慶應義塾体育会には現在、43の部活がある。そんな体育会各部は普段どのような雰囲気で、どのような練習を行っているのか。試合などでは見られない、体育会の知られざる日常に迫る。第10回となる今回取り上げるのは、馬術部。今回は練習に伺い、田中亮(商3・慶應)に話を伺った。
日吉駅から徒歩8分の場所に位置するのは、練習拠点である日吉馬場だ。門をくぐると正面にある2階建ての厩舎が目に飛び込んできた。ここには、競技をともに戦う馬匹20頭が飼育されている。そのなかには、かつて競走馬であったものも存在する。
そして練習場所となる馬場は、一貫教育校の馬術部の学生も共に練習を行っている。
部員は、当番制で餌づくりや掃除を毎日行っている。さらに馬の健康状態を維持のため、必要に合わせて処方された薬や心拍数の測定をすることもかかせないそうだ。
馬術競技には3種目が存在する。設置された様々な障害物をいかに正確に飛び越し、且つより早くゴールすることができるかを競う障害馬術。いかに正確かつ優美に演目をこなすことができるかを競う、馬上のフィギュアスケートともいわれる馬場馬術。そして同一の選手と馬で、馬場馬術・障害馬術と野外走行の合計点を競う総合馬術がある。また、これらの馬術競技の大会では、騎乗する選手の性別によって区画することはせず、公平な条件で競われるという特徴がある。
馬によっても得意不得意な種目があり、それを探す必要があると語る田中主将。取材時にも入ってきたばかりの馬に騎乗し、得意な種目の選定を行っていた。
馬術大会は各地で開かれている。その際に試合会場までの移動は専用のトラックに馬を乗せて部員自らが運転をして向かうそうだ。競技中のみならず常に馬との行動を共にする必要があるため、日ごろからの信頼関係の構築は不可欠なのである。
田中主将に馬術の魅力と部の目標についてインタビューで伺った。
――馬術の魅力とは?
馬術の魅力でいうと、やっぱり動物を扱う唯一のスポーツなので、人馬一体という言葉があるように、乗って障害物を飛び越えるだとか、それでしか得られない感覚があって、一人で成し遂げるというよりかは馬も一緒になって目標に向かって頑張るという点が結構魅力だと思っています。
――大変なところはどんなところですか?
やっぱり体の大きな生き物を扱うというところと、また動物なので言葉が通じない所が大変で最初は大きな壁になるところですかね。そこを乗り越えていくと毎日毎日接して乗っている馬がそれこそ相棒みたいな感じになってきて、僕も馬のことが分かっているし、馬も僕のことが分かってくれているんじゃないかと思って普段やっています。
――今年の目標は?
関東学生、全日本学生では3種目あって各団体競技の成績も出るんですけど、その成績を合わせた3種目総合というのがあって、そこで上位3位以内に入ることが具体的な目標です。
動物と人が共になって競技に挑む唯一の體育會、馬術部。その活躍に目が離せない。
(取材 堀川洸、鈴木宗太郎)