「ラクロス日本一」を決める全日本選手権大会（以下、全日）が、１月１８日（土）に味の素スタジアムで行われる。慶大の２年ぶりの出場に際し、全４回に渡って部員たちの「等身大の魅力」と「全日へ懸ける想い」に迫る。第１弾では、慶大が誇る「２人の守護神」浜地航太郎選手（経４・慶應）と岩城敦大選手（法２・慶應）の対談をお届けする。兄弟のような仲の良さが垣間見える対談を、最後までぜひご覧いただきたい。
※この対談は、２０２５年１月７日に行われたものです。
ーーせっかくなので、他己紹介からお願いします！
浜地→岩城：法学部法律学科２年生の岩城敦大です。実は、高校（＝慶應義塾高校）の頃からGという同じポジションでラクロスをしていて。ただ、高校の時は１年と３年で、さらにコロナの影響もあって関わりは少なかったのですが、去年からはずっと一緒にAチームでやってきたという仲です。岩城の特徴は「ずば抜けたセンス」だったり、「飛び抜けたセーブ力」です。こんなに身体は細いですけれど、意外とセーブに関しては僕よりも安定感があって、ずっとパフォーマンスが維持できるというところも彼の強みかなと思っています。すごく穏やかで話しやすくて、先輩だけれども後輩である岩城に相談に乗ってもらうこともありますし、すごく信頼を置いているパートナーです。
岩城→浜地：浜地航太郎さんは経済学部の４年生。２個上の先輩で、高校の時からお世話になっています。実は、僕が初めて自分のGクロスを持った時に編んでくださったのが浜地さんで…
浜地：あ、そうだったんだ！
岩城：そうですよ！（笑）僕が「クロスを買ったんです」ということを浜地さんにお話ししたら、「編んであげるから持ってきて！」と言ってくださって、慶應義塾高校の３年H組の教室に持っていきました。
浜地：あ〜！
岩城：浜地さんはM組だったのですが「移動教室でH組にいるからHに来て！」と言われたので、「わかりました」と言って…
浜地：あ〜全然覚えてないわ（笑）。
一同：（笑）。
浜地：編んであげたのは覚えているんだけどね。
岩城：僕は教室まで覚えています！H組まで渡しにいきました（笑）。高校の頃は接点が少なかったので、それくらいにはなりますかね。その時からお世話になり始めて、去年大学１年生で大学のラクロス部に入ってからは浜地さんとずっと一緒にプレーさせてもらっていて、本当にラクロスの方でも、私生活の方でも、部活の行き帰りだとか、そういったところでも面倒を見てもらっています。先輩ですけれども、先輩というよりかはどちらかといえばお兄ちゃんに近いというか、お兄ちゃん、お父さんみたい。お家も近いので、僕にとってはお兄ちゃん、お父さんみたいな方です。
ーー素敵な関係性ですね！ありがとうございます。
ーーちなみに岩城さんは審判もやられているというお話を伺ったのですが…
岩城：やっていますね。審判を始めたのは本当にバカみたいな理由ですけれど、選手として第一線で活躍している人が審判もできていたらカッコいいなと思って。ただカッコいいなと思っただけで、そんなに深い理由はないですけれど（笑）。ルールを理解できていると試合の中でも然るべきところで抗議できるし、試合中にこうやったらファウルをもらえるなとか少しずる賢くプレーしたり、ということができるようになったので、そこはルールを理解して良かったなと思う点です。始めた理由はそんな感じですかね、カッコいいからと試合で役立ちそうだなと思ったからです。
ーー実際に役立つ場面はたくさんありましたか
岩城：そうですね。そこまで機会はないですけれど、１回だけうまくいったことがあります！
浜地：僕が感じることとしては、試合というよりも練習においてルールに詳しい人が常にフィールドにいるというのはすごく心強いです。結構、際どいプレーをした時にディスカッションできる人がいると、実際の試合にも活きてくるので。どちらかというと練習ですごく活きているかなと思います。
ーーGの魅力、あまり知られてはないけれど意外とこうなんだよ！ということがあれば教えてください
浜地：ラクロスのキーパーがセーブをする際は、どちらかというとゴールに向かってきて点を決めるOF側の方が有利かなという部分があって、シュートを打たれる時は確実にピンチの時なので。だからこそ止めた時の嬉しさだったり、セーブした時の会場の盛り上がり方とか注目の浴び方というのは結構Gの魅力かなと思います。
岩城：意外なところ…結構みんなが思っている通りだとは思いますが…
浜地：実は結構緻密な駆け引きをしているというか。
岩城：たしかに。
浜地：Gの方が不利な分、こちらが先手をとって予測してセーブをしなければいけない時もあるので、そういった時にわざと一方のスペースを空けてポジショニングをして、そこにシュートを誘うとか。気合いで止めているように見えて、実は意外と駆け引きをしているんだよ！というのはあります。
ーー岩城さんは何か意識されていることはありますか
岩城：逆に、何も考えないようにしています（笑）。競馬のジョッキーの方で、すごく大きなレースで何度も勝っている武豊さんというレジェンドがいて、その方に「次はどのレースに勝ちたいですか？」と聞くと「大きなレースではなくて、目の前の次のレースに勝ちたい」と答えるんですよ。その姿勢に憧れて、カッコいいなと思っちゃったんですよ。だから、どこか目先を見るというよりかは、試合中は目の前の一つ一つの状況を勝ち抜くことに意識を向けて難しいことは考えないようにしています。思ったよりも何も考えていないというのは、意外なところかもしれないです。
ーーここまでのお話を踏まえると…浜地さんは逆に結構考えるタイプですか？
浜地：そうですね（笑）。僕はいろいろ考えてしまうタイプなので、真逆ですね。
ーーそれぞれのプレースタイルがあるということですね
浜地：はい。この2人はタイプがだいぶ違うと思います。
ーーリーグ戦の日体大戦後のインタビューでは「岩城と２枚看板で」という言葉もありましたが、今季これまでを振り返っていかがですか
浜地：僕からするとシーズン序盤は全然穿つが上がらなくて、試合に出られていない期間もあったのですが、その間に彼（＝岩城）がずっとビッグセーブを続けてこのチームを救っていてくれたからこそ、シーズン後半の全学（全日本大学選手権大会）や全日があるので。本当に感謝しているなというところです。
岩城：本当に、今こうやって「２枚看板で」という言葉も使ってもらえて、すごく幸せにラクロスをできていますね。最初の方は、たしかに少し辛かったところもあって。それこそ８月の武蔵との試合は、最初はビハインドを結構つけられていたりでメンタル的にもキツかったです。青学戦の時ですよね、浜地さんが最初に戻ってきてくれたのは。
浜地：そうだね。
岩城：青学戦で戻ってきてくださって、そこから僕はもうベンチで「ワァー！」って手を叩いているだけの試合も増えたので（笑）。浜地さんが戻ってきてくださったことで、チームとして「最後の必要だったパーツ」がガッチリはまって、G組織としても申し分ない形でシーズンを走って来られたので、僕はもう幸せにやらせてもらっています。
ーー今季、またはこれまでで一番印象に残っている試合を教えてください！
浜地：僕はやはり関東FINAL４が大きかったなと思っています。日体戦でフル出場したのですが、僕個人としては「ラストチャンスを与えられた」という認識で出場していたので。そこから海外遠征を挟んで、しっかりと評価されて試合に出たのが関東FINAL４だったので、自分としても戻って来られたなという感じがありました。あとは、昨年関東FINAL４で負けてからちょうど１年ということで節目の試合だったのですが、その中でチームがピンチの中で自分が活躍して勝利に貢献できたということがすごく嬉しかったですし、チームとしても一つ乗り越えられたということで印象に残っています。
岩城：僕は４節の早稲田戦ですかね。９月の半ばの早稲田戦で、あの試合は本当に僕が全く振るわなくて。結果は７ー６で、OFが点を取ってくれたのに、またすぐに点数を取られてしまったり、僕が悪い流れをチームに持ってきてしまった試合でした。あの試合は嫌な感じで印象に残っちゃってますね（笑）。
関東FINAL4で好セーブを連発した浜地選手
ーー逆に、岩城さんにとって一番良かった試合はどの試合ですか
浜地：明治じゃない？
岩城：明治ですかね。たしかに明治はありますね。
浜地：明治、めちゃくちゃ良かった気がする。
ーーリーグ初戦の明治戦ですか？
岩城：そうですね。クリース前の「運だけセーブ」がめちゃめちゃあって（笑）。
浜地：エグセーブがめっちゃあったよね！
岩城：「日頃の行いセーブ」はめちゃくちゃあったな（笑）。明治かな。
浜地：あとはリーグ戦じゃないけれど、早慶戦は？
岩城：そうですね、リーグ戦を外して大丈夫なら早慶戦かもしれないですね。なんか、たまたま全部うまくいったみたいな（笑）。
一同：（笑）
岩城：なんかすごくうまくいった試合だったので。
浜地：あの試合すごかったよね。めちゃめちゃ止めてたよ。
岩城：なんかうまくいってましたよね。なんででしょうね（笑）。
一同：（笑）
岩城：リーグ戦以外だと早慶戦になりますかね。リーグ戦以外だと六大戦は怪我で出ていなかったので、ユニフォームを着て出る試合は昨年度２３のシーズンで負けた関東FINAL４以来で。だいぶ舞台も大きいですし、だいぶ緊張はしていて…
浜地：しかも入りでだいぶ特殊な戦術をやるということもあって、すごくGのセーブ力に依存する戦略でもあったので。初めての早慶戦でいきなりそれをやるプレッシャーはすごかったんじゃないかなと思いますね。
日吉開催の早慶戦、明大戦で躍動した岩城選手
ーーそうですよね。関東FINAL４の次が早慶戦、なかなかの大舞台ですよね
岩城：やーばい。やばいやばいと思って（笑）。
ーー早慶戦も観させていただきましたけれど、緊張を感じさせないプレーでしたが
岩城：試合に出る前、浜地さんに「いつも通りやってきなさい！」と言っていただいて、「やってきます」と言ってあの結果を出せたので本当に良かったなと。良かった試合は早慶戦ですかね。
ーー先ほどもお話にあった関東FINAL４以降の試合では、お二人が試合後に抱き合って喜んでいる姿が印象的でした。やはりお互いに込み上げてくるものがありましたか
岩城：まず関東FINAL４の時は、僕シンプルにすごい嬉しくて。昨年度２３のシーズンでは関東FINAL４で負けて、すごい大泣きをしたんですよ。とんでもない大泣きをして、結構悪い思い出しかなくて「FINAL４」という文字というかイベント自体に（笑）。その中で、あのロースコアゲームを浜地さんが止めまくって、勝ち切って。シンプルにそれがすごい嬉しくて。それで「やったー！」ってなったところはありました。
浜地：僕も先ほど言ったように、いろいろ想いの詰まった試合だったので感極まってというところもありましたし、やはりそこまで岩城が耐え忍んでくれたからこそFINAL４という試合があって。２人でここまで勝ち上がれたなという気持ちが強かったので純粋に嬉しくて、まず岩城のところに行こうかなという気持ちでしたね。
岩城：僕も浜地さんのところに行くことしか考えていなかったですね。
関東FINAL４の試合後に抱き合って喜ぶ両選手
ーー素敵ですね！フィールド外でのお二人の思い出もお伺いしたいです！
岩城：この前、もつ鍋を食べに行きましたね（笑）。
浜地：そうね、もつ鍋ね。先ほども少し話したように家が近いので、この２人か、他の人も誘って毎週一緒に筋トレとかをすることもあって。常に一緒にいるような感じなので、思い出という思い出はなかなか難しいですけれど、練習中も同じポジションなので練習の話も練習とは関係ない話も含めて２人でよく話していますね。年末に２人でもつ鍋を食べに行ったりもしていますけれど、特にこれという思い出は選べないですね。特に、この最後の１年間は部活でやらなければいけないことも多くて、プライベートがすごく侵食されていたので。そういった意味で、長い時間を一緒に過ごしたということ自体が思い出ですかね。
ーー全日を終えて一段落したら、お二人で一緒に行きたい場所はありますか
岩城：温泉行きましょう！
浜地：あ〜温泉だね。温泉行きたいね。
ーーどの辺りの温泉に行ってみたいですか？
浜地：なんかさ、ちょっと山奥の方行きたくない？
岩城：山奥のね、緑がいっぱいな温泉（笑）。
浜地：あとは雪じゃない？（笑）
岩城：雪いいですね。
浜地：雪景色の温泉に行って、ちょっと日本酒を飲むみたいな（笑）。のんびりしたものをやりたい。
ーーぜひ、全日が終わったら温泉でゆっくりしていただきたいと思います！
ーーそして残り１０日ほどで全日を迎えますが、コンディションや気持ちの面ではいかがですか
浜地：僕はまた、いろいろ考えすぎて少し調子に波があったりもするのですが、試合に向けて準備をしていきたいです。試合になればパフォーマンスを出す自信はあるので。あまり気負いせずにいつも通り、ここまでやってきたことをしっかりと出し切って、セーブ力で試合をコントロールできたならと思っています！
岩城：めっちゃ良い機会ですし、僕はこのシーズンに本当に一片の悔いも残したくないという思いがあるので。もうやれることは全部やって、それが結果的に勝ちに繋がればいいなというふうに思っているので。試合の臨み方はいつも通りあまり何も考えないで（笑）。目の前の勝負がデカいからとか、負けたらどうとかそういうことではなくて。「今、このシュートを止める」みたいな気持ちを、それだけを持って試合は行こうかなと思います。
浜地：やはり全日を目標にしてきたので、今までは「負けちゃいけない」みたいなある意味「負の感情」があったのですが、そういった変なプレッシャーは次の試合、全日ではもうないので。負けても勝っても、もう終わりなので。ここまで本当に４年間、特にこの１年間はいろいろ大変だったので、この１年間やってきたことを信じて、ここで勝つことだけを目標にやってきたので、最後にそれを体現できるように頑張りたいです！
ーー最後に意気込みをお伺いしようと思っていましたが、だいぶ締まりましたね…
浜地・岩城：だいぶ締めましたね（笑）。
ーーでは、最後に注目してほしいところがあればぜひ！
浜地・岩城：まあセーブですよね（笑）。
ーーそうですよね（笑）
岩城：やはり４年前（２０２１年度）最後に全日本で勝った代は、結果的に試合のMVPには慶應のGが選ばれていて。２番だったG・藤井凱章さん（R３法卒・Stealers所属）という方がMVPで、Stealersを倒して日本一になっていたのですけれど、社会人に勝つにはMVPをGが獲ってしまうくらい、８点くらいOF陣が点数を取っていたにも関わらずそれでもGがMVPになるくらいGが活躍すれば勝てるので、セーブでかぶいてやろうじゃないかと。（２０２１年度の全日では、慶大が８ー５でStealersに勝利）
浜地：「僕らがMVPを取れれば勝てる」というつもりでやりたいですね。
岩城：そういうことですよね。MVP獲りに行きましょうか！
浜地：MVP欲しいね。
岩城：勝つとかではなくて、MVPを獲りに行きましょう！MVPを獲りに行けば多分勝てるので。
浜地：MVPは勝った側だけだからね（笑）。
岩城：そっか（笑）。
ーーでは、慶應のGがMVPを獲ることを楽しみにしていますね
浜地：はい！あとは、先ほど挙げていたG・藤井さんが僕がちょうど１年生の時に４年生で、高校の時からお世話になっていた憧れの先輩なので。「藤井さんの後を追う」ではないですけれど、MVPを獲って肩を並べられたら嬉しいなと思います！
ーー全日がさらに楽しみになる、素敵なお話をありがとうございました！
色紙を書く岩城選手を浜地選手が優しく見守る
（取材：長掛真依）
【全日本選手権大会】
１月１８日（土）１６：３０FO vs Grizzlies（社会人クラブ日本一）＠味の素スタジアム
