【What is ○○部?】オールに託す伝統と挑戦/File.19 端艇部/早慶レガッタ直前特集

端艇

慶大の体育会を深掘りしていく新企画、「What is ○○部?」。第19回となる今回は、創部135年を迎える伝統の端艇部に迫る。1889年に発足し、慶應義塾體育會の中で4番目に長い歴史を誇る同部。今年は「自ら進む」という意味を込めた「自進」をスローガンに掲げ、部員一人ひとりが主役となって「強い慶應」の実現を目指している。春、隅田川を舞台に行われる「早慶レガッタ」は、端艇部にとって特別な舞台。あと一歩届かなかった昨年の雪辱を果たすべく、勝利への準備を重ねている。部員全員が寮生活を送り、「日本一」という共通の目標のもと苦楽を共にする端艇部。第94回早慶レガッタを間近に控え、主将・中村遼太(経4・慶應)に、伝統と誇りを胸に臨む今大会への意気込みを語ってもらった。

 

慶應義塾端艇部について

――入部のきっかけは

中村:元々、慶應義塾高校では野球をやっていて。試合に出ている同期だと今泉(=将、商4・慶應)とか、真田(=壮之、経4・慶應)とか、二宮(=慎太朗、商4・慶應)とか。その辺りですね。大学で何をしようかなと考えていた時に、元々は高校の野球部の学生コーチになろうと考えていたのですが、試合したいなと思って。何か部活に入ろうと決めて、色々な部活を見ていく中で、ボート部の「日本一を全員が目指す」というところ。大学から始めた人であろうと日本一を目指すという熱さや、実際に早慶戦を見た時は「かっこいい」という一言では片づけられないほどのかっこよさを感じて、「ここで試合に出たい」と率直に思い、ほとんど勢いで入部を決めました。 

高校時代は野球部に所属していた

――端艇の魅力は

中村:ボート部の一番の魅力は、人というところだと思います。寮生活で一年中一緒にいて、なんなら4年間一緒に暮らすので、学生時代に家族を超える存在を作ることができることはボート部の良いところだと思います。その中でも一人一人に個性があって、色々な考えがあって。それを認め合いながら、みんなで高め合えるところが一番の魅力だと思います。

 

――慶應義塾端艇部の特徴だと思う部分は

中村:やはり、他大学とは「人」が違うと思います。色々な意味があるのですが、最もわかりやすいところは、早稲田など他大学は高校で競技をやっていた経験者を入部させて、それを強くするということが基本です。慶應は6割くらいの選手が大学から競技を始める未経験者ですが、その中でも日本一を目指し、実際に4年前は全国3位になったり、早慶レガッタで早稲田と対等に勝負したり。それができるくらい努力をする人が集まり、日本一を現実的に目指しているというところ、素人が下剋上していくというところが慶應ならではの特徴ではないかと思います。

 

――最も苦労したことは

中村:個人的には、去年の早慶レガッタの対校エイトに出られなかったことが苦しかったです。毎年、早慶レガッタのどの部門に出場するかを決める部内選考があって、僕は1回勝てば対校エイトに出場できる、スーパーシードのような感じだったので、対校エイトに出る気満々だったのですが、そこから全部負けてしまい、第二エイトまで落ちた時が最も苦しかったです。その中でも、第二エイトでどうやって勝つかというところも難しかったですし、去年の早慶レガッタは試合直前に怪我してしまったりして、3か月くらい苦しい時期が続きました。

昨年は第二エイト出場の中村

――寮の雰囲気は

中村:ずっと住んでいるので、良い意味であまり学年みたいなものが気にならなくて。他大学とは違って部屋が2つしかなくて、一番奥の部屋が対校エイトに乗る8人が住む部屋で。あとはもう一部屋に、一応32人部屋と言われているのですが、ちょうど今週が引っ越しで、対校エイトのメンバーに入れなかった子が対校エイトの部屋を出たり、入れた子はその部屋に入れたり。もう一部屋には二段ベッドがたくさんあって、結構衝撃的な絵です(笑)。

 

練習について

――普段の練習について

中村:早慶レガッタに向けて、ここから最も大事なことはメンバー8人の動きを完璧に揃えることなので、それを可能にするために、朝はボートに乗って練習するので。まずは正確な動きを長い距離でやり続けるということが重要だと考えているので、そのためには毎日20〜25キロくらい漕いで、ゆっくりとした動きの中で全員が正確に、完璧に、全くズレがないように動きを合わせることが一番基礎の部分で大切だと考えています。そこからは距離を減らして、スピードも上げていきます。

 

――最も意識されていることは

中村:ただ8人の動きを合わせるだけでなく、個人の性格や特徴も全て漕ぎに出るので、一人一人の考え方や生活スタイル、キャラクターなど、色々なものが噛み合った上での漕ぎだと考えています。せっかく寮生活をしているので、練習以外の、生活面での色々な気づきを共有するためのミーティングをしたり、漕ぎの話だけをするミーティングをしたりなどして、水上だけでなく、生活面でもお互いの考えを知ることで、より揃えやすくするということを意識しています。

生活面でのコミュニケーションも大切にしている

新チームについて

――今年のチームスローガンは「自進」ですが

中村:「自ら主体的に進む」という意味なのですが、未経験者が主体的になるチームの上で、経験者しかいなかったり、経験者がほとんどの他大学に勝って日本一になったり、早慶戦で勝つためにはその差を超えることができるように頭を使わなければいけないと思います。練習量だけではなく、自分で考えて必要だと思ったことを積極的にやることが自分のためにもチームのためにも必要ですし、そう言ったチームが強いと同期みんなと考えて、そう言ったスローガンを決めました。

今年は「自進」をスローガンに掲げる

――チームとしての目標は

中村:インカレエイトで日本一を獲ること、全艇Aファイナル(A決勝)に進むということ、早慶戦で完全優勝すること、この3つがこの1年の目標です。

 

――レガッタに向けて意気込み

中村:去年、チームとしては対校エイトが約1秒差で負けました。しかしその1秒というのはただの1秒ではなく、すごく大きいというのを去年の先輩方も言っていましたし、その差を埋めきれなかったのが全ての敗因だったと言われていたので。僕たちはその1秒を埋めるために練習してきていますし、勝つためにしか練習してきていないです。レースは何が起こるかわからないのですが、今までの積み重ねの結果が出る場所だということを共通認識としています。これまでの練習が試合につながると意識していますし、妥協もしません。上手くいかなくてもみんなで雰囲気を作って、「どうやったら少しでも上手くなるのか」「船が進むのか」というのを考え続けて、早稲田に2連敗するわけにはいかない・絶対に勝つという中で日々高め合って練習しています。

昨年は1秒の僅差で敗れた対校エイト

――新入生へのメッセージ

中村:色んな選択肢がある中で、ボート部を選んできた私たちから言えることとしては、やっぱり学生生活で何か一つのことに打ち込む環境がボート部にはあると思いますし、学生生活が最後のチャンスなのかなと思います。 その中でボート部は競技だけでなく、人の温かさや一緒に頑張れる仲間、「この人たちと頑張りたい」と思える仲間がいます。さらに寮生活と聞くと少し嫌かなと思う人がほとんどだと思うし、実際に僕も思っていたのですが、一緒に住んでいるからこそ気づけるその人の良さとか、逆に離れて暮らすことで実感する家族のありがたさ、応援してくれている人への感謝の気持ちなど、寮生活をしていなかったらわからなかったなと思うこともいっぱいあります。なので、なかなか勇気のいる活動をしているとは思いますけど、少しでも興味を持ってくれたら嬉しいですし、少しでも応援してくれたら僕たちの励みになるので、ぜひ応援していただけたらと思います。

(取材:ウジョンハ)

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