慶應義塾体育会には現在、43の部活がある。そんな体育会各部は普段どのような雰囲気で、どのような練習を行っているのか。試合などでは見られない、体育会の知られざる日常に迫る。第13回となる今回取り上げるのはスケート部フィギュア部門。リンクでの練習に伺い、氷上を滑る部員たちの様子を取材した。また、個人競技ではあるが「互いに鼓舞し合う」環境にも迫る。
フィギュア部門の活動
さっそうと氷上を滑る姿、迫力あるジャンプやスピン。その華麗な演技を誰もが一度はテレビなどで見たことがあるだろう。
慶大スケート部フィギュア部門には、小学校から始めた人もいれば、大学から始めた人も所属している。部員のレベルは様々。普段の練習では、経験者が初心者に教えている。選手たちは日本学生氷上競技選手権大会(インカレ)への出場・結果を残すことを目標としている。フィギュアスケートには「級」があり、数字が大きい方が高いレベルであるが、インカレは3級以上で行われる。そのため、大学から始めた選手はまずバッジテストで3級以上を取ることに挑戦する。またすでに高い級を持っている人の中にも、さらに上のレベルで戦うために大学に入ってから級を上げた部員もいる。
部としては週に2回活動している。氷上での練習は週に1回で毎週火曜日の朝8時-9時に、南船橋にある三井不動産アイスパーク船橋で行っている。もう一日は土曜で、陸上で体幹や持久力アップのためにトレーニングをしているという。
さらに、早慶アイスホッケー定期戦では大会の運営やエキシビションを行ったり、スケート教室を開催したりするなど、フィギュアスケートの普及にも熱心に取り組んでいる。
氷上での練習
氷上では、最初にウォーミングアップを行った後、各自の曲を順番に流して練習している。自分の演技の動画を部員に撮ってもらい、後に確認。スピンやジャンプの入り方などを入念に確認する。オンアイスでの時間が限られているだけに、オフアイスでの取り組みも重要になる。
他の部員の曲が流れている間は、各自自分の課題に取り組む。例えば、主将の木下あかり(政4・頌栄女子)は「スピードをより出すことと表現力を付けること」と語り、技術力に加え音を一つ一つ表現することを大事にしているという。
また、久保田美佳(経3・クリスチャンアカデミージャパン)は「基礎が大事だと思っている」と話す。氷上での練習は週1回であり、さらには勉強などの都合で間隔が空いてしまうこともある。しかし、基礎がしっかりしていれば「長期的にスケーティングから離れることがあっても復帰は早い」と感じている。
鼓舞し合う仲間
フィギュアスケートは個人で得点を競うスポーツである。氷上に出れば観客の視線はその選手に注がれ、演技中は一人で戦わなければならない。しかし、慶大フィギュア部門は個人競技をチームで戦っている。日々の試合でも全力で部員を応援し合いことはもちろん、主務の大黒美奈(商4・筑波女学園)は「(慶大入学前は)スケートを誰かと一緒に励まし合いながら鼓舞し合いながら頑張るというスポーツという考えがゼロだった」、「相手を思いやる気持ちを大切にしていることが素敵だと感じている」と語った。他大学だと部活には大会に出るために所属していて、部全体での練習自体がないことも多いが、慶大には仲間と共に強くなる環境が整っている。
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フィギュアスケートは「魅せるスポーツ」である。ただジャンプやスピンなどの技を卒なくこなすのではなく、細部にもこだわり表情やスケーティングでも観客を魅了する。一人で黙々と取り組むのではなく、一緒に目標のために切磋琢磨できる仲間がいることは、部員の表現力の膨らませるのかもしれない。他大学では見られない感性豊かな慶大選手の、思いがつまった演技をリンクで見届けたい。
(取材:長沢美伸)