【ラグビー】100周年を迎えた伝統の1戦はワセダに軍配。12年ぶりの勝利はならず

ラグビー

秩父宮ラグビー場にて行われた第99回早慶対抗戦。大学日本一国内最多の16回を数える早大を相手に先制点を奪うと、その後も慶大ラグビーの強みであるディフェンスで相手に攻撃の機会を与えない。さらに追加点を挙げ、前半を10―0で折り返すが、後半は攻守が逆転。2トライ1キックで逆転されるとロスタイムでさらに引き離され、2010年ぶりの勝利を手にすることはできなかった。

※記事掲載が遅れましたことをお詫び申し上げます。

1922年11月23日に始まった対抗戦は今年、100周年のメモリアルイヤーを迎える。冷たい雨が降り注ぐ中でも会場には大勢の観客が押し寄せた。秩父宮ラグビー場の入り口では蹴球部員が団扇を、両校スポーツ新聞会が新聞を配布。会場外や配布の模様はTVでも放送され、盛り上がりに花を添えた。過去の対戦成績は慶大の20勝7分71敗。2010年の勝利を最後に、引き分けをはさんで10連敗中の慶大は熱い闘志を胸にこの伝統の一戦に臨んだ。

ケイスポ・早スポの配布も行われた。雨の中でも多くの観客の皆様に受け取って頂いた

早大のキックで始まった前半40分の戦い、慶大は序盤から相手ボールを積極的に奪いにいく。2分に早大ボールで組まれたファーストスクラムではペナルティを取ってしまうが、その後の4分のスクラムではボールをキープ。さらに4年連続早慶戦出場の中楠一期(総4・国学院久我山)がキックで敵陣の深くまでボールを進めてラインを上げる。その後も慶大のターンオーバーが複数回あり試合は慶大に有利な形に。9分、ボールを受け取った今野椋平(環1・桐蔭学園)が相手の隙をついてそのまま疾走。早大のゴールラインにあと数メートルのところまで迫る。

慶大が敵陣で試合を展開し続ける中、15分についに得点につなげる。中山大暉(環2・桐蔭学園)が放ったボールをアイザイア・マプスア(総4・King’s College)が受け取ると多くの選手が応援に駆け付けそのまま前進。ここで早大にコラプシングの反則が下されると中楠がペナルティゴールを決めて3―0と先制点をとる。

佐々木隼から山田響へのパス

中盤、3点を追う早大は積極的に攻撃を仕掛けるも、慶大が固い守備で突破を許さない。21分、今野勇久(総4・桐蔭学園)のジャッカルで早大に食らいつくと、このプレーが転機となり敵陣に切り込む場面が増える。30分、慶大ボールのスクラムからボールをつなぎ、1年今野、中楠がそれぞれ相手をかわしながらボールを前に進めると、最後は松岡勇樹(法4・慶應)が受け取りトライ。ファーストトライを決めて8-0とし、後のキックも中楠が決めて10―0に。慶大は最後まで連携の取れた堅い守備で相手を寄せ付けず、見事前半を無失点・10点リードで終えた。早慶戦において慶大がリードした状態で前半を終えるのは2017年の対抗戦以来であり、会場は大いに盛り上がりを見せる。

慶大のキックオフで始まった後半は早大に追い風が吹いた。5分、相手は長いパスでボールを松下怜央(スポ4・関東学院六浦)につなぎ、これを決死に食い止めるもここで慶大にオフサイドの判定。相手はラインアウトから力強いモールでじわじわとゴールラインに迫り寸前のところでマプスアが相手のトライを防ぐも、このプレーにシンビンを出されてしまう。マプスアの10分間の退出の中、慶大は1人少ない14人で守りを固めるがボールを自陣から出すことできず、9分に佐藤健次(スポ2・桐蔭学園)のトライを許すと吉村紘(スポ4・東福岡)が蹴ったボールもポール間を捉えて10―7と一気に点差を縮められる。さらに14分、先ほどと同様に慶大にペナルティからのトライアウト後、またも佐藤が抜け出しトライ、10―12と逆転を許した。マプスアが再びコートに入り、足を痛めた髙武俊輔(総4・尾道)の代わりに福澤慎太郎(環3・本郷)も入り敵陣に切り込もうとするも、なかなかボールをキープできない。その後も早大がプレッシャーをかけ続ける展開が続いた。

栗田にタックルを仕掛ける早大。両校一歩も譲らない展開が終始続いた

32分、早大キャプテン相良昌彦(社4・早稲田実)の交代後、慶大はまたも山場を迎えた。自陣のゴールラインまで5メートルのところで相手は槇瑛人(スポ4・国学院久我山)、村田陣悟(スポ3・京都成章)と一気にセンターにボールを運ぶが、ここで永山淳(総3・国学院久我山)・樋口豪(文3・桐蔭学園)が決死のダブルタックル。キャプテンの今野も相手の体に腕をねじこみ、寸前のところでトライを許さなかった。この好プレーによりまだ十分に逆転可能な得点差に抑える。試合は39分、残すところ1プレーに思われるもなんとロスタイムは5分。2点を追いかける慶大にとっては大きなチャンスとなる。

しかし早大は決して守備に徹しなかった。慶大のゴールラインまで残り数メートルのところでスクラムを組むと、そこから先ほどの復讐と言わんばかりに村田がトライ。キックも入り10-19とされる。最終プレー、慶大がボールを持つも9点差をつけられる中で選択したのはトライではなくショット。このショットを中楠が冷静に入れ、ノーサイドとなった。

試合後はライバルからラグビー仲間へ。健闘を称え合った

慶大は敗北したものの、多くの選手が慶大の強みとして挙げていたラインアウトでは早大を圧倒。また最後のショットにより6点差とし、7点差以内で敗戦した場合に与えられるボーナスポイントを獲得した。

両校は勝点19で並んでいたものの、これで早大が勝点4、慶大が勝点1を獲得し、Aグループにおける順位は11月23日時点で早大が2位、慶大が4位となった。

またしても早慶戦勝利とはならなかった慶大。とはいえ今回もまた大差負けではなく、両校の実力は互角だったと言えるだろう。部員たちが口にしていた「少しの差」が結果に現れた形となった。それが気持ちなのか技術なのか、それは今後の部員の話し合いで明らかになってくるだろう。来年は100回目の早慶戦、メモリアルイヤーはまだ続く。365日後に同じ場所でリベンジを果たし、伝統を次の100年へとつなぎたい。

(取材:五関 優太、愛宕 百華)

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