【Last message】魂のラグビーを胸に新たな舞台へ/4年生特集「Last message 〜4年間の軌跡〜」 No.4・渡邉匠(蹴球部)

ラグビー

24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message〜4年間の軌跡〜」。第4回となる今回は、ラグビー部のWTB渡邉匠(商4・川越東)。高3ではエースとして母校を花園へ導くも、大学入学後は思うように試合に出れず。それでも4年生では対抗戦選抜に選出されるなどの活躍を見せ、最後尾から慶應フィフティーンを支え続けた。そんな渡邉のラグビー生活にかけた思いとは。

 

柔道で全国大会に出場し、サッカーでは県大会3位のキャプテンを務めた過去を持つ渡邉が、高校入学後に「自分が輝ける場所」として見出したスポーツがラグビーだった。3年時には、エースとしてチームを牽引し、創部35年で初の花園へ。「嬉しかったのですが、それ以上に周囲への恩返しができたと感じています。コロナ禍を共に乗り越えた同期、ラグビーと勉強の両立を受け入れてくれた両親や顧問の先生らと、3年間夢見た舞台を一緒に見ることができて幸せな機会でした」とその時のことを振り返る。

 

4年間の競技生活で最も印象に残っているのは、「4年生の春季大会最終節、大東文化大学戦でチーム内MVPを受賞したこと」だという。「MVPを象徴するプレーは、相手の80mラインからの独走を捉えて止めた後、もう一度今度はオフロードパス(タックルを受けながら味方にボールを繋ぐ)を受けた選手に対してもタックルを決めたところです。チームが諦めかけていた相手のプレーを止めて、仲間からの信頼を勝ち取れたことがすごく自分としては嬉しくて。ラグビーは15人で戦うスポーツなので、一人ではプレーできないですし、周りからの信頼があってこそ活躍できるスポーツなので、MVPという賞以上にチームからの信頼を獲得できたことが何より嬉しい思い出です」と語る。

チームを支える華麗なプレー

この試合での活躍が評価され、2024年6月末に開催された関東ラグビーフットボール協会100周年記念大会の対抗戦選抜メンバーに選出された。「記念となるような大きな協会の大会に、慶應のバックス代表として出場させていただけたことは、すごく価値あるものだと思っています。今までの努力が全て肯定されたような時間でした」と語る渡邉にとって、この試合は、自身の競技人生の集大成ともいえる一戦となった。 

 

慶應蹴球部の魅力について、「人間的に魅力ある人が多く、それぞれの個性を受け入れてくれる集団」と語る。日々刺激を与えてくれる同期と過ごす中で、「効率を求めすぎない」大切さに気付いた。

 

「人間は効率ばかりを追い求めると、無駄な部分に魅力や価値を見出しにくくなると、4年間で感じました。自分の性格上、物事を細かく考えがちで、できるだけ無駄をなくしたいのですが、練習後の何気ない、おしゃべりする時間が絆や小さな信頼を生むことを、同期との関係ですごく感じました。一見無駄だと思えるような現象にも価値はあるということを同期には教えてもらえて、そこにすごく魅力を感じられるようになりました」

4年間苦楽を共にした仲間への想いを語る

そんなチームに対し、渡邉は「魂のラグビー」(力の差があっても強い相手に立ち向かっていく精神)を体現し続けてほしいと願う。「慶應蹴球部として、いかに世の中に価値を生み出すかを考えたとき、『魂のラグビー』を貫くことが、社会が忘れかけている古き良き文化を啓蒙し続けることにつながるのではないかと思います。」

 

2024年末に行われた大学選手権準決勝・帝京大学戦については、「結果に対しての悔しさはありますが、後悔はありません」と振り返った。常に先を見据える性格だという渡邉は、最終戦のホイッスルが鳴った瞬間、すでに次のステップへと意識を向けていた。

 

競技生活には大学で終止符を打ち、春からはコンサルティングファームの中でもDXやテクノロジーを中心に扱う部門で働く。(同期には)「ラグビー部が進まないような業界・業種に進むので、そこでの(僕の)活躍を見といてくださいと一言言っておきます」と笑顔で語った。競技生活に区切りをつけた渡邉の挑戦の場は、新たなフィールドへと続く。

(取材・記事:岡里佳)

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