつながったというのは絶対に強みだと思います。
―慶大は現在まで対抗戦全勝で今年は好調のように思われますが、今の4年生とは関わっていましたか?
今の4年生、松岡勇樹(法4)とかあの代が私が教えた最後の代です。
―4年生も塾高出身者が圧倒的に多いですが、今年のチームを見ていて選手のここまでの活躍はどうですか?
正直細かく全部の試合を見られているわけではなく、この間の小田原での試合とかは映像で見させていただいたりしたのですが、やっぱりチームの中でだいぶマジョリティーとか多くのスターティングメンバーとかリザーブの中に入ってくれているのはもちろんうれしいです。教え子であるので結果を何とか残してほしいなと思っていますね、特に4年生に関しては。
―監督を務めていたのは現在の大学4年生が高校3年生だった時までですか?
そうですね。それからプラス高2・高1と、今の大学2年生までは被っている部分がありますけども。
―今の4年生の塾高出身者の中で当時特に注目していた、印象的だった選手はいますか?
なかなかあまり個人で見ないと言ったら語弊があるかもしれないですが、基本的に皆のことをフラットに見ているので、この子がどうという特筆的なことはメディアみたいなところではあまり言わないようにしています。やっぱりチームを預かる者として皆平等に見るのが僕はすごく大事だと思っています。なのでもちろん社会人になって活躍して日本代表になった選手もいましたけども、そういう選手というのはもちろんやっぱりうれしく、彼らはもちろん自分たちが頑張って努力したからそうなっているのですが、なかなか試合に出られなくても頑張ってる子もいるので、そういう意味であんまり特筆してこの子がどうというのは自分の中では思っていないですね。
―塾高出身者とは大学進学後に連絡を取りましたか?
僕は辞めた理由が海外転勤で海外に赴任することになりました。実際に日本に帰ってきた期間というのが、最近は国境を越えて行ったり来たりできるようになったんですが、それまでほとんど日本に帰ってこられなかったので直接会ってというのは全然無かったです。久しぶりに今年の春とかにちょっと仕事も兼ねたセッションとかでグラウンド行った時に、会って「オ~」ということ位はありましたけども、あとはあんまりほとんどないですね。
―会った際やオンラインで話した際、教え子に何と声を掛けましたか?
「頑張れよ」とは言いますけど、実際に今は栗原監督だったりとか今のコーチが頑張って教えているので、僕は何か別に特別言うこともないですし、まあとにかく最後の学年、この代は特にそうですけど高校時代も花園に行けなかった代なので、やっぱり最後にその悔しさをちゃんとこっちに、桐蔭学園の子たちも混ざったりすることもあるのですが、ぜひ良い大学生活の結果を最後残してほしいですね。
―最後に4年生にメッセージをお願いします。
先ほどの内容と少し重複してしまいますが、試合でもちろん活躍して結果残してほしいというのもそうですし、悔いを残さずやりきってほしいというのももちろんあります。ただやっぱり大学のトップチーム並びに慶大ラグビーの頂点に4年生はいると思うので、少なくとも模範になってほしいと思いますね。見ていてもちょっと試合中の身だしなみとか僕もたまに気になることがあるのですが、伝統校のファーストフィフティーンとして出る選手はそういったところまでちゃんと学生スポーツの中でも模範になるようなことを思ってやってほしいなと思いますね。
―ありがとうございました!
(記事:東 九龍)