慶大は序盤、攻撃の流れを作れずまさかの4連続失点。悪い流れが続く第1Q残り30秒、慶大の絶対的エース・秋山美里(環3・日本大学)のゴールで1―4とする。続く第2Qでは、5点目を許すも、秋山美が10分にゴールを決めるとドローから澤田彩子(文3・品川女子学院)もゴールを決め、完全には流れを渡さない。だが、終盤にカウンターから失点し3ー6で前半を終える。なんとか攻撃の流れを作りたい慶大は第3Q序盤から積極的に早大を攻め、三好香奈(法3・慶應女子)・藤岡杏(法3・慶應女子)のゴールで1点差に迫ると、秋山美のゴールで同点、藤岡のゴールで逆転に成功する。さらに三好もゴールを決め、2点差のリードを得て迎えた運命の第4Q。早大に2点を決められるも澤田が2回・三好・藤岡もゴールネットを揺らし12―8、4人がハットトリックを決める凄まじい展開となった。早慶戦4連覇を果たすと共に、同日午後に開催された男子ラクロス部も早大に10―4で勝利し、3年連続での男女アベック優勝となった。試合後に行われた閉会式では、女子戦の最優秀選手に走攻守で魅せた三好が選出された。
5月19日(日)@慶應義塾大学陸上競技場 第32回早慶ラクロス定期戦
♢スタメン♢
AT#11 片岡采香(経4・慶應湘南藤沢)
AT#3 秋山美里(環3・日本大学)
AT#88 藤岡杏(法3・慶應女子)
MF#71 三好香奈(法3・慶應女子)
MF#19 澤田彩子(文3・品川女子学院)
MF#43 横手希未子(法4・慶應女子)
DF#64 大貫有澄(理4・洗足学園)
DF#90 増田そら(文3・立教女学院)
DF#14 松尾美咲(法4・慶應湘南藤沢)
G#1 古川琴音(法4・Life Preparatory Academy)
♢得点♢
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 計 | |
慶大 | 1 | 2 | 5 | 4 | 12 |
早大 | 4 | 2 | 0 | 2 | 8 |
慶大得点者 | 秋山美 | 秋山美、澤田 | 三好(2)、藤岡(2)、秋山美 | 澤田(2)、三好、藤岡 | ― |
3月10日に行われた早大との東京六大学戦では、Versityチームは秋山美の5ゴールを含む10―6、Reserveチームも5人が得点を決め7−2とし、共に勝利を収めていた。そして迎えた早慶戦。両校の学生や保護者、他大学のラクロス部員らが駆けつけ、どんよりとした空模様とは裏腹にスタンドは熱気に包まれていた。
第1Qは、ドローを奪取できずに攻撃の流れをつかめない時間が続いた。開始早々、早大のフリーシュートから先制弾を浴びると、その2分後にもフリーシュートから失点し、早くも2点のリードを許す。その後も慶大は、思うようにボールを持たせてもらえない。それでもG・古川のナイスセーブもあり、選手一丸で守備に奔走するも12分、13分と立て続けにゴールを許してしまう。重たい空気がフィールドを覆う中、絶対的エースがチームに活気をもたらす。残り30秒、相手陣地でボールをもらった秋山美が、早大守備陣に囲まれながらも背面ショットを決め、この日初めての「若き血」がグラウンドに響き渡った。1点を返し、1―4で第1Qを終えた。
3点を追いかける慶大は、第2Q序盤から果敢に攻め込むも、相手Gのナイスセーブもあり、得点には結びつかない。なんとか打開したい慶大だが、イエローカードが出され数的不利となると7分、またもフリーシュートから失点を許し1―5とされ、再び点差を4点に広げられる。だが、ここでも絶対的エースが慶大に流れを引き寄せる。10分、慶大のフリーシュートから秋山美が放ったシュートはゴールネットに吸い込まれ、2―5とする。すると今度は、澤田がドローから落ち着いてボールをゴール前まで運び、ネットを揺らした。2分間で2点を決め勢いに乗る慶大だが、そう簡単には早大との点差を縮められない。第2Q終了間際、相手ゴール前でのパスを早大選手にカットされると、慶大の一瞬の隙をつくカウンターから追加点を許してしまう。追いつけそうで追いつけないもどかしい展開のまま、試合は3−6で折り返す。
10分間の休憩後迎えた第3Q。開始直後、慶大は早大ファウルによりフリーシュートのチャンスを獲得する。三好がゴールを決め、チームを勢いづけると直後には、秋山美のパスを受けた藤岡が、なんとゴール裏から回り込み、体勢を崩されながらもシュート。これも決まり、5−6と一気に1点差に迫る。試合が大きく動いたのは8分、秋山美がフリーシュートからこの日自身3点目を決めると、藤岡・三好も連続でゴールを決め、今Qなんと5得点。同点弾、逆転弾の際にはスタンドからは大歓声と共に「若き血」が轟いた。なかなか点差を縮められなかった慶大だが、ここにきて待望の同点弾、そして逆転弾を放ち、守備でも無失点に抑え、早大を一気に突き放すことに成功する。第3Q終了時点で2点リードの8―6。形勢逆転に成功した慶大は最後の15分間の戦いに臨む。
運命の最終第4Q。点差は2点。一進一退の攻防が繰り広げられるも3分、澤田がサイドから中央へ切り込み9点目を挙げる。だが5分には、フリーシュートを得た早大がゴールを決め、9―7と再び2点差に。すると7分、三好もこの日自身3点目のゴールを決め10点目とすぐさま点差を3点とする。だが残り5分、早大が慶大ゴールネットを揺らし、またも10―8と2点差に。試合最終盤にも差し掛かり、両校選手の足を痙攣が襲い、疲労はピークに達していた。いつ追いつかれるかわからないチームを救ったのは、澤田だった。パスを受けてから冷静にボールをキープ、呼吸を整えてから一気に加速し、相手の守備をものともしないフィジカルと決定力を見せ、残り3分、相手を突き放す11点目を挙げた。それだけでは終わらず終了間際、藤岡が相手に引導を渡す12点目。ここで試合終了のホイッスルが鳴り、12―8で慶大が早大を下し、見事早慶戦4連覇を果たした。
4人がハットトリックを決める大逆転劇を見せた今試合。選手たちは超攻撃的なスタンスを最後まで貫いた。相手ゴールを6人で大きく囲む布陣を組み、秋山美を中心に冷静にボールを回してチャンスを伺いつつ、相手守備のわずかな遅れを見逃さず、各選手がチャンスを決め切った。また、D F陣もボールロスト直後に懸命の帰陣を見せ、相手カウンターの芽を摘んだ。そんな彼女たちを、チームメイトやスタッフ、応援団、そして観客が一つとなり声援を送り続けた。 “爆風”の如く全員で劣勢を吹き飛ばし成し遂げた、4連覇。そんな彼女たちが今秋のリーグ戦でどんな試合を展開していくのか、期待が膨らむそんな一戦となった。
(記事:竹腰環、岩切太志、岡里佳 撮影:島森沙奈美、岡澤侑祐)
♢選手コメント♢
主将・M F#43 横手希未子(法4・慶應女子)選手
ーー今試合の感想
最初はワセダに流れを持っていかれてましたが、その後粘り強く自分たちのやることをやろうとして、それが後半出てきたので良かったと思います。
ーー4連覇の感想
1年生の時から早慶戦を見てきて3年間負けていなかったのでプレッシャーはありましたが、勝つしかないという雰囲気の中で勝てて良かったです。
ーー前半の苦戦からの逆転を振り返って
意外と点数を気にしないで臨んでいたので、逆転したというよりかは点が入っていい流れになったというイメージでした。
ーー昨年からの成長点
自分の中では負ける気がしないというメンタルでできたなと思います。去年は接戦で焦りなどがチーム内でありましたが、今年はチームでどんと構えていられたのは強みになったかなと思います。
ーーリーグ戦の意気込み
リーグ戦では厳しい試合になると思うし、本日のようにいきなり4点取られたりもするかもしれませんが、今日のようなマインドで自分たちのやることをしっかりやって出し切ろうと思います。
A T#3 秋山美里(環3・日本大学)選手
――今日の試合を振り返って
今日は1Qで相手に流れがいってしまったが、2Qから巻き返すことができた試合だと感じました。リーグ戦でもこうした試合はあると思うので、経験できてすごく良かったです。
――苦しかった1Q終盤のゴールを振り返って
ラスト30秒辺りで慶應ボールになったため、絶対にゴールを決めて1Qを終わらすと思っていました。流れを慶應にもってくることが出来たかなと感じています。
――4連覇の感想
4連覇というよりも、今年の早慶戦をしっかり勝ちで終わらせることが出来て良かったなと思っています。
――ハットトリックの感想は?
自分が決めなきゃいけないところで決めることでハットトリックに繋がったと思います。ハットトリックというよりかは、1点1点を積み重ねた結果だと思っています。
――昨年からの成長点
去年とはメンバーががらっと変わり、11月、12月辺りに一から作り上げたチームです。全部成長していると感じています。一から積み重ねて早慶戦で勝つことが出来てすごく嬉しいです。
――リーグ戦への意気込み
リーグ戦も1点1点の積み重ねで勝ちが決まっていくと思います。慶應の攻撃的なラクロスをもっと展開し、成長してリーグ戦に挑みたいです。
M F#19 澤田彩子(文3・品川女子学院)選手
ーー今試合の感想
最初は流れが悪かったですが、その後逆転勝利ということで無事連覇を達成することができて、本当に良かったです。
ーー4連覇の感想
無事4連覇できて、リーグ戦に向けても勢いをつけることができたと思います。
ーーハットトリックを決めた感想は
前半は試合の流れが悪かったのですが、その中でまずは3点目を決めることで試合の流れを変えることができたので良かったです。ハットトリックは自分が目標にしてきた部分ではあったので、強気に攻めることができてよかったと思います。
ーー昨年から成長した点
ボールを受ける時に自信を持てるようになりました。上級生として、チームの一員としてプレーで引っ張ることができるようになりました。
ーーリーグ戦に向けて
ファイナル4を勝ち進むというのを目標に、これから成長していくと思います。早慶戦も終わりこの6月を準備期間としてまた頑張っていきたいと思います。
A T#88 藤岡杏(法3・慶應女子)選手
ーー今試合の感想
出だしをワセダに押されていて、ちょっとヒヤヒヤした部分もあったと思うのですが、それでも私たちらしい個人の強いプレーを最後にちゃんと見せて、勝ち切ることができたのが良かったです。
ーー4連覇の感想
この勢いに乗ってリーグ戦に向けて、日本一を目指して頑張っていくので応援よろしくお願いします。
ーー逆転弾の感想
やはり点数とかは関係なく、自分たちがどれだけやるべきことを出せるか、というところを強く考えてスイッチを入れ直して、シュートを決め切ることができて良かったです。
ーー昨年からの成長点
自分の強みを考えた時に、ヘッドコーチの大久保さんからも「強い仕掛けを活かしたプレーをしていく」というところを言われ、自分で一年間意識してきてました。去年よりも強い仕掛けでシュートまで持っていくことができた点が成長できたと思います。
ーーリーグ戦への意気込み
リーグ戦も引き続き、今回沢山見つかった入りの悪さなどの課題を残り数ヶ月でどれだけ修正して日本一に向けて、勝つだけじゃなくて勝ち方にもこだわって頑張っていくのでまた応援のほどよろしくお願いします。
M V P・M F#71 三好香奈(法3・慶應女子)選手
ーー試合の感想
ホッとしました。第1Qでは試合の流れが完全に相手にかたむいていましたが、第1Q終了直前の(秋山)美里のゴールなど、流れを変えるプレーのおかげで、気持ちを立て直して戦うことができたと思います。
ーー早慶戦4連覇について
嬉しいです!次も絶対勝ちます!
ーー試合では非常に重要な場面での得点が印象的でした
試合中はそこまで深く考えずプレーしていました。日ごろの練習の成果がだせたのかなと思います!
ーー第2Q後の休憩時間にチーム内で何か話し合ったか
大久保さん(ヘッドコーチ)からは、効率よく得点はできており(トータル攻撃時間僅か3分で3得点)、受け身にならず攻める時間を増やせればもっと得点でき、まだまだ十分逆転できる、という助言をいただきました。大久保さんの前向きな言葉が背中を押してくれたと思います。
ーー個人として昨年度から成長できたと思う部分
全体的に成長できたと思います!昨年度はベンチ入りはしたもののほとんど出場することができず、悔しさを味わいました。今年はしっかりスタメンとして試合に出場することで毎回フィードバックを得ることができています。今日の試合も勝利に貢献できましたし、オンザボールやオフザボールの技術面、そして体力面での成長を感じています。
ーー今シーズンのチーム、そして個人としての目標
チームとしては、“当たり前”に日本一をとることです!昨年度はブロック(関東1部リーグAブロック)の3位に終わり、FINAL4にも届きませんでした。なので、今年は絶対にFINAL4を突破し決勝に行く。そして“真”の日本一をチーム一丸で成し遂げたいです。個人としては、秋山(美里)選手のように、同学年には私がまだまだ及ばない選手たちがたくさんいます。そこに肩を並べ、追い越せるようにこれからも頑張りたいと思います!