【庭球(男子)】王座前特集③ 川島颯×白藤成 蝮谷に脈々と流れる、若き二人の遺伝子

庭球男子

いよいよ開幕する全日本大学対抗テニス王座決定試合(王座)。昨年準優勝の慶大男子は関東大学リーグ戦で46年ぶりに優勝し、1位で王座進出を決定させた。悲願の全国制覇に向け、選手・コーチ・監督にお話を伺った。

第3弾は、OBとして慶大の現役陣を支えている2019年には副将を務め、特にダブルスで活躍した川島颯コーチ(R3総卒)と、昨年度主将を務めていた白藤成コーチ(R5環卒)です!

 

——自己紹介をお願いします。

川島:川島颯です。2021年卒の庭球部のOBで、2020年度の副将をやっていました。そのまま今大学院に進学してコーチをやっています。

白藤:白藤成です。昨年主将を務めていて、学業としては9月20日をもって慶應義塾大学を卒業しました。主将を務めていた頃の後輩たちを王座優勝へ導くために、学生ではなくなった今でも、学生コーチという立場でラスト王座が終わるまでサポートしています。よろしくお願いします。

 

——大学院ではどのようなことを専攻しているのですか

川島:日吉の協生館にある、システムマネジメント研究科というところで、僕も9月で修士を卒業したんですけど、専攻はセンサーを使って色々なことを測るという研究室にいます。GPSでポジショニングを図ったりとか、もう少しビデオを細かく見て選手の動きを見たりとか、みたいなことをやるという研究をしています。スポーツだけではないんですけど防災とかもやっている研究室にいて、僕はそこの中でビデオを細切れにすることで選手のフットワークをなるべく細かくコーチングして、それを見える化しようという研究を論文にしました。

白藤:僕自身は学部に関しては、卒論のテーマとしては、テニス選手にとって不安とかネガティブな感情をどのような手法を用いたらポジティブに変えられるのかというところで、縁起担ぎとルーティンに着目していました。結論レベルが高いテニス選手ほど縁起担ぎをしていて、縁起担ぎはテニス選手に最適なのではということを研究していました。

 

——専攻していた内容が生きたことは

白藤:んーあんまり無いですかね。部活に関しては、大人数で一人の選手をしっかり育てるというよりは、組織を育てていく感じなので。僕がしていた研究は、どちらかというとプロテニスプレーヤーを対象としていて、個々の選手が縁起担ぎをした方が…っていう方向性だったので、研究分野と部活が直結したかと言われるとそうでもないです。

川島:研究と現場というのはなかなか一発では結びつかないという難しさがあるんですけど。そういう中で、結局最終的に現場で実験をしてもらうのも大学の学生たちにやってもらったので、学生が「何言ってんのか分からないです」みたいなのが、自分も研究をやっていくと話せるようになったりとか。研究の過程で、自分の実験結果だけみると、学生の中でうまく行ってる子もそうでない子もいるんだけど、その過程の中で専攻研究の論文を読み、「こんなこと書かれていたよ」って言ったら選手が「それ面白そうですね」と言って勝手に学生がうまくいったりとか、直接関わっていないんですけど、コーチとしてのスキルアップには役立ったかなと思います。

 

——コーチングは具体的にどのようなことを

白藤:シングルスに関しては基本的に、その選手に合ったパターンや技術、声かけを意識していて。例えば、必要としている時にしかアドバイスを求めない選手にはあまり深く立ち入らないようにしているし、頻繁に言ったほうが良い選手にはしっかり言うとか。その選手が攻めたいけど攻めれていないという状況を判断して、できるだけ攻めやすいようにアドバイスをしたりとか。その選手が必要としていることが何なのかを考えてアドバイスするようにしていますね。

川島:現役の頃から僕はダブルスがすごい得意で、白藤はどちらかというとシングルスで結果を残していたので、今は二人体制で監督・助監督もいるんですけど、僕はダブルスを見て白藤はシングルスを見てという形でやっています。ダブルスの指導する時によく言うのは、ポジショニングをとにかくグルグル周りながら、高いところから見たり、低いところから見たり、横から見たりして。みんなのポジショニングが攻撃的になっているかどうかを一番大事に見て、喋って。そして後から動画を見たりとか、データを見たりとかして振り返るところまでやっていますね。もちろん球出しとかもしてるんですけど、立ち位置を大事にやってます。

 

——どういう思いで選手と向き合っていますか

白藤:僕が主将としてやっていた昨年度のメンバーと、今年度のメンバーが、ほとんど同じメンバーなんですよね。そういう意味では自分が主将をやってて優勝に導いてやれなかった後輩たちを、違う立場で王座優勝に導いてあげたいという思いが1番強くてやっている感じです。

川島:どういう思いで…。僕は気負いすぎない方なんですよ。僕、本当にただ自分がテニスに関わり続けたいというのがあって、やっぱり自分が大学4年間ここの慶應庭球部で本当に成長させてもらったので。そういう慶應庭球部という場所をいろんな人にとってもそういう場所であってほしいなと思っています。その中で今自分が一番できることをしようと。もちろん同期とか後輩とか先輩とかプロになって世界で活躍する選手がいる中で、自分にはそこまでのテニスの能力はないので、そういう中で、んー。(笑)あまりまとまってないですけど、そういう人たちの背中を見て引っ張っていける人たちもいるけど、自分にできることと言ったら、アカデミックなことも進めながらみんなとコミュニケーションをとり、現場に来るということなのかなと。結構自分よがりでコートにいますね(笑)

 

——コーチングはやってみてどうですか

川島:難しいのは…。代わりに出たいと思うことです(笑)

白藤:(笑)

川島:代わりにプレーしたい、そう思う時もありますね。でもそれってやっぱり、自分が今まで10何年間やってきた中でのバイアスがかかってしまっている時があるんです。その子たちが積み上げてきたものの中で100%、120%を引き出してあげないといけないし、彼らにとっても指導者は別に自分(=川島)一人ではないので、自分の肩にはめすぎないということは大事かなと思いつつ。頼られているなと思うときは全力でサポートしたいし、逆に自分にとってここはちょっと他の人の手を借りたほうが良いんじゃないかと思うときは、積極的にいろんな人に回すようにしているというか。自分一人で選手を最強にできたら一番良いんですけど、そこのバランスはすごく難しいんだけど。そこが上手くハマった時、ここは自分がやって、それ以外のところは誰かがやって、ばっちりハマった時というのは、なかなか団体戦もそうですけど、一人でテニスやっているだけじゃ生まれない喜びがありますね。

白藤:熱いね〜(笑)

川島:んへへっ(笑)

白藤:僕自身は自分がやってきた中で、武器だったりとか苦手だったりしたことを教えるのは結構簡単で。僕結構攻めていくタイプなんですけど、攻めることはテニスにおいてリスクを背負うことだから、難しいけどそこをどうアプローチしてあげるか考えることは簡単で。自分がこれまで取り組んできたこと、悩んできたこと、得意なことを教えるのは良いんですけど。自分が持ってない、たとえば僕はあまりボレーが得意じゃないんですけど、ボレーに結構いくのが上手い選手だったり、スライスとか割とテクニック系を使う選手だと、そもそも自分のテニスの幅を超えているんです。僕は結構技術が無くて、ポジション取りとかスピードとか、攻めというところで誤魔化してきたので。技術があっていろんなことができちゃう選手を指導すること、もうすでに自分に無い物差しで選手を教えるのは難しいかなと思います。

 

——自分自身の現役時代を重ねることってありますか。

川島:どうだろう…。そうですね…。重ねる…。羨ましい気持ちはあると言うか、自分たちにとっては過ぎ去ってしまった青春みたいな感じなので、もう一回学生に戻って一緒にコートに立って戦えたらという気持ちは、どの代に対してもすごくあります。プレーヤーとしての役目、慶應庭球部から求められるプレーヤーという役目はもう終わったので、羨ましさはあるんですけど(笑)なるべく重ねないようにはしています。

白藤:僕自身はあんまり重ならなくて、川島が言うように自分が出たいとか、自分ならどうするだろうとか考えることはあるんですけど、そもそも違う選手としてみていますし、立場も違うので。例えば、選手同士という関係でアドバイスや会話をしているときは、自分に重ね合わせるんですけど、今はその選手をどうやって伸ばすかや、どうやって調子を上げるかということを考えるなので、アドバイスの材料として自分を使うことはあっても、自分を重ねることはあまりないなと思います。

 

——今年のチームはどんなチームですか?

川島:んー。そうだなー。どういうチーム…。

白藤:じゃあ僕から(笑)

川島:どうぞ(笑)

白藤:良い面でいうと、今年の代の目標として掲げている「VITALITY」という言葉があって、本当にその言葉通りに元気、どこか子どもっぽい活力があって。元気でポジティブで、これまでの慶應にないチーム感というか、本当に仲も良いですし。ポジティブなところは本当に良い印象としてあります。悪い面でいうと、どこか子どもっぽいので、足の伸ばし合いというよりも足の引っ張り合いになってしまったり、どちらかというと楽しい方に逃げるような印象もありますね。逆にいうと、団体戦が始まった時に、これまでの代はメンバーとサポートという構図においてテンションの差があったり、何となくチームが分かれてたりとかしたんですよ。僕が今まで見た慶應の歴史の中ではどこかで温度差があったんですけど、全員が本当に本気になれているという点で今年のチームは温度差が無いんですよ。悪く言えば子どもっぽい所も、良く言うならば本当に自分たちでVITALITY溢れさせて楽しんでやれているというチームです。それを王座でも元気でポジティブな方に持って行ってくれれば良いですけど、逆に子どもっぽくなって、緊張して縮こまることはないようにしてほしいかなという感じです。

川島:そうねー、今年のチーム。確かに、ちょっとスロースタートなんだけど、走り出すとすごいパワーがあって、その分良くない方に転がるとずっと転がり続けるんですけど(笑)。爆発力がありつつ、意外とそれを裏でまとめて背負ってくれる子もいるかなと。走り出す方向性を決めるところと、走り出した人たちを乗せ続けるというところの裏方がすごい大変なんだけど、裏方が頑張れば頑張るほど、輝いて見えるしっていう。

 

——川島さんが4年生の時の1年生が今の4年生で、白藤さんにとっては昨年度の後輩ですが、何か変わったことはありますか

川島:今の4年生がが入ってきた頃はちょうどコロナで、一番大打撃を受けた人たちなので。最初の方は本当にコロナ明けても、彼らは今までの様な大学2年生や3年生という貫禄がなかなか出てこないから、4年生になった時にチームってまとまっていくのかなと不安になったこともあるんですけど、もう全然大人になったなという感じですね(笑)。あと最初結構、今の4年生が1年生の頃、大丈夫なのかな、上手くいっているのかなみたいな瞬間が結構あったんですよね。でもそれがみんな、良い尖り方になってきたというか、丸いところは丸くなって、尖の方向性がみんなそれぞれ違うから、同期たちの中で色々話し合ったり葛藤しながら良くしていったんだろうなという感じなんですけど。やっぱりこんなに早く時が過ぎたのかというのが一番です(笑)。

白藤:1個下ですけど、年齢的には3つ下なので、学年だけではない歳の差もあって。そういう面では僕が大学入ったのが20歳の時ですけど、あの子たちは18歳で入っていて、18歳から22歳というのが一番人としても、体の面でも成長すると思うので、そこがすごい成長したというのが一つです。あとは入ってきた時とか下級生の時は、学年の差よりも年齢の差を感じて、「3つ下だな」と思うことが多かったですね。自分が11月に引退して春の早慶戦の5月あたりで戻ってきたとき、僕がいなかったその半年間で「年齢が3つ下だな」ではなく、「学年が1つ下だな」と感じるくらい人として成長したのかなと思います。まだまだ成長してほしいし、成長しないといけない奴らもいるんですけど、「年齢が3つ下だな」ではなく「学年が1つ下だな」と感じるくらいになったので、本当に頑張ったんだなと思います。

 

——リーグ戦全勝優勝でしたが、勝因はどこに

白藤:ぶっちゃけ言うと、もちろん慶應のメンバーも強くなってるし、強いんですけど、他大学の強かったメンバーがごっそり抜けた中で、ある意味見え隠れしてた子たちがやっと表舞台に立ったということがありますね。主力選手が各大学抜けた中でのリーグ戦だったので、他の大学に比べて経験してた選手、例えば早慶戦に出てた選手やリーグや王座に出てた選手の数が多かったのが一つの勝因かなと思います。王座では日大とかもノンプレッシャーで挑戦してくると思うので、王座優勝というのは何段階もレベルアップしなければ達成できない目標で、そこを詰めなければならないです。下村とか林とかを始め、経験してた選手がしっかり戦えたというのが大きかったと思います。

 

川島:気づいたら全勝だったという感じで(笑)。最後まで気が抜けない戦いもありましたし、3戦目の法政戦は4ー4で下村(=亮太郎、法3・慶應)にかかって、ファイナル0ー3までいっていたので、これは混戦になるなと思っていたんですけど、そこを乗り越えて天候の利もありながらという感じで。そうだなー、勝因と言われると…。やっぱりインカレが終わってからリーグが始まるまでの期間がめちゃくちゃ短くて、例年ならもう1週間あるんですけど、決勝までやった子たちとかは中2日とかで入ってきていたので。決勝を戦った主将・藤原(=智也、環4・東山)と副将・林(=航平、理4・名古屋)の二人が大きな怪我をせずに最後まで基本的に単複で続けたというのは、チームの底力の象徴になっているのかなという気はします。結構例年、インカレからリーグって続き物として見ているんですけど、三重で決勝二人でやって、二人が抜けることなく最後まで走り切ったというのが一番かなと思いますね。

白藤:優勝しないといけないチームだなと思っていて、他の大学と戦力比べても明らかに慶應の方が有利ですし、何回も言うんですけど王座優勝しないといけないチームです。優勝このままでできるのかなと言う不安よりは、油断しないようにしてちゃんとやることさえやっとけば王座優勝できるよね、というところでいかに油断しないだったり、悪いところを常に抑えるという方が大事です。昨年は王座にいけるかどうかで必死で、だからこそみんな成長できた。今年のチームは優勝は達成しなければならないマストなことだから、そこを達成するために、いかに邪魔するものを排除していくかというアプローチですね。

 

◎ダブルス

——ダブルス13勝2敗、圧倒的な強さでしたが、どうでしょう

川島:あはは(笑)。そうですねー、13勝2敗? すごいな(笑)。インカレベスト4がダブルス3にいるというのは相当ないことだと思うんですよね、他の大学を見ても。そこの二人が結果を出して、藤原・下村だけでなく、結果を出したペアがダブルス3にいるというのは、ダブルス2の2年生ペアにとっても緊張感が生まれるというか、自分も頑張ろうという気になったと思います。実際。ダブルス2はインカレでは関西のペアに負けちゃいましたけど、結果的にリーグ戦は全勝できて。どのコートも良い時悪い時ってあるんですけど、なんだかんだどこかが踏ん張って勝ち、それにどこかが乗っていけたというのが、どこのコートでもできていたという雰囲気は感じました。今年からルールが変わって、第3セットが10ポイントタイブレークというところになって、そのルール改正がされた時からそこに結構手をつけてきていたので、ポイントでの勝ちが多いと思うんですけど、そこは事前にやっておいて良かったです。

 

——ダブルスの結果はシングルスの選手に影響しますか

白藤:やっぱりありますね。3ー0と2ー1も全然違うし、それもそうなんですけど、シングルスの上位になればなるほど負荷が高くなりますし、チームとして接戦になればなるほど、タフな状態でシングルス上位に勝負がかかるということなので、シングルス上位にいかに疲れを残さずに回すかが大事ですね。今年に関してはシングルス下位が踏ん張って、法政戦以外は勝負を決めた状態で上位に回せたのでそれが大きかったなと思いますね。

 

——有本(=響、総2・慶應)・菅谷(=優作、法2・慶應)ペアはリーグ戦全勝ですが、うち4試合は第3セットの10ポイントタイブレークです。

川島:そうなんすよ(笑)。実力でいえば、あの二人はインターハイで優勝していますし、インカレで負けた相手も最終的に準優勝なので、実力的に化けたということではないと思うんですけど。もちろん10ポイントで勝ち切る勝負強さとか、勝負勘というものを持ってて、最後まで攻めのプレーをできるというのが彼らの強みではあるかなと思っていて。ただ、見てる側からすると、4試合も第3セットまで行くものでもないんですよ(笑)。全然普通に2セットで勝てる試合だなと全部思っているくらいなので、まだまだ伸び代があると思うし、トーナメントで優勝とかに絡んでいくとなると、大学はドロー数も多いので。常に自分たちで攻めの姿勢を貫くというところと、球を打つセンスが高いので、なんとなくセンスでできちゃうんですよ(笑)。第2セット落としても、5分くらい経って試合に戻ると、10ポイントタイブレークの1点目から良い状態に戻っているんですよね。リーグ期間中のその5分間ってベンチコーチと会話できないから、ずっとベンチに座っているんですけど、その間に何を話しているか分からないんですよね、逆に聞いてみたいくらいで。何を話して、あれだけ1点目からもう一回自分達のプレーができるようになっているのかを聞いてみたいくらいで、そこが強みだと思います。

 

——彼らはインターハイ優勝の経験があり、1年生の時から追われる立場ですが、躍進していますね

川島:本人たちは多分追われる立場だとあまり思っていなくて。謙遜しすぎるタイプなんですよ。そこに対してナイーブになっている時って存在が小さく見えるんですけど、でもそのコンプレックスを振り切って捨てている時がすごい強いので、本人たちにも追われているという感じは全くないと思うし、何より満足していないので。それこそ、これからトップになるための絶対の条件なんだなと思います。全然満足している感じがないですね、そこが本当にすごいなと思います。

 

——全体的にダブルスは調子が良い感じですか

どんな時でも3ー0つけるというのが慶應のダブルスの大事にしているところなんで、13勝2敗のところを次は9勝0敗でいけたら良いかなと思います。

戦況を見守る川島

◎シングルス

——藤原選手が単複通して全試合出場を果たしましたが

白藤:今回多分、あまり調子良くなくて。インカレ優勝して、藤原これからノリに乗るのかなと思ったんですけど、有明のサーフェスに合わなかったとか、そこまで調子が上がりきっていないなかでの団体戦というのは藤原も経験していないと思うので、そこに関してはまさに法政戦で戸惑いが結果として出たんですかね。本人には聞いてないんですけど、そこまで主将としてのプレッシャーがあったのか、逆に勝負が決まった状態で回ってくることが多かったので、そういった意味でもあまり上がりきらないまま終わっちゃったのかなという印象を受けました。

エースの意地を見せ続けた藤原

——眞田(=将吾、環1・四日市工業)選手、ルーキーながら冷静ですね

白藤:多分慶應でああいう左利きは久しぶりで、佐々木(健吾=R4環卒)とかいましたけど、あいつあまり左利きじゃなかったので。書かないでくださいねこれ(笑)。

川島:(笑)

白藤:慶應で結構久しぶりに左利きで、しかもシングルスができる子が入ってきて、眞田自身はワールドジュニアで日本代表に選ばれているという経験もあって、戦ってきた舞台が高いというところで落ち着きが試合中にあるのかなって。試合中に何か変えたりだとか、1年生を感じさせない、本当は緊張しているのかなと思うんですけど、あれはなかなか僕は出せない雰囲気なので、その面でテニスプレーヤーとして尊敬する部分はすごい大きいです。その反面、1年生ながら緊張はしないと言ったんですけど、プレーの面でナーバスな所があって、そこはまだ18歳なので、まだまだこれからテニスプレーヤーとして成長してほしいなという願いがあります。

1年生ながら堂々と戦った眞田

 ——シングルス陣の収穫と課題は

白藤:名前あげていくとキリがないと思うので総じて言うと、林がインカレ準優勝して。あ、言っちゃったね名前(笑)

川島:(笑)

白藤:林がもう一度王座で、エネルギー出してほしいなと。インカレ準優勝で疲れた状態で、リーグ戦入ってしまったというのが課題だったと思うので、王座は連戦ではあるけどもたかが3戦なので、そこでまず林の良さを出してほしいかなという。あとはやっぱり、シングルス上位は固定されているんですけど、僕も決勝で下村が出るのか、脇坂(=留衣、環3・興國)が出るのか、高木(=翼、総3・関西)が出るのか、今鷹(=洸太、商4・慶應)が出るのか、眞田が出るのか、菅谷が出るのか最後まで分からなくて、競争力が高いシングルスのメンバーだと思います。なので、本当にその日調子が良くてベストな選手が出るってことで、シングルスのメンバーの評価というよりは、最後王座決勝に誰が出ているかというのはコーチ目線でもすごい楽しみです。本当に誰が出るか分からない状態で争って練習しているので、そこに関しては面白いかなというところです。

 

——練習もピリピリした雰囲気なのですか

白藤:あいつらがピリピリしているかは正直わかんないんですけど。確約されてないというのは、この代が始まった時よりは良い勝負になってきているということなので、脇坂と高木がインカレで結果出し、彼らもこれまでリーグとか王座でしっかり勝っている選手なので。色々な過去だったり、現在だったり、直近のリーグだったりを加味しながら、全体的にピリピリしている感じですね。

 

——注目選手を挙げてください

川島:えー。えっとー(上を向く)。

白藤:じゃあ僕決まったので言います。あーどっちにしよう。

川島:これ悩むよな(笑)

白藤:林か脇坂で迷ってます(笑)

川島:やっぱね(笑)

白藤:まあでも林はインカレ準優勝で結果残してますし、副将という立場なので、期待してるというよりはしっかり勝ってくれよという方なので、僕が注目しているのは脇坂かなと。理由としては、幅が広いというか、さっき僕が言った、僕の持っていないプレーの引き出しを持っているというのは脇坂の話なんですけど、本当に打てないショット、出来ないショットが無いんです。ディフェンスもできてオフェンスもできて、ある意味僕がやりたかったようなテニスをしているというのが一つ。もう一つは、あいつはメンバーになってすぐに手首を怪我して本当にテニスもできてなくて、スライスだけでやっててい。かなりきつい時間を乗り切ってきているので、そこからインカレで今まで出したことのないような結果を出し、そのままリーグ戦でも勝って勝ち頭になったので、その脇坂が最上級生になる前にどういうプレーをするのかが、一人のコーチとしてすごく楽しみだし、注目しています。

シングルスでの活躍が期待される脇坂

川島:ダブルスは、そうだなあー。じゃあもうひと伸び期待しているというところで、まあ他の選手にもひと伸びしてほしいですけど。んーまあでも、菅谷かな。菅谷か高木かで迷ったんですけど。二人とも本当にダブルスで一番大事なサーブとボレーというところを武器にしているんですけど、意外とシングルスの方が思い切りよくボレーにいけて、ダブルスだともっと自分のサーブとボレーというところでポイントを取りにいけるプレーをまだまだ出せると思うので、そこで特にどっちもそうなんですけど一旦菅谷で。理由としては、なんだろう、そうだな(30秒悩む)。ちょっと一旦高木を省いて、サーブとボレーがもうひと伸び行けるんじゃないかというとこで、そして同期の有本とずっとやっているという中で、違うタイプが組んでいて菅谷がどう自分の武器でダブルスで存在感を出していくのかという所がすごく楽しみです。

菅谷の単複にわたる活躍に期待だ

——ベンチコーチではどのようなことを

白藤:選手それぞれに僕は合わせるかなという感じで。女子でいうと、中島の時はエネルギー出してやりますし、大橋の時は淡々とテニスの戦術面を話しています。中島はどうやってコントロールして落ち着かせるか、そして気持ちを上げさせるかというところを意識して、一緒にエネルギーを出して鼓舞する感じです。脇坂は大橋と同じで、戦術面を淡々と話して、高木とかはエネルギー出させてイケイケにさせてあげるとこまでやりますね。僕が結構意識しているのは、「選手のツボ」というところを大事にしていて、今言ってほしいツボ、求めているツボ、この選手に合うツボをベンチから探して、声をかけるという感じです。普段の練習から、何を本当に必要として、どういうツボを求めているのかというところを把握するようにしています。

川島:えー(笑)。成がすごい考えているのですごいなと思うんですけど。僕はもう少しシンプルというか、僕は現役でプレーしてた時に、上杉(=海斗・H30環卒)先輩にベンチに入ってもらったことがあるんですけど、その時自分すごい焦ってて、ベンチ帰った時に「今更強くなれるんじゃないんだから、やれることを100%でやれよ」と言われて、結構立ち直ったというのがあったんです。本当に選手って自分が意識してないうちにパニック状態になってることが多いので、それを落ち着かせてあげるという。そのためには、成が言ったように自分で喋らせる方がいいのか、人の話を聞かせてあげるのがいいのかは選手によるので、そこはすごく工夫がいるんですけど、まずはベンチというところは試合でピリピリした中でも落ち着ける場所と認識させてあげること、帰ってきた時にハイタッチするんですけど、なるべくそれを強くするのは大事にしています。やっぱり手に刺激があるとハってなるので、とにかく選手が帰ってきたら強く叩くというのは意識しています。

ベンチコーチとして選手を鼓舞する白藤

——今はどのようなところを詰めてますか

白藤:チームの状況として、まずリーグ優勝した上で王座に臨むのが46年ぶりです。逆にこれを危機感として持つのならば、この経験を次できるのは何年後なのかを考えた時に、それは来年とか再来年とか近場かもしれないし、歴史を見た時にここから100年勝てない可能性もあると考えると、まだ緊張感が足りないかなというのは正直あります。リーグ優勝して、日大に勝ってるから自分たちはいけるのではないかというのがどこかにあって、自分たちは優勝を掴み取るというよりは、この流れで行けるんじゃないという風になっちゃっているのかなというのはあって、それは選手の状態よりそこの方が大事かなと思います。その中でどうやっていくかというところで、連戦になるというのが大事で、リーグ戦だと徐々に上がっていったりとか、「この試合で調子を上げるためにあと何日で調整すれば良い」というのがあるんですけど、トーナメントって本当に一回勝負なので、2回戦、準決勝、決勝の3試合で全て良いパフォーマンスをできるかが鍵になるので、どうやってピーキングを合わせるかということが問題になるんです。だからこそさっき言った「選手のツボ」がそれぞれある中で、いかに練習の段階で探っていくかということが大事になるかなと。ある意味好きな練習をさせることが大事な時期でもあるので、やらせないといけないことと、選手がやりたいことというバランスを天秤にかけながら、調整しています。

川島:コーチ陣が選手に伝えないといけないテーマが、「気を入れる」という言葉で。空気感の出し方とか、ちょっとしたミスに対する表現とか、そういうところで逃げたくなるところを一つ一つ潰して愛媛に入ろうと確認しているので、選手って目立つミスとか小手先のこととか、試合が近くなるとナーバスになってくるんですよね。そこに対してできることは基礎的なことで足を動かすとか姿勢低くするとか、足を踏み込んでボールを打つとか振り切るとか、基本的なところをやり切って愛媛に入ろうということは伝えています。「気を入れる」というのがキーワードですね。状態としてはリーグが終わって、一旦体を休めるというターム、そこから体をボロボロにトレーニングして王座に向けて体を作り直すというタームが終わって、ここから体的にもメンタル的にも、技術的にも充実してくるのかなと思うので、上り調子になっていくのではと予想してます。

 

——王座への意気込みをお願いします

白藤:意気込みは、もおう本当に優勝させてあげたいというそれだけかなと思っていて。僕もテニスやり切って引退したと言ってますけど、どこかで優勝させてあげられなかったというのが人生に唯一引っかかっているので、選手としてメンバーとしてチームに貢献して優勝させてあげられればベストだったんですけど、そうじゃない道を選んだので、自分で。まずはコーチとして。優勝以外意味がないというわけではないのですが、優勝しないといけないチームだと思って、そこの手助けをしてあげたいなと。そこで自分が一番何ができるかというのは、人それぞれに合わせたベンチだったりとか、最終的に選手を勝たせてあげるためのベンチというのが武器になってくると思うのでそこに対して準備してますね。今の練習でもどの選手がどういう状態かというのは全員把握できたつもりなので。そう言ったところも僕が細かくやっていって、優勝できれば良い。そういうところだと思います。

川島:ん?意気込み?なんか成が真面目なんだよな(笑)

白藤:(笑)

川島:いやーもう楽しみですね。意気込みかー。今考えてるんですけど、こっちが気負いすぎると、学生は敏感に感じ取るので、スタッフが…。「成が真面目なんだよな」と言ったのも結構大事で、そういうシリアスな部分を、成が担ってくれるので、逆に僕は楽天家でいようと思ってるんですけど、でもだからって「優勝できるよ!」と言うわけではないです。ちゃんとやることやれば、やった分だけ何かが得られるよねと言うスタンスで足ることやりきろうと言うことだけこの準備の期間も学生と楽しく過ごしていければいいかなと…(笑)

白藤:無理すんなよ(笑)

川島:(笑)

白藤:実はこっちの方(=川島)が真面目なんすよね(笑)

白藤:いや楽しみっすよね普通に。

川島:もうこの時間が楽しいんで。

白藤:あとはやっぱり僕ができないことを川島がやってくれるの大きいなと。たとえばダブルスとか本当に自分で言うの難ですけど苦手で。本当にダブルスって何すれば良いのかシングルスほど見えないんですよ。それを川島がやってくれますし、テクニック系よりも僕はパターンとか戦術派で。川島は僕が持っていないテクニックとか持っているので。僕と川島って、足したちょうど良いテニス選手ができると思うくらい、違う目線、違う面を持っているので、そこに関しては学生にも良いんじゃないかなと僕達的には感じています。

46年ぶりの王座優勝へ

 ——最後に、ファンに向けて一言お願いします!

白藤:僕のファンですか?(笑)

川島:(笑)

白藤:まあ冗談として、歴史が変わる瞬間を見てほしいかなと言うのが一番ですね。ここずっと早稲田が16連覇していて、慶應が50年くらいできないというところで、そういうチームが優勝する瞬間というのが、テニス界にどういう影響を及ぼしてそれが大学テニス界、一個人、それぞれの人に影響を及ぼすと思うので、優勝する前提みたいになっていますけど、その瞬間をみんなに見てほしいかなと1番の願いです。本当にただただ応援してほしいというのがありますね。16連覇した早稲田は入れ替え戦をして、今テニス界って動いているのかなって。僕達がヒーロだと思っていた選手が引退したりとか、目まぐるしくテニス界が動いている中で、その中で慶應が優勝することは、さらに歴史に名を残すことになると思うので。是非それを成し遂げる後輩たちを見てほしいというのが願いですね。

川島:んはははは(笑)うーん、ファンの人たち、そうだな。テニスファンにとっては、もちろん慶應を応援してくれたらありがたいんですけど、大学テニス界の歴史で15年くらい変わっていなかったことが、うちが勝つにせよ他が勝つにせよ早稲田大学の17連覇は無いので。そこ(優勝)はうち以外も全員狙っているところで、ギラギラした大会になると思うので。ガツガツしたトーナメントになると思うので、そこをテニスファンの方は楽しんでもらって、その上で慶應を応援してくれたら嬉しいですし、慶應のファンの人には、慶應を応援するというのはもちろん、テニスとはどういうことをやってて、三田とか日吉とかSFCとかでちょっと次テニスの授業とってみようかなと思ってもらえるようなプレーを選手にしてほしいと思いますし、テニスコートにラケット握って行ってみようかなって思いながら見てくれれば嬉しいので、テニスっていうものにも楽しんでみてもらえればと思います!

 

——ありがとうございました!

(取材:野上 賢太郎)

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