ここまでで3戦を終えた秋季関東大学男子1部リーグ戦。コートで戦う選手はもちろんだが、同じく勝利に向かって日々ひたむきにバレーボールに向き合っているのがアナリストだ。先週23・24日の試合は延期になったが、今週は対談記事でさらに慶大バレー部について知っていただきたい。後編ではアナリストが担う「分析」について、春・秋季リーグ戦について伺いました。ぜひご覧ください!(前編はこちらから)
★「分析」について
――「分析」というと数値だけを見るイメージもありますが、数値には出ない選手のメンタルについても関与しますか
田鹿:声は掛けますね。それは時と場合によるという感じですね。本当にそれをやらないと成長できないよみたいな値が出てるのであったらそれは言わなければいけないけど、本人が本来出せる値があってそれより下回ってる時とかだとあんまりそういう数字に関しては関与しないで熱量で押すというか。
――ただ数字だけを見るのではないのですね
田鹿:なんか冷徹な感じではないですね、イメージ。
立川:メンタルもやっぱ4年間とか見てると、その選手のメンタルパターンとか、この子は大舞台では大体活躍してくれるだろうとか逆にこの子はちょっと終盤になるとちょっとプレーが消極的になったりとかちょっと悪くなるよなとかが分かるので、そういうのを頭に入れつつみたいな感じです。
田鹿:間違いないね。まず俺らのメンタルを確保しなきゃいけないからねアナリストは。
立川:うん自分のメンタルを保つところから、まずは。
――メンタルが乱れることは
田鹿:リーグね。
立川:作業量も多い。
田鹿:量が質に比例するんですよ。量やれば質も伴ってくるから必然的に量が多くなってしまって。量やるとずっとパソコン見てるってことになるんで、結構心にくるというか疲弊してくるんですよ。
――土日で試合があったら土曜日の試合をその次の試合までに入力して、という感じですか
田鹿:土曜が6試合ぐらいあります。1日6試合あって土日で12試合、1人3試合ぐらい打つと大体打つだけでも3~4時間かかってそこから修正という作業があって、これは打ったやつを直す作業と自分で実際にリアルタイムで打ってなかったコードを追加入力するという作業です。これが結構時間かかって1試合1時間ぐらいなので、1試合あたり2時間ぐらいかけて打つとなると大体6時間ぐらいそれだけで取れて、そこから分析作業に入るとなると結構骨の折る作業になるので、まあ心大事です。
立川:あとアナリストはチームの勝ち負けが自分たちのやりがいというかモチベーションで、勝たないとすごいなんか・・・
田鹿:罪悪感えぐいから。
立川:正解にならないし・・・。負けた時はどれだけやったとしてもそれが間違いだってなってしまうみたいな部分があります。ある意味選手は自分が活躍してれば多少(メンタルが)保たれる部分はあると思うんですけれどアナリストは逆に勝敗がダイレクトで結果として響いてくるので、そういう意味で勝ち負けに対してはすごいシビアにならざるを得ないです。リーグ戦期間中とかは勝ち負けが絶対に1試合1試合出てくるんで、それでメンタルを保つのがその作業量のプラスで大変です。
田鹿:間違いない。
――入力の6試合というのは他大もということですか
一木:大体1部のリーグは2面で試合が行われてて、春リーグとかだったら片方のコートは全部僕1人が打って、横で慶應の試合がやってるみたいな。ただ自分が作戦を一応戦術とかを考えたけど、それがはまってるかも分からない状態で僕は他大学のを打ってて「あ負けた」て。
田鹿:気づいたら負けてるていうね。そういう結構切ない状況が何度もありました。
立川:別会場打ちとかすごいしんどいので本当に。去年も自分その立場だったんですけど、慶應の試合を多分生で見たのは3試合ぐらいで基本全部ユニバスで見てました。ファンの方が多分うちの試合見てるなと思ってました(笑)。
――他大とデータを分担することは
立川:それこそ今年から!ずっと僕の代のアナリストでそういう試みをやりたいなみたいな話をしてて。春はちょっと時間の関係もあってできなかったんですけど、この秋からやってみようというので今ちょうど動き出してるという形です。
★プレー面について
――アナリストの皆さんから見てチーム慶大の強みは何ですか
田鹿:せーので言う?個々のプレーとかですよね。
立川:じゃあ、せーので行く?じゃあ行きます。
全員:(声を揃えて)「せーの」
立川:サーブ
田鹿:サーブ
一木・鍬塚:サーブアンドブロック
田鹿:1個って言ったじゃん(笑)。
一木:それで一つじゃないですか(笑)。
立川・田鹿:確かに確かに(笑)。
――なるほど。ではサーブ面での強みとは具体的にどのような点ですか
立川:日頃から球速を常に測るという取り組みをしてて、それでうちは全日本に出てもおかしくないようなビッグサーバーが渡邊(大昭、商3・慶應)と松本(喜輝、環4・九州産業)という2人いて、その上でさらに関東1部でも上位に入るようなサーバーがそこの脇に控えてるみたいな形です。サーブ力に関していうともう1部の中でもトップと言っても過言ではないぐらいのものはあるのかなと。
――ブロックについてはどうですか。
田鹿:ブロックはやっぱり球速が出てるサーブで相手を崩すと3人つけるシチュエーションが増えるので、その3枚を磨いてるというか、そこで仕留められるシチュエーションを作るっていうのがチームスタイルなので、そこは徹底してやってるからこそ武器なのかなと。
一木:”エアーズロック“
田鹿:そうね。エアーズロックっていう言葉があるんですよ。エアーズロック=1枚岩ていう。
一木:3人いると思うんですけど、1枚岩のようにブロックするていう。
田鹿・一木:あんまりハマらない・・・(笑)。
――それは慶應独自の表現ですか
田鹿:慶應の(笑)。勝手に言ってるていう(笑)。
鍬塚:ブロックはこの夏に他大学と比較した自分のチームのスタッツ、例えばサーブの効果率・ブロックの効果率みたいな値をそれぞれ出したのですが、それでブロック効果率が関東1部の12チーム中1位の値を出していました。客観的に見てもブロックは他大学に比べて高いレベルでやっているというのは一つあるかと。
――慶大バレー部の強みを生かした上での勝ち方というのは
田鹿:サーブでぶん殴るていう(笑)。
立川:ぶん殴る、それだけですね。
田鹿:ハイセットを決めるとかだねよね本当に。
――慶大バレー部の弱点・これから伸びていくだろう部分は
立川:レシーブとか細かいつなぎなんじゃないですか。ここでちゃんとパス返してほしいなというところでちょっと乱れたりとか、そこの細かい積み重ねの1点1点が徐々にマイナスとして蓄積されて最終的に響いてきます。やっぱりバレーボールは特にサーブレシーブが綺麗に返らなかったらそのラリー自体が相手に優勢になっちゃうので、そこは弱みなのかなと。
田鹿:レシーブは最初の攻撃だからね。1段目があって2段目、3段目があるから、そこが弱いうちはちょっとね。
立川:まだまだ上には・・・。
一木:プレー面は立川さんが言ったところが主なのかなと思います。(加えて)僕が主に早慶戦で感じた部分なのですが、土壇場の集中力だったり、中盤で競った場面での一歩出る力というのがまだまだ他大学に比べてないのかなと思います。早慶戦でも8点ぐらいリードしてた場面で早稲田さんに追いつかれてしまったり、 逆にリーグ戦だとフルセットまでいったんですけど最後の2、3点取り切れずに負けてしまうというシチュエーションが多かったので、 ずっとリーグ中は立川さんが言ってたあと1セット・1点を取り切る力というのがやっぱりまだ足りてないのかなというのは思います。
鍬塚:ちょっと抽象的にはなるのですが、やっぱり慶應はスポーツ推薦とかがない分キャリアの浅い選手が多いです。春高や全国大会とかの大舞台を経験するとやっぱり土壇場にも強くなったり、そういう場面でのメンタルも鍛えられるのですが、慶應高校は春高にも出たりすることはあるんですけどやっぱり他大学と比べてそういうことを経験した人数はどうしても少なくなってしまうので、試合であったり日々の練習でもそういう大舞台を経験したかどうかという差が出てしまう。
★印象に残っている試合
――分析がはまった、はまらなかったで思い出深い試合はありますか
田鹿:はまらなかったのはあるよな。はまらなかった試合、結構俺覚えてるな。去年春の専修大学戦で先輩アナリストの藤田先輩(鈴子、23年卒)が本当はベンチに入るはずだったのですがその時だけ来られなくなってしまって、自分が代わりにベンチに入りました。初めてベンチに入った試合がこの専修大学戦でした。もう何にも作戦も頭に入ってないし、それで刻々と変わっていくじゃないですか試合の状況は。それに対応することもできずもうずっと呆然と座ってることしかできなくて、何もできない自分が悔しくて結構思い出に残る試合でした。はまらなかった方ね(笑)。はまった方は記憶に残らないからね。
一木:でも僕は1つやっぱ今年の春の東海大学との試合は去年の秋から本格的にアナリストをやり始めて、去年はほんとに戦術に何も携わることなくほんとに雑務をこなしていた感じで、 やっと今年の春リーグからちょっと作戦だったりに携わらせてもらえるようになったタイミングの東海大学戦は・・・
田鹿:はまったの?
一木:結構ローテのあたりとかを結構僕が考えてて。
田鹿:ああそうだっけ?
立川:確かに。
一木:そうなんです、それ。それでその試合を僕は生で見てなくてまた横のコートで見てただけなのですが、勝った時はさすがに嬉しかったです。バレーボールてローテーションすると思うんですけど、どの位置から始めるかというのも1つ重要なポイントで、それもアナリストが自分の強いローテと相手の弱いローテをぶつけたり逆に相手のめちゃくちゃ強いローテを1回でサウドサイドアウト切れるようにみたいなのを考えながら、あたりというのを考えるんですけど。
田鹿:いい塩梅(あんばい)にね。
一木:いい塩梅(あんばい)に。それがちょっと自分が初めて考えてはまった試合がその東海大学戦になったのかなと個人的には思うので、それは印象に残ってます。
田鹿:いいやん。
――慶大のローテーションは固定ではないですね
立川:そうですね。大体試合ごとに考えて動かす。
田鹿:変則的だよね。他のアナリスト泣かせだよね。
立川:結構、他大のアナリストからしたら毎回ローテーション変わるんでうざいんだろうなって。大体僕らが考えて監督の星谷さんに提案して、星谷さんから何に関してのフィードバックを受けてそれでまた考えていくっていう。
――立川さんは印象深い一戦はありますか。
立川:今年の早慶戦ですかね。早慶戦は直前に体調不良者がバタバタ出て、で陽大も欠けて。
一木:俺も欠けて。
立川:でなんか気が付いたら僕1人で色々考えなきゃいけないみたいな事態になって、で結構自分なりに時間かけてやったのですがそれでもやっぱり早稲田さんはそれを上回るというか。作戦としてはそこそこはまった自信はあるのですが結果的には競ったけど負けたみたいな結果になったので、そういう意味ではもっと上の段階に行かないといけないというか。戦術ももう少しレベルアップして高めていかないとこの先日本一に、となった時に最後届かないんじゃないかなというのは自分なりに実感させられた試合でした。
――鍬塚さんは入部して特に印象に残っている春季リーグの試合は
鍬塚:正直自分の業務とか覚えるので精一杯だったのもあるのですが、やっぱり一木さんと一緒で東海大学戦は結構印象に残っています。それまでずっと負け続けてそこまで来て、やっぱ1部だと難しいのかな、やっぱ戦力差とかあるのかなと思ったのもあるのですが、 それでもやっぱり一木さんが言ったようにローテがはまって作戦がはまって、東海大学さんは去年の全カレで準優勝みたいな結構ハイレベルなチームなのですがそれでも勝ち切ることができて、戦い方次第、アナリスト次第ではやっぱりそういう上位大学にも勝ち切れるんだなと身に染みて実感した試合なので印象に残っています。
★リーグ戦について
――皆さんから見て春季リーグのチーム結果の感想は
一木:まだまだ勝てたなというのが正直なところですね。フルセットになったけど勝ち切れなかった試合が多かったです。秋はそこをどう取り切るかというのが、自分たちの掲げてる日本一に近づくためへの1個のターニングポイントになるのかなと思います。
立川:春リーグは自分たちより順位の下のチームには全部ストレートで勝って、逆に上のチームに対してはフルセットまではいくけどそこから最後勝ててないという結果でした。逆にこれまでの慶應のバレーはジャイアントキリングで、自分たちよりも上のチームに対しては勝つけど逆に順位が下のチームにはなぜか取りこぼすみたいな、そういうのがありました。そういう意味では春の下のチームには確実に勝てたというのはチームとしてすごい進歩なんだなと思いつつ、最後1セット取れなかったから9位という結果に終わった訳で、それは勝てるという希望でもありつつ春と同じままでいったら負けてまた同じような結果になるということ突きつけられたと思います。その1セットを埋めるためにこの夏はやってきたので、それを(秋は)出せれたらいいかなと思います。
――夏に特に取り組んだことは
田鹿:夏はやっぱり基礎からやろうというのがまず1つあって、プラスでサーブとブロックというこの武器を伸ばそうというのが夏に大体取り組んだことです。
一木:慶應の今年だけじゃなくて去年・一昨年からずっと続く弱みの、レシーブ・つなぎの部分がこの夏を経て春に比べたらちょっと改善というか、技術力が向上してるのかなとは思います。そこを秋リーグで発揮していけたらと思います。
立川:そうだよね。
――秋季リーグの目標は
立川:チームとしては【リーグ5位以上】を掲げています。意図はリーグ5位以上に入れば全カレのシード権が得られてそれは日本一を戦う上で必須なものだと思ってるので、それを獲得するというのがまず秋の第一目標です。個人的な目標としては自分は同期にアナリストが特に1部の他大学にいて日頃仲良くさせてもらってるのですが、その子たちのチームに対して全部勝つのと、その子たちにタッツーてすごいアナリストだねとちょっと言われてちやほやされつつ、同期ではトップのアナリストだったよと言われて終わりたいですね。
――最後に秋季リーグの意気込みをお願いします!
立川:意気込みですか・・・
田鹿:死ぬ気で働き続けますとか(笑)。
立川:ただ働くだけじゃなくて自分はもう4年生であとがないというかこれが最後のリーグなので、それまでのリーグで得たものだったり、 あとこれまで先輩とかいろんな人に支えてもらったので、そういう人への感謝とかを最後のしんどい時も原動力にして頑張ってなんとかアナリスト4人で乗り切って耐えればいいかなと思います。頑張ります。
一木:目標としては、初めて言うのですが日本一になって胴上げをしてもらというのが僕の目標で。
田鹿:めっちゃいいじゃん。
立川:落とされるやつ(笑)。
一木:胴上げをしてもらうにはやっぱりそれをしてもらうぐらいの仕事量をこなさなければいけないです。あとは意識的に今年の春からやってることではあるのですが受け身にならないというのが一つ意気込みとしてあります。あくまで任された仕事であってもその仕事をこなしながらそこからどうチームの勝利につなげるかというのを主体的に取り組めるようにして、今年の秋リーグはさらに磨きをかけていけたらなと思います。
鍬塚:今回の個人的な目標はチームの勝利に明確に貢献したという試合を1個でも作ることです。春リーグは仕事を覚えるので精いっぱいで、春リーグの勝利とかチームに貢献できたかと言われたらあまりできてないと思います。ですがなんとか夏を越えて仕事も少しずつ覚えてきて下準備は整ってきたのかなと思うので、秋リーグで一木さんみたいにローテなり戦術なりで1個でも勝利に貢献したなと思える試合を作って、また成長できたらなと思います。
――ありがとうございました!
(取材:五関優太)
☆立川貴一(たつかわ・たかひと):商学部4年。最近見たスポーツは高校野球。応援していた広陵高校が慶應高校に負けて悔しい思いをした。
☆田鹿陽大(たじか・ひなた) :法学部3年。直近ではFIFAワールドカップを見た。尊敬する選手は結果にコミットするという理由で堂安選手。
☆一木脩平(いちき・しゅうへい) :法学部2年。最近見たスポーツはバスケ。今夏日本で開催されたワールドカップを観戦していた。
☆鍬塚凛(くわつか・りん) :商学部1年。プロ野球を見ることが多く、地元愛知の中日ドラゴンズの勝利を願っている。