慶應義塾体育会には43の部活の他に、準体育会が存在している。今回は準体育会アメリカンフットボール部DUCKSの練習に密着し、主将・藤澤雄太(政4・慶應)選手にお話を伺った。自主性を大事にする練習の様子や4月23日の早慶戦の結果をお届けする。
週末に試合を控えた中での練習
DUCKSは今年で創部60年を迎える伝統あるチームだ。練習日は主に、火曜、木曜、土曜、日曜で新横浜や新丸子で行っている。部員は各学年10~20人ほどで、その多くは大学からアメリカンフットボールを始めている。高校時代の経歴は、野球、バスケ、部活に所属していなかった人など様々。初心者でも入りやすい環境だ。
早大理工アメリカンフットボール部BACCHUSとの第49回早慶ボウルを週末に控えていた18日の練習は新横浜で21時から行われた。アップを終えた後、ポジションごとに分かれての練習に取り組む。練習では監督やコーチがいないため、3年生のポジションリーダーがメニューを決めるが、SNSなどで見つけた練習を取り入れることも可能だという。
マネージャーが時間をきちんと管理して練習は進み、その後はキックの練習に入る。アメリカンフットボールでは4回の攻撃で10ヤード進まないといけないが、3回で進めなかった場合はキックを選択することが多く、それを想定したメニューである。そして最後に試合形式のオフェンス対ディフェンスの練習に取り組み、選手たちは汗を流した。
「純粋にアメフトを楽しめる環境」
DUCKSの一番の魅力は「自分で決められること」である。監督やコーチが練習にいるわけではないので、選手たちがやりたいと思ったプレーや作戦を試すことができる。主将の藤澤も「他の何にも干渉されずに、アメフトを素直に楽しめる環境」だと自信を持って語り、充実した時間を過ごしている。
多くは競技未経験で入部してくるため、指導には難しさも感じている。藤澤は慶應高時代もアメリカンフットボール部に所属しており知識もあったというが、未経験者との間にはルールなど知識量の差があることに加え、「アメフトは日本ではマイナーなスポーツなので勉強する方法がなく、自分で調べるしかないので情報を得るのが難しい」と話す。
それでも「うちのチームにアメフトを最初から知って入ってくれている人は一握りなので、どんなバックグラウンドでも、帰宅部だった先輩もいますし、留学から帰ってきたばかりの人や留学生もいます。アメフトの経験値は求めていないです」と様々な部員の入部を歓迎している。「みんながみんなを認め合っている」といい、部での練習を通じてお互いを尊敬し合える関係性を築いている。
早慶戦を勝利で飾る
今年で第49回となる早慶ボウル。新体制で迎える始めての試合だ。ここで勝つことができれば、記念の年を幸先の良いスタートを切ることができるだけに藤澤は、「自分たちの今の姿が直接目に見える舞台であり、ベストを尽くしたい」と力強く意気込んだ。そして4月23日、富士通スタジアム川崎で行われた大一番では見事21-7と早大BACCHUSを圧倒し、勝利を収めた。
秋には創部初の4連覇を目指す関東選手権が控えている。目標に向けまずは早慶戦でスローガン「WIN」を体現した。主力の4年生が多く抜けてしまったが、それでも強さは健在だった。
アメリカンフットボールの魅力は「一見すると野蛮なスポーツだが、裏には細かく設定されている頭脳戦がある」こと。その楽しさを一番純粋に感じられる環境が整っているのが準体育会アメリカンフットボールDUCKSだ。「全員がアメフトをよく知っていて、アメフトを好きであってほしいと思いながらチーム作りをしている」。藤澤のその思いは部員全員に伝わっていることだろう。
(取材:長沢美伸)
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