【射撃】慶大圧倒の総合優勝 全部門で勝利し三連覇達成/早慶定期戦

射撃

雲一つない晴天のもと、紅葉に包まれた伊勢原射撃場に師走の冷たい空気を切り裂く鋭い銃声が鳴り響く。慶大、早大の両校の射撃部は来年で創部100年になり、今年の早慶定期戦は99年の歴史を背負った者たちの100年目を見据えた負けられない戦いである。先陣を切ったSB50MP60の島村優佑(法4・海城)主将は604.2点の高得点でチームを牽引する。それに続くようにAR10mS60では中村至誠(経2・慶應義塾)が620点という驚異的な数字を残す。 SB50m3×20でもラストイヤーの小林敏晴(法4・慶應湘南)が貫録の粘りで数字を残し、部門の後輩を引っ張り、終わってみれば慶大は早大に全部門で勝利を収め、3年連続の総合優勝を果たした。

 

令和6年度早慶定期戦

2024年12月1日(日)@県立伊勢原射撃場 

 

<慶大レギュラー選手>

AR10MS60 

中村至誠(経2・慶應義塾)荒井陽文(法1・慶應義塾)福田珠妃(法3・徳山)

SB50M3×20

小林敏晴(法4・慶應湘南)山口昌太(理4・東京学芸)尾原里彩(法3・東洋英和)

SB50MP60

島村優佑(法4・海城)吉中敦哉(政4・慶應義塾)江口このか(経2・慶應女子)

 

<結果>

総合 慶大5346.1―5278.9早大  

AR10mS60         慶大1843.6―1830.6早大

名前

S1

S2

S3

S4

S5

S6

合計

×数

中村至誠

103.7

103.5

103.3

102.8

103.9

103.0

620.2

42

荒井陽文

101.2

100.8

103.5

103.5

103.7

101.6

 614.3

33

福田珠妃

100.9

102.2

101.5

101.6

99.6

103.3

609.1

28

  SB50m3×20  慶大1699―1671早大

名前

合計

×数

小林敏晴

96

94

98

97

94

95

 

 

 

190

195

189

574

19

山口昌太

91

92

97

96

90

91

 

 

 

183

193

181

557

10

尾原里彩

90

96

98

98

91

95

 

 

 

186

196

186

568

18

    SB50mP60  慶大1803.5―1777.3早大

名前

P1

P2

P3

P4

P5

P6

合計  

×数

島村優佑

100.9

102.2

98.4

102.1

100.2

100.4

604.2

19

吉中敦哉

99.7

99.7

100.6

99.7

97.1

100.9

597.7

22

江口このか

100.5

101.1

101.0

99.4

101.8

97.8

601.6

18

 

<早慶定期戦のルールと用語解説>

早慶戦では10mエアライフル60発、50m伏射60発、50mを3姿勢で20×3発の3部門で行われる。その各競技のレギュラー選手3人の総合得点で争うというルール。

AR:エアーライフル。ターゲットは通常10メートルの距離に設置され、標的の中央に近づけることが求められる。

SB:「スモール・ボア(Small Bore)」の略として使用されることが一般的。小口径のライフルで弾薬を使用する競技であり、精密さと技術を問われる競技。ターゲットは通常50メートルの距離に設置される。

伏射:地面に伏せて、射撃を行う。競技射撃における姿勢の一つ。

膝射:膝を地面につけ、もう片膝を立てた状態で射撃を行います。膝を安定させることで、立射よりも精度が向上しますが、伏射ほどの安定感は得られません。

立射:立って射撃を行う姿勢。安定感が一番少ない。

三姿勢:膝射、伏射、立射のこと。

 

 

SB50mP60ではこの早慶戦でラストゲームとなる主将の島村と主務の吉中敦哉(政4・慶應義塾)が躍動する。主将という肩書だけでなく数字でもチームを引っ張りたいと試合前に述べていた島村は604.2点で最後まで集中を切らさない安定感のある射撃を見せた。緊張の表情を試合前に見せていた吉中も4年間最後の一発をほぼ中心に命中させ、場内から歓声が上がった。これにより、この部門でまずは慶大が先勝を収めることとなる。

結果でも4年生としての力を見せつけた島村(写真左)と吉中(写真右)

続くAR10MS60ではエース候補と呼び声の高い中村至誠(経2・慶應義塾)が620.2点という圧巻の数字で形勢が慶大に傾く。これに応じ、1年生ながらレギュラーを任された荒井陽文(法1・慶應義塾)も614.3点で期待の若手達が引退する4年生に成長を見せる。最終的には  慶大1843.6―1830.6早大というハイレベルな試合展開となったがこの部門も慶大が取る。

ハイレベルな勝負を制した慶大

最後に行われた50m先の的を三姿勢で狙う SB50m3×20ではこれまたラストイヤーである小林敏晴(法4・慶應湘南)がオールラウンダーらしさ全開の安定感と違う姿勢に柔軟性を見せ、部門トップとなる574点で他のレギュラーメンバーを後押しする。続く尾原里彩(法3・東洋英和)も来年度SBマスターを務めるうえで安心感を与える568点で部門全体で3位の活躍を見せる。

安定感のある射撃をみせた小林

これにより、総合で 慶大5346.1―5278.9早大 となり、三連覇を達成。1年から4年が出場した総力戦で後輩たちは ラストゲームとなる4年生たちに最高の花道を作り、4年間の締めくくりとした。

4年生を最高の形で送り出した

 

<選手コメント>

◇島村優佑(法4・海城)

主将として部全体をまとめた島村

――改めて4年間を振り返ってみて今何を感じますか

なんかまだ撃ち終わった直後なので、4年間が終わったという実感はまだわかないところではありますね。撃っている時も自分の射撃に集中していたので実感があまりなくて、振り返ってみると僕って結構緊張しやすいタイプの人間で朝からずっと緊張しっぱなしだったのですが最初の円陣で全種目で完全優勝をしようというところをみんなと話し合っていたので、後輩もついてきてくれたし、4年生みんなも緊張する中で全力を出せたというところが一体感をすごく感じられた瞬間だったと思います。

緊張感のあるなかベストを尽くした

――今日のご自身の成績としてはどのようにお考えですか

自己ベストからは7点くらい低くて満足とはいかなかったんですけれども、早稲田、慶応、両校合わせてレギュラーの中では一番を取れて、前のインタビューで自分が点数で引っ張っていきたいというところは実現ができたので、すごくよかったかなと思っています。

――改めて後輩へのメッセージをお願いします!

今三連覇も続いていて、この勢いのまま1年間走り切って、また来年全員で完全優勝を目指してほしいかなというところがメッセージになります。

――ありがとうございました!優勝おめでとうございます!

 

◇東山和樹(経3・慶應義塾)

来年度からチームをけん引する東山

――今日のご自身の成績についてはどのようにお考えですか

いつも通りでした。今日は二種目出て、伏射の方は自己ベストは更新できたのですが、大台の600点に乗せることはできず599.9点であと0.1点足りないっていう感じでした。誇れることではないですが自分らしさが出たと思います。三姿勢の方も556点で自己ベスト更新とはならず自己ベスト-2点で、まあでも昨日練習したときも556点だったので前日練もずっとこの通りなのでいつも通りだったので期待に応えられず、悔しいというか、自分自身に期待をかけていたのでそこはとても悔しかったです。

満足のいく結果とは言えなかった

――主将になる上での意気込みや意識していることは

責任のない3年間というのがついに終わってしまったので、今後はすべて4年の台に責任が降りかかってくると思うので、そこらへんはどうにかしたいというのがまず一つあって、それ以外には今は点数で引っ張ってはいけないですが、来年度は主将という名前だけではなく、点数と実力で部活を引っ張っていければなと思います。

――ありがとうございました!これからもよろしくお願いします!

 

◇吉中敦哉(政4・慶應義塾)

主務として部を支えた吉中

――改めて4年間を振り返って

今日は余計に4年間の短さを実感した一日だったかなと思います。あっという間でしたね。今の感情としては後悔もちょっとありますけど、どちらかというと清々しい気持ちだなと思います。振り返ってどんくらい思い出を語ればいいのだろうかっていうのはありますけど(笑)。

狙いを定める吉中

――60発目で素晴らしい射撃を見せた、今日の早慶戦を振り返って

総合的な結果から言うと、自分が一番足を引っ張ってた結果で不甲斐ないなという思い、自分の点数に対する思いはあります。ただ、60発目は不思議と、緊張感とリラックス具合がちょうど一番いいタイミングでいい具合に混ざってた状態で撃つことができて、結果的にど真ん中ではなかったんですけど、でも真ん中に当てることができたのは今こう良い気持ちでいられる1つの要因かなと思います。

――ありがとうございました!お疲れさまでした!

 

◇中村至誠(経2・慶應義塾)

驚異的なスコアをたたき出した中村

――今日の早慶戦を振り返って

最近結構安定してきていて、それが早慶戦でも出せたなと感じなんですけど。すごい高い点数が出てる訳でもないので、今後はもっと高い点数を取りたいと思います。

――1年次の早慶戦と比べて成長したこと

去年と比べ装備面の部分でもいろいろ違うんですけど、一番大きいのは精神面で。これまでいろんな大会経験してきて、最後の勝ち残り戦もいろいろ経験させてもらって。その中でこれよりかは緊張しないなみたいな、一番緊張した大会があるんですけど、それよりかはまだマシだなというふうに自分の中で思えることが増えて、結果的に早慶戦も、精神的にも安定してたなという感じがします。

来年は3年生として部を引っ張る存在に

 ――3年生になるにあたって自分の役割はどのようなものだと考えるか

頂いた役職としてARマスター(慶應射撃部においてエアライフル競技に出場する選手の指揮・監督をする執行部)という役職をいただいて。本来であれば4年生の方がやる役職なんですけど、僕にやらせていただくということで、使命感はあります。また、最近は同期や後輩が結構上達してきているので、そこは引き続きサポートしつつ、あんまり点数が伸びない人は個人的に伸ばして、部員の全員、チームとしての点数上げていきたいなと思っています。

――ありがとうございました。

 

◇尾原里彩(経3・東洋英和)

3位の成績をおさめた尾原

――50×3の部門で総合3位というご活躍でしたが個人の今日の成績はどうお考えですか

4年生の方々が最後ということで勝って終わりたいっていう気持ちがあったので、後輩としては結構緊張しながら撃ったのですが、調子は悪かったなりに全力を尽くして丁寧に一発、一発撃てたので、自分的には頑張ったと思います。

部員想いな一面も見せた

――来年はご自身も4年生という立場になると思いますがその中での自分の役割についてどうお考えですか

自分は来年度SBマスターを務めるのですが、自分自身ちゃんと点数出してSBマスターとして示しがつくような人間にもなりたいですし、SBのほうが大学から始めてもARと比べて目指しやすいので、後輩たちにも入賞をどんどんしてもらえるように指導方法とかを考えていきたいと思います。

――ありがとうございました!

 

◇並木ハジメ(環1・明大中野)

初めての早慶戦を終えた並木

――初めての早慶戦。緊張は

途中、後ろに人が集まってきたときに、見ないようにはしているんですけど、視界に入るとちょっと緊張しちゃいます。しかし、高校生のときに比べたら、緊張しなくなったなと思います。

 ――試合を振り返って

試合は2回目なんですけど、大学で自己ベストということで、まず結果として611.7点で、今日の自身の目標の610点には超えたので、及第点かなと自分では評価したいなと思います。一方で、一つ一つの射撃においては、ちょっとまだ納得いかない部分とか、不安定なところもあるので、もっと安定感を増していきたいなと思っています。

経験豊富な1年生に注目だ

 ――来年度の役割

高校から射撃をやってきたということもあって、他の人たちよりかは少し射撃歴が長いので、そういった視点から試合の経験とかそういうのを伝えていけたらなと思いますし、私も教えている途中に自分も再発見するというところもあると思うので、そういうコミュニケーション、やり取りが大事なんじゃないかなと思います。

――ありがとうございました!

 

◇荒井陽文(法1・慶應義塾)

緊張もあったという荒井

――初めての早慶戦。緊張は

最初ちょっと緊張しちゃって、ペース伸びなかったところもあるので、そこが課題です。

 ――早慶戦を終えて成長したこと

実力もそうですし、人と関わる力っていうのが成長したのかなと思います。やっぱり個人競技なので、教えてもらう相手が一緒にプレーしている先輩とかほかの学校の人とか、関わりを持つ力が増えたんじゃないかなと思います。

プレー以外の面でも部に貢献したいと意気込んだ

 ――来年度の役割

僕は新歓係で、新入生を迎える立場ではあるので、丁寧に接して、でもちゃんと部に貢献してもらえる後輩になってくれるようにしっかりと面倒見ていきたいなと思います。

――ありがとうございました!

 

<取材協力>

喜吉寛(文1・淳心学院)

1年生ながら円滑な大会運営に従事した

早慶戦前インタビューも掲載されています!射撃部の皆さん、ご協力誠にありがとうございます!これからもよろしくお願いします!

                    

(取材:塩田隆貴、河合亜采子、吹山航生)

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